
「貸したお金を返してもらえない」「売掛金がいつまでも回収できない」とお困りではないでしょうか。
支払督促は、訴訟よりも簡易・迅速・低コストで債権回収を実現できる法的手続です。裁判所への出廷は不要で、書類審査のみで手続が進むため、最短1か月程度で強制執行の申立てが可能になります。
この記事では、支払督促の基本的な流れについて解説します。
- 支払督促の申立てから強制執行までの流れ
- 申立てに必要な書類と費用
- 仮執行宣言の申立て方法と期限
- 督促異議が出された場合の対応
なお、債権回収について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご検討ください。
支払督促の流れ(全体像)
支払督促の申立てから強制執行までの流れは、以下のとおりです。
- 支払督促の申立て
- 支払督促正本の送達
- 仮執行宣言申立て(送達から2週間で申立て可能)
- 仮執行宣言付支払督促正本の送達(仮執行宣言付支払督促の送達から2週間で確定)
- 支払督促の確定
- 強制執行の申立て
このように、支払督促は申立てから強制執行の申立てが可能になるまで、最短でも1か月以上かかる手続となります。
以下では、各段階の手続について詳しく解説します。
支払督促を申し立てる前の準備
支払督促の手続に入る前に、まず確認しておくべきことがあります。
債務者に対して督促状は送付済みでしょうか。
一般的に、お金に関して人はなかなか支払いをしないものです。ましてや、「お金を支払ってほしい」と言われないと、一向に支払ってくれないものです。
お金を支払ってほしい場合は、まずは督促状を送って支払いを促すことが有効です。それでも応じない場合は、内容証明郵便という方法もあります。
内容証明郵便が届くと、債務者は心理的な圧迫を受け、支払いに応じる場合があります。
「督促状も出した、内容証明郵便も出した」、それでも債務者が任意に支払わない場合は、いよいよ支払督促の申立てが選択肢になります。
支払督促の申立て
支払督促の手続を始めるには、申立書を簡易裁判所の裁判所書記官へ提出します。
なお、手続上は口頭での申立ても認められていますが、実務上は書面による申立てが一般的です。本稿でも書面による申立てを前提として説明します。
支払督促の特徴として、申立ての際に証拠を提出する必要がありません。これは、支払督促の手続では証拠調べが行われないためです。
必要書類
支払督促を申立ての際に提出する書類は大きく4つあります。
- ①支払督促申立書
- ②当事者目録
- ③請求の趣旨及び原因
- ④送達場所届出書
その他、債務者が法人の場合には資格証明書、弁護士に依頼する場合には委任状が必要となります。
申立書の書き方
支払督促に必ず記載しなければならないのは、次のとおりです。
- ①支払督促の手続による旨
- ②請求の趣旨及び原因
- ③当事者及び法定代理人
つまり、簡単に説明をすると、「誰に対して、どういう原因で発生した債権について、支払督促での手続を望むか」について記載します。
なお、支払督促の雛形は裁判所Webサイト上に公開されています。
いずれにしても、簡易な訴訟手続とはいえ、必要な書類をそろえることや、必要事項を記載するだけでもなかなか難しいものです。
そうした場合には、弁護士等の専門家に相談することも選択肢に入れた方が良いでしょう。
記載に不備があった場合
支払督促の記載に不備があった場合でも、いきなり請求が却下されることはないのでご安心ください。
支払督促の内容に不備があった場合には、実務的には、裁判所書記官から電話等で内容を修正するように連絡がきます。
その場合には裁判所に補正書を提出することで、手続を継続することができます。
なお、支払督促の記載の不備を補正しない場合には、申立てが却下されることになるので、注意が必要です。
申立てにかかる費用
支払督促にかかる費用は、裁判所に納める申立手数料を除外すると、債務者が個人の場合は3,000円程度、法人の場合は4,000円程度必要となります。
支払督促にかかる費用の内訳は次のとおりになります。
- ①申立手数料
- ②支払督促送達費用
- ③資格証明手数料(債務者が法人の場合に必要)
上記のうち、①の申立手数料は債権額によって変わってきます。
※参考:裁判所HP|手数料
支払督促の送達
支払督促の申立てを行い、必要な費用を納めると、次は債務者への送達の段階に入ります。
支払督促は、裁判所書記官に申立てをして必要な費用を納めただけでは、手続は進みません。
手続を進めるためには、債務者に対して支払督促の内容を知らせる「送達」という手続が必要です(民事訴訟法388条1項)。
送達とは、裁判所が当事者等に対して書類の内容を正式に通知し、その事実を公的に証明する手続をいいます。
支払督促は、債務者に送達されなければ手続を進めることができません。
送達ができない場合の対応
債権者が届け出た送達場所において送達ができなかった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
結論として、そのまま放置すると、支払督促の手続が終了してしまいます。
そこで、債務者(相手方)に送達できない場合には、裁判所書記官から通知が来るので、債権者は2か月以内に、再度送達に関する申し出をしなければなりません。
この際には、再送達の上申書と、新たに送達すべき場所について届出をします。
仮執行宣言の申立て
支払督促が債務者に送達されてから2週間が経過すると、手続は次の段階へ進みます。
次の段階とは、支払督促に仮執行宣言を付与してもらうことです。
仮執行宣言が付与されると、支払督促は「債務名義」となり、強制執行の申立てが可能になります。
具体的には、支払督促が送達されてから債務者が2週間以内に督促異議を申し立てない場合、債権者は簡易裁判所の裁判所書記官に対して仮執行宣言を請求することができます(民事訴訟法391条1項)。
ここで注意が必要なのは、債権者側にも期限があるという点です。
仮執行宣言の申立ては、申立てが可能になってから30日以内に行わなければなりません。
30日を超えても仮執行宣言の申立てをしない場合、支払督促の手続は終了してしまいます。
一度失効した支払督促に対して仮執行宣言を付すことはできないため、最初から手続をやり直す必要があります。
申立ての方法
仮執行宣言の申立ては、簡易裁判所の裁判所書記官に対して行います。
申立ての際には、仮執行宣言の申立書、当事者目録、請求の趣旨及び原因目録、請書(受領書)を提出します。
あわせて、郵送に必要な郵便切手を納めます。特別送達郵便料として、1,110円×当事者の数が目安ですが、重さや封筒の大きさによって変わるため、管轄の簡易裁判所で確認してください。
仮執行宣言の申立てが完了すれば、債務者への送達を待つことになります。
仮執行宣言付支払督促の効力
仮執行宣言の申立てが認められると、仮執行宣言付支払督促が債務者に送達されます。
仮執行宣言付支払督促は、債務者に送達された時点で債務名義としての効力を持ちます。これは、「債務者の財産に対して強制執行を行うことができる」という意味です。
重要なのは、仮執行宣言付支払督促の送達を受けた後に債務者が督促異議を申し立てた場合でも、債権者は強制執行の手続を進めることができるという点です。
この点が、次に説明する仮執行宣言前の督促異議との大きな違いです。
なお、債務者が仮執行宣言付支払督促の送達を受けてから2週間以内に督促異議を申し立てなかった場合、支払督促は確定し、債務者は督促手続において異議を申し立てる機会を失います。
督促異議が出された場合の対応
債務者から督促異議が出された場合の効果は、仮執行宣言の前後で異なります。
仮執行宣言前に督促異議が出された場合、債権者は仮執行宣言の付与を申し立てることができなくなります。
一方、仮執行宣言後に督促異議が出された場合は、強制執行の手続に影響はありません。
督促異議が出されると、手続は通常の訴訟へ移行します。債権者としては、訴訟を続けるか、取り下げるかを判断することになります。
なお、債務者が督促異議を申し立てることができる期間は、送達を受けてから2週間以内です。仮執行宣言前であれば、この期間を経過すると債権者は仮執行宣言の申立てが可能になります。仮執行宣言後であれば、2週間の経過により支払督促が確定します。
訴訟に移行する場合
訴訟に移行した場合、判決を得るためには追加の手数料等を納める必要があります。
訴状については、支払督促の申立書が訴状とみなされるため、改めて提出する必要はありません。多くの場合、裁判所から準備書面の提出を求められるため、裁判所の指示に従って手続を進めます。
追加で納める費用は、訴訟の申立手数料と郵便切手です。訴訟の申立手数料は、支払督促の申立時に納めた手数料と同額を収入印紙で納めます。郵便切手は6,000円程度ですが、各裁判所によって異なる場合があるため、事前に確認してください。
取下げをする場合
訴訟を望まない場合は、取下げを行うことができます。訴訟移行前であっても、支払督促を中止したい場合には取下げが可能です。
取下げを行うには、取下書を裁判所に提出します。取下書には、事件名を明記し、債権者の氏名等を記載のうえ、取り下げる旨を記載します。取下書以外に提出が必要な書類は基本的にありません。
強制執行の申立て
仮執行宣言付支払督促が確定しても、債務者が任意に支払わない場合があります。
支払督促が確定しても、裁判所が自動的に強制執行を行うわけではありません。債権者自身が強制執行の申立てを行う必要があります。
強制執行を行うには、まず差し押さえる債務者の財産を特定する必要があります。財産の種類によって管轄の執行裁判所が異なるため、各裁判所で確認してください。
必要書類と手続
強制執行の申立てには、原則として以下の3点が必要です。
- ①申立書
- ②仮執行宣言付支払督促の送達証明書
- ③申立手数料
これらを執行裁判所に提出すると、裁判所で審査が行われ、不備がないか確認されます。
なお、不動産に対して強制執行を行う場合には、その不動産の登記簿謄本も必要です。また、不動産執行の管轄は、不動産の所在地を管轄する裁判所となります。
強制執行にかかる費用
強制執行にかかる費用は、差し押さえる財産の種類によって異なります。強制執行には、債権執行、不動産執行、動産執行の3種類があります。
債権執行の場合
申立手数料として4,000円(収入印紙)を納めます。連絡費用として3,000円前後の切手代も必要です。
不動産執行の場合
申立手数料は債権執行と同じく4,000円(収入印紙)です。これに加えて、予納金40万円、登録免許税(債権額の0.4%)を納める必要があります。連絡費用は92円程度です。
動産執行の場合
申立手数料はかかりません。予納金として3万円〜4.5万円程度が必要です。金額は執行裁判所によって異なるため、事前に確認してください。
差押えが完了すると、最終的には債務者の財産を売却し、その代金から債権を回収することになります。
債権回収でお困りの方は弁護士にご相談ください
支払督促は、訴訟に比べて簡易・迅速・低コストで債権回収を進められる制度です。書類審査のみで手続が進み、裁判所への出廷も不要なため、多忙な方でも利用しやすい手続といえます。
ただし、申立書類の作成には法的な知識が求められるほか、仮執行宣言の申立期限(30日以内)を逃すと支払督促が失効してしまうなど、注意すべきポイントも少なくありません。また、債務者から督促異議が出された場合は訴訟へ移行するため、その後の対応も見据えた準備が必要です。
「督促状を送っても相手が応じてくれない」「どのように手続を進めればよいかわからない」とお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
若井綜合法律事務所では、債権回収に関するご相談を全国から承っております。初回相談は無料ですので、支払督促の利用をご検討中の方はお気軽にお問い合わせください。






