ホストの売掛とは。返済しないとどうなる?返済不要なケース

ホストクラブの売掛について、当法律事務所には以下のような相談が多く寄せられます。

  • 「自宅や実家、職場に取り立てに行くと言われています」
  • 「自分の記憶とは違う金額を要求されています」
  • 「回収業者に依頼すると脅されています」

親や勤務先にトラブルを知られたくない家に来られて暴力を受けるのではと不安なんとかして返済を待って欲しいできれば売掛金や未収金を払わずにすみたい、そう考える女性も多いのではないでしょうか。

そこでここでは、ホストトラブルに強い弁護士が、ホストの売掛とはなにか、どんなシステムなのかについてまずは簡単に説明するとともに、

  • ホストの売掛を払わないとどんなリスクがあるのか
  • ホストの売掛の返済義務がないケース

につき徹底的に解説していきます。

法律的なお話も交じりますが、弁護士がわかりやすく解説していますのでご安心ください。

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そもそもホストクラブの「売掛」とは?

ホストクラブの「売掛(単に「掛け」とも言います)」とは、お客の飲食代を店またはホストが一時的に立て替え、後日お客に返済してもらうシステムのことです。要するに「ツケ」で飲食することですね。

店にもよりますが、多くのホストクラブでは、売掛金の返済の締め日を月末としています。

誰が立て替えているの?

かつては店が売掛を立て替えることもありましたが、今はほどんどが担当ホストによる立て替えです

あまりにも売掛を踏み倒して逃亡する(「飛ぶ」「バックレ」ともいいます)お客がいるため、言い方は悪いですが、店が担当ホストに責任転嫁した形です。

とはいえ、担当ホストが売掛を立て替えるメリットもあります

お客と実際に接し、お客の経済状態を把握しているのはホストのため、売掛金を回収できる見込みがある客かどうかを判断しやすいでしょう。

また、「好きなホストに嫌われたくない・迷惑をかけたくない」という気持ちがお客には働きますので、売り掛けの支払いにも応じやすいのです。

売掛を回収できないと誰が負担するの?

売掛金を回収できなかった場合、その損失はホストの給料から天引きされてしまいます。

上で触れたように、ホスト個人がお客の飲食代等を立て替えていますので、回収できなければ自腹になるのは仕方のないことです

ホストが不憫にも思えますが、お客の管理ができていない、お客が遣える金銭的な許容範囲を見誤ったなど、ホスト業界でのし上がっていくための能力に欠けている結果とも考えられます。

ホストの売掛を払わないとどうなる?

自宅や実家、職場に来る

売掛をした場合、借用書に自宅住所を書いたり、免許証や保険証のコピーをとられる人がほとんどです。

もし売掛を滞納したりバックレたりすると、担当ホストやその仲間が自宅に押しかけて来ることもあります。お客が実家住まいなら親バレしてしまうでしょう

また、携帯番号からわかることの全てを読めばわかりますが、携帯番号から自宅・実家の住所、さらには勤務先を調べることもできます

ホストから、「実家の住所を調べて親から取り立てる!職場にも行くから覚えておけよ!」と脅されることがありますが、けしてハッタリではないのです。

サラ金やヤミ金から借金させられる

売掛金の支払いを滞納すると、サラ金(消費者金融)からお金を借りてでも返済するようホストから勧められます。

ただ、風俗嬢やキャバクラ嬢などのナイトワークに従事している方はサラ金の審査が通りにくい傾向があるため、審査が緩く即日無担保で借金ができる「ヤミ金」でお金を借りるようホストが勧めてくることがあります

ヤミ金は審査が通りにくい職業の人でもお金を借りれる反面、法外な利息をとられ、返済が遅れると壮絶な取り立てが待ち受けています。

また、返済不能な女性に対しては、ヤミ金と繋がりのある悪徳風俗店や悪徳AVプロダクションに回されることもあります。

キャバクラや風俗を紹介される

ホストの売掛の返済が滞ると、ホストがキャバクラや風俗といった夜の仕事のお店を紹介してくることがあります。

普通の職業に比べて一般的には給与が高額であるため、その給与から売掛金の回収を図るためです。

とはいえ、ホストクラブの客層は、既に夜の仕事に従事している女性も多いでしょう

その場合は、より高額な報酬がもらえるソープランドで働くよう切り替えさせることもあります

回収業者に債権回収を依頼される

回収業者と聞くとヤクザをイメージする人もいるかもしれませんが、暴力団対策法の禁止行為違反として逮捕されることもあるため、ヤクザが直接取り立てに来ることはありません

とはいえ、回収業者のケツ持ちにヤクザがいる場合や、半グレが関わっていることも十分考えられます

回収業者の成功報酬は回収金額の40~50%とかなり高額ですが、もともと回収が難しいお客から売掛金を少しでも取り戻せるのであればと、ホストや店が実際に依頼することもあります。

ただし、弁護士や司法書士の資格がない者が報酬を得る目的で債権回収をすることは弁護士法72条違反(非弁行為)です。

違反すると重い罰則があるため、弁護士法違反の回避策として、回収業者がホストや店から債権を譲り受け、回収業者自身が債権者としてお客に請求してくることもあります

内容証明郵便が送られてくる

内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の手紙を送ったのか後で郵便局が証明してくれるサービスです。

売掛の返済がされないと、ホスト側から、「〇月〇日までに売掛金〇〇万円を払え。払わないと法的措置をとる(裁判を起こす)」といった内容の内容証明郵便が自宅に送られてくることがあります。

しかしこの内容証明郵便は、なんら法的効力はありません

郵便局員が手渡しで配達に来ますが、受け取らなくても罰則はありませんし、受け取っても開封せずにごみ箱に捨ててもなんら法律に反しません。

ホスト側が内容証明を送ってくるのは、「法的措置・訴訟」というキーワードが含まれた堅苦しい書面でお客に心理的圧迫を加え、お金を払わせようとしているに過ぎないのです。

とはいえ、「単なる手紙だし」と放置していると、次に説明する”本当に裁判を起こされる事態”に発展することもあります

裁判を起こされる

ホストや店が裁判で売り掛けの回収を図る場合には、少額訴訟か通常訴訟を起こす必要があります。

少額訴訟とは、60万円以下の金銭を回収するために設けられた裁判制度です。

原則として1日で審理が終了し判決がでますし、裁判費用も安く、手続き方法も比較的簡単なため弁護士に依頼する必要もありません。

そのため、お客の未収(借金)が60万円以下の場合には、担当ホストや店から少額訴訟を起こされることは珍しくありません

また、売掛の額が60万円を越える場合は、ホスト側は通常訴訟という一般的な裁判を起こす必要があります。

少額訴訟と比べて手続きの難易度が若干上がりますが、ホストクラブでの売掛トラブルは頻繁にあるため、裁判慣れしたホストや従業員が起こしてくることもあります。

また、訴訟で勝てる見込みが高く、且つ、お客の資力からして回収の見込みが高い場合には弁護士に依頼して裁判を起こしてくることもあります

ホストの売掛の返済義務と返済不要なケース

売掛は、ホストクラブの料金を後払いする約束ですので、当然、お客はそれを返済する義務があります。

しかし、以下で紹介する5つのケースに当てはまれば、売掛の返済が不要となります。

①無理やり売掛や借金させられた場合

頼みたくもないのにホストに脅されたり、暴力を受けるなどして仕方なく売掛で注文したような場合は強迫による取消(民法96条)ができます

取り消しすることで初めから契約がなかったことにできますので、当然、借金の返済義務はありません

②借用書など、売掛の事実や額を証明するものがない場合

ホスト側が売掛を回収するために裁判を起こしてきた場合、売掛の事実やその額を証明できる借用書等の有無が勝ち負けのポイントとなることがあります

借用書以外にも、伝票の裏にお客がサインしたもの、会話を録音したもの、メール・LINEのやり取りなど、お客が借金(未収)した事実や額の証明となるでしょう。

しかし、これらが一切ないとなれば、裁判においてホスト側の請求が認められないこともあります

この点、サインの裏書のない伝票であっても、担当ホストや内勤スタッフ(黒服)の証言や防犯カメラの映像等を総合的に勘案してホスト側の主張が通る場合もあります。

しかし、売掛した覚えがない場合や売掛額が自分の記憶と全く異なる場合には、その旨を裁判で主張することで、返済義務なし又は減額(和解での減額も含む)という結果も期待できるため諦める必要はありません。

③出資法の上限金利を超える利息をとられている場合

売掛金を分割返済するにあたり、利息の請求をされることがあります。借用書に利息について書かれていることもあるでしょう。

もしこの利息が年利109.5%(1日あたり0.3%、1ヶ月あたり9.125%)を越えている場合は出資法違反となり契約は無効となります。

その場合、売掛金も利息も一切返済しなくてもよくなり、さらに、既に支払った金銭をホスト側に返金請求することもできます

また、利息が年利109.5%を越えていなくても、以下の利率を越えている場合は、その越えた部分の利息についても支払い不要となります(利息制限法第1条)。

  • 元本の額が10万円未満の場合は年20%
  • 元本の額が10万円以上100万円未満の場合は年18%
  • 元本の額が100万円以上の場合は年15%

例えば、売掛(元本)の額が100万円の場合は年利は最大で15%(15万円)ですので、借用書に書かれている年利が40%(40万円)だとしても、25%(40%-15%)分の利息は払う必要がありません。

④お客が未成年者であった場合

未成年者が親(親がいない場合は、未成年後見人)の同意なしにした契約は取り消すことができます(民法5条2項)。

ホストクラブでサービスを受けたり飲食することも契約の一種ですのでお客が未成年者であった場合には取消ができます

取り消された契約は初めから無効であったとみなされますので(民法121条)、当然ながらその契約から生じた借金(売掛金)の返済も不要となります。

また、契約が初めから無効なわけですから、未成年者が売掛金の全部または一部を既にホスト側に支払ってしまった場合にはそれを返金するよう請求することもできます

ただし、未成年者がホスト側に対して成人であると嘘をついていた場合や、未成年者が既婚者である場合は取消ができませんので注意が必要です。

⑤消滅時効が完成している場合

ホストクラブの売掛は、”実際にはお金は貸していないけど、貸したことにして、これを後からお客に返済してもらう形にする契約(準消費貸借契約)”です。

この返済を求める権利は、売掛を立替払いしたのが店であるか担当ホストであるかに関わらず、原則として5年間で消滅時効(※)が完成します。

※消滅時効とは、一定期間行使しないと権利が消滅する制度のこと

なお、「ホストクラブのツケは1年で短期消滅時効にかかる」「ホストに借金したら10年で時効となる」というネットで見つかる情報は、民法改正前の古い情報ですのでご注意ください。

ホストの売り掛け・立て替えトラブルの予防法と対処法

予防法:売掛を持ちかけてくるホストは切る

単純ですが、「売り掛けをしてまで注文しない」これに尽きます。

ホストクラブに遊びに行くときは、使ってもいい分の現金のみ財布に入れておき、クレジットカードは持参しないようにしましょう。

とはいえ、現実問題として、担当ホストに恋愛感情を抱いている場合は自制心が働かない女性客も多いことでしょう

「あと少し売り上げればナンバーになれる。俺を男にして欲しい」など、気に入ったホストに言われてつい売り掛けしてしまうこともあるでしょう。

しかし、お客は自分の店内での地位や給料アップのための道具にすぎないと考えているホストも少なからずいます。

本当にお客を大切にしようと考えているのであれば、”借金してまで自分に貢献しろと”は言わないはずです

ホストから売掛を持ちかけられたり、売り掛けしなくてはいけない雰囲気にさせられた時点でそのホストに見切りをつけるのが得策といえるでしょう。

対処法①:警察に被害申告をする

危害を加えると脅したり暴力を振るって売り掛けの返済を求めることは恐喝罪に該当します。

その他、無理やり借用書を書かされた場合は強要罪、勤務先に押しかけてきて借金の事実を職場の人にバラせば名誉棄損罪が成立することもあります。

ホストの処罰を望むのであれば、警察に被害届または告訴状を提出し、逮捕に動いてもらいましょう

ただし、ホストが逮捕される(刑事事件)=売り掛け帳消しになる(民事事件)、というわけではありません

売り掛け問題もクリアにしたい、ホストの逮捕までは望んでいないという方は、次に紹介する弁護士への相談や依頼をおススメします。

対処法②:弁護士に相談・依頼する

「お金がすぐに準備できないので売掛の支払いを待って欲しい
「頼んだ覚えのない高いお酒を勝手に売り掛けにされたので支払いたくない
「でも、脅されていてどう対処していいかわからない」

このような場合は、ホストの売り掛け(ツケ)・立て替えトラブルに詳しい弁護士にまずは相談しましょう。

脅迫への対応方法や、売掛金の支払い義務などについて、法律の専門家の観点から適切なアドヴァイスを受けることができます。

また、自分では対処しきれない場合には、弁護士に交渉を依頼することで返済期日の再調整や不当な請求の拒絶を全て一任することができます

さらに、弁護士が介入することの最大のメリットはお客本人やその家族、職場などに対して、ホストが押しかけたり連絡したりすることを阻止できることです。

弁護士は刑事告訴、民事訴訟の代理人を務める法的な権限があります。

弁護士が介入しているにもかかわらず、ホストがアナタやアナタの周囲へ取り立て行為をすれば、恐喝罪での刑事告訴や慰謝料請求の民事訴訟を起こすことができます。

弁護士からホストや店に警告を与えることで、ほとんどのケースでアナタへの脅迫や嫌がらせ、しつこい連絡を止めることができます

当法律事務所では、ホストに強い弁護士による全国対応の無料相談を受け付けております

親身誠実に弁護士が全力でアナタを守りますので、まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。

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