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性暴力総論と法的にできることにはなにがあるか

性的な言動により、相手の心や体を傷つけることを性暴力といいます。性暴力にはセクハラ、痴漢、望まない性行為などさまざまなタイプがあり、また女性・男性どちらも被害者になり得ます。さらに、夫婦間や恋人同士の間でも性暴力が成立するケースもあります。
ここでは性暴力にはどんなものがあるのか、さらに性暴力の被害について法的に何ができるのかについて解説します。「自分は被害者かもしれない」「自分の家族や友人が被害に遭っている」などシチュエーション的に当てはまることがありましたら、早めに専門家に相談することを検討しましょう。

目次

性暴力とは

性暴力とは、その人の意思に反して行われた性行為や性的な言動をさします。本来、いつ、どこで、誰とどんな性的な関係を持つかなど性に関する事柄は、当事者の自由な意思に任されるべきものです。
一方当事者の意思を無視して行われた性行為や性的な言動は、すべて性暴力になりえます。性暴力の被害者となる人に性別は関係ありません。女性だけでなく男性も被害者になりえます。また、配偶者や恋人といった親しい間柄でも性暴力は成立します。

性暴力にあたる行為

性暴力は、レイプなどに代表されるような性行為やわいせつな行為に限定されません。性的な発言をする、性交時に避妊をしないなどの行為も性暴力に含まれます。
一般的に「性暴力」といわれる行為には、次のようなものが含まれます。

望まない性行為

相手の意に反して行われる性行為(レイプなど)は、当然のことながら性暴力に含まれます。嫌がる被害者に対して無理やり性行為を行うレイプ、さらにお酒や薬で抵抗できなくなった人に対して性行為を行うことは、刑法上も強制性交等罪(刑法第177条)や準強制性交等罪(刑法第178条2項)にあたる重大な犯罪行為です。加害者には、刑法上も重い刑罰(5年以上の有期懲役)が科せられています。

わいせつ行為・痴漢

身体を触るなどのわいせつ行為や痴漢、盗撮も性暴力の一種です。こちらも、強制わいせつ罪(刑法第176条)、各都道府県が定める迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反(第1条第23号)や、各都道府県が定める迷惑防止条例違反どの犯罪が成立する可能性があります。

性的な言動・セクハラ

性的な言動やセクハラを行うことも性暴力に含まれます。実際に体を触るなどの行為に及ばなくても、相手が嫌がるような性的な発言をする行為はすべて性暴力の一種です。具体的にはスリーサイズや恋人の有無を聞く、性的な冗談を言ったりからかったりする、などの行為があてはまります。
刑法上の犯罪にあたらないケースも多いのですが、加害者に民事上の責任を問えるケースもあります。特に職場で起きた場合は立派なセクハラにあたりますので、社内の相談窓口や弁護士などに相談しましょう。

デートDV

デートDVは恋人間で起きる暴力等のことを指します。精神的・肉体的な暴力で相手を支配し、相手を自分の思い通りにしようとするのが特徴です。
内閣府の令和2年度「男女間における暴力に関する調査」では、女性の約6人に1人は交際相手から被害を受けた経験があり、被害を受けた女性の約4人に1人は命の危険を感じた経験があるとの調査結果が出ています。
身体的な暴行だけではなく、心理的攻撃や、嫌がっているのに性的行為を強要する、避妊をしないセックスを強要するなどの行為があります。

リベンジポルノ

リベンジポルノは相手への恨みから、相手が写った性的な画像をインターネット上にばらまく行為を指します。

リベンジポルノはリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)で犯罪化されており、加害者には刑事責任が発生します。

なお、相手の許可を得ないで裸の写真や性的な動画を撮影する行為は、それだけで性暴力であり、各都道府県が定める迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。

よくある事例

また実際に被害に巻き込まれやすいケースとしては次のようなものが挙げられます。

夫婦間・恋人間における望まない性行為や避妊をしない性行為の強要

夫婦間や恋人間でも、性暴力が問題になることがあります。
カップル間のコミュニケーションの1つとして性交渉は想定されるところではありますが、一方が望まない性行為を強要することは問題です。たとえば、セックスを拒むと暴力を振るう、避妊をしない性行為を強要するなどの行為が問題になることがあります。
避妊をしない性行為の強要には望まない妊娠や性感染症につながるリスクもあります。
また、性的な動画や画像を撮る行為は後々リベンジポルノの被害につながるリスクもあるため、特に相手の同意を得ないで撮影を行ったり、断れないような状況にして撮影を行ったりする行為は問題になりえます。

職場の上司や同僚、取引先からのセクハラ

セクハラは力関係を利用して、性的な嫌がらせを行うものです。悪質なものではレイプや性行為の強要、強制わいせつなどにつながる場合もあります。そうでなくても被害を受けた女性が精神疾患を発症したり、退職に追い込まれたりすることも多く、その被害は深刻なものです。加害者が自分より立場が上である場合も多いのですが、我慢していると相手の行動がエスカレートしてしまうおそれもあります。1人で悩まず、早めに信頼できる人に相談しましょう。

出会い系サイトやナンパでのトラブル

出会い系サイトやマッチングアプリ、パパ活、ナンパといった場を通して、望まない性被害を受けるケースもあります。薬やアルコールを使って抵抗が不可能な状態にされたところをレイプされる、ホテルに監禁される、といった被害も起きています。また出会い系サイトでやり取りしていた相手に脅され、裸や自慰行為の写真・動画を送るよう強要されるといったケースもあります。

性暴力の被害にあったときにできること

もし性暴力の被害にあった場合、被害者としては、性暴力の加害者に次のような責任を問うことができます。

刑事責任

性暴力の中には、刑法上、あるいは特別法上の犯罪にあたる行為も多く存在します。これらの犯罪行為があった場合、加害者に刑事責任を問うことが可能です。

民事上の責任

性暴力は当然違法な行為になりますので、加害者には民事上の責任も発生します。その場合、交渉や訴訟を通じて加害者に損害賠償請求を行い、慰謝料の支払いなどを求めることになります。

証拠を集める

加害者から性暴力を受けたことがわかる証拠を集めましょう。
刑事・民事いずれの責任を問う場合も、証拠があれば、警察も弁護士も動きやすくなります。
性暴力については、密室等人目のない場所で行われることから、目撃者の証言等の証拠を得られないことが多くあります。
レイプ等、望まない性行為に被害にあった場合は、すぐに産婦人科等の医療機関を受診しましょう。
また、時間経過により証拠が散逸すると捜査が困難となるため、犯罪に該当しうる性暴力があった場合には、早めに警察に被害を申告する必要があります。
セクハラ等については、繰り返し行われる場合には、セクハラが行われている状況を録音するなどして証拠化したり、加害者のSNSでの発言自体がセクハラと認められる場合もあるため、SNSでの証拠保全も検討しましょう。

1人で悩まず早めの相談を

性暴力のかたちにはいろいろなものがあり、中には精神的に追い詰められた被害者自身が被害にあったことに気づけないケースも存在します。「自分も被害にあっているのでは?」「友達が被害に遭っているかもしれない」と思ったら、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、弁護士など信頼できる人に相談しましょう。
また妊娠や性感染症が心配な場合、薬を盛られたことが疑われる場合などはすぐに医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。

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