Archive for the ‘未分類’ Category

親戚間の遺産相続トラブルを未然に防ぐには|相続トラブル事例と弁護士おすすめの対策

2021-01-28

対立する二人

亡くなった方の身内が配偶者と子供など家族だけなら、相続は比較的簡単に済む場合が多いです。

しかし現実には、家族以外のいわゆる親戚筋がいろいろと相続に関与し、面倒なトラブルになるケースもあります。 

親戚が関係する相続では、長年の付き合いから来るお互いの感情と金銭とが相まって、不用意なやり方をすると大きなトラブルにもなりかねません。

 今回は遺産をめぐる親戚間の相続トラブルと、その解決策について説明します。

身近に起こり得る相続トラブル

相続トラブルを未然に防ぐための対策と聞くと、多くの方がこう答えます。

「ウチには大した遺産がないから大丈夫だよ」

相続に直面したことがない方にとっては、遺産争いは別世界の話に見えるかもしれません。ですが、相続トラブルは一部の資産家だけに起きる事態ではなく、想像よりずっと身近な問題なのです。

相続トラブルの約7割が遺産5,000万円以下

裁判所が毎年発表している司法統計の最新情報では、令和元年度の遺産分割事件のうち76.8%は遺産5,000万円の取り分をめぐった争いでした。

遺産の内容

画像引用:裁判所|司法統計情報「53 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数 審理期間別代理人弁護士の関与の有無及び遺産の価額別 全家庭裁判所」

5,000万円は確かに大金ですが、自宅等の不動産を所有している方なら該当する場合も増えるでしょう。また遺産が1,000万円以下であっても、全体の33.9%にあたる2,448件もの相続トラブルが発生しています。

3割が当事者5人以上(親戚の可能性)

同じ司法統計から、今度は相続トラブルの登場人数を見てみましょう。

令和元年度の全家庭裁判所における遺産分割事件12,779件のうち、当事者が5名以上いる事件は3,897件でした。

遺産分割事件数

画像引用:裁判所|司法統計情報「46 遺産分割事件数 終局区分別当事者の数別 全家庭裁判所」

当事者5名の関係性については明かされていませんが、いわゆる「標準家庭」が夫婦プラス子供2人の4名であることを考えると、全体の3割以上は親戚などの家族以外の当事者が存在した可能性が高くなります。

実際の相続トラブル事例(親族・親戚関係)

では、実際にはどのような親戚間の相続トラブルが起こり得るでしょうか。遺産分割協議に関連する事例から、親戚間の相続トラブルの一部を確認してみましょう。

なお、法律上は厳密な「親戚」の定義がありせん。そのため今回は親族や姻族を含む、一般的に「親戚」と称される関係性で起こった事例をご紹介します。

事例1:延べ20名の親戚と連絡が取れない

依頼主様の親御様が亡くなられた後、親御様の兄弟姉妹までが相続人となったために、延べ20名もの方が相続人になった事例です。

日頃まったく付き合いがない親戚のため相続について相談することもできず、連絡しても返信が来ないとご相談を受けました。

弁護士が被相続人の戸籍から相続人を調査し、ひとりずつ交渉を重ねた結果、調停まで行かずに遺産分割協議をまとめることができました。

事例2:遺産となるべき財産が散逸していた

被相続人の死後10年が経過してから遺産を取り戻した事例です。

ご依頼主様以外の相続人である親戚が地方に住んでおり、その地方には管理者がいない不動産が遺産として存在していました。加えて一部財産の散逸がみられました。

管轄の家庭裁判所が不動産の所在地にあったため、弁護士が管轄の家庭裁判所に調停を申立て、散逸した財産の取り戻しと分割協議を成立させました

不当利得請求についてはこちら

事例3:不仲な親戚との遺産分割協議

ご依頼主様は以前より親戚との折り合いが悪く、かつ長年連絡をとっていないので自分では遺産分割協議をしたくないと相談を受けた事例です。

弁護士が相手方相続人となる親戚に連絡をとり、ご依頼主様の要望を確認しながらおよそ3か月程度で遺産分割協議を取りまとめました。

まずは無料相談

感情的になりがちな親戚間の遺産争い

ここまでの説明を聞いても、こうおっしゃる方がいます。

「ウチは親戚みんな仲が良いから、遺産争いとは無縁だね」

これまで数多くの相続トラブルを解決してきた専門家からすれば、その意見は楽観的すぎると言わざるを得ません。親戚関係はこれまでの長い付き合いだからこそ、感情のもつれから大きなトラブルになる可能性があります。

被相続人の生前には見過ごされてきたちょっとした不満も、相続の場においては目についてしまうかもしれません。また、他人と違って親戚は後々の関係性にも影響してきます。日頃仲が良い親戚だからこそ、相続は慎重に対応すべきなのです。

相続トラブル防止で弁護士に相談できる対策

遺産を適切に譲り渡し、親戚縁者も納得して円満に相続を完了させるためには、被相続人の生前からの対策がカギとなります。

弁護士は円滑な相続のために以下のような対策のお手伝いができます。財産を譲る方も、譲られる方も、それぞれどのような対策が可能なのかを確認しましょう。

相続前:遺言書作成

遺言書の作成は親戚間の遺産争いを解決するもっとも有効な手段と言えます。実際の事例でも、遺言書が存在していれば回避できたと思われるトラブルは少なくありません。

しかし、自筆証書遺言の作成には民法上の細かい規定があり、有効な遺言書を作成するにはある程度の知識が必要です。さらに遺留分などが考慮されていない遺言書だと、それもまた相続トラブルの元になります。

弁護士事務所では法的に有効かつトラブルを未然に防ぐ遺言書作成のアドバイスができます。

遺言書作成の詳細なメリットはこちら

相続時:遺言執行

生前に遺言書を作成していた方が亡くなった後は、弁護士が遺言執行者に就任して家族や親戚への相続を執行できます。

大切な家族の死去により、遺族の精神的ダメージは計り知れません。相続手続きをする時間的・精神的な余裕もなくなる恐れがあります。

冷静な第三者である弁護士が介入すればスムーズに相続手続きを行うことができ、さらにうるさい親戚からの横やりにも直面せずにすみます。

なお遺言執行には遺言内容の把握が必要なため、遺言書の作成支援をした弁護士を執行者とする一文をあらかじめ遺言書にも記載するのがおすすめです。

遺言執行の詳細はこちら

相続時:遺産分割協議・調停

被相続人が遺言書を残さなかった場合には、相続人が話し合って協議を行います。これを遺産分割協議と呼び、弁護士は遺産分割協議をとりまとめるお手伝いもすることが可能です。

さらに遺産分割協議がまとまらず調停や裁判にまで発展した際には、依頼主様の代理人として正当な権利を主張し、トラブルの早期解決を目指します。

遺産分割協議の詳細はこちら

遺産分割協議書の書き方はこちら

相続時:遺留分侵害額請求

遺言書によって遺産が法定相続人以外の親戚や第三者に遺贈されるケースがあります。法定相続人が得られるはずの遺産が遺贈によって侵害されたときには、法定相続人は遺留分侵害額請求ができます。

これは被相続人に対しての請求ではなく、遺贈を受けた親戚あるいは第三者に対して応分の金額を請求するものです。

弁護士は遺留分侵害額請求の代理人として、相手方への意思表示から交渉~合意に至るまでを代理できます。

遺留分侵害額請求の詳細はこちら

相続時:相続放棄

配偶者や子供、親以外の親戚が亡くなっても、自分が相続人になることはあまりありません。

しかし法定相続人が相続放棄すると、繰り上がって相続人に指定される可能性があります。そしてそのような場合、相続財産は借金などのいわゆる負の遺産であることが多いです。

単なる親戚だから関係ないとばかりに放置しておくと、知らぬ間に借金を相続させられるかもしれません。それを回避するには直ちに相続放棄の手続きが必要です。

相続放棄の手続き自体はさほど難しいものではありませんが、3ヶ月以内に手続きしないと放棄できなくなるため、確実に手続きを行う必要があります。

ただし、借金が後から判明したなどの理由により、期間制限を過ぎてから相続放棄を行う必要が生じた場合でも、実務上、期間を経過した理由を説得的に示すことで、相続放棄が認められることは多くみられます。

弁護士は相続放棄申述の代理人にもなれます。

相続放棄の詳細はこちら

相続後:姻族関係終了届

姻族関係終了届は、相続には直接ないものの、配偶者親族や親戚と相続トラブルなどでしこりが残ってしまった方に提案できる対策です。

結婚すると配偶者の親兄弟とは姻戚のつながりができます。このつながりは配偶者がもし死去しても消滅することはありません。姻族関係終了届を出せば、配偶者親族とのその後の関りを絶つことが可能です。

弁護士は依頼主様が新たな人生に向かって歩き出すためのお手伝いもさせて頂きます。

まとめ

今回は相続に際して親戚がどのように関係してくるのか、遺産をめぐってトラブルにならないための対策について解説しました。

相続が争続にならないためには、遺産を残す方ももらう方も事前にしかるべき対策が必要です。

自分が相続人になったとき、また被相続人になったときの適切な対処方法を知り、いつまでも仲の良い親戚関係が続けられるように準備をしておきましょう。

 ▶まずは無料相談

遺産分割協議書の正しい書き方|見本(ひな形)を用いて徹底解説

2021-01-28

契約締結した様子

亡くなった方の遺産は、特に遺言書がなければ相続人が相談して分け方を決め、決定された内容は遺産分割協議書に書き記します。

しかし初めての相続で、遺産分割協議書の書き方がわからない方も多いでしょう。

遺産分割協議書の書き方には法的な決まりはないものの、滞りなく相続を完了させるには注意すべき点がいくつかあります。

今回は遺産分割協議書の書き方や注意点について詳しく解説します。

遺産分割協議書とは

具体的な書き方を確認する前に、まずは遺産分割協議書とは何かを理解しましょう。

遺産分割協議書とは亡くなった方(被相続人)の遺産を「誰が・どのように・どれだけ」引き継ぐのか相続人全員で話し合った結果を書面にまとめたものです。

遺産分割協議の後で相続手続きをするときに必要となる書類です。

遺産分割協議書の用途

遺産分割協議書は、例えば以下のようなシーンで必要になります。

  • 相続税の申告をするとき
  • 不動産変更登記申請をするとき
  • 預貯金等の名義変更をするとき

遺産の種類や遺産分割の内容によっては、上記以外にも遺産分割協議書を活用するシーンが考えられます。

遺産分割協議書の提出先

遺産分割協議書は相続手続きをする際に、以下のような場所に提出します。

税務署

相続税の申告

法務局

不動産の変更登記

銀行等

預貯金の名義変更

証券会社等

株式の名義変更
※保有株式の企業には提出不要

陸運局

自動車の名義変更

遺産分割協議書の基本的な書き方

ここからは具体的に遺産分割協議書の書き方を確認していきましょう。

遺産分割協議書の書き方には法律上の規定がないため、基本的には自由形式で作成して構いません。縦書き・横書きのどちらでも良く、手書きでなくパソコンで作成しても結構です。

ただし遺産分割協議書の各提出先が求める要素を満たすためには、以下の事柄を守る必要があります。

遺産分割協議書の見本はこちら

タイトル

文書の頭もしくは表紙には「遺産分割協議書」とタイトルを付けます。

タイトルが付いていないと、何の文書なのか提出先には判断できません。スムーズな相続手続きのためにはタイトル付けは必須です。

必須項目

どのような遺産の種類であっても、また遺産をどのように分割するかによっても、必ず記載しなければいけないのは以下の項目です。

被相続人情報

亡くなった方の名前・住所・本籍地・生年月日・死亡日

財産情報

亡くなった方が保有していた預貯金・不動産・有価証券その他の遺産

相続人情報

遺産を相続した方の名前・被相続人との続柄・住所・本籍地・生年月日・何の財産を取得したか

日付

遺産分割協議書を作成した日

署名・押印

日付の下には相続人全員が署名し押印します。遺産分割協議書をパソコンで作成していても署名だけは自署が必須です。

また印鑑は認印ではなく実印を使用してください。相続人が未成年で実印登録がないときには代理人の実印を使用します。

遺産分割協議書が複数枚のときは製本して割印を押します。また訂正箇所をあらかじめ了承する捨印も押しておくと便利ですが、一部の相続人による改変をも認めることになってしまいますので、捨印を要求された際には注意が必要です。

具体的な遺産の書き方

遺産分割協議書は、分割する遺産の種類ごとに正しい書き方をしなければいけません。

以下からは遺産の種類ごとの書き方を説明します。

預貯金

預貯金は金融機関名と預金口座番号、残高を記載します。

遺産分割協議書の金額と実際の残高が違っていると名義変更ができないため、凍結されている被相続人の残高証明書を銀行から取り寄せて同じ残高を記載してください。

預貯金を相続人同士で分配するときの書き方は「2分の1」などの割合でも「500万円」などの金額でも構いません。

株式等

株式等の有価証券は保有証券の名称(会社名)と口数を記載します。証券会社の名前は書く必要がありません。

また株価は日々変動するため、評価額を書く必要はありません。

不動産(土地・戸建・マンション)

不動産の書き方は土地・建物・マンションともに登記簿謄本の書き方に倣います。あらかじめ法務局で登記簿謄本を取り寄せ、一言一句違わないように慎重に記入しましょう。

遺産がマンションの場合には登記事項の記載に加え、所有する専有部分と敷地権の持ち分も記入する必要があります。

自動車

自動車の書き方は車検証の記載事項に倣います。

評価額は車種・年式・走行距離などから中古車販売業者の相場価格を推定します。

その他の遺産(希少本・骨董品など)

着物や骨董品、美術品、希少価値のあるコレクションや本なども遺産に含まれます。書き方はそれぞれの遺品を鑑定した際の鑑定書の品目名と鑑定額をそのまま記載します。

一般的には評価額10万円以上から遺産分割協議の対象と考えられるため、10万円以下の品物は特に書く必要はありません。

代償分割

不動産など複数の相続人に分けづらい遺産は、誰か1人が相続する代わりに金銭を他の相続人に支払って、応分の相続がなされたものとする場合があります。これを代償分割と呼びます。

遺産分割協議で代償分割が決まったときには、その旨も遺産分割協議書に書き記しておかなければいけません。

負の遺産

借金などのいわゆる負の遺産も遺産分割協議の対象となります。

負の遺産も基本的に預貯金の書き方と同じく、ローン会社等の名称と残債を記載します。

負の遺産はプラスの遺産の取得割合に応じて各相続人が負担するのが基本的な考え方ですが、誰か1人が負担することに決まった場合には以下のような書き方をします。

〇田△男は被相続人の債務を全て負担する。なお〇田△男は他の相続人に対して弁済を求償しない。

まだ判明していない遺産

遺産分割協議をしているときには誰も認識していなかった遺産が、その後判明する可能性もあります。

そのような事態に備え、遺産分割協議書には後日判明した遺産の取り扱いについても明らかにしておきます。書き方は以下文言を参考にしてください。

(相続人の誰かが自動的に取得する場合)

上記の遺産及び債務以外に新たな遺産および債務が発見された場合には、〇田×子が全ての遺産及び債務を取得・承継する。

(再度話し合いをして決定する場合)

上記の遺産および債務以外に新たな遺産および債務が発見された場合には、再度遺産分割協議を行い、遺産及び債務の承継先を決定する。

生命保険(記載不要)

よく誤解されがちですが、被相続人が亡くなった際に支払われた生命保険金は受取人が取得するのが既に決定されているため、遺産分割協議の対象にはなりません。

よって遺産分割協議書への記載も不要です。

ただし生命保険金は相続税の課税対象なため、非課税範囲を超えると税務署への申告は必要になります。

遺産分割協議書の見本

上記を踏まえた遺産分割協議書は以下のような形式となります。

遺産分割協議書見本

以下のボタンより遺産分割協議書のひな形がダウンロードできます。

まずは無料相談

遺産分割協議書の必要添付書類

遺産分割協議書を各機関に提出するときには、遺産分割協議書原本の提示とあわせて一般的に以下のような書類を要請されます。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべての事項が記載されたもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本(被相続人との関係がわかるもの)
  • 相続人全員の印鑑証明書

財産の種類や提出先によっては上記以外にも書類が必要です。

相続人が一人なら遺産分割協議書は不要(例外あり)

亡くなった方に身寄りが1名しかいなければ、遺産を分ける相手がいないので遺産分割協議書を作成する必要はありません。また他の相続人が相続放棄をして残る相続人が1名となった場合でも同様です。

しかし一人っ子の親が相次いで亡くなった(数次相続)ときには相続人1名であっても遺産分割協議書の作成が必要です。

相続税の非課税範囲だからといって相続手続きを怠っていると、数次相続の際に面倒な事態となりますので、相続の発生時には早急に手続きすることをおすすめします。

遺産分割協議書の注意点

上記を参考にすれば遺産分割協議書の書き方はわかるものの、ひとつ注意しなければいけない事項があります。

それは、遺産分割協議書には法的効力が存在しない点です。

遺産分割協議書は相続手続きの際に必要な書類ではありますが、その手続きを実際に行うか否かは各相続人の自由に任されています。

つまり遺産分割協議でいったん合意した相続人の誰かが、その後相続手続きをせずに財産を処分せず、他の相続人に不利益な状態をもたらすかもしれないのです。

詳細な注意点はこちら

まとめ

今回は遺産分割協議書の書き方について解説しました。

遺産分割協議書は、長い人生の中でもそう書く機会は多くありません。しかし相続とは予期しないときに突然やってくるものです。

いざ自分の番が来たときにあわてないよう、今の内から遺産分割協議書の書き方と、スムーズな相続のために何をすべきかを考えておきましょう。

まずは無料相談

不当利得請求権とは?相続財産を不当に使われた場合の対策を解説

2021-01-28

対立する男女

遺産相続でトラブルになりやすい事例として「1人の相続人による被相続人の財産の使い込み」が挙げられます。

不当に使い込まれた財産を取り戻すことはできないのでしょうか?

今回は財産の不当な使い込みに対する対策について解説します。

不当利得とは

不当利得とは、法律上の売買や贈与などがないにもかかわらず、利益を得るはずではない方が利益を得ることを指します。

あるいは利益を得るはずがない方人が受けた利益そのもののことです。

商品を購入した際にお釣りを多く受け取った場合、そのまま返還せずに受け取ると本来得るはずがない利益を得るため、不当利得にあたります。

相続においても、本来受け取るはずのない財産を受け取ることは不当利得に該当します。

不当利得請求の実施について

不当利得返還請求とは、正当な理由がなく他人に損失を与えて利益を得た場合は、損失を受けた方に利益を返還しなければいけないという規定のことです。

民法703条に不当利得の返還義務が定められています。

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

引用元:e-GOV|民法第703条

要件

不当利得返還請求権を行使するためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。

  • 他人の財産や労務で利益を得ていること
  • 他人に損失を与えたこと
  • 受益と損失の間に因果関係があること
  • 利得に法律上の原因がないこと

取り戻せる金額

不当利得返還請求で取り戻せる金額は、民法で定められた相続人の法定相続分が上限です。

相続人の法定相続分が500万円であれば、実際の不当利得が1,000万円であっても取り戻せるのは500万円が限度になります。

必要な書類・証拠

被相続人の預金口座から勝手に預金が引き出されている場合、被相続人名義の銀行の取引明細を取得する必要があります。

銀行で「取引明細の開示請求」を行うことで、相続人が確認を行うことが可能です。

請求の時効

不当利得返還請求は、いつまでも請求できるわけではありません。通常の債権と同じく10年が時効として定められています。

起算日になるのは権利の発生日です。

遺産分割協議は明確な期限が求められていないため、協議をせずにそのままにしていると時効を迎えて不当利得の返還を請求できない可能性があります。

不当利得の対象になる行為

相続で不当利得になるのは、どのような行為なのでしょうか?

不当利得に該当する代表的な行為を紹介します。

相続財産を使い込んだ

相続財産は、相続が開始されると相続人全員の共有になります。遺産分割協議が終わるまでは、誰かが使ってはいけません。

例えば口座が凍結される前に被相続人の預貯金を勝手に引き出して使い込んでいた場合は、不当利得に該当します。

被相続人のための利用と言われたら?

不当利得であることを追求したからといって、すぐに返還してもらえるとは限りません。

「被相続人に依頼されて、生活費や入院費用として引き出しておいた」と言われる可能性があります。相続人による預金の引き出し行為が被相続人の意思によって行われた場合は贈与にあたるため、不当利得にはなりません。

このケースでは銀行口座から引き出された金額と、実際の生活費や入院費用、介護費用などにかかった金額の比較が必要です。

もし明らかに多額の金額を引き出している場合、余分に受け取っている(横領した)金額が判明します。

預金の引き出し行為が被相続人の意思に基づかない場合、被相続人は預金を引き出した相続人に対して不法行為に基づく損害賠償請求権や不当利得返還請求権を有していたことになります。

相続人は預金を引き出した相続人に対して、自身の相続分にあたる金額の返還を求めることが可能です。

賃料などを無断で受け取った

被相続人が所有する財産に賃貸用の不動産などが含まれる場合、賃料債権が相続に登場します。

相続開始から遺産分割までに生じた賃料債権は遺産とは別個の財産として扱われるため、特定の相続人が賃料債権を独占した場合は不当利得請求権の対象になる可能性があります。

まずは無料相談

実際に弁護士に相談があった事例

ここでは、実際に相談があった事例をご紹介します。

両親が亡くなった後に預金通帳の履歴を調べると、亡くなる数か月前から多額の預金が引き出されていた。両親と同居していた長女に問いただすも、もらったものだとの主張を繰り返していた。 

遺産分割について調停を申立て、調停の中で預金の使途を明らかにするよう求めた。もらったものだとしても「特別受益である」との主張をして一部を不当利得として実質的に返還させる形で遺産分割協議が成立した。

よくある事例はこちら

不当利得の返還義務

不当利得であることが明らかになった場合、利益を得ていた相続人は他の相続人に財産を返還する義務があります。

しかし、不当利得を得た相続人が「不当利得を知っていたか」「不当利得と知らずに財産を得ていたか」によって返還が必要な金額が異なります。

善意の場合

善意とは、事実があったことを知らないことです。不当利得であることを知らずに受け取ったケースを指します。

善意の場合、利益の現存する限度で不当利得を返還するのが民法で定められた決まりです。つまり不当利得の全額ではなく、使った金額を差し引いて残りを返還することになります。

仮に遊びや旅行などで使ってしまったとしても、残った金額以外は返還する必要がありません。

悪意の場合

悪意は、事実があったことを知っていた状態です。不当利得と知ったうえで財産を受け取ったケースを指します。

悪意で受け取った者は、不当利得に利息を付けて返還する必要があります。もし損害があった場合は損害賠償責任も発生するため、不当利得の全額+利息+損害賠償を返還する必要があります。

不当利得返還請求は弁護士に相談がおすすめ

不当利得に関するトラブルに関して当事者間の話し合いで解決できない場合、法律の専門家の助けを借りることができます。

弁護士法人若井綜合法律事務所では、以下のような箇所を強みにしております。

・スピード対応
・親身の対応
・適宜適切な報告
・豊富な経験と実績
・土日もご相談可能

適切な遺言や相続手続きのほか、すでに起こってしまった相続トラブルに関する相談を受け付けています。東京都内だけでなく、関東近郊や全国からのご相談に対応が可能です。

まずは無料相談

遺産の使い込みに対する対策

遺産相続でトラブルになりやすいのは、一部の相続人が被相続人の預金等を引き出して使ってしまうケースです。

そのような事態を防ぐ対策について概要を紹介します。

被相続人の死亡後は速やかに口座を凍結する

口座の凍結とは、被相続人が死亡後に誰かに使われてしまう前に速やかに金融機関に連絡して口座を利用できなくすることです。

ただし、凍結した場合は葬儀費用を被相続人の口座から引き出して使うことができなくなります。

被相続人の財産を使って葬儀費用に充てるにしても相続人が立て替えるにしても、葬儀関連の領収書をまとめるなど「遺産分割の際に誰が見てもわかる状態」にしておく必要があります。

財産を守る制度を利用する

財産を守る代表的な制度としては後見制度・家族信託の2つがあります。

後見制度

信頼できる家族や弁護士などを後見人にすることで財産管理を任せる方法です。

本人の判断能力が不十分になったあとで後見人を選任する成年後見制度、判断能力が十分なうちに当事者間で後見人を決めておく任意後見の2種類があります。

財産を守ることが目的の制度であり、後見人であっても好き勝手に財産を使えるわけではありません。

家族信託

家族間で信託契約を結ぶことで委託者の財産を受託者に管理してもらう方法です。

委託者が遺言や信託契約によって受益者に財産の管理処分の権限を与え、受益者が財産からの収益を得ることができます。

子どもを受託者として財産の管理を任せ、委託者である親が受益者として財産運用から得られる収益から年金のように毎月生活費を受け取ることが可能です。

被相続人の判断能力が低下した後に利用できる後見制度と比べ、判断能力があるうちに本人が希望する人に財産管理を任せることができます。本人が判断能力を失う前に、本人の意向に沿った財産管理ができるのt点がメリットです。

まとめ

今回は、一部の相続人が被相続人の財産を使い込んでしまう不当利息を取り戻すための不当利得返還請求について解説しました。

仮に「被相続人から依頼されて引き出した」と言われても、出金された金額と本来必要だった金額を比較すれば横領された金額が明らかになります。

いざ相続が発生した時に、円満に遺産分割が解決するとは限りません。万が一不当利得が発生した場合に備えて、対策を知っておきましょう。

まずは無料相談

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー