「風俗店の店長から、高額な罰金を請求されています。払わなくてはならないのですか?」
風俗で勤務する、女性キャストやボーイ、ドライバーといったスタッフの方々から法律事務所に多く寄せられる質問です。
たしかに、風俗店との間で交わした契約書や誓約書の中に、以下のような行為をしたら罰金を支払う旨の条項が設けられていることがあります。
- ①店外デート(裏引き・じか引き)
- ②風紀違反(スタッフ間の交際)
- ③掛け持ち
- ④無断欠勤・当日欠勤・遅刻
- ⑤本番行為
- ⑥契約期間内の退店
では、書面で約束を交わした以上、罰金を払わなくてはならないのでしょうか?
結論を先にお伝えしますが、原則として、風俗のスタッフは店に対して罰金を支払う必要はありません。ただし例外的に、給料から罰金と同じ意味合いをもつ”制裁金”を減給されることはあります。
そこでここでは、①なぜ原則的には風俗店に罰金を払わなくて良いのか、②例外的に減給という形で罰金を課されるのはどのような場合なのか、この2点を中心に弁護士がわかりやすく解説していきます。
全部読み終えるのに5分ほどかかりますが、もし読んでもわからない場合や、罰金を請求されてお困りの方は弁護士に気軽に相談してみましょう。
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目次
なぜ風俗店に罰金を払わなくていいの?
罰金とはその名の通り、罰として支払わせるお金のことです。
デリヘルなどの風俗で本番をしても罰金を払わなくて良い理由で罰金の法的な支払い義務について詳しく説明されていますので簡潔に書きますが、罰金とは、国が国民に対して課す刑事罰です。
風俗店はただの民間企業に過ぎません。勝手に”お店ルール”を作って、違反したスタッフに刑事罰である罰金を課すことなどできないのです。
また、以下の法律で、使用者は従業員に罰金を課すことができないと明記されています。
労働基準法第16条 (賠償予定の禁止)
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
風俗店の従業員は、使用者に労働力を提供し、その見返りに賃金をもらっていますので、労働契約(雇用契約)を結んでいることになります。
そのため、労働基準法が適用されますので、もし入店時に店と交わした契約書や誓約書、念書等に罰金のことが書かれていたとしても、同法違反として無効(最初からなかったこと)になります。
つまり、原則的に罰金の支払い義務はありません。
例外的に、「減給」の形で罰金を課すことはできる
原則的に、風俗嬢やボーイ、ドライバーなどのスタッフに、風俗店が罰金を課すことができないことは既にお伝えしました。
しかし例外的に、「減給の制裁」、つまりは給与からの天引き(差し引くこと)という形で罰金を徴収することは可能です。
労働基準法第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
この条文によると、就業規則に書かれたことにスタッフが違反すれば、スタッフの給料から差し引く形で罰金を課すことができるということになります。
なお、「減給」ですので、給与から天引き(差し引くこと)のみが許されており、「今すぐこの場で制裁金を払え」と要求することは違法となります。
また、「制裁金」ですので、スタッフの違反行為に対する損害賠償という意味合いで罰金を給与から差し引くのは違法です。あくまでも、「次から、同じ違反行為をしないように」という制裁的(抑止力的)意味合いの場合のみ合法となります。
罰金の上限額は?
例えば、1日の平均賃金2万円を稼ぐ風俗嬢が、月に平均10日出勤したとします。1ヵ月の平均賃金は20万円です(減給をする月の直前3か月の賃金総額と総出勤日数から計算します)。
この例の場合、1回の減給額は最大で1万円(2万円の半額)、1ヵ月での減給額は最大でも2万円(20万円の10分の1)が上限です。
そのため、就業規則に「遅刻1回につき15000円の減給による罰金」と書かれていたとしても、1回の減給の上限額である1万円を越えているため無効です。
では、「遅刻1回につき5000円の減給による罰金」と就業規則に書かれていて、風俗嬢が10日の出勤日のうち5日間遅刻したとします。「5000円×5日=25000円の罰金ね」と風俗店から言われた場合はどうでしょうか。
たしかに「遅刻1回5000円の罰金」については、1回の減給の上限額である1万円は越えていません。しかし、25000円という金額は、1ヵ月の減給の上限額である2万円は越えています。そのため2万円を越える部分(25000円-20000円=5000円)については風俗店は”当月は”減給することができないのです。
ただし、この2万円という上限金額はあくまでも、その1ヵ月で減給できる上限です。そのため、残金5000円については翌月の給与から繰り越して減額することができます。
分割的制裁は可能?
例えば、「スタッフ同士の交際や連絡先交換、店外デートや掛け持ち、1ヵ月前に退店を申し出なかった場合、これらは減給としてそれぞれ罰金50万円」を就業規則に書かれていたとします。
この場合、これまでの説明によると、1回の違反行為に対する減給上限額である1万円を越えているため当然無効になります。
では、「~~これらは減給としてそれぞれ罰金50万円とし、毎月1万円ずつ50ヵ月減給する」と就業規則に書かれていたとすればどうでしょうか。
一見すると、1回の減給上限額、1ヵ月の減給上限額のどちらも越えていないため有効なようにも思えますが、やはり無効です。
1回の違反行為の制裁金を分割して、1回の減給上限額以内に収めたとしても、その分割制裁が単なる脱法行為である以上認められないのです。
就業規則に書かれていない行為については?
減給という形でスタッフの行為に罰金を課すには、その行為が風俗店の就業規則に書かれた内容に違反していなくてはなりません。
つまり、就業規則に書かれていない行為については罰金を課すことができないことになります。
例えば、ボーイが女性キャストと連絡先交換をした場合、就業規則にその行為が違反行為であり減額制裁について明記されていなければ、店は罰金を徴収することはできません。
就業規則に書かれてさえいればいいの?
就業規則に「〇〇したら減給による罰金」とさえ書かれていれば、どんな内容であっても罰金を課せるわけではありません。
例えば、「女性キャストと男性スタッフが一言でもプライベートな話をしたら日給の半分を罰金として給与から差し引く」と就業規則に書いてあったとします。
たしかに罰金による減給の上限内ではありますが、行為に対する罰が重すぎます。そもそも、単に会話を交わした程度で罰則を与えること自体が問題になるでしょう。
このように、罰金額が過剰である場合や、罰を与えることが不当である場合には、社会通念上の相当性を欠くとして、民法90条の公序良俗違反により罰金を課すことが無効になる可能性が高いでしょう。
風俗で罰金を請求されたら弁護士に相談
これまでお伝えしたように、風俗店から罰金を請求されても原則は支払い不要で、限定的に、減給という形で差し引かれるにとどまります。
しかし、悪質な風俗店であれば、法律を無視して、アナタを脅して金銭を取り立てようとするでしょう。
「罰金を払わないなら実家の親や学校に風俗勤務をばらすぞ」「逃げても追い込みをかけてやる」等々、残念なことにこのような被害が多く報告されています。
また、罰金という形ではなく、損害賠償という名目で多額の金銭を要求してくることも予想されます。
もし自分で対処できないようであればまずは弁護士に相談してみましょう。
不当な罰金の要求にどう対処すべきか、また、損害賠償の支払い義務が生じているのかといった法律的なアドヴァイスを貰うことができます。
また、弁護士は国から代理交渉権という権限を与えられており、弁護士に依頼することで、風俗店は、従業員やその家族、学校、昼の本業の勤務先等に連絡をすることを禁止されます。
もしそれを破れば、弁護士が即刻、刑事告訴や民事訴訟の手続きに入ることができますので、店側は従わざるを得ません。必要に応じて弁護士に交渉を依頼しましょう。
家族や勤務先、周囲の人に知られずに穏便かつ早急に解決を望むのであれば、当法律事務所にお気軽にご相談ください。親身誠実にあなたを全力で守ります。相談する勇気が解決への第一歩です。
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