夫や妻の精神病を理由に離婚したい人が知っておくべき3つのこと

「夫(妻)精神病にかかってしまい、長い間看病してきたけど回復の兆しも見えない」
「自分なりに頑張ってきたけどもう限界が近づいているかもしれない」

紆余曲折しながらも夫婦として連れ添ってきたわけですから、パートナーが精神病になり意思の疎通もままならない状況になるのは想像を絶するほどお辛いことでしょう。

しかし、終わりの見えない看護を続けることで、アナタ自身も肉体的精神的に支障をきたし、夫婦共倒れとなることもあります

お辛いとは思いますが、考えに考えた末、限界を感じた場合には「離婚」という選択肢をとらなくてはならないこともあります

そこでこの記事では、離婚問題に強い弁護士が、以下の3点を中心にわかりやすく解説していきます。

  • ①精神病を理由に離婚できるのか
  • ②精神病を理由に離婚請求が認められる判断基準
  • ③精神病以外の要因で離婚請求が認められるケース

読んでも問題解決できない場合には、どうぞお気軽に弁護士までご相談ください。

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①精神病を理由に離婚はできる?

離婚する夫婦の9割以上が、当事者だけ話し合いによる協議離婚を選択します。

話し合いがまとまらない場合は調停委員を交えた離婚調停を行い、調停が成立しない場合には離婚訴訟で離婚を成立させるしかありません。

ただ、離婚訴訟は夫婦という身分関係を強制的に解消させるものですので、それを実現するためには、夫婦の間に法律が定める離婚原因(法定離婚事由)がある必要があります。

(関連記事:法定離婚事由とは|相手が離婚を拒否していても離婚できる5つの条件)

民法770条1項では、以下の5つを法定離婚事由として定めています。

第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

意思の疎通が思うようにいかない強度の精神病に罹患した配偶者ともう一方の健康な配偶者を婚姻関係に拘束し続けることは、健康な配偶者の再婚の自由を奪うことにもなります

また、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と民法752条で定められていますが、協力や扶助をする側の体力や精神力、経済力にも限界があります

そこで民法770条1項4号では、配偶者が「強度の精神病」にかかって「回復の見込みがない」ときに限り、裁判で強制的に離婚を成立させることを認めているのです。

「強度の精神病」「回復の見込みがない」とは

「強度の精神病」とは夫婦の協力扶助義務を果たせない程度の精神障害のことで、「回復の見込みがない」とは不治の病をさします。

一般的に、回復の見込みのない強度の精神病と認められやすい症例や、認められにくい症例は以下となります。

【認められやすい症例】

  • ①躁鬱病
  • ②痴ほう症
  • ③アルツハイマー病
  • ④統合失調症
  • ⑤偏執病

【認められにくい症例】

  • ①ヒステリー
  • ②神経衰弱
  • ③アルコール中毒
  • ④薬物中毒

とはいえ、近年の著しい医学の発達に伴う新しい治療法によりこれまで不治の病にかかったとされた患者が回復し、社会復帰できるようになるケースも増えてきています。

そのため「回復の見込みのない」と判断されるケースが減少傾向にあるのも事実です。

ただしこの判断は、医師の鑑定結果をベースにして、最終的には、夫婦が互いに協力・扶助し合い正常な婚姻生活を営めるか否かといった法律的観点から判断されます

そのため、精神病を抱えた配偶者において、治療を受ければ回復する見込みがあるのに通院しない、処方薬を飲まない、医師の生活改善に関するアドヴァイスに従わないといった事情がある場合には、法律的観点から「回復の見込みがない」という判断に不利に働くでしょう

②精神病を理由に離婚が認められるための判断材料

上でも紹介した、民法770条2項を確認してみると、「2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる。」と規定されています。

つまり、配偶者が回復の見込みのない強度の精神病に罹患したからといって必ずしも裁判で離婚が認められるわけではないのです。

精神病を患ったことについて配偶者に責任はなく、離婚を簡単に認めると生活面や看護面、倫理・人権の面からも問題が生じることから、裁判では、様々な事情を総合的に斟酌して離婚を認めるかどうかの判断が下されます。

例えば、昭和33年7月25日の最高裁判所判例において以下のように判示しています。

民法七七〇条は、あらたに「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき」を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条二項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであつて、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかつた一事をもつて直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。

    また、昭和45年11月24日の最高裁判例(クリックで判例全文が見れます)は上記の判示を踏襲したうえで、「夫は精神病患者である妻の過去の療養費も全額支払い、将来の療養費についても可能な範囲で支払う意思を表明している」ことが「具体的方途」にあたるとし、諸般の事情から離婚請求を認容しています。

    これらの判例から、精神病を理由とした離婚請求が裁判で認められるためには、

    • 離婚後の日常生活や看護に支障をきたさない具体的な方策はあるか
    • これまで介護・生活・金銭面など夫婦としてできる限りの努力をしてきたか

    といった、将来的な具体的方途の有無のほか、過去の経緯も、離婚請求を認めるかどうかの判断材料になります。

    とくに、精神疾患を抱えた者を社会的に見捨てることにならないよう将来的な具体的方途の有無はより重要視されるでしょう

    ③精神病以外の要因で離婚請求が認められることもある

    離婚訴訟において「回復の見込みがない強度の精神病」と認められなかった場合でも他の法定離婚事由があれば離婚請求が通ることがあります

    具体的には、以下のような行為があれば法定離婚事由があると認められやすいでしょう。

    • 不貞行為(不倫)があった
    • 生活費を渡さない、勝手に別居を始めた
    • DVやモラハラをされた
    • ギャンブル等で浪費癖がある
    • 過度な宗教活動がある
    • 異常な性癖がある など

    もし上記の例に当てはまらないような場合でも、法定離婚事由の一つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)」に該当する場合にも離婚が認められます。

    例えば、アルツハイマー病で痴ほうとなった妻に離婚訴訟を起こした事案につき、回復の見込みがない強度の精神病とは認められないが、長期間、妻は夫婦の協力義務が果たせていないことから「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚請求を認めた判例(平成2年9月17日長野地裁判決)もあります。

    (関連記事:婚姻を継続し難い重大な事由として離婚が認められやすい7つの具体例)

    まとめ

    今回は、法定離婚事由の1つである「回復の見込みのない強度の精神病」を理由とした離婚についてご紹介しました。

    かなり厳格な要件が必要とはなりますが、配偶者が回復の見込みのない精神病にかかっている場合には、配偶者が離婚を拒否していたり、話し合いをすることができなかったとしても離婚が認められる可能性があります。

    当法律事務所には、離婚訴訟を起こして欲しいといったご依頼や、逆に、精神病を理由として離婚訴訟を起こされたので成年後見人になって欲しいといったご依頼もあります。

    両者の悩みや苦しみをわかっているからこそできることがあります。お悩みの方はどうぞお気軽に弁護士までご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。

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