返しきれないほどの借金を抱えてしまった場合に、その問題を根本的に解決する法的な手段が「債務整理」といわれる方法です。
どれだけ多額の借金(債務)を抱えていようとも、専門家に依頼し法律的にきちんと債務整理すれば、借金問題はかならず解決できるものです。
今回は、この借金の解決法である債務整理と、その中の1つの方法である自己破産について解説させていただきます。
- 「債務整理とは何?」
- 「債務整理と自己破産の違いとは?」
- 「自己破産はどんな場合に利用できるの?」
上記のような疑問にお答えしますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
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1.自己破産と債務整理の違いとは?
「債務整理(さいむせいり)」とは、返済しきれないほど多額な債務(借金)を抱えてしまった場合に、その借金問題を法律的に解決する方法のことを言います。
多額な借金を抱えてしまっている場合でも、適切な債務整理をすれば借金問題は解決することができるのです。
一般的にはひとくちに「債務整理」といいますが、債務整理という言葉は、借金問題を解決する方法の総称として使われる言葉なのです。
細かく見た場合、債務整理には、つぎのように4つの方法があります。
債務整理の4つの方法
債務整理には、つぎのように主に4つの方法があります。
これらの各方法には、それぞれ長所・短所があり、実際ご自分の借金問題の解決法としてどの方法が適しているかは債務や所有している資産内容などによってケースバイケースです。
- (1)任意整理
- (2)特定調停
- (3)個人再生
- (4)自己破産
それぞれについて、簡単にご紹介します。
(1)任意整理
任意整理とは、4つの債務整理方法の中で唯一、裁判所を利用せずに行われる借金問題の解決法です。
任意整理では裁判外において、債権者と債務者が借金の支払いに関する諸条件について話し合いをします。
交渉次第では借金元本の割引や将来利息のカット、分割回数を増加することで毎回の返済額を減額させるなど、返済条件を有利に変更することができることもあります。
しかし交渉に応じるかどうか、交渉の内容をどうするかなどに関しては当事者の交渉次第であるため、任意整理をしても大きな効果が期待できないケースも多々存在します。
このため、大幅な借金のカットを期待するためには、個人再生や自己破産など、より大きな効果の期待できる債務整理方法を選択する必要があります。
ただし、任意交渉では所有している財産が処分されることがないなど、任意整理ならではのメリットも存在します。
このため、どうしても手放したくない財産がある場合などには、任意整理を選択する意義があるといえるでしょう。
(2)特定調停
特定調停とは、裁判所で行われる調停を利用して借金問題を解決する方法です。
調停では、調停委員などが債権者と債務者の仲介をして、借金の支払いについて当事者に合意が成立するように働きかけてくれます。
ただしこの方法は、あまり強力な効果が期待できないことが多いため、実務ではほとんど利用されていないのが現状です。
参考「特定調停のメリットデメリット|債務整理や任意整理との違いとは?」
(3)個人再生
地方裁判所で行われる比較的強力な借金解決法として、「個人再生(こじんさいせい)」という方法があります。
この方法は、借金総額の約10分の1から5分の1程度を返済することを条件として、その他の借金について返済の免除を受けるという手続きです。
たとえば500万円の借金を抱えている人が個人再生した場合、合計100万円を支払うことで(3年間の分割)、残りの400万円の支払いを免除してもらえる可能性があります。
自己破産とは違い、免責不許可事由や資格制限などの発生などがないため利用しやすい手続きといえます。
また、ローンの残っているマイホームを所有している場合には、自宅を維持しながら借金問題の解決ができるという点も特筆すべきメリットです。
自己破産した場合には、マイホームなど一定以上高額な財産は、基本的にすべて破産手続きによって処分されることになります。
自宅を手放さずに借金問題を解決したい場合には、住宅ローン特則を利用した個人再生を検討するとよいでしょう。
(4)自己破産
4つある債務整理方法の中で、もっともメジャーなものが自己破産でしょう。
いうまでもないことですが、自己破産は裁判所で行う手続きであり、破産が認められた場合には基本的にはすべての借金の支払いが免除されることになります(ただし、「非免責債権」は免除されません)。
自己破産は手続きが成功した場合には、上記のように基本的にすべての債務が免除されるため非常に強力な債務整理方法です。
しかし自己破産することが裁判所によって認められるためには、各種の条件をクリアする必要があります。
また、自己破産する以上、つぎのような各種制限などデメリットを受けることになります。
- 自宅など高額な財産は基本的にすべて手放す必要がある
- 資格制限などによって職業に影響が及ぶ可能性がある
- 破産の処理方法によっては日常生活の自由に制限が出ることがある
これらの制限を受けたくない場合には、自己破産以外の方法を検討する必要があります。
2.自己破産は債務整理の1つの方法
世間ではよく、自己破産と債務整理を別々のもののように考えている方がいらっしゃいます。
しかし、そのイメージは正確ではありません。
実は自己破産とは、4つある債務整理方法のうちの1つなのです。
この2つを混同しないように注意していただきたいと思います。
3.自己破産とは?
上記のように債務整理には4つの方法がありますが、自己破産はその中でもっとも強力な借金問題の解決方法だといえるでしょう。
逆に言えば、もっとも強力な方法である分、財産の処分が強制されたり各種の制限を受ける可能性があります。
このことを考えると、自己破産は借金問題の解決法としての最終手段と考えたほうがよいと思われます。
それでは次に、自己破産の基本的な事項について確認していくことにしましょう。
自己破産すれば借金が帳消しになる
みなさんご存じのとおり、自己破産すると基本的にすべての借金は帳消しになります。
つまり、法律上借金の返済義務が免除され、それ以降いっさい返済する必要がなくなるのです。
この点は自己破産の最大のメリットといえるでしょう。
たとえば任意整理や特定調停の場合には、債権者である消費者金融会社などと交渉し、基本的に毎月一定額の返済を継続していく必要があります。
個人再生の場合には、借金の大半が免除(最大80%がカット)されますが、残りの借金に関しては基本的に3年間の分割で支払う必要があります。
借金全ての免除が認められるのは4つの債務整理の方法中、自己破産だけです。
自己破産はどうして認められるのか?
自己破産が認められた場合、破産者の借金は基本的にすべて消滅します。
これを逆に考えると、破産者にお金を貸した人(債権者)の権利が消滅するということになります。
このため、債権者によっては自分の権利(債権)の消滅を認めないと考えることもあるでしょう。
しかし、自己破産するかどうかは個人の自由な意思に任されています。
つまり返済不能なほどの債務を抱えてしまった場合、本人が自己破産することを決定すれば、自己破産手続きをするかどうかは本人の自由なのです。
自己破産することを決定し、破産が認められる条件を備えていれば裁判所によって法律上、自己破産が認められることになります。
仮に債権者が自己破産を認めないと主張していたとしても、法律上の規定に従って債務の免除の効果が確定した場合には債権者の権利は消滅し、それ以降権利の主張が認められなくなるのです。
自己破産で人生の再出発を認める
会社などの法人が債務の支払いが不能となり、債務超過状態となった場合には、その法人を解散・消滅させれば問題は解決します。
しかし、人間が支払い不能状態になった場合には、問題が根本から異なります。
返済不能な債務を抱えてしまったとしても、人間はその後も生きていかなければならないからです。
理由はいろいろあるでしょうが、返済しきれないほどの借金を抱えてしまった人でも人生の再出発をするためには、借金全てを帳消しにしてあげる必要性があるのです。
多額の借金を抱えたままでは、生活していくことが非常に困難になります。
多額の借金を作るなど、たとえ一度人生に失敗したとしても、その後の再出発を認めることは人道的にも社会政策的にも必要なことです。
自己破産とは、多額の借金を抱え人生に行き詰まってしまった人を救済する最後の手段なのです。
自己破産後の取り立ては違法!
裁判所によって自己破産が認められた場合(正確には「免責」が許可され確定した場合)には、法律上借金の支払い義務が消滅します。
このため、いくら債権者が「破産を認めない。貸した金を返せ!」といって来たとしても、その主張は認められないことになります。
破産が認められたにもかかわらず、なおも債権者が借金の支払いを求めてきた場合には、その債権者の行為は違法とされることになるのです。
なお、自己破産など債務整理を弁護士や司法書士など債務整理の専門家に依頼した場合、債権者からの取り立ては即日にでもストップします。
これは債務整理を専門家に依頼した以上、債務者本人への取り立てや連絡が禁止されることになっているからです。
4.自己破産を利用するために必要な条件
すでにご紹介させていただいたように、自己破産はそれまでの借金を帳消しにして、人生の再出発を後押ししてくれる非常にありがたい制度です。
しかし、自己破産が認められるためには、法律で定められた各種条件を備えていなければいけません。
最初の条件|「支払不能」状態であること
自己破産を利用するために、まず備えていなければならない条件は「支払不能」の状態に陥っていることです。
「支払不能」状態とは、借金を返済する能力がなくなり、返済時期になっても一般的・継続的に借金の返済をすることができなくなっている客観的状態のことをいうとされています。
このため、単に自分の気持ちとして「借金の返済が厳しい」などと思っている状態では、破産の申立ては認められないということになります。
自己破産の申立て自体は誰にでもできますが、その人が実際に「支払不能」状態であるかどうかについては、裁判所が客観的に判断することになっているのです。
このため、たとえ自己破産を申立てたとしても裁判所によって支払い不能状態ではないと判断された場合には破産手続きは、そこで終了することになります。
多額の借金を背負っていたとしても、裁判所によって支払い不能状態であると判断してもらえなければ免責許可(借金の帳消し)はもらえないのです。
自己破産を裁判所に認めてもらうためには、自分の生活が苦しく、到底借金の返済ができる状態ではないということを客観的証拠に基づいて主張する必要があるのです。
自己破産の可否は客観的に判断される
自己破産する際には、破産の申立書などのほかに、たくさんの書類の提出が必要となります。
裁判所はこれらの書類を基に、自己破産の申立人が支払い不能状態なのか、免責を認めるべきなのかなどを客観的に判断します。
自己破産申立人の気持ちとしては、「もう借金を支払いたくない」、「借金の支払いが難しい」などと思っていたとしても、それだけでは自己破産の手続きは利用できるとは限らないのです。
5.自己破産することは法律で認められた権利
自己破産に対する世間のイメージは、決して明るいものではありません。
自己破産することは、借りたお金を返さずに踏み倒す卑劣な行為と考える風潮さえあります。
しかし、人間は誰でも失敗を犯すもの。
一度、金銭面で失敗してしまったら、もう人生の再出発が許されないのでは困ります。
自己破産とは、借金で一度失敗してしまった人に対して、人生をもう一度やり直すチャンスを与えてくれる制度ということもできるでしょう。
自己破産は、法律によって認められている正当な制度です。
いわば、自己破産して人生の再出発をすることは、個人に認められた正当な権利と考えることができます。
もし借金の返済に行き詰まっている場合には、あれこれ悩んでばかりいずに、自己破産など債務整理を前向きに検討してみてはいかがでしょうか?
借金を抱えて生活する日々は、何かと気持ちが落ち込みがちなものです。
今日ほんの少しの勇気を出して専門家に相談すれば、すぐにでも悩みから解放され晴れやかに毎日を送れるようになるかもしれません。
6.最適な債務整理のためには専門家の相談が不可欠!
借金問題の解決法である債務整理には4つの方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
たとえば同じ300万円の借金を抱えていたとしても、人が違えば最適な債務整理方法が代わってくる可能性もあります。
同じ300万円の借金を抱えている人でも、自己破産が向いている人もいれば、場合によっては任意整理や個人再生などが向いている人もいるのです。
しかし、具体的に自分の借金問題の解決方法として、どの債務整理法が最適化を知るのは決して容易なことではありません。
最適な債務整理方法を知るためには、高度な法律的知識や債務整理のノウハウなど専門的知識が不可欠であり、素人がひとりで判断するのは危険なのです。
ご自分にとって最適な債務整理方法を知るためには、弁護士や司法書士など債務整理の専門家への相談が不可欠です。
自分の判断では自己破産が適していると思っていても、実際には個人再生などその他の方法のほうが適しているというケースはたくさんあるからです。
場合によっては過払い金が発生していて、自己破産する必要がなくなったというケースもたくさん存在します。
最初は敷居が高く感じるかもしれませんが、そんなことを感じる必要はありません。
世間には借金問題で悩んでいる方は、思っている以上にたくさんいるからです。
最初に、ほんの少しの勇気を出して専門家に相談してみてください。
きっと、その後の人生の展望が開けるはずです。
7.まとめ
今回は、債務整理と自己破産の違いや、自己破産を利用するための条件などをテーマに解説させていただきました。
借金問題の解決法である債務整理には4つの方法がありますが、その中でもっとも強力に問題を解決することのできる方法が自己破産です。
しかし自己破産は強力である反面、利用のための条件や制限がいくつか定められているため、誰でも利用できるという手続きではありません。
専門家に相談せず、個人的な判断だけで「自分の借金問題の解決法は自己破産がベスト」と考えている方は世の中にたくさんいらっしゃいます。
しかし諸事情を総合的に判断した場合、実際には自己破産ではなく、そのほかの債務整理方法のほうが適しているケースもたくさんあるのです。
場合によっては過払い金が戻ってくるため、自己破産する必要がなくなるという極端な事例もいくつも存在します。
借金問題は、ひとりでいくら悩んでいても解決しません。
もし借金問題でお悩みの場合には、お気軽に当事務所にご相談ください。
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