自宅にデリヘルを呼び、本番行為で300万円の示談書にサインしてしまった方からの相談です。
本来は一度締結した示談の内容に変更を加えることはできませんが、あまりにも不当に高額な金額であったため弁護士が無効主張した事案です。
300万円の示談契約を無効扱いにできたのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
※プライバシー保護のため、相談内容の一部に変更を加えています。
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【相談内容】示談をやり直して示談金を下げて欲しい
先日、自宅にデリヘルを呼び、サービスを受けている途中で意図的ではなかったのですが挿入してしまいました。慌てましたが、女の子が何も言ってこなかったことからそのまま最後までしてしまいました。
成り行きで挿入してしまったので避妊はしていませんが外に出しました。女の子は騒ぐこともなく、「気持ちよかったね」と言って普通に帰って行きました。
しかし30分ほど経過してから風俗店の店長から電話があり、「女の子が本番強要されたと泣いて帰ってきましたよ。悪質な行為なので警察に行こうと考えています」と伝えてきました。
たしかに女の子の許可はありませんでしたが、拒否された事実もないため、「無理矢理やってない」と店長に伝えました。
しかし店長は、「いきなり本番をされて、怖くて何も言えなかったと本人は言っている。これは強姦だ。どうしてくれる」とさらにまくしたててきます。
自分の言い分が通ることはないと諦めた私は「警察だけはやめてください」と答えました。
自分には家族がいますし、穏やかな生活を送っています。強姦で警察に逮捕されてしまえばその後どうなるのか、考えただけでも血の気が引く思いでした。
「警察に行かれたくない気持ちはこっちにもわかる。じゃあ示談しましょう。後日店に来てください」と店長に言われ、その日は電話を終えました。
後日、指定された住所に赴くと、そこはデリヘルの事務所のようでした。中の応接室のようなところで店長と顔を合わせました。
店長は、私の名前を確認すると何やら書類を出してきました。よくみるとそれは領収証がコピーされたものです。
「証拠を残すために女の子には病院に検査に行ってもらってます。その時に陰部にケガをしていたので治療もしました。その領収書と、アフターピルの領収書です」と店長が説明してきます。
店長の話によれば、あの後から女の子は出勤して来ていないとのことで、あの本番行為がショックだったに違いないとのことでした。
「本当は女の子の気持ちも考えると、自分を警察に突き出してしかるべき罰を受けさせたいところだが、アナタにも家庭や仕事があることを考慮してなんとか気持ちを抑えた。」
「女の子は300万円なら示談で手を打つと言っている」
そう店長から言われました。
さすがに示談金として300万円というお金は大きすぎるのではないかと感じ、返事ができずに黙っていたところ、「アンタのやったことはレイプ!本来なら300万で済む話じゃないんだよ?もう面倒くさいし、こっちも暇じゃないんで警察行くか?」と強い口調で言われました。
この交渉を拒めば、警察に逮捕されるのではと怖れた私は、「わかりました」といって示談書と書かれた書面にサインしました。
その後帰宅していろいろ調べてみたのですが、300万円という示談金は私のケースでは不当に高いことを知りました。示談交渉をやり直し、示談金を引き下げることはできないのでしょうか。
【解決の流れ】示談の無効主張をし、改めて示談
今回は示談金として300万円を要求され、依頼者もそれに応じています。原則として一旦示談で合意してしまえば、同じ内容で改めて示談をやり直すことは困難です。
しかし、風俗での本番は強姦罪等の犯罪で警察に逮捕されるかで詳しく書かれていますが、暴力や脅迫を用いて本番に及んだわけでもなく、強制性交等罪(旧強姦罪)にも該当しません。
風俗嬢の抵抗もない本件の事案では、怪我したことや避妊をしていなかったこと、それによる治療費や検査費用が発生したことを考慮に入れても30万円~50万円が示談金としては妥当ではないかと弁護士の経験上判断しました。
※怪我をさせた場合、民事とは別に刑事事件の問題が生じることがあります。風俗嬢に怪我をさせてしまったらどんな罪?どう対処すべき?も合わせて読むことをお勧めします。
相手の窮迫や知識不足に乗じて、相手の行為に比して不均衡な利益を得る行為は、”暴利行為”として公序良俗違反で無効となります(民法90条)。
依頼者と相談した結果、自分にも非があることを認め、医療費と慰謝料を合わせて50万円は支払っても構わないとのことでした。但し、50万円を越えるようであれば裁判になっても構わないので争って欲しいとの希望もありました。
そこで、公序良俗違反を根拠に、示談書の効力取り消しと、50万円での示談のやり直しを先方に要求しました。
300万円から50万円へと示談金を引き下げられたことに当初は憤慨していた店長も、裁判沙汰になれば勝ち目がないことを理解し、風俗嬢と話し合ったうえで50万円の示談締結に了承しました。
店長が風俗嬢の代理人として示談書を交わすとの希望があったため、必須である風俗嬢から店長への委任状を用意してもらい、前回の示談書を破棄したうえで新たに示談書を作成し、無事解決に至りました。
後日、依頼者に対してデリヘル及び風俗嬢からの連絡や請求は一切ありません。
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