こんなケースに心あたりはないですか?
昔付き合っていた彼氏の借金の連帯保証人になってしまい、別れた後である日突然高額の支払いの督促状が来た。
同棲するとき、自分がその賃貸の部屋の連帯保証人になった。そのあと2人は別れて彼女が家を出たが、数年経ってその家賃の未払いがあるということで督促が届いて困惑している。
ある日、彼氏が契約者となっている消費者金融との契約書を見つけた。そこには自分の名前が連帯保証人の欄に勝手に書かれていた。
このように、交際している彼氏の借金や賃貸契約などの連帯保証人になってしまって、高額の督促が届き、なんとか連帯保証人を外れたいと相談に来られるケースは後を絶ちません。
もしも自分が保証人になっているとしたら、まず確認しておきたいのが、それが単なる保証人なのか、それとも連帯保証人なのかということです。
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目次
借金の肩代わり「連帯保証人」と「保証人」の違い
保証人と一言でいっても、単なる保証人と連帯保証人と言う2つの種類があることをご存知でしょうか?この違いはかなり大きいので、しっかりチェックしてください。では、どんなところがちがうのかを簡単に説明します。
保証人とは
連帯保証人に比べて、単なる保証人の場合は少し背負う責任が少ないのが特徴です。保証人には、3つの権利や利益が認められています。
ひとつは、債権者が、主債務者である彼氏に借金の返済を請求せずにいきなり自分に対して借金を返せと言ってきたときに、「まずは主債務者に返済を求めてくれ」と言える権利です。これは法律用語で「催告の抗弁権」と呼びます。
次に、彼氏が借金を返済できるだけの財産があるのに、債権者が自分のところに返済を請求して来たときには、本人に返済する能力があることを証明して、「本人に返済を求めてくれ」と主張することができます。これは「検索の抗弁権」と呼ばれるものです。
このほかに「分別の利益」といって、もしも保証人が自分以外に何人かいた時には、彼氏の借金を保証人の人数で割った額だけを返済すればいいという利益も認められています。
例えば彼氏が300万の借金をしたときに、保証人として自分と彼氏の母親の2人を保証人に立てたとしたら、300万円を2人で割った150万だけが自分の返済義務がある金額になるということです。
連帯保証人とは
一方で注意が必要なのが、連帯保証人になっている場合です。連帯保証人の大きな特徴が、先ほど保証人に認められていたような3つの権利や利益が一切認められないこと。
連帯保証人になるということは、自分が借金をしているのと同じくらいの重たさだと考えておいて間違いはありません。債権者は、彼氏本人に返済を求めることなく、連帯保証人にいきなり返済を求めることもできますし、連帯保証人もその請求を拒むことはできません。
そして、借金や賃貸契約などのときに「保証人」として求められるほとんどのケースは、連帯保証人です。
彼氏の借金の連帯保証人から外れたいけどできる?
自分が連帯保証人になってしまっているケースの中でも多い相談としては、やはり、突然高額の支払いの督促が来てしまったので連帯保証人から外れたいという相談です。連帯保証人から外れることはできるのでしょうか?
原則として、連帯保証人になってしまったら、自分の判断で自由に保証人から外れるということはできません。連帯保証人になるときには、連帯保証契約という契約を結んでいます。この契約を解除するために、契約を結んでいる相手が「連帯保証人から外れてもいいよ」と同意してくれる必要があります。
では誰と契約を結んでいるかというと、それは彼氏と自分ではなくて、債権者と自分なのです。そのため連帯保証人から外れたいときには、彼氏の同意ではなくて、債権者の同意が必要になるのです。
しかし連帯保証人がいなくなってしまうと、債権者としては、彼氏本人からお金を返してもうのが難しくなったときに、他に誰にも請求できなくなるので非常に困った事態になります。そのため、簡単に連帯保証人から外れていいよと同意してくれる事はありません。
もしも連帯保証人を外れたい場合には、他に返済能力のある人を連帯保証人に立てるか、もしくは何らかの物的担保を入れるのが一般的です。もしくは、借金を全て返済してしまうかということになります。
連帯保証人の責任を負わなくていいケースもある
見てきたように、連帯保証人になってしまうと基本的には保証人を外れることができません。もしも債権者から返済の督促がきても、それを拒むことができないということになりますが、例外として、連帯保証人としての責任を果たす必要がないケースがあります。それが、以下のケースです。
- 自分が知らない間に勝手に連帯保証人にさせられていた
- すでに保証債務が消滅時効にかかっている
順を追って見ていきましょう。
1.自分が知らない間に勝手に連帯保証人にさせられていた
契約書にサインしたことになっていた、印鑑証明書なども勝手に準備されていた、といったように、自分が知らない間に勝手に連帯保証人にさせられていたという悪質なケースがあります。
彼氏が自分の筆跡をまねてサインをしていたり、勝手に印鑑を持ち出して使っていたりといったケースです。しかし、これは自分の意思がないところで勝手にされたことなので、連帯保証人としての責任を負う必要はありません。
2.すでに保証債務が時効にかかっている
つぎに、すでに時効になっているケースです。借金などの債権には「消滅時効」というシステムがあり、時効が成立すれば債権を支払う義務がなくなるのです。時効の期間ですが、借金の場合は基本的に10年、もしも相手が商売として貸金業をしているような場合には5年となっています。
例えば消費者金融からの借金や、クレジット会社のカードローンなどの借金は5時で時効にかかるということ。そして、もしも彼氏が自分の知り合いなどから個人的に借金をしていたとすると、時効は10年ということです。債権の種類によってはもっと時効までの期間が短いものもあります。
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連帯保証人としての責任を負わないようにするには
連帯保証人としての責任を果たす必要がないからといって、請求がきても無視していると痛い目にあうことも。具体的にどういった対策をしなければいけないのかを見ていきましょう。
1.勝手に連帯保証人にさせられていたとき
まずは勝手に連帯保証人にされていた場合です。自分が知らないうちに彼氏が勝手にしたことなので、「知りません」と言っておけばいいのではと思ってしまいますが、債権者から見ればその辺の事情はわからないもの。
それにそのままにしておくと、債権者から督促が内容証明郵便が届いたり、最終的には裁判を起こされてしまったりという可能性もあります。まずは債権者に対して「この連帯保証契約は自分がしたものではない」と主張する必要があります。
しかし、自分が知らなかったということを証明することは非常に難しいもの。こういった連帯保証人のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、早急に弁護士に相談してください。
2.保証債務の消滅時効を主張する
次に時効が成立した場合ですが、返済する義務はありませんが、自動的に5年、もしくは10年が経てば時効になるわけではないのです。時効が成立するためには、以下の要件に当てはまる必要があります。
- 権利行使できるのにしなかった
- 消滅時効の期間が経過した
- 消滅時効を援用した
重要なのは、「権利行使できるのにしなかった」というところ。5年間もしくは10年間など、消滅時効の期間中債権者から一度も請求が来ていない、その間一度も返済していないといったことが必要です。時効の援用については後ほど解説します。
そして次に、「時効が成立しているので返済する義務はありません」ということを債権者に対して伝えなければなりません。これを「時効の援用」をといいます。一般的には、書面にしたものを内容証明郵便で債権者宛に送ります。
勝手に連帯保証人にされていたとき、絶対に注意したいこと
返済しない、連帯保証人だと認めない
自分の知らないところで勝手に連帯保証人にされていたとしたら、1円も返済してはいけません。返済することで、「自分は連帯保証人です」と認めることになってしまうからです。
そうすると、もう連帯保証については「知らなかった」「関係ない」ということが言えなくなってしまいます。とにかく、返済しないこと。そして、保証人だと認めないことが大切です。
早急に弁護士に相談する
そしてすぐに行ってほしいのが、弁護士への相談です!自分は有効な連帯保証人ではない、ということは、債権者に対して説得力をもってアピールしなければなりません。しかし、あることを証明するよりもないことを証明するほうが何倍、何百倍も難しいのです。自分一人では手に負えないことも多々あります。
また、すでに督促が来ているようなときには、とにかく初動が大事です。債権者に対してどう答えるか、どう対応するか、一番最初が肝心なのです。債権者と話したり、会ったりする前に、まずは弁護士に相談してください。
勝手に連帯保証人にされたら、とにかくすぐに弁護士に相談を
自分の意思で連帯保証人になってしまったら、原則として保証人を外れることはできません。しかし、知らない間に連帯保証人にされてしまっていたなど、状況によっては連帯保証人としての責任を負う必要がないということがわかりました。
ただもし督促が来た場合は、放置しておけばいいかというとそうではなくて、債権者とやり取りをしなければならなくなります。とくに自分が知らない間に書面を偽造されていた場合には、そのサインが偽物であることなどをちゃんと主張しなければなりません。
連帯保証人の責任はとても重たいもの。場合によっては、人生を狂わせかねません。もしも連帯保証人にさせられてしまっていたとしたら、とにかくまずは弁護士に相談に来てください。
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