
ホストクラブの「売掛」とは、お客の飲食代を店またはホストが一時的に立て替え、後日お客に返済してもらうシステムのことです。
当法律事務所には、ホストクラブの売掛に関して次のようなご相談が寄せられています。
- 「自宅や実家、職場に取り立てに行くと言われている」
- 「自分の記憶とは違う金額を請求されている」
- 「回収業者に依頼すると脅されている」
「親や勤務先に知られたくない」「暴力を振るわれるのではないか」といった不安に悩まされ、誰にも相談できずに抱え込んでいる方も少なくありません。
また、できることなら売掛金や未収金を支払わずに済ませたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、ホストクラブの売掛であっても、法的に返済義務が認められないケースは決して少なくありません。無理に支払おうとする前に、まずは正しい情報を知ることが大切です。
本記事では、ホストとの売掛・未収金トラブルに強い弁護士が、以下のポイントについてわかりやすく解説します。
- ホストの売掛とはなにか
- ホストの売掛を払えない・飛ぶとどうなるのか
- 売掛の返済義務がないケース
- 売掛トラブルに巻き込まれた場合の対処法
なお、この記事を読まれている方の中には、すでにホストから厳しい取り立てを受けていたり、不当な請求に悩まされている方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方は、この記事を最後まで読んでいただいたうえで、ぜひ一度、当法律事務所までご相談ください。全国どこからでも無料でご相談いただけます。
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目次
そもそもホストクラブの「売掛」とは?
ホストクラブの「売掛」(単に「掛け」とも言われます)とは、お客の飲食代をホストや店が一時的に立て替え、後日お客が返済するという仕組みです。要するに、「ツケ」で飲み食いをするシステムです。
店によって運用は異なりますが、多くのホストクラブでは、売掛金の返済締め日を月末としていることが一般的です。
なお、2024年4月からは、歌舞伎町の一部ホストクラブで売掛制度の廃止が宣言されました。
売掛金の返済を名目に、女性に売春をさせるなどの深刻なトラブルが相次いで報道されたことを受け、業界団体が自主的に廃止に踏み切ったものです。
ただし、すべての店舗が対象ではなく、名称を「立替」などに変えた実質的なツケ払いが今なお続いているケースもあります。
参考:ホストクラブ等の売掛金等に起因する事件等について|警察庁Webサイト
誰が立て替えているの?
かつては店が売掛を立て替えることもありましたが、現在ではほとんどが担当ホストによる立て替えです。
あまりにも売掛を踏み倒して逃亡する(「飛ぶ」「バックレ」ともいいます)お客がいるため、言い方は悪いですが、店が担当ホストに責任転嫁した形です。
とはいえ、担当ホストが売掛を立て替えることには、次のようなメリットもあります。
- お客と実際に接し、お客の経済状態を把握しているのはホストのため、売掛金を回収できる見込みがある客かどうかを判断しやすい
- 「好きなホストに嫌われたくない・迷惑をかけたくない」という気持ちがお客には働くため、売掛の支払いにも応じやすい
売掛を回収できないと誰が負担するの?
売掛金を回収できなかった場合、その損失はホストの給料から天引きされてしまいます。
前述のとおり、ホスト個人がお客の飲食代等を立て替えていますので、回収できなければ自腹になるのは仕方のないことです。
ホストが不憫にも思えますが、
- お客の管理ができていない
- お客が遣える金銭的な許容範囲を見誤った
などの理由から、ホスト業界でのし上がっていくための能力に欠けている結果とも考えられます。
ホストの売掛が払えない・飛ぶとどうなる?
ホストクラブで発生した売掛(ツケ)を払えない状況に陥ったり、そのまま飛ぶ(連絡を絶って逃げる)ことを選んでしまうと、さまざまなリスクが発生します。
「もう払えない…」「バックレたらどうなるの?」と不安を抱える方も多いと思いますが、現実には、法的トラブルや社会的信用の喪失にもつながりかねません。
このセクションでは、売掛を払えないまま放置したり、飛んだ場合に起こり得る主なリスクを、以下のとおり解説していきます。
- ① 自宅や実家、職場に来る
- ② サラ金やヤミ金から借金させられる
- ③ キャバクラや風俗を紹介される
- ④ 回収業者に債権回収を依頼される
- ⑤ 内容証明郵便が送られてくる
- ⑥ 裁判を起こされる
① 自宅や実家、職場に来る
売掛をした場合、借用書に自宅住所を記載したり、免許証や保険証のコピーを提出させられることがほとんどです。
そのため、売掛を滞納したりバックレたりすると、担当ホストやその仲間が自宅まで押しかけてくるケースもあります。
実家暮らしであれば、親に知られてしまうリスクも高いでしょう。
また、携帯番号からはさまざまな情報を割り出せるため、そこから自宅・実家の住所や勤務先を特定されてしまうこともあります。
参考:携帯番号から個人特定する3つの方法と携帯番号からわかることの全て
ホストから「実家に取り立てに行く」「職場にも行くから覚えておけよ」と脅されることがありますが、これは決してハッタリではありません。
② サラ金や闇金から借金させられる
売掛金の支払いを滞納すると、ホストから「サラ金(消費者金融)でお金を借りてでも返済しろ」と勧められることがあります。
ただし、風俗嬢やキャバクラ嬢など、ナイトワークに従事している方は、サラ金の審査に通りにくい傾向があります。
その結果、次のような理由から、より審査の緩い「闇金」での借入を勧められることもあります。
- 即日無担保で借りられる
- 職業を問わず融資されやすい
しかし、ヤミ金から借りると、以下のような深刻な事態に発展する可能性があります。
- 法外な利息を課される
- 返済が遅れると壮絶な取り立てを受ける
- 返済できないと、悪徳風俗店やAVプロダクションに紹介されることもある
③ 水商売や風俗を紹介される・立ちんぼさせられる
売掛の返済が滞ると、ホストがキャバクラや風俗といった水商売の仕事を紹介してくることがあります。
これは、通常の仕事に比べて高収入を得られるナイトワークを通じて、売掛金の回収を図るためです。
紹介される仕事は、キャバクラ・風俗店・無店舗型のデリヘルなどさまざまで、こうした売掛トラブルは全国各地の繁華街で発生しています。
すでにナイトワークに従事している女性の場合には、より高額な報酬が得られるソープランドに移るよう求められたり、さらには「立ちんぼ」(路上での客引き行為)を強要されることもあります。
中でも、新宿歌舞伎町の大久保公園周辺は、いわゆる「立ちんぼスポット」としてマスコミ報道でもたびたび取り上げられており、悪質なケースではそうした場所へ女性を送り込もうとするホストも存在します。
このような行為は、売掛金の回収を名目としながら、実質的には女性の人権や自由を侵害する重大な問題であり、状況によっては労働関係法令や刑法に違反する可能性もあります。
④ 回収業者に債権回収を依頼される
ホストや店側が売掛の回収を断念すると、回収業者に依頼するケースもあります。
暴力団対策法により、ヤクザが直接取り立てに来ることは少なくなりましたが、
- 回収業者の背後にヤクザがいる
- 半グレが関わっている
といったケースも実際にあると考えられます。
回収業者は、回収額の40~50%という高額な成功報酬を得る代わりに、強引な手段で回収にあたることがあります。
なお、弁護士や司法書士以外の者が、報酬を得る目的で債権回収を行うのは弁護士法72条違反(非弁行為)です。
この違法行為を回避する目的で、業者が債権をホストや店から譲り受け、自らが債権者として請求してくるケースもあります。
⑤ 内容証明郵便が送られてくる
売掛金を支払わないと、ホスト側から「○月○日までに○○万円を払え。支払わないと法的措置を取る」といった内容証明郵便が送られてくることがあります。
内容証明郵便とは、
- 誰が・誰に対して
- いつ・どのような内容の書面を送付したか
を郵便局が証明してくれる制度にすぎず、法的効力はありません。
郵便局員が手渡しで配達に来ても、受け取らないことによる罰則はなく、受け取っても開封せず処分することに違法性はありません。
ホスト側がこれを送るのは、「訴訟」「法的措置」といった文言を使って心理的圧力をかけるためです。
しかし、放置していると、本当に裁判を起こされる可能性もあるため、軽視はできません。
⑥ 裁判を起こされる
ホストや店が売掛金を法的に回収しようと考えた場合、裁判を起こしてくることもあります。
訴額に応じて、手続きは以下のいずれかになります。
- 60万円以下:少額訴訟(原則1日で判決・手続簡易)
- 60万円超:通常訴訟(手続きやや複雑・弁護士を付けることも)
ホストクラブの売掛トラブルは頻繁に発生しており、裁判に慣れたホストや従業員が自力で訴訟を提起してくることもあります。
また、勝訴の見込みが高く、相手に資力があると判断すれば、ホスト側が弁護士を立てて裁判を起こしてくるケースもあります。
「売掛を払えずに飛んだら終わり」と安易に考えず、できるだけ早めに対処することが重要です。
ホストの売掛の返済義務と返済不要なケース
売掛は、ホストクラブの料金を後払いする約束ですので、当然、お客はそれを返済する義務があります。
しかし、すべてのケースで返済しなければならないとは限りません。
以下のようなケースに該当する場合、売掛金の支払いが不要になる可能性があります。
- ① 無理やり売掛や借金をさせられた場合
- ② 売掛の証拠(借用書など)が一切ない場合
- ③ 違法な利息が設定されている場合
- ④ お客が未成年だった場合
- ⑤客の恋愛感情を利用して売掛させた場合
- ⑥ 消滅時効が成立している場合
① 無理やり売掛や借金をさせられた場合
頼みたくもないのにホストに脅されたり、暴力を受けるなどして仕方なく売掛で注文したような場合は、強迫による取消(民法96条)ができます。
取り消しすることで初めから契約がなかったことにできますので、当然、借金の返済義務はありません。
② 売掛の証拠(借用書など)が一切ない場合
ホスト側が売掛を回収するために裁判を起こしてきた場合、売掛の事実やその額を証明できる借用書等の有無が勝ち負けのポイントとなることがあります。
証拠としては、以下のようなものが考えられます。
- 借用書
- 伝票の裏にお客がサインしたもの
- 会話を録音した音声
- メールやLINEのやり取り
しかし、これらが一切ないとなれば、裁判においてホスト側の請求が認められないこともあります。
この点、サインの裏書のない伝票であっても、担当ホストや内勤スタッフ(黒服)の証言や防犯カメラの映像等を総合的に勘案してホスト側の主張が通る場合もあります。
しかし、売掛した覚えがない場合や売掛額が自分の記憶と全く異なる場合には、その旨を裁判で主張することで、返済義務なし又は減額(和解での減額も含む)という結果も期待できるため、諦める必要はありません。
③ 違法な利息が設定されている場合
売掛金を分割返済するにあたり、利息の請求をされることがあります。借用書に利息について書かれていることもあるでしょう。
もしこの利息が以下の上限を超えている場合、法律に違反しており、契約が無効となることがあります。
- 出資法違反:年利109.5%(日0.3%、月9.125%)超
- 利息制限法違反(第1条):
- 元本10万円未満 → 年20%
- 元本10万円以上100万円未満 → 年18%
- 元本100万円以上 → 年15%
利率の上限を超える部分の利息は支払い不要となり、契約自体が無効になる場合もあります。
さらに、違法な利息を既に支払っていた場合には、その返還を請求できる可能性もあります。
④ お客が未成年だった場合
未成年者が親(親がいない場合は未成年後見人)の同意なしにした契約は取り消すことができます(民法5条2項)。
ホストクラブでサービスを受けたり飲食することも契約の一種ですので、お客が未成年者であった場合には取消ができます。
取り消された契約は初めから無効であったとみなされますので(民法121条)、当然ながらその契約から生じた借金(売掛金)の返済も不要となります。
また、契約が初めから無効なわけですから、未成年者が売掛金の全部または一部を既にホスト側に支払ってしまった場合には、それを返金するよう請求することもできます。
ただし、未成年者がホスト側に対して成人であると嘘をついていた場合や、未成年者が既婚者である場合は取消ができませんので注意が必要です。
⑤客の恋愛感情を利用して売掛させた場合
ホストがお客の恋愛感情を利用して売掛をさせたような場合には、消費者契約法に基づき、契約の取り消しが認められる可能性があります。特に、社会経験の乏しい若年女性が、ホストに対して好意を抱き、ホストも自分に好意を持っていると誤信させられたうえで、「注文しなければ関係が終わってしまう」といった言葉を受け、困惑した状態で契約してしまった場合が典型です。
このようなケースでは、たとえホストが「恋人間のやり取りだ」と主張したとしても、ホストが事業者としての立場で不当な勧誘を行っていたと判断されれば、契約自体を取り消すことができます。
なお、契約が取り消された場合、支払い義務はなくなり、すでに支払った金額も返還請求の対象となることがあります。
参考:ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について - 群馬県ホームページ(消費生活課)
⑥消滅時効が成立している場合
ホストクラブの売掛は、“実際にはお金は貸していないけど、貸したことにして、これを後からお客に返済してもらう形にする契約(準消費貸借契約)”です。
この返済を求める権利は、売掛を立替払いしたのが店であるか担当ホストであるかに関わらず、原則として5年間で消滅時効が完成します。
時効が完成すれば、ホスト側が請求してきても、法的に返済を拒むことができます。
なお、「ホストクラブのツケは1年で短期消滅時効にかかる」「ホストに借金したら10年で時効となる」といったネットで見つかる情報は、民法改正前の古い情報ですのでご注意ください。
ホストの売掛トラブルに巻き込まれたら場合の対処法
ホストクラブとの売掛トラブルに巻き込まれた場合、恐怖や不安から冷静な判断ができなくなる方も少なくありません。しかし、感情的に動く前に、まずは取るべき正しい対処法を把握しておくことが重要です。
- ① 警察に被害申告をする
- ② 弁護士に相談・依頼する
① 警察に被害申告をする
危害を加えると脅したり暴力を振るって売掛の返済を求める行為は、恐喝罪に該当します。その他にも、無理やり借用書を書かされた場合は強要罪、勤務先に押しかけて借金の事実をバラされた場合には名誉毀損罪が成立する可能性もあります。
ホストに対する処罰を望む場合は、警察に被害届または告訴状を提出し、刑事事件として対応してもらうことが考えられます。
ただし、ホストが逮捕される(刑事責任)=売掛金の支払義務が帳消しになる(民事責任)というわけではありません。売掛金の支払問題も含めてしっかり解決したい場合には、次に紹介する弁護士への相談をおすすめします。
② 弁護士に相談・依頼する
ホストからの脅しや不当な請求で悩んでいる場合は、弁護士への相談を検討してください。専門家の視点から、返済義務の有無や対処方法について的確なアドバイスが得られます。
弁護士に相談・依頼することで得られる具体的なメリットについては、次のセクションで詳しく解説します。
ホストの売掛トラブルで弁護士に相談・依頼するメリット
ホストとの売掛トラブルに巻き込まれたとき、弁護士に相談・依頼することには次のような大きなメリットがあります。
まず、弁護士が介入することで、ホストやその関係者による違法な取り立てやしつこい連絡を法的に止めることができます。代理人がついたことを理由に、ホスト側が連絡してきた場合には、警告書の送付や法的措置による対応が可能となります。
さらに、請求されている売掛金について本当に返済義務があるのか、請求額が妥当なのかなど、契約書や証拠の有無、強要・脅迫の有無を含めて、弁護士が法的に精査します。結果として、返済不要と主張できるケースや、減額交渉が成立する可能性もあります。
また、精神的な負担を軽減できるのも大きな利点です。弁護士に依頼すれば、あなた自身がホストと直接やり取りする必要はなくなりますし、必要に応じて刑事告訴(恐喝罪・強要罪)や、民事での損害賠償請求も可能です。正当な権利を法律に基づいて主張する体制が整い、泣き寝入りせず安心して対処することができるようになります。
ホストの売掛トラブルを未然に防ぐには?
単純ですが、「売掛をしてまで注文しない」——これに尽きます。
ホストクラブに遊びに行くときは、使ってもよい分の現金だけを財布に入れ、クレジットカードは持参しないなど、自制の効く環境を作ることが重要です。
ただし現実には、担当ホストに恋愛感情を抱いていると、冷静な判断が難しい場合もあるでしょう。「あと少しでナンバーに入れる。応援してほしい」などと口説かれ、売掛に応じてしまう方も少なくありません。
しかし、ホストの中には、お客を自身の売上・給料アップのための道具としか見ていない人もいます。本当にお客を大切にしているホストであれば、「借金してまで応援してほしい」とは言わないはずです。
ホストから売掛を提案されたり、売掛を当然のように求める雰囲気を感じた時点で、そのホストとは距離を置くのが最も賢明な判断といえるでしょう。
ホストの売掛でお困りの方は当事務所にご相談を
「もう限界…」「怖くて家にも帰れない」「誰か助けてほしい」──そんな思いを抱えている方に、私たちは数多く寄り添ってきました。
ホストクラブとの売掛トラブルは、単なる金銭問題にとどまらず、精神的な圧迫や社会的信用への不安、そして身の危険すら伴う深刻な問題です。
当法律事務所では、これまでにも多数のホスト売掛案件を解決してきた実績があり、法的知見と経験に基づいた的確な対応で、依頼者の方をお守りしてまいりました。
当事務所の弁護士が介入することで、違法な取り立てや脅迫行為は直ちに停止させ、自宅・実家・職場への接触も法的に封じることが可能です。ご依頼後は、弁護士が窓口となって交渉・法的手続を一括対応いたしますので、依頼者の方がホストと直接やり取りする必要は一切ありません。
「誰にも言えない」「もう逃げられない」と感じている方こそ、今すぐ当事務所にご相談ください。あなたの不安を受け止め、解決に導く力が、ここにあります。
当事務所は、全国どこからでもご相談を受け付けており、親身かつ誠実に依頼者を全力でお守りいたします。無料相談を通じて、あなたにとって最善の道をご提案いたします。まずは一歩を踏み出すこと。それが、平穏な日常を取り戻す第一歩です。
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