友人などにお金を貸していたところ、その相手が自己破産したという通知が裁判所から送られて来た……。
このような場合、少しでも貸金を取り戻したいのであれば、破産債権届出書を裁判所に提出する必要があります。
破産手続きに参加することで、多少なりとも貸したお金を取り戻せる可能性があるからです。
今回は、「破産債権届出書」の意義や、破産手続きに参加するために必要な知識などについて解説させていただきます。
なお、当記事は重要ポイントを赤ペンで強調してあります。
強調部分だけに目を通していただければ1~2分で一通り理解可能ですので、ぜひ最後までお読みください。
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なぜ破産債権届出書が必要なのか?
ある人にお金を貸している場合、貸した人を「債権者」、借りた人を「債務者」といいます。
世の中には、債務者が多額の借金を抱え返済不能状態となってしまったため、自己破産するケースがたくさん存在します。
債務者に自己破産されてしまう以上、債権者としては貸金の回収が難しくなるのは事実です。
しかし、まったくお金が戻ってこないわけではありません。
債務者の破産手続きに債権者として参加することで、貸したお金の一部を取り戻せる可能性があるのです。
債務者の破産手続きに参加するために必要となるのが、「破産債権届出書(はさんさいけんとどけでしょ)」なのです。
債務者に対して債権を持っていたとしても、債務者の破産手続きに参加しなかった場合には、貸したお金を一銭も取り戻すことができなくなってしまうので注意が必要です。
債権届出に必要な証拠書類
破産債権届出書には、破産者に対して債権を持っていることを証明するために、債権の種類ごとに以下のような証拠書類を添付する必要があります。
- (1)貸付金がある場合
- (2)売掛金がある場合
- (3)請負代金がある場合
- (4)手形債権がある場合
- (5)その他の請求権がある場合
(1)貸付金がある場合
破産者に対して貸付金を持つパターンは、債権者が個人の場合にはもっとも多いケースと言えるでしょう。
このパターンでは、債権の存在を証明するため以下のような書類が必要となります。
①借用書・金銭消費貸借契約書
相手方にお金を貸した際に作成した借用書や金銭消費貸借契約書を提出します。
②預金通帳の写し・振込時のレシート
実際に金銭の授受があったことを証明するため、貸付・借り入れを証明する預貯金通帳の写しや、振り込みを行った際のレシートなどを提出します。
なお、届出のなされた債権については、破産管財人が必要な調査をすることになっています。提出された資料だけでは不十分であると判断された場合には、追加資料の提出が必要となることもありますので、証拠資料はなるべく多く集めておくとよいでしょう。
(2)売掛金がある場合
債務者に対して売掛金債権がある場合、売買契約書・請求書・納品書などを提出します。
(3)請負代金がある場合
債務者からの依頼で工事を請け負っている場合、債権額を証明する書類として以下のようなものが考えられます。
①工事が完了している場合
工事が完了している場合には契約上の請負代金全額の請求が可能ですので、その額を証明するため請負契約書や完了確認書などを提出します。
②工事中の場合
工事がまだ完成せず工事中である場合には、工事の進行具合に応じた請負代金の請求しか認められません。
このため現時点における工事の進捗状況を証明するための資料として、進捗確認票や現場写真などを提出することになります。
(4)手形債権がある場合
破産申立人に対して手形債権を持っている場合には、手形(両面のコピー)の提出が必要となります。
(5)その他の請求権がある場合
破産申立人に対して損害賠償請求権を持っている場合、少し複雑な問題が発生します。
損害賠償請求権は、その性質によって非免責債権とされるものと、破産手続きによって免責(支払い義務の免除)の対象とされるものに大別することができます。
仮に破産申立人に対する損害賠償請求権が非免責債権である場合でも、債権届自体は必要です。
その場合には、各種査定書など損害額を証明する書類を提出することになります。
届出をした損害賠償請求権の存否や損害額を破産管財人が認めない場合、破産管財人を相手として訴訟を行うことになるでしょう。
なお、破産の処理方法が同時廃止事件となる場合には、破産手続き終了後においても非免責債権とされる損害賠償請求権は行使することが可能です。
債権調査の流れ
債権の届出をしたからといって、債権者の主張どおりの債権額が裁判所で認められるとは限りません。
破産手続きによって配当を受けるまでには、以下のような流れで手続きが進んでいくことになります。
- 債権の調査
- 債権額の確定
- 配当
それぞれの手続きについて、簡単に見ておくことにしましょう。
(1)債権の調査
自己破産の申立ては、弁護士に依頼して申立代理人となってもらい手続きを進めていくことが一般的です。
依頼を受けた弁護士は自己破産申立人の資産や負債状況を調査し、破産申立の必要書類である「債権者一覧表」を作成し裁判所に提出します。
裁判所は、この書類に基づき各債権者に対して破産債権届出書などを送付し、破産手続きに参加するよう通知を送ることになっています。
破産手続きへの参加を希望する債権者は、裁判所が定める一定期間内(「債権届出期間」)に破産債権届出書に証拠書類などを添付して債権届を行います。
これら書類の提出を受けた場合、破産管財人は届出のあった債権が本当に存在するのかどうかについて、裁判所が定める調査期間内に調査することになります。
そして破産管財人は調査の結果に基づいて、届け出のあった債権を認めるのか認めないのか、認める場合にはその破産債権の額など一定事項を明記した「認否書」を作成します(破産法117条)。
(2)債権額の確定
調査の結果、破産管財人が異議を述べなかった債権については債権調査期日をもって破産債権として確定することになります(破産法124条1項)。
確定した破産債権は、裁判所書記官によって「破産債権者表」に記載されることとなり、破産債権者全員に対して確定判決と同一の効力を持つことになります(同条2項・3項)。
これに対して破産管財人によって認められなかった債権に関しては、破産法の規定に基づき査定が行われ、最終的に債権の存否および額が決定されることになります(同125条~131条)。
(3)配当
破産財団の換価終了後、まず財団債権(ほかの債権に優先して配当を受けることのできる種類の債権)の弁済が行われます。
その弁済後、なお弁済原資が残っている場合には、破産債権の届出をした債権者に対して配当が行われることになります。
配当においては、各債権者の有する債権額に応じて弁済(「按分弁済」)が行われます。
実際に行われる自己破産のケースにおいては、破産財団の経済的価値が乏しく、最終的にまったく配当を受けられない事例も多数見受けられます。
このため債権者の中には面倒な破産手続きへの参加を嫌い、破産債権の届出を行わないケースも存在します。
まとめ
今回は、「破産債権届出書」に関する知識について解説いたしました。
ある人にお金を貸したにもかかわらず、その人が破産してしまった場合、何もしないと一銭もお金が戻ってこないことになってしまいます。
破産者から少しでもお金を取り戻したいと思う場合には、破産債権届出書や証拠書類を裁判所に提出し、破産手続きに参加する必要があります。
もしそのような状況になった場合には、今回ご紹介した知識を活用して手続きを進めていただければ幸いです。
お金を貸していたにもかかわらず、その相手が自己破産したために対応に困っているという場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
当事務所では、全国どちらからのご相談・ご依頼でも一日24時間承っております。
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