このようにお考えではないでしょうか。
風俗嬢がお客からお金を借りる時には、「生活が苦しい」「親の借金を肩代わりしている」「学費が払えない」「携帯料金や家賃を滞納している」など様々な理由をつけて同情心を買い、お客の善意や風俗嬢に対する恋愛感情を利用します。
しかし、いざ貸したお金の返済を迫ると「あのお金はアナタが援助してくれたものでしょ?もらったものは返せない…」と贈与を主張してくることもあれば、突然連絡を断って音信不通になってしまうことも多々あります。
そこでこの記事では、風俗嬢との金銭トラブルに強い弁護士が、
- 風俗嬢に貸したお金を返させるための重要ポイント
- 風俗嬢に貸したお金を返させる方法
- 風俗嬢に貸したお金が返済された事例
などについて解説していきます。
なお、風俗嬢にお金を貸したが返してもらえずにお困りの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
風俗嬢に貸したお金を返してもらうための重要ポイント
贈与したものでないこと
風俗嬢に貸したお金を返してもらうためには、贈与したものではないことが必要です。
贈与とは、当事者の一方(贈与者=あなた)がある財産を無償で相手方(受贈者=風俗嬢)に与える意思を表示し、相手方の受諾によって成立することになる契約の一種です(民法第549条)。
贈与契約が成立すると、その財産の所有権は、相手方に移転してしまうため、後々になって「返せ」と主張しても返還を拒否されてしまいます。
このような贈与契約が成立するためには、当事者双方の意思の合致が必要であるため、一方だけの意思だけでは契約は成立しません。
しかし、自分では風俗嬢への貸金のつもりであったとしても、一定の場合に贈与であったと評価されてしまう可能性があります。
例えば、以下のような場合です。
- 返済期限の合意がない場合
- 無利子で金銭を交付している場合
- 契約書を作っていない場合
- 金額が高額な場合
無利子で貸渡している場合にも金利相当分には贈与していることになります。また、返済期限を指定せずに相手にお金を渡してしまうと、返済の予定のない金銭の交付であったと評価されてしまう可能性があります。いつでも好きなタイミングで返済できる状態や長期間返済が滞っていても問題ない状態の場合には贈与とされてしまうおそれがあります。
返済不可能なほど高額な場合やきちんと契約書を取り交わしていなかった場合にも贈与と主張されてしまうおそれがあります。
不法原因給付にあたらないこと
風俗嬢に金銭を支払ったことが不法原因給付にあたる場合には相手からお金を返してもらえません。
民法には、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と規定されています(民法第708条)。
「不法」とは、公序良俗違反のことを指します。性行為の対価としてお金を受け取る契約は売春契約・愛人契約として公序良俗に反し無効となります(民法90条)。公序良俗とは、「公共の秩序を守るための常識的な考え」を意味するところ、性行為(肉体関係)を相手方に提供して対価として金品を受け取る契約は公共の秩序を害すると考えられています。
不法な原因がある場合には、給付者において給付した物の不当利得返還請求ができなくなることの反射的効果として、給付物の所有権は受益者に帰属することになります。
そのため、給付者は所有権に基づく返還請求をすることができなくなるのです。
以上より、風俗嬢との性行為を条件として貸したお金については、返還請求をしたとしても認められません。
貸し借りの証拠が残っていること
風俗嬢に貸したお金を返してもらうためには、貸し借りの証拠が残っていることが重要です。
消費貸借契約(金銭の貸し借りの契約)の証拠となり得るものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 消費貸借契約書
- 借用書
- LINEやメールなどのメッセージ
- 振込明細書や取引明細書
- 会話の録音
貸し渡した金銭について返済の合意があったというためには、消費貸借契約が成立していることを主張・立証する必要があります。
消費貸借契約が成立するためには「金銭の交付」と「返済の合意」を証明する必要があります。
「金銭の交付」を証明するためには、風俗嬢にお金を振り込んだ際の振込明細書や通帳の取引明細、お金を貸渡すために引き出した出金記録が証拠となります。「返済の合意」を証明するためには、返済を受けた入金記録や預貯金通帳、風俗嬢から返済の猶予を求めるLINEやメールや会話・通話の録音などによって証明することができます。
風俗嬢に貸したお金を返させる方法
風俗嬢が貸したお金を返してくれない場合には、以下のような対処法をとることができます。
話し合いによる交渉
まずは、風俗嬢との話し合いによって貸したお金を返済するように交渉することになります。
話し合いの方法として、電話や直接会って口頭で風俗嬢に貸金の返済を要求することができます。口頭で返済を要求する場合には、こちら側の真剣度合いや緊急性を伝えることができます。「以前貸した〇〇万円について」「〇〇までに返済して欲しい」ということを正確に伝えることが重要です。あくまで冷静に、こちらも困っているということを感情的にならずに伝えることが適切です。
また、LINEやメール、書面のやり取りで風俗嬢に返済を請求することもできます。この場合には、テキスト・文書という形で残ることになるため、事後的に言った・言わないという言い争いを回避できる可能性があります。
風俗嬢に送る文面によっては、非常に冷たい印象を与えることになるため、どのような請求の仕方をとるのかは、相手との関係によって工夫する必要があるかもしれません。
なお、風俗嬢がお金を「借りている」ことをはっきりと認めている場合や借用書が存在する場合には、LINEやメール、書面等で請求することに問題はありませんが、そうでない場合には、口頭で請求する方法をお勧めします。
風俗嬢に騙された!詐欺罪は成立する?お金は取り戻せる?に書かれていますが、LINEやメール、書面等で請求をすると、風俗嬢に返答内容を考える間を与えてしまいます。周囲に相談して「借りたのではなく贈与されたと主張すべき」といった入れ知恵をされるおそれもあります。
そのため、風俗嬢と借用書を交わしている、あるいは、風俗嬢がお金を借りていることを認めるLINE等のやり取りが残っている場合の除き、口頭で貸金の返済を求め、その時の会話をしっかりと録音しておくようにしましょう。
裁判所を介した請求
通常訴訟
風俗嬢に貸したお金が60万円を超える場合には通常訴訟により返済を求めていくことになります。
通常訴訟とは、個人の間の法的な紛争、主として財産権に関する紛争の解決を求める訴訟を指します。貸金の返還についても通常訴訟の典型例です。
訴訟の提起は、風俗嬢の住所を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に対して行うことになります。請求金額が140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円を超える場合には地方裁判所に提起することになります。
通常訴訟の第一審における手続きの流れは以下のとおりです(原告:男性 被告:風俗嬢)。
- 原告が訴状を提出して訴訟を提起する
- 裁判所が訴状を審査する
- 第1回口頭弁論期日の指定・呼び出し
- 被告に訴状が送達される
- 被告から答弁書が提出される
- 口頭弁論期日/弁論準備期日等の開催
- 証人尋問/本人尋問などの証拠調べの実施
- 和解による解決を検討
- 和解/判決の言い渡しにより終結
このように、訴訟を提起する場合には、当事者が証拠に基づいて主張・立証を行うことになり、最終的には裁判所が判決という形で原告の請求の可否を判断します。訴訟手続きの場合には、それ以外の手続きよりも厳格な証拠が要求されることになるため、借用書や風俗嬢とのお金の貸し借りに関するやり取りが残っているかどうかで明暗が分かれる可能性もあります。
通常訴訟の場合には、解決までに数か月〜1年程度の時間がかかる可能性があり手続きや必要書類も複雑になるため、弁護士に依頼して対応を任せた方が良いでしょう。
少額訴訟
風俗嬢に貸したお金が60万円以下の場合には少額訴訟を利用することができます。
少額訴訟とは、民事訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用することができる手続きです。
通常訴訟とは異なり、原則として1回の期日で審理を終えて判決を得ることができるため早期解決が期待できる手続きです。少額訴訟では、原告の言い分が認められる場合であっても、「分割払い」や「支払猶予」、「遅延損害金免除」などの判決が下されることもあります。また、少額訴訟の途中で和解をすることができ、話し合いで解決をすることも可能です。
少額訴訟の判決書または和解の内容が記載された和解調書については、通常訴訟と同じ効力がありますので、風俗嬢が異議を申し立てなければ強制執行の申立てを行うことが可能です。少額訴訟の判決・和解調書等については、判決等をした簡易裁判所において金銭債権に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができます。
また、少額訴訟について、不服申立てを行うためには異議の申立てのみが認められており、通常訴訟のように控訴することはできません。
支払督促
貸したお金を返さない風俗嬢に対しては、支払督促という制度を利用することもできます。
支払督促とは、金銭の支払いを求める場合に相手方の住所を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てる手続きです。支払督促の制度は書類審査のみであるため、通常訴訟のように審理のために裁判所に出廷する必要はありません。また所定の手続手数料についても通常訴訟の半額で利用することができます。
支払督促が風俗嬢に発せられて、風俗嬢が受け取ってから2週間以内に異議申立てをしなければ、裁判所は債権者の申立てにより仮執行宣言が付されます。債権者はこの仮執行宣言が付された支払督促に基づいて強制執行の申立てすることができるのです。
差し押さえ
判決等によって請求が認められたにもかかわらず、風俗嬢が貸したお金を返さない場合には、強制執行により風俗嬢の財産を差し押さえることができます。
強制執行とは、債務名義で認められた請求権を、国家が強制力を用いて実現する手続きのことを指します。したがって、風俗嬢が借金を踏み倒そうとしても強制的に相手の財産から返済を受けることができます。
強制執行を行うためには、上記の訴訟手続きを経たうえで、判決などの「債務名義」を得ておくことが必要となります。また、強制執行を申し立てるためには、風俗嬢の預貯金口座や勤務先等の差し押さえる財産の情報を知っておく必要があります。
風俗嬢に貸したお金を返させるときの注意点
氏名・住所がわからないと請求ができない
風俗嬢がお金の貸し借りについて任意での話し合いに応じない場合には、内容証明郵便を送るにしても、訴訟を提起するにしても風俗嬢の氏名や住所を特定しておく必要があります。
しかし、風俗嬢の場合、顧客は風俗嬢の源氏名しか分からないというケースも多いでしょう。
仮に氏名を聞き出したとしても偽名や通称名を使っている可能性もあります。また、風俗嬢の自宅住所を知っている客はまずいないため、相手を特定しないことには法的な手続きをとれないおそれがあります。
もっとも、後述するように、風俗嬢の携帯番号や口座番号が分かっている場合には、弁護士に依頼することで風俗嬢の氏名や住所を特定することも可能です。
なお、探偵事務所や興信所に素行調査を依頼して、勤務先風俗店から自宅に帰宅するまでを尾行し、住所を判明させる方法も考えられます。ただし、マンションなどの集合住宅では部屋番号が判明しないケースもありますし、表札がなければ風俗嬢の本名もわからないでしょう。また、探偵・興信所の調査費用が貸したお金を上回ってしまうことも珍しいことではありませんので、まずはお金を貸した風俗嬢に関する手持ちの情報をもとに氏名や住所を判明させることができないか、弁護士に相談するようにしましょう。
返済する資力が残っていないことも
民事訴訟などを提起して勝訴判決を得たとしても、風俗嬢に何の財産もない場合には、お金を回収できない可能性があります。
借金を返済する資力が残っていない債務者が相手の場合には、手間や労力をかけて訴訟をしても強制執行による回収が期待できません。
そのような場合には、引き当てとなる財産を発掘したり、債務者の負債を肩代わりしてもらえる相手を見つけたりすることが有効な場合もあります。
違法な取り立てをすると罪に問われることも
違法な取り立てには注意する必要があります。
例えば、風俗嬢の勤務先に押しかけて取り立てをする場合には、業務妨害や名誉毀損に該当する可能性があります。
業務妨害罪に問われると、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に科されます。名誉棄損罪に問われると、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金に科されます。
風俗嬢に貸したお金を返してもらえないからと言って、SNSなどに暴言や誹謗中傷するコメントを書き込むと、脅迫罪や名誉棄損罪に問われるおそれがあります。貸したお金を返してくれない場合であっても、違法取り立てをすると、逆に顧客側が犯罪に問われてしまうおそれがありますので絶対にやめましょう。
風俗嬢へ貸したお金の請求を弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば、お金を貸した相手である風俗嬢の氏名や住所を特定できる可能性があります。
風俗嬢の個人携帯の番号や銀行口座の情報が分かれば、弁護士会照会を利用して契約者の氏名や住所を開示してもらえる可能性があります。
弁護士会照会制度とは、弁護士が職務を円滑に行うために、弁護士法23条を根拠として、公私の団体(企業も含む)に対して必要とする情報を調査・照会する制度です。照会を受けた相手方は原則として回答する義務を負います。
風俗嬢の身元の特定方法については、風俗嬢の住所と氏名を特定する3つの方法【お金を取り戻そう】に詳しく書かれていますので参考にしてください。
また、風俗嬢に資力がない場合であっても、弁護士が交渉することで、任意での分割での返済に応じさせることができるケースもあります。弁護士に対応を任せておくことで違法な取り立てが問題となることも回避できます。
ただし、法律の専門家である弁護士に債権回収を依頼すると弁護士費用がかかります。風俗嬢に貸したお金を弁護士費用が上回ってしまえば本末転倒になりますので、弁護士と相談する際に弁護士費用や貸したお金の回収可能性についてもしっかりと確認した上で、依頼するかどうかを検討する必要があるでしょう。
風俗嬢に貸したお金を回収できた事例
相談内容
Aさん(男性・会社員・40代)は、ソープランドで出会った風俗嬢(20代)と仲良くなり、月に数回の客としてサービスの提供を受けていました。
ある時、Aさんは風俗嬢から家賃の支払いが滞っていると相談され20万円を貸しましたが、その後も会うたびにお金を無心され、合計400万円を貸して渡してしまいました。
しかし、風俗嬢はいつまで経っても貸したお金を返済してくれないため、Aさんが催促したところ音信不通になってしまいました。
困ったAさんは、お金を回収するために弁護士に相談することにしました。
解決結果
弁護士が介入して交渉したところ、36か月の分割支払いで、貸金の8割以上を回収することができました。
弁護士の対応
Aさんは金銭を貸渡す際に、メモ帳を使用して、家賃の分を含めた借用書を作成し、風俗嬢に署名を求めていました。さらに風俗嬢の住所も控えていました。
そこで、事件の依頼を受けた当事務所の弁護士は、住民票の調査など必要な情報を取得し、風俗嬢を特定し内容証明で借金の返済を請求しました。しかし回答の期限までに相手方からの連絡は一向に来ませんでした。
その後風俗嬢に何度か連絡を試みると、風俗嬢から弁護士を付けたと連絡がありました。改めて、風俗嬢の弁護士と交渉を進めるも、依頼人(風俗嬢)は資力もなく支払えるのはせいぜい数十万と反論してきました。
Aさんは到底納得することができませんでしたので、民事通常訴訟に移行することとなりました。
貸金返還請求訴訟で相手方は金銭の受領自体は認めておりましたが、不法原因給付である旨主張してきました。こちら側はLINEでのやり取りや、借用書などしっかりした証拠があったため有利に訴訟を進めることができました。
結果として、風俗嬢と和解が成立し、月々の分割ではありますが、貸金のほとんどの回収に成功することができました。
まとめ
風俗嬢にお金を貸したのに返してもらえない・借金を踏み倒されそうになっているという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
貸金の返還請求には時効があります。また、過度な取り立ては違法として法的な責任を追及されてしまうおそれもあります。
したがって、債権回収に強い弁護士に依頼することが賢明です。弁護士に貸したお金の取り立てを依頼すれば、風俗嬢と音信不通になった場合でも、氏名や住所を特定できる可能性も高まります。
当事務所では、風俗嬢との借金トラブルや借金の踏み倒し被害の解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。お力になれると思います。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
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