児童扶養手当をもらうと収入とみなされて養育費は減額される?

児童扶養手当を受給していても、養育費は減額されません。また逆に、養育費を受け取ると、その8割が所得として加算されるため、児童扶養手当の受給額が減る可能性があります

ひとり親世帯にとって、児童扶養手当と養育費は生活を支える重要な収入源ですが、両者の関係について正しく理解していないと、思わぬ不利益を被ることがあります。

この記事では、児童扶養手当と養育費の関係について、弁護士が詳しく解説します。

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児童扶養手当とはどのような制度か

児童扶養手当とは

児童扶養手当とは、父母の離婚や死亡などによってひとり親世帯になった家庭に支給される手当です。

以前は母子家庭のみ受給できましたが、男女平等の観点のもとに平成22年法改正され、父子家庭も条件を満たすことで受給することができるようになりました。それに伴い、「母子手当」という名称から「児童扶養手当」へと変更されています。

厚生労働省「福祉行政報告例」によると、児童扶養手当の受給者数は令和5年度末時点で約80万人にのぼり、その約95%が母子世帯となっています。

児童扶養手当の支給要件

児童扶養手当の支給対象者としては以下のものが規定されています。

「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童」を監護する母・監護し生計を同じくする父または養育する者

つまり子どもが18歳になって最初の年度末である3月31日を迎えるまで(高校卒業まで)は受給することができるということです。

また支給要件としては以下のように規定されています。

父母が婚姻を解消した児童、父または母が死亡した児童、父または母が一定程度の障害の状態にある児童、父または母の生死が明らかでない児童などを監護等していること

児童扶養手当の支給額

児童扶養手当として令和7年4月以降のひと月あたり支給される手当の金額については以下のように規定されています。

子どもが1人の場合

  • 全部支給:46,690円
  • 一部支給:46,680円~11,010円

子どもが2人目以降の加算額

  • 全部支給:11,030円
  • 一部支給:11,020円~5,520円

※令和6年11月から第3子以降の加算額が第2子と同額に引き上げられました。

所得の額に応じて支給制限がある

児童扶養手当は、前年の所得の金額に応じてその支給額が決定されています。この所得によって手当の全額を支給する「全額支給」となるのか一部のみを支給する「一部支給」となるのかが決定されます

こども家庭庁「児童扶養手当について」によると、令和6年11月分から全部支給および一部支給に係る所得制限限度額が引き上げられています。以下は請求者本人の所得制限限度額(所得ベース)です。

扶養親族等の数 全部支給 一部支給
0人 69万円 208万円
1人 107万円 246万円
2人 145万円 284万円
3人 183万円 322万円
4人 221万円 360万円

※扶養親族等が5人以上の場合は、1人につき38万円加算されます。

児童扶養手当と養育費の関係

まず「養育費」とは、子どもの養育のために必要となる費用のことで、生活費や学費、医療費などのために支払われる金銭のことをさします。それでは児童扶養手当を受給すると養育費を受け取る場合に何らかの影響が出てくるのでしょうか。

児童扶養手当の受給は養育費の算定に影響を与えない

まず、児童扶養手当については養育費の算定には影響を与えません。非親権者から親権者・子どもに対して支払われる養育費は親権者の所得として考慮されます。児童扶養手当は受給者の所得つまり養育費の受け取り額を考慮したあとに支給額が決定されるのです。

逆に養育費を算定する際には児童扶養手当の受給金額は考慮しません。

裁判例の中にも当時の子ども手当の支給については子の養育費の算定にあたって考慮すべきではないと判示したものがあります。

同裁判例は子ども手当が単年度限りの法律に基づくものであることを示すと同時に、「子ども手当については、子育てを未来への投資として、次代をになう子どもの育ちを個人や家族のみの問題とするのではなく、社会全体で応援するという観点から実施するものであると説明されていることからすると、子ども手当の支給は、民法上の扶養義務に淵源を有する養育費の支払に影響を与えるものではない」と判断しています。(広島高等裁判所平成22年6月24日判決)

児童扶養手当の算出方法について

養育費を受け取ると児童扶養手当の受給額が減る可能性があります。それは児童扶養手当の算出方法とかかわってきますのでここで説明しましょう。

児童扶養手当を算出するための計算式を簡単に説明すると以下のようになります。

児童扶養手当で審査する所得= 所得 + 養育費の80% - 8万円 - 諸控除額

「所得」とは1月~12月までの1年間に得た収入から必要経費を控除した金額を指します。給与所得者は源泉徴収票の中の「給与所得控除後の金額」、自営業の方は確定申告書控え中の「所得金額の合計」がそれにあたります。

そして受け取った「養育費」についてはその8割相当額を所得に加算します

8万円については社会・生命保険料相当額として一律控除されます。そして諸控除の金額については以下のようなものです。

  • 障害者控除:27万円
  • 特別障害者控除:40万円
  • 勤労学生控除:27万円
  • 小規模企業共済等掛金控除:地方税法で控除された額
  • 配偶者特別控除:地方税法で控除された額
  • 医療費控除:地方税法で控除された額
  • 雑損控除 等:地方税法で控除された額

児童扶養手当の申請者が児童の母または父を除き児童を養育する者(児童の祖父母など)の場合で次の控除がある場合にはその控除額も差し引くことができます。

  • 寡婦控除:27万円
  • ひとり親控除:35万円

以上のように児童扶養手当を支給する際に審査される所得の中には、養育費の8割が加算されます。したがって、加算される養育費の金額が増えると受け取れる児童扶養手当の金額が減少またはなくなる可能性もあります

児童扶養手当は養育費を受け取ってもなお不足する金額を国が支給するという建前であることがわかります。

児童扶養手当と養育費でお困りの方へ

この記事では、児童扶養手当と養育費の関係について解説してきました。児童扶養手当を受給していても養育費は減額されませんが、養育費を受け取ると児童扶養手当の算定に影響することがお分かりいただけたかと思います。

ひとり親世帯にとって、児童扶養手当と養育費は生活を支える重要な収入源です。適切な養育費を確保し、児童扶養手当を正しく受給することで、経済的な安定を図ることができます。

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