【事例】風俗嬢への債権回収の注意点

風俗嬢の注意喚起の画像

 風俗嬢、デリヘル嬢など色恋の末、相手方にお金を貸してしまい回収できない。
 一般的な債権回収に、恋愛感情が加わると通常とは異なり、少し注意が必要になります。特に相手方が風俗嬢の場合、居場所がわからず、連絡も取れないような状況になることも多いため、より慎重に行動するようにしましょう。
 この記事ではその注意点と、既に貸してしまった場合にどのように回収していくかについて弊所の回収事例とともに解説していきます。

目次

債権回収について

まずは、基本的な債権回収の流れについてご説明いたします。

交渉による請求

 通常、債権回収を行う際には、交渉から始めることになります。
 相手方の連絡先、住所などがわかり、相手方が交渉に応じるようであれば交渉により返金を求めていきます。基本的には一括での支払いを求めていきますが、相手方の収入状況などによっては支払えない場合もあるため、分割の支払いスケジュール等を行い、お互いの納得できる内容を探していきます。内容が決まればその時点で合意書を交わすことになります。また、信用できないような相手方であれば、内容を反故にした際に執行できるように公正証書として残すこともございます。

裁判所を通じた請求

 交渉でお互いの折り合いがつかない場合や、そもそも相手方が交渉に応じない、無視をするといった場合には裁判所を通じた訴訟など次の段階に進むことになります。
 ここではいくつかのやり方があり大きく分けると以下のようになります。

通常訴訟

 通常訴訟では、裁判所に証拠を付した訴状を提出して訴え提起を行います。相手方に訴状が送達されるとお互いの言い分を書面で主張し合い、その内容と証拠をみて裁判官が判決を下すこととなります。また途中で折り合いがつけば、和解により早期に終結される場合もございます。
 このやり方が一般的ではあるものの、訴訟には時間や、印紙代などの訴訟費用も掛かってしまうことがデメリットとして挙げられます。

少額訴訟

 少額訴訟では、60万円以下の請求について訴訟提起をすることができます。一回の裁判で判決がでて、訴訟提起の印紙代も通常訴訟より低い金額で提起することが可能になっております。

支払督促

 支払督促は、通常訴訟より安い金額で、書類の送付のみで行われ、証拠の提出も裁判所への出廷の必要もなく、判決と同じ効力が認められる支払督促命令を得ることができます。ただし、相手方から異議の申立てがなされれば、通常訴訟に移行してしまう点に注意が必要となります。

執行

 判決を取ったからと言って、そこで終わりになるわけではありません。判決を取ったとしても支払わない悪質な債務者も多く存在します。そのようなときには、不動産、銀行口座、給料など相手方の財産を差し押さえることが必要となります。
 また、債権回収は相手方に財産がなければどうすることもできず、回収ができないケースも多々あることを頭に入れておかなければなりません。

相手方が風俗嬢であることの注意点

 さて、このような流れで債権回収を行っていくわけですが、相手方が風俗嬢であるということで注意しなければならない点がございます。
・差押財産について
風俗店では給料が手渡しで行われることも多く、給料の差押えが難しい場合がございます。また不動産についても賃貸に住んでいることが多く、通常の場合に比べて執行できる財産が少ない場合が多いので注意が必要です。
・住所不定
風俗嬢の中には、一定のところにとどまらず、住所が不定である場合や、住民票を移さずに別の場所に移ってしまい居住場所が特定できない等の場合がございます。
・色恋
 風俗嬢にお金を貸す際には、店外デートや肉体関係の対価として支払っているのか、それとも別の理由で貸しているのかが曖昧になってしまうことが多々あります。肉体関係の対価や愛人契約に近い状況になっているのであれば、公序良俗に反するとして不法原因給付(民法第708条)に該当しうる場合がございます。その際には返金を求めることができないので注意が必要です。

第708条 不法原因給付

不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

例えば、私的な賭博での債権債務の関係や愛人契約などがこれに該当し、相手に渡した金銭が不法な給付となるので、返還請求が制限されることとなるのです。

不法原因給付にならないために

それでは、不法原因給付にならないためには、どのような点に注意するべきでしょうか。

証拠について

 相手方に渡した金銭が不法原因給付にあたらない貸金であるということをしっかりと証拠に残すことが、債権回収の重要ポイントとなります。借用書を相手方と交わせるような場合であれば、その目的(病院代として金○○万円貸し付けたなど)を明記することをお勧めいたします。
 また、借用書を相手方が書いてくれない場合であっても、LINEやメールの文章が証拠になる場合もございます。今までのやり取りなどを見返してみてください。
「体調不良で働けないので生活費を貸してほしいんです」
「30万であれば貸せます」
「ありがとうございます!お願いします」
このような履歴があって、そのやりとりの近日中に相手方に振込などをしていれば、貸金として認められる可能性も高くなります。

必要な情報

 風俗嬢と連絡先を交際する際には、今はほとんどLINEでの交換になるかと思います。しかしLINEの情報だけでは現在弁護士では相手方の住所、本名など他の情報を追うことができないので、お金を貸すことになった際には、身分証の確認、携帯電話の番号など最低限相手方の住所を特定できるものを控えるようにしてください。

事例

弊所で取り扱った事例について、どのように回収に至ったかについてご説明します。

 相談者のAさんはソープランドで知り合った相手方とLINEを交換しました。月に何度か相手方と会い性行為をし、そのたびに金銭の支払いを行っておりました。そのうち相手方から家賃の支払いが滞っていると言われ80万円を貸し付け、またその数か月後に再度、借金があると言われ、2か月で400万を相手方に貸し付けてしまいました。その後しばらくは相手方と良好な関係を築いておりましたが、関係が悪化し相手方に返金を求めると、連絡を遮断され相手方との連絡が一切取れなくなってしまいました。

 困ったAさんは、弊所に相談し、弊所が回収に動くことになりました。
 幸いAさんは借金の返済費用として400万を渡す際に、メモ帳を使用し、家賃の分を含めた借用書をつくり、相手方に署名を求めております。また、相手方の住所も控えておりました。
 そこで弊所では、相手方の住民票の調査など必要な情報を取得し、相手方に内容証明を送付いたしました。しかし回答の期限を設けた書面だったのですが相手方からの連絡は一向に来ませんでした。その後相手方に何度か連絡を試みると、相手方から弁護士を付けたと連絡がありました。改めて、相手方の弁護士と交渉を進めるも、相手方は資力もなく支払えるのはせいぜい数十万と主張をしてきます。到底Aさんは納得できず訴訟に移行することとなりました。訴訟では、相手方は金銭の受領自体は認めておりましたが、不法原因給付である旨主張してきました。こちらにはLINEでのやり取りや、借用書などしっかりした証拠があったため有利に進めることができ月々の分割ではありますが、貸金の大半の回収に成功することができました。

ポイント!
前述したポイントの通り、今回は証拠もあり、相手方が逃げず弁護士を立てて争ってきたことで、回収に至ることができました。裁判ではどうしても証拠の有無が重要ポイントとなるため金銭のやり取りなどをする際にはしっかりした証拠を残すようにしましょう

証拠が乏しい場合

 ここまでの証拠を揃えることができない方もいらっしゃるかと思います。ただ、それで全てを悲観しあきらめる必要はございません。少ない証拠でも回収の可能性はございます。全額には届かないものの一部は認められると言った判決もありますので、このような状況にある方は、少ない証拠だとしてもまずは弁護士に相談することをお勧めします。

最後に

 ここまでお読みいただきありがとうございます。このような債権回収だけではなく、詐欺や恐喝など不当に金銭を搾取され泣き寝入りになってしまう事例も多く目にしております。どうしても回収が困難な場合もございますが、個々の事例によって様々な解決方法がございますので、すぐにあきらめず一度弊所にご相談ください。

 弊所では回収事例で解説したような債権回収など、多数のご相談、ご依頼をいただいております。お困りのことがございましたら、あきらめず一度弊所までご相談いただければ幸いです。

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