相続放棄した兄弟へのお礼は必要?相場や渡し方・注意点を解説

相続放棄をしてくれた兄弟へのお礼は、法律上の義務ではありません。ただし、実際の相続手続きでは、5万円〜30万円程度の謝礼を渡すケースが多く見られます

兄弟に相続放棄をお願いしたいが、お礼は必要なのだろうか」「謝礼金の相場はいくらくらいが妥当なのか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

この記事では、相続問題に精通した弁護士が、兄弟への相続放棄のお礼について詳しく解説します。

  • 相続放棄をしてくれた兄弟へのお礼の相場
  • 謝礼金で贈与税がかからないようにする方法
  • お礼を渡す手順(手渡し・振込・お礼状)
  • 被相続人の財産から謝礼を支払うリスクなどの注意点

この記事をお読みいただければ、兄弟への適切なお礼の金額や渡し方がわかり、円滑な相続手続きを進めることができます。

なお、相続放棄の手続きについて早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご検討ください

相続放棄してくれた兄弟にお礼は必要?

相続放棄をしてくれた兄弟姉妹に対してお礼を支払う義務はありません

ただし、実際の相続手続きにおいては、お礼を渡すケースも少なくないのが実情です。その主な理由としては、以下の点が挙げられます。

  • 相続放棄の手続きに協力してくれたことに対する感謝の気持ちを示し、今後の兄弟姉妹間の良好な関係を継続するため
  • お礼を渡しておくことで、相続放棄の意思が確固たるものであることを確認し、後々の「やっぱり納得いかない」といって覆されるリスクを回避するため
  • 相続放棄の必要書類の収集や作成など、相応の手間と負担に対する手間賃として

これらの理由から、特に兄弟間の関係が良好であっても、円滑な相続手続き完了と後のトラブルを防止するために、お礼を渡すことは非常に有効です。

相続放棄をしてくれた兄弟へのお礼の相場

相続放棄をしてくれた兄弟姉妹に対するお礼(ハンコ代)の金額については、具体的な基準があるわけではないため、相続人同士の関係性や相続財産の金額などケースバイケースで柔軟に決める必要があります。

一般的に多く見られる相場は、5万円から30万円程度の「心付け」として渡すケースです。

これは、手続きの手間賃や協力への感謝の気持ちを示す金額として妥当とされています。遺産の額が大きい場合や、より深く感謝の意を示したい場合には、法定相続分の一定割合を目安に謝礼を支払うという例も見られます。

ただし、あまりに高額なお礼(年間の合計額が110万円を超える場合)は、受け取った兄弟姉妹に贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。

また、現金を渡すだけでなく、現金では受け取りにくいという兄弟のために、感謝の気持ちを込めた品物(ギフト)を贈るという方法も有効です。

実用的なものや嗜好品など、相手の家族構成や好みに合わせた品物を選ぶことで、より丁寧な印象を与えることができます。

相続放棄のお礼(謝礼金)で贈与税がかからないようにするには?

相続放棄によって、その兄弟は相続権を失い相続人ではなくなるため、お礼の支払いは必然的に、お礼を渡す相続人個人の固有財産から行うことになります。

そして、個人間の金銭のやり取りは、税法上「贈与」と見なされるため、贈与税の課税対象となります。

贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、謝礼金に贈与税がかからないようにするためには、1月1日から12月31日までの1年間で兄弟に渡すお礼の合計金額を110万円以下に抑える必要があります

もし、110万円を超える金額を渡したい場合は、相続放棄ではなく「代償分割」という方法を選択することで贈与税の課税を避けることが可能です。代償分割とは、特定の相続人が不動産などの遺産を多く取得する代わりに、他の相続人に対して金銭(代償金)を支払う遺産分割方法です。

この代償金は相続税の対象となり、贈与税はかかりません。相続税の基礎控除額は、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」となります。

ただし、代償分割を利用する場合、兄弟には相続放棄をしてもらうのではなく、相続人として遺産分割協議に参加してもらう必要があります。相続放棄をした者は遺産分割協議の当事者になれないためです。

参考までに、代償分割を行う場合の「遺産分割協議書(代償分割)のひな形」をご用意しましたので、ダウンロードしてご活用ください。

相続放棄をしてくれた兄弟にお礼をする手順

相続放棄をしてくれた兄弟にお礼をする際は、以下の手順で進めます。

  1. 兄弟に相続放棄してもらう
  2. お礼(謝礼金)を渡す
  3. お礼状を送る

①兄弟に相続放棄してもらう

まず、兄弟姉妹に対し、被相続人の死亡を伝え、相続放棄をしてほしい事情を誠実に説明してお願いしましょう。

相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ「相続放棄の申述」を行わなければなりません。この期限が非常に重要であるため、兄弟に手続きの重要性を理解してもらい、迅速に対応してもらうよう働きかけましょう。

相続放棄するには戸籍謄本などの提出書類を揃える必要があります。兄弟姉妹が多忙であるなどの場合は、弁護士や司法書士などの専門家に手続き代行を依頼することも有効な選択肢です。

相続放棄が無事に家庭裁判所に受理され、「相続放棄申述受理通知書」または「証明書」を受け取ったことを確認してから、次のステップに進みましょう

②お礼(謝礼金)を渡す

兄弟が正式に相続放棄を完了してくれたら、感謝の気持ちを込めてお礼(謝礼金)を渡します。

謝礼金を渡す方法は、手渡しと振込のどちらでも可能です。

まず、手渡しの場合は、直接会って感謝の気持ちを伝えることができ、より丁寧な印象を与えられます。近くに住んでいる場合や、直接顔を見てお礼を言いたい場合に適しています。

これに対して、遠方に住んでいる兄弟姉妹に対しては振込が便利です。振込は銀行の取引履歴が記録として残るため、後で「いくら渡したか」といった金額のトラブルを防止できます

さらに、税務上の確認が必要になった際、支払いの証拠として明確に残るため、記録を重視する場合は振込がおすすめです。

いずれの方法を選ぶにせよ、謝礼金は相続財産からではなく、渡す相続人個人の財産から支払う必要があります

③お礼状を送る

ご自身の相続手続きがすべて完了した時点で、改めて相続放棄に協力してくれた兄弟へお礼状(手紙)を送付しましょう。手渡しでも郵送でも構いません。

「お金を払ったら終わり」という印象を与えると、相手方やその親族に悪い印象を与える可能性があります。兄弟姉妹間であっても、事後的にお礼状を送ることで、感謝の気持ちを「形に残す」ことができ、将来的なトラブルを予防することが期待できます

お礼状の内容に特別な決まりはありません。以下の「お礼状の文例」を参考に、相続手続きがすべて完了したことの報告と、協力してくれたことへの心からの感謝を、誠実な言葉で伝えましょう。

お礼状の文例

拝啓
〇〇様
この度は、亡き(被相続人名)の件で大変お世話になりました。
おかげさまで、相続に関するすべてのお手続きが滞りなく完了いたしましたことを、謹んでご報告させていただきます。
〇〇様には、ご多忙の中、相続放棄のお手続きにご協力いただき、心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。
敬具

相続放棄をしてくれた兄弟にお礼をする際の注意点

相続放棄をしてくれた兄弟にお礼をする際は、以下の点に注意が必要です。

  • ①被相続人の財産から謝礼を支払ってはいけない
  • ②複数の兄弟には謝礼金を平等に

①被相続人の財産から謝礼を支払ってはいけない

相続放棄を依頼した側の相続人が、被相続人(亡くなった方)の預貯金などの財産から謝礼金を支払う行為は絶対に避けてください

被相続人の財産を勝手に使用・処分すると、民法上の「法定単純承認」をしたとみなされるリスクがあります。

単純承認とは、被相続人の財産だけでなく借金などの債務も含めた一切の権利義務を無条件で引き継ぐことです。単純承認が認められると、その後、相続放棄をすることができなくなります。後になって多額の借金などのマイナス財産が判明しても、単純承認を撤回して相続放棄で対処することはできなくなります。

そのため、謝礼金は、必ず謝礼を渡す相続人自身の固有財産(ポケットマネー)から支払う必要があります。ご自身の相続手続きが完了し、被相続人の財産が正式にご自身の名義に移った後であれば、その財産から支払っても問題ありません。

②複数の兄弟には謝礼金を平等に

相続放棄に協力してくれた兄弟が複数いる場合、原則として謝礼金は平等に配分するようにしましょう

「兄弟だから大丈夫」と安易に考え、特定の兄弟にだけ多く渡したり、差をつけたりすると、他の兄弟に強い不公平感を生み出します。

この不公平感が、親族間の関係を悪化させ、後のトラブルの火種となる可能性は否定できません。

ただし、特別な負担があった兄弟には、その事情を考慮した配慮が必要です。

例えば、遠方から手続きのために何度も足を運び、多額の交通費や宿泊費を負担した兄弟、あるいは平日に仕事を休んで休業損害が生じた兄弟などには、その実費や負担に応じて謝礼を上乗せするのが妥当です。

兄弟との相続でトラブルになっている方へ

この記事では、相続放棄をしてくれた兄弟へのお礼の必要性や相場、贈与税がかからないようにする方法、お礼を渡す手順と注意点について解説しました。

相続放棄のお礼をめぐっては、兄弟間で金額や渡し方について意見が対立したり、すでに「納得がいかない」と言われてトラブルに発展しているケースも少なくありません。また、被相続人の財産から謝礼を支払ってしまい、単純承認とみなされるリスクを抱えている方もいらっしゃいます。

弁護士に早期に依頼することで、法的に問題のない謝礼の支払い方法のアドバイスを受けられるほか、兄弟間の交渉を代理してもらうことで感情的な対立を避け、円満な解決を図ることが可能になります。また、代償分割を利用した遺産分割協議書の作成など、贈与税対策を含めた適切な手続きのサポートも受けられます。

当事務所では、相続問題に精通した弁護士が、ご依頼者様の状況に応じた最善の解決策をご提案いたします。全国どこからでも無料相談を受け付けておりますので、兄弟との相続トラブルでお困りの方はお気軽にお問い合わせください