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【事例】執行猶予期間中に犯罪行為をした女性の配偶者からのご相談

相談者(30代・男性)

執行猶予期間中に建造物侵入をした女性の旦那様から相談を受けました
具体的な相談内容は以下のとおりです。

■相談前

私の妻は、度重なる万引き行為により執行猶予中でした。具体的に言うと「懲役8カ月・執行猶予2年」です。

しかし、妻は万引きをしたことを十分反省していました。
夫としては「もう少し明るい表情で前向きに生活しても良い」と感じるくらいでした。

判決が出てから最初のうちは「夫(私です)がついていないときには買い物をしない」というルールを自分の中に設けていたようです。
ですが、「私が会社に行っている間に自分が何をするか分からない」ということで、私の勤務時間に合わせてアルバイトをしたり、習い事をしたりするようになりました。

妻の万引きは複数回に及ぶとても悪質なものです。
ですから、本人も「私は万引き依存症である」と認めた上で生活をしています。
むしろ、依存症であるという事を頑なに否定するほうが日々を過ごしにくくなると感じていますので。

ただ、先ほども言いましたが妻にはもう少しポジティブな感情を持ってほしいと思っていました。いつも表情が暗いのです。

私自身、思い切って妻とそのことを相談した事もあるのですが、
「そういう気持ちもあるけどね。明るくなろうとしてもなれないし、とりあえず執行猶予が終わるまでは、このままやり過ごすしかないと思う。大丈夫。一生続くわけじゃないから」
と言われました。
2年ある執行猶予期間のうち、約半年を消化した時期のことでした。

私としても
「これはもうどうしようもないのだろう。
妻が少しでも生活しやすくなるようにサポートするしかない」
と考えるようになりました。

ですが、そんな妻が再び罪を犯してしまいました。
執行猶予期間を約1年消化したタイミングでの事でした。

最初に私の職場に連絡がきたときは
「まさかまた万引きか」と感じましたが、そうではありませんでした。
他人の家に忍び込んで、ブランドバッグを盗んだという事でした。
(数々のブランド品がある裕福なお宅ですが、盗んだのはバッグ1個です)

本来であれば、妻はアルバイトに行っているはずの時間帯でしたが、
どうやら無断欠勤をしたようです。

妻が侵入した建造物の所有者さんはご自宅の庭などに監視カメラを設置していたそうで、そこからあっさり妻が犯人であることが明らかになったとのことです。

妻は逮捕→勾留という状態でした。

私も妻も「実刑判決になることは避けられない」と考えております。
しかし、私も含めできる限り周囲の人間がサポートしなければ本当に妻が潰れてしまうと感じたので、弁護士さんに依頼をした次第です。

私が妻のメンタルケアをもっときちんとしていれば、このような蛮行をする事はなかったのかもしれません。妻の意向により精神科や心療内科に通うことも避けていましたが、強行すべきだったのかもしれません。

後悔してもし切れませんが「まずはできることをする」というつもりです。

※これらの内容は個人を特定できないよう、
相談者の承諾を得て編集し載せております。
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■相談後

私と妻の想像どおりでしたが、
弁護士さんに「執行猶予期間中ですので、ほぼ間違いなく実刑判決が出ます」と言われました。

まずは、私と妻、そして弁護士さんとで被害弁償をする事になりました。

被害者の方には何を言われても仕方がないと思っていましたが、
ほとんど処罰感情を抱いておられないようでした。

それどころか
「しっかり反省していただければそれで良いと思いますので大丈夫です。
バッグ1個しか盗まないというのは良心が働いた結果なのでしょうね。
色々と辛いこともあるでしょうが、頑張ってください」
とまで仰っていただけました。

そして、そのまま示談が成立しました。
示談金も非常に少ない金額にしていただくことができました。

妻の話では、アルバイト先で様々な悩みを抱えていたそうで、店長さんにも情状証人になっていただきました(私も情状証人を務めました)。
快く引き受けてくださって本当にありがたかったです。

そして、妻本人も被告人質問できちんと反省の弁を述べました。

その結果、2回目の執行猶予となりました。

妻のアルバイト先の店長さんと話す機会がありましたが、
「非常にきちんと働く人でしたし、よく冗談を言ってバイト仲間を笑わせていたんですけどね。まさか悩みがあるとは思いませんでした」とのことでした。

妻は家庭では冗談は言わないどころか、笑うことさえほぼありません。
「違う場所では明るくして、前向きになろう」と考えていたのか、単に無理をして笑っていたのかは分かりません。
いずれにせよ、これからは医療の力も借りながら、もっとしっかりと妻を支えていくつもりです。

調べてみましたが、「窃盗行為に快感を覚えてしまい、依存する症状」のことをクレプトマニアと言うそうですね。
最近は、この精神障害の治療を行ってくれる医療機関も多いようです。
本人の意思の力と私のサポートだけで何とかするのは難しいと思いますので、利用しようと考えています。

今回助けてくださった弁護士さん、バイト先の店長さん、そして被害者であるにも関わらず許してくださった方、本当にありがとうございました。
また、裁判官からも温かい言葉をかけていただきました。

こういった優しい方々に救われた経験が、
必ず妻の心のためになると信じております。

※これらの内容は個人を特定できないよう、
相談者の承諾を得て編集し載せております。

■弁護士からのコメント

依頼者様がおっしゃっていますが、「実刑判決が出ることはほぼ確実。それでも全力は尽くす」というつもりで弁護をしました。
すると、関わる全ての皆さんが優しかったおかげもあってか、奇跡的に執行猶予となりました。
当職としても人の温かさが実感できる印象深い出来事となりました。

さて、「情状証人」のお話が出ましたので、補足説明させていただきます。
情状証人は「この人にはこのような情状事実がありますよ」と証言する役目を背負うことになります。
「一応その場にいてもらうだけ」というものではなく、責任を背負う立場ですので、その事をきちんと伝えた上で依頼する必要があります。

気を付けていただきたいのですが、「完全に無罪を主張する」のであれば、基本的に情状証人は手配しないでください。
「自信がないから手配したのだ」などと思われて、むしろ立場が弱くなる恐れがあるからです。

一方で、本件のように「罪を認めている場合」や「有罪判決が確実である場合」には、情状証人が有効になる可能性があります。

そして、情状証人には「これまでの被告人の状態などを説明でき、かつこれから継続的に指導していくことが可能な人物」を選ぶのがセオリーです。
本件のように職場の上司が務めることもありますが、家族が選定されることが最も多いです。

それから、情状証人は何名選出しても構いません。
ですが、現実には1~2名となるケースが大半です。
(本件も、依頼者様とアルバイト先の店長さんの2名でした)
多すぎれば裁判の時間が長くなるので、良くありません。
また、「人数が多いほど有利になる」というものでもありません。

そして、情状証人に対しても、裁判官から厳しい質問が投げかけられる場合があります。
あまりないことですが、「情状証人に選定されるのが複数回目である」というケースでは、「きちんと指導していなかったのでは?」「あなたに指導はできないのでは?」などと言われる恐れもあります。

ですから、必要に応じて、弁護士の指導の下でシミュレーションをしておくことを推奨します。

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