
「ホストの売掛金が払えない」「この未収に本当に返済の義務があるのか」。そんな不安を抱えたまま、実家や職場に取り立てに行くと告げられている方もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、この請求には原則として支払い義務があります。ただし、時効や未成年など、法的に返済しなくてよいケースもあります。飛ぶ前に、まずご自身の状況が当てはまらないかを確認してください。
本記事では、ホストの売掛・未収トラブルに強い弁護士が、次の点を解説します。
- 支払い義務がなくなる6つのケース
- そのまま飛んだ場合に起こること
- 厳しい取り立てへの対処法と相談先
- 払えないときにやってはいけないこと
お読みいただくことで、ご自身のケースが当てはまるかを見分け、次に何をすべきかを整理できます。
なお、すでに厳しい取り立てを受けている方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
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そもそもホストクラブの「売掛(未収)」とは?
ホストクラブの「売掛」とは、その日の飲食代をその場で払わず、後日支払う約束のことです。「掛け」「ツケ」「未収」「未収金」など呼び方は店によりますが、指すのは同じ後払いです。
代金を先に払っているのは、多くの場合担当ホストです。担当が自分のお金で立て替え、回収できなければその分が給料から天引きされる店は少なくありません。「俺が困る」と言われて売掛金を重ねてしまう背景には、この事情があります。
売掛という仕組み自体が違法なわけではありません。もっとも近年は、2023年12月に歌舞伎町の多くの店が売掛制度の廃止を申し合わせ、2025年施行の改正風営法では色恋営業の禁止など悪質ホストクラブへの規制が強化されました。詳細は「2025年風営法改正のポイント|何が変わった?店舗経営者の対策」をご覧ください。
ホストの売掛金の支払い義務は?返済不要な6つのケース
売掛は後払いですから、客は原則として売掛金を支払う義務を負います。
もっとも例外もあります。契約を取り消せる場合、請求側が金額を証明できない場合、時効が完成している場合など、支払い義務がない、あるいは全額を払わなくてよいケースです。代表的な6つを挙げます。
- ①身に覚えのない請求や無理やり作らされた売掛
- ②売掛の証拠がない場合
- ③違法な利息や暴利といえる高額請求
- ④客が未成年だった場合
- ⑤恋愛感情を利用された場合
- ⑥消滅時効が成立している場合
①身に覚えのない請求や無理やり作らされた売掛
頼んでいないボトルが勝手に入っていた分は、契約が成立しておらず支払う理由がありません。
一方、席を立たせてもらえないまま無理やり注文させられた分は契約自体は成立しています。だまされたり脅されたりしたのなら取り消すことができ(民法96条1項)、取り消せば契約は初めからなかったことになって(民法121条)支払い義務は残りません。
ただし取消し後の清算は民法121条の2第1項の原状回復によります。飲食した分に見合う額を返す義務が残ることもあり、一切払わなくてよいとは言い切れません。伝票・レシート・当日のLINEが材料になります。
②売掛の証拠がない場合
裁判で売掛金を請求する場合、売掛金の事実と金額を証明する責任は請求する側のホストや店にあります。客が「頼んでいない」ことを証明する必要はありません。証拠になるのは次のようなものです。
- 借用書・念書
- 客のサインが入った伝票
- 金額のやり取りが残ったLINE
- 会話を録音した音声
サインのない伝票しかなくても、証言や防犯カメラの映像から店側の主張が認められることはあり、「証拠がなければ必ず払わなくてよい」とも言えません。逆に証拠が乏しければ請求が通らないこともあります。覚えのない注文を具体的に指摘することが減額につながります。
③違法な利息や暴利といえる高額請求
売掛金を分割で返すとき、ホストから利息を上乗せされることがあります。借用書などで貸金に組み替えたなら、次の上限がかかります。
- 利息制限法1条:元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%
- 出資法5条1項:年109.5%(1日0.3%)を超える利息は刑事罰の対象
- 出資法5条2項:業として金銭の貸付けを行う場合は年20%が上限
上限を超える部分の利息は無効で、超えた分を払う必要はありません。遅延損害金の上限は利息制限法4条(1条の1.46倍)、営業的な貸付けは同法7条の年20%です。出資法5条2項の「業として」は、反復継続して貸しているかで決まります。
組み替えがない場合でも、返せないと分かっている相手につけ込んで法外な額を負わせたのなら、公序良俗違反として無効を主張できる余地もあります(民法90条)。
④客が未成年だった場合
成年年齢は18歳ですので、ここでいう未成年とは18歳未満の人を指します。未成年者が親などの同意を得ずにした契約は取り消せます(民法5条2項)。飲食も契約ですから、注文時に18歳未満で同意がなかったなら取消しの対象です。
取り消された行為は初めから無効とみなされ(民法121条)、支払い義務はなくなり、すでに払った分の返還を請求できることもあります。しかも未成年者の返還義務は現に利益を受けている限度に限られるため(民法121条の2第3項)、飲食してしまった分の弁償は不要となる場合もあります。
ただし、18歳以上だと信じさせるため詐術を用いたときは取り消せません(民法21条)。もっとも年齢を黙っていただけでは詐術にあたらないと解されています。
⑤恋愛感情を利用された場合
担当への好意につけ込まれて注文させられた場合、消費者契約法4条3項6号で契約を取り消せることがあります。
条文が求めるのは、社会生活上の経験が乏しいために担当に恋愛感情を抱き、担当も好意を持っていると誤信したこと、担当がそれを知りつつつけ込んだこと、「注文しないと関係が終わる」と告げられ困惑して契約したことです。
これらは客の側で示す必要があり、とくに「社会生活上の経験が乏しい」といえるかが争点です。やり取りの履歴は残してください。
参考:ホストクラブなどにおける不当な勧誘と消費者契約法の適用について|群馬県ホームページ
⑥消滅時効が成立している場合
飲食代金を請求する権利は一定期間で消滅時効にかかります。現在の民法では、権利を行使できると知った時から5年です(民法166条1項1号)。発生時期で扱いが変わります。
| 売掛金が発生した時期 | 時効期間 | 根拠 |
| 2020年3月31日以前 | 1年または10年 | 店の飲食代金なら旧民法174条4号の1年、担当ホストの貸付けなら旧民法167条1項の10年 |
| 2020年4月1日以降 | 5年 | 民法166条1項1号 |
「ツケは1年」「ホストへの借金は10年」という説明が混在するのは、いずれも民法改正前の話だからです。
ただし期間が過ぎれば自動で消えるわけではありません。裁判を起こされれば完成が猶予され、一部でも支払ったり返済を約束したりすると時効は更新され、数え直しになります。効果を受けるには援用、つまり「時効が完成したので支払わない」と相手に伝える必要があり、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが確実です。
ホストの売掛金を払わずに飛ぶとどうなる?
支払いのあてがなくなると、連絡を絶って逃げる「飛ぶ」が頭をよぎります。しかし飛んでも売掛金の請求は消えず、生活が立ちゆかなくなるだけです。放置した場合に起こりうることを整理します。
- ①自宅や実家、職場への厳しい取り立てが続く
- ②闇金や消費者金融で借金するよう迫られる
- ③風俗や売春で働くよう迫られる
- ④裁判を起こされ、財産を差し押さえられる
- ⑤詐欺罪に問われることがある
①自宅や実家、職場への厳しい取り立てが続く
売掛金を作る際には、借用書に住所を書かされたり免許証の画像を渡していたりします。連絡を絶てば、担当ホストやその仲間が自宅まで来ることがあり、実家暮らしなら家族に知られるおそれもあります。電話番号からSNSや勤務先までたどられることもあり、「実家に行く」「職場にも行く」はハッタリとは限りません。
参考:電話番号から個人特定はできる?住所・氏名を割り出す3つの方法
店側が回収を業者に任せることもあります。弁護士や弁護士法人でない者が報酬目的で取り立てを業とするのは原則として弁護士法72条違反です。見知らぬ業者から請求が来たら、支払う前に弁護士に確認してください。
②闇金や消費者金融で借金するよう迫られる
売掛金の滞納が続くと、ホストから「消費者金融で借りてでも払え」と言われることがあります。ナイトワークの方は審査に通りにくく、断られると審査のない闇金を紹介されることもあります。
闇金から借りれば法外な利息を課され、返済が遅れれば激しい取り立てを受けます。悪質な風俗店やAVプロダクションに引き渡されることもあり、売掛金の問題が、より抜け出しにくい借金に置き換わるだけです。
③風俗や売春で働くよう迫られる
売掛金を返すあてがないと分かると、ホストからキャバクラや風俗店での就労をすすめられます。すでにナイトワークをしている方には、より高い報酬の業種への移籍や路上での客待ちを求めてくることもあります。
売春をさせる行為やその周旋・場所の提供は売春防止法が禁じており、脅して働かせれば強要罪にもあたりえます。改正風営法でも、支払いのために客を性風俗の仕事へ誘導する行為が規制されました。応じる義務は一切ありません。
④裁判を起こされ、財産を差し押さえられる
店側が売掛金の法的な回収に動くと、まず内容証明郵便で支払いを求めてくるのが一般的です。これ自体に強制力はありませんが、放置すれば支払督促や裁判に進み、判決などが出れば給与や預金口座を差し押さえられるおそれがあります。
その間も遅延損害金は加算され、請求額はさらに増えます(民法419条1項)。
弁護士名の内容証明が届いたときの対応は「弁護士からの内容証明・通知書の連絡を無視はNG!対応方法を解説」で解説しています。
⑤詐欺罪に問われることがある
売掛金を踏み倒して逃げる行為は、状況によっては詐欺罪(刑法246条1項)に問われます。同条は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めています。
問題になるのは、注文時に支払う気がまったくなかったといえるかどうかです。当初は支払うつもりで、その後に収入が途絶えて払えなくなったのであれば、人を欺いたとはいえません。もっとも、刑事責任を問われなくても支払い義務は残ります。
ホストから売掛金を請求され、払えないときの対処法と相談先
請求が始まったら、まず手元の記録を保存してください。伝票や請求書は写真に撮り、やり取りはスクリーンショットで残し、電話の内容は日付とともにメモします。支払い義務を争うときも警察に相談するときも、そのまま材料になります。次の5つを押さえてください。
- ①行政の相談窓口を利用する
- ②警察に被害を申告する
- ③弁護士に相談・依頼する
- ④債務整理・自己破産を検討する
- ⑤闇金・風俗・闇バイトでお金を作ろうとしない
①行政の相談窓口を利用する
弁護士に連絡するのはためらうという方は、まず公的な窓口を使ってください。費用は原則かからず、窓口によっては匿名でも相談できます。
- 消費者ホットライン「188」:契約トラブル全般の相談窓口
- 法テラス:無料法律相談・弁護士費用の立替制度
- 女性相談支援センター:住まいや生活の不安も相談できる
- 厚生労働省 悪質ホストクラブ対策:相談電話「#8778」などの案内
②警察に被害を申告する
取り立ての内容によっては、それ自体が犯罪です。危害を加えるとほのめかして支払いを求めれば恐喝罪、無理やり借用書を書かせれば強要罪、帰らせずに注文させれば監禁罪にあたりえます。売春の強要や闇金の違法な利息も刑事事件の対象です。
身の危険を感じるなら迷わず110番してください。継続的な被害なら警察署の生活安全課に相談し、被害届や告訴状の提出を検討します。
ホストが刑事責任を問われても売掛金の請求は残るので、並行して弁護士に相談してください。
③弁護士に相談・依頼する
弁護士に依頼する意味は、大きく4つあります。
1つめは支払い義務があるかの見極めです。6つのケースに当てはまるかは、伝票や履歴、当時の状況を突き合わせないと判断できません。払わなくてよい部分を先に確定させれば交渉の土台ができます。
2つめは、窓口を代われることです。弁護士が受任通知を送って連絡先を一本化すると、本人や家族への直接の連絡は事実上抑えられます。ホストクラブは貸金業者ではないため直接連絡が法律で禁じられるわけではありませんが、代理人がついた相手に無理を通す店は多くありません。
3つめは交渉です。支払い義務が認められる部分でも、金額の妥当性を争ったり、無理のない分割を求めたりできます。
4つめは、返しきれない場合に債務整理を検討できることです。ほかにも借入がある方は全体を見て方針を決める必要があります。
売掛金以外にも、色恋営業や暴行・脅迫など、ホストクラブのトラブルはさまざまです。詳しくは「ホストクラブのトラブルを弁護士に相談|よくある事例と対処法」をご覧ください。
④債務整理・自己破産を検討する
売掛金に加えて消費者金融やカードの返済も抱えるなど、収入から見て返しきれない状態なら債務整理を検討します。主な方法は次の3つです。
- 任意整理:債権者と交渉し、将来利息をカットして分割し直す
- 個人再生:裁判所を通じて負債を圧縮し、残りを分割で返す
- 自己破産:裁判所に免責を認めてもらい、返済義務から解放される
自己破産では、浪費で過大な債務を負ったことが免責を認めない理由(免責不許可事由)にあたる可能性があり、ホストクラブでの飲食代がこれに含まれると判断されることもあります。
ただし免責不許可事由があっても、裁判所の裁量で免責が認められることは少なくありません。あきらめる前に弁護士に相談してください。
⑤闇金・風俗・闇バイトでお金を作ろうとしない
追い詰められると、とにかく現金を用意しようとしがちです。しかし次の行動はいずれも事態を悪化させます。
- 闇金からの借入:違法な利息と取り立てで生活が立ちゆかなくなる
- 風俗店での就労・売春:現金は入っても担当への支払いが増え、悪循環になりやすい
- 闇バイト・美人局などの犯罪行為:自分が加害者となり、売掛金どころではなくなる
- 連絡を絶って放置する:請求は消えず、訴訟や差押えのリスクだけが高まる
本当に客を大切にするホストなら、借金をしてまで応援してほしいとは言いません。売掛金を求められた時点で距離を置くのが最も確実な予防策です。
すでに売掛金を払えない状況にある方は、これらに走る前に行政窓口や弁護士に相談してください。
ホストの売掛金の支払い義務に悩んだら一人で抱えず弁護士へ
ホストクラブの売掛金は、本来なら支払わなければならないお金です。ただしここまで見てきたとおり、取消しや時効で返済しなくてよくなるケースは珍しくありません。
ご自身のケースがどれに当たるかは、資料と経緯を読み解かないと判断できません。弁護士が窓口になれば、請求内容の妥当性を精査し、減額や契約の取消しを代理で主張できます。
すでに自宅や実家、職場への取り立てが始まっている方、脅しを受けている方、働き方まで指図されている方は、事態が進む前にご相談ください。弁護士が間に入れば相手との直接のやり取りは事実上止まり、ご家族や勤務先に影響が及ばないよう配慮しながら解決を進めます。
当事務所はホストクラブの売掛金トラブルを多数解決してきました。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。
