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【事例】振り込め詐欺組織からの離脱を望む男性からのご相談

(20代・男性)

振り込め詐欺組織のメンバーだった男性から安全に離脱したいというご相談を受けました。
具体的な相談内容は以下のとおりです。

■相談前

僕は元々振り込め詐欺組織のメンバーでした。

最初の頃は高校時代の友人一名と振り込め詐欺を行っていました。
その頃は組織と呼べるようなものではなかったと思いますし、仕事も別にありました。
ですから、どちらかと言えば金銭自体よりも、スリルを求めて詐欺行為を続けていたと思います。
また、言い訳にはなりませんが、実際に「老人電話をかける」などの直接的な行為をしていたのは、ほぼその友人であり、僕自身は1回しか電話をしたことがありませんでした。

僕がしていたのは、「お金を持っている人は誰か」や「騙されやすい人は誰か」などの調査です(詳しい調査方法はここでは伏せます)。

しかし、「僕が調査をして、友人が電話をかける」という方式で詐欺行為を続けていったところ、予想外に成功してしまいました。

ちなみに、一度この段階で怖くなって、友人に「もうこんな事はやめたい」と言ったことがあります。
ですが、その際友人に「別に良いけど、お前もう結婚しているんだよね?確か息子もいるんだっけ。○○君だよね?」と返されて、どうにもできなくなってしまいました。

結婚したのは振り込め詐欺を始める前でしたから、高校時代からの友人が知っていてもおかしくありません。
ですが、子どもが生まれたことは話したことがありませんでした。なぜか名前まで知っているとなると本当に脅威でしかありません。
ちなみに、僕は友人をはじめとする他のメンバーと会うときには個人情報が分かるようなものを一切持たないようにしていました。

それでもなぜか僕の家族構成を突き止めてしまう友人です。
仮にこの時点で僕が振り込め詐欺をやめて友人から離れようとしても、確実に追いかけてくると感じました。

そこから人数が増えて最終的には僕も含めて4人組となりました。
ちなみに後から入ってきた2人組は僕が全く知らない人物であり、友人がどのように彼らを勧誘したのかは分かりません。

もちろん誰であっても騙して金銭を巻き上げて良いはずがありませんが、最初のうちは「裕福で、生活に困っていない老人」を狙っていました。
先ほどもお伝えしましたがスリルを求めていただけなので、金額としても数万円程度です。
ちなみに、「それくらいの金額であれば、まず間違いなく成功するという」理由で金額を設定していただけなので、良心からくるものではありません。

しかし、最後の半年くらいは狙い方が無差別になっていきました。
いえ、もしかしたら僕には分からないような「狙う基準」があったのかもしれません。ですが、組織内における成績が最も低い僕は詳しい事情を知りませんでした。

最初は「調査」を行っていた僕ですが、だんだんとその調査も他のメンバーがこなすようになってきたので、僕の仕事はなくなっていきます。

「だったら、僕は抜けても大丈夫なのではないか」と考える日もあったのですが、二人で詐欺行為を続けていたときの友人の言動が忘れられず、それを言い出すことはできませんでした。

そのため、「せめて可能な限り詐欺行為には協力しないようにしよう」と思っていたのですが、状況が変わってきてしまいます。

「振り込め詐欺に関するノルマ」ができてしまったのです。

その時期に他のメンバー3人が何やら相談をしていることは気づいていたのですが、どちらかと言えば「どうすれば能力のない僕をもっとうまく利用できるか」という話し合いをしていると思っていました。
ですが、そうではなく「お前ももっと気合いを入れて詐欺をしろ」という、強引な命令をされてしまったのです。

それでも、「今、計画を立てている」「今、確実に騙すことのできる相手を探している」などと言ってごまかしていますが、それもそろそろ限界に近づいています。

また、徐々に精神的にも耐えられなくなってきましたし、強いストレスからか身体のあちこちに不調が生じるようになりましたので、組織を抜けることを決意しました。

はじめのうちは「メンバーに宣言して抜ける」という事しか考えていませんでした。
しかし、外部の専門家さんの力を借りれば、リスクを回避しつつ離脱できるのではないかと考えるようになりました。

僕は逮捕されても構いませんし、どのような罰であっても受けるつもりです。
むしろそうなるのが当然だと思っています。
しかし、とにかく家族に危害が及ぶことだけは避けたいと考えています。

※これらの内容は個人を特定できないよう、
相談者の承諾を得て編集し載せております。
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■相談後

まず、弁護士さんと方針を明確に決めました。

一つは「本当に更生するためにウソは一切つかない」ということです。
ウソをついて裁判所を納得させることはほぼ不可能であると教えていただきました。
また、僕の心の問題ですが「これ以上ウソをつきたくない」という気持ちもあったので、ありがたいアドバイスでした。
その上で被害者の皆さんとの示談を目指すこととなりました。

この方針に決まるまでに何回か接見をしました。
大変だったと思います。ありがとうございました。

とにかく家族のことが心配だったのですが、
すぐに弁護士さんが家族にご自身の携帯電話番号を提供してくださいました。
また、まだ小さな息子がいらぬショックを受けないように色々と工夫していただいたようです。
後に妻に聞かされましたが、何度も相談に乗ってくださったそうですね。こちらに関しても感謝のしようがありません。

さらに、それが本当に僕が所属していた詐欺組織の人間だったのかは今となっては分かりませんが、怪しげな人物が2回、僕の自宅を訪れたそうです。
その際にも、弁護士さんが即座に介入してくださって事なきを得たとのことです。

このようにして詐欺組織との距離を作りながら、これまでの詐欺行為などについて一切ウソをつかずに白状し、示談も行いました。
そして、最終的には執行猶予付きの判決となりました。

そのため、社会生活を送りながら真っ当な人間を目指すことができる事となりました。
この場を借りて、二度と間違いを起こさない品行方正な存在となることを誓わせていただきます。

また、最初は「とにかく家族を守る」ということを第一に考えていたのですが、弁護士さんとお話するうちに「罪を償うこと」が第一という想いに変わっていきました。
もちろん、家族に被害が及ぶのは何としても避けたいことですが、それについては今後も外部の力も借りつつ、僕自身が取り組んでいくべきだと感じています。

そして、息子には僕が詐欺行為を働いていたということをまだ告げていません。
しかし、ある程度成長したら全てを包み隠さず伝えるつもりです。
それもウソをつかないという事の一環だと思っています。

※これらの内容は個人を特定できないよう、
相談者の承諾を得て編集し載せております。

■弁護士からのコメント

振り込め詐欺組織に限らず何らかの「犯罪集団」全般に言えることですが、
「組織からの報復」を恐れて、自身が望むような離脱・自首などができない人が少なくありません。
本件はまさにそういったケースです。

本件は、私が「組織」と「依頼者(と依頼者の関係者)」を可能な限り直接接触させないための、クッション役になった形であると言えるでしょう。

しかし、現実には「これで組織から報復されることは100パーセントない」という状況を作り上げることは誰にもできません。
そのため、最後には「依頼者様の勇気」が必要となります。

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