
「内縁関係を解消するとき、これまで一緒に築いてきた財産はどうなるのだろう…」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
内縁関係であっても、法律婚と同様に財産分与を請求でき、分与の割合も原則2分の1です。ただし、内縁のパートナーと死別したケースでは財産分与は認められず、生前からの備えが必要になります。
この記事では、内縁関係の解消に伴う財産分与について、内縁問題に強い弁護士が次の点をわかりやすく解説します。
- 内縁でも財産分与を受けられるのか
- 財産分与の対象になる財産と割合
- 請求できる期限(2年・5年)と請求方法
- 死別したときに財産を残すための対策
なお、内縁関係の解消に伴う財産分与について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご検討ください。
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内縁関係の解消でも財産分与は受けられる
内縁関係とは、役所に婚姻届を提出せず、法的な婚姻関係にはないものの、法的な婚姻関係にある夫婦同様に共同生活を送っている男女の関係のことをいいます。役所に婚姻届を提出し受理され婚姻した「法律婚」に対して「事実婚」と呼ばれることもあります。
財産分与とは、法律婚の夫婦が離婚する場合に、婚姻中に夫婦が協力して築き上げてきた財産を、それぞれの貢献度に応じて分配することです。
財産分与は、本来、法律婚の夫婦が離婚する場合に認められる権利です(民法768条)。もっとも、最高裁判所(平成12年3月10日決定)は、内縁関係を解消する場合でも財産分与を受けられるという考え方を認めており、その判断のなかで次のように述べています。
内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得る
ここでいう「類推適用」とは、内縁を直接定めた条文がなくても、趣旨の近い離婚時のルールをあてはめる、という法的な考え方です。
ただし、財産分与をしたくない相手から「内縁関係にはなかった」と反論された場合には、内縁関係が証明できないと財産分与請求が認められない可能性があります。内縁関係にあったことを証明するための証拠については、内縁関係を証明する方法と11の書類・証拠を解説をご覧になってください。
財産分与の対象となる財産はどこまで?
内縁関係の解消で財産分与の対象となるのは、内縁関係が成立してから解消されるまでの間に、夫婦が協力して形成した財産に限られます。
内縁関係成立後に取得した財産であれば、名義や夫婦のいずれが財産を形成したかは問われません。たとえば、夫が会社員、妻が専業主婦の場合で、主に夫の給与や賞与が振り込まれている夫名義の銀行口座の預貯金も財産分与の対象となります。これは、たとえ専業主婦であったとしても財産を築くことを陰で支えており、財産形成への貢献度は等しいと考えられているためです。そのため、財産分与の割合は原則的には内縁の夫婦共2分の1です。
他方で、内縁関係成立前から夫婦の片方が所有していた財産や、夫婦の片方が自身の親族の死亡で相続により得た財産など、夫婦の協力によって形成されたものではない個人的な財産(特有財産といいます)は財産分与の対象とはなりません。
財産分与の対象となるものとして、例えば、
- 現金・預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 保険解約返戻金
- 車
- 退職金
- 家財道具
などが財産分与の対象となります。
ただし、財産分与の対象となるのは、預貯金などのプラスの財産のみならず、住宅ローンや生活・子供の教育のための借金などのマイナスの財産も対象となる点に注意が必要です。
なお、離別に伴う財産分与として受け取った財産には、夫婦が協力して築いた共有財産の清算という性質から、原則として贈与税は課されません(分与された額が不相当に過大な場合などには課税されることがあります)。
内縁の財産分与の期限(時効)は2年?5年?
法律婚では、離婚による財産分与の請求権に期間制限があり(民法768条2項)、内縁関係の場合も、内縁関係を解消したときから同じ期間内に請求する必要があります。この期間は、2024年の民法改正で2年から5年に延長され、改正法は2026年4月1日に施行されました。
そのため、内縁関係を2026年4月1日以後に解消した場合は、類推適用により、解消したときから5年以内であれば財産分与を請求できると考えられます。他方、2026年3月31日以前に解消していた場合は、改正法の経過措置により、従来どおり解消から2年以内が請求できる期間です。
「内縁関係を解消したとき」とは具体的にどのような場合をいうのかについては、内縁が事実状態であることから、同居を解消した時点とするのが一般的な解釈です。つまり、内縁の財産分与は、別居した時を起算点として、上記の期間が経過すると請求できなくなります。
なお、この期間制限の性質は、消滅時効ではなく、除斥(じょせき)期間であると考えられています。消滅時効であれば、援用(時効完成により利益を受ける者が時効完成を主張すること)を行う必要がありますが、除斥期間の場合には期間の経過により当然に権利が消滅すると考えられています。また、除斥期間は消滅時効と違い、期間の進行を中断させることはできません。もっとも、期間の経過後でも相手が任意に応じてくれる場合には財産分与をすることができます。
内縁関係で別居した場合の生活費や財産の扱いについては「内縁関係で別居したらお金はどうなる?よくある疑問も解説」もあわせてご確認ください。
財産分与の方法は?
相手に財産分与を請求するには、まず、内縁関係の成立後に取得した財産をすべてリストアップします。前述のとおり、財産分与はプラスの財産のみならずマイナスの財産も対象となりますから、両方をすべてリストアップしましょう。
リストアップする際は財産の裏付けとなる資料(預貯金であれば通帳の写し、借金であれば償還表など)を集めておきます。すべての財産を把握できたら、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて割り出した財産が財産分与の対象となる財産です。
不動産や自動車など単純に半分ずつで分けることができない財産は、専門業者に依頼して評価額を出してもらった上で、売却して余ったお金を半分ずつ分け合う、いずれかが所有し評価額とローンの残高との差額分の半分を分け合う(いずれもアンダーローンの場合)などの方法を取る必要があります。
財産分与の対象とできる財産を把握できたら、まずは話し合いで財産分与の割合を決めます。話し合いで合意できればその内容で財産分与をすることができます。ただし、後で言った言わないと揉めないよう、口約束ではなく、合意内容を公正証書などの書面に残しておくようにしましょう。
話し合いで話がまとまらない場合は、家庭裁判所に対して「内縁関係調整調停」を申し立てて、調停委員を間に入れて話し合いを行います。それでも、話がまとまらない場合は自動的に審判へ移行し、裁判官から判断を示されます。財産分与以外も含めた内縁解消の全体像については「内縁関係を解消する時の注意点と別れてくれない場合の対処法」で詳しく解説しています。
財産分与で話がまとまらない場合の内縁関係調整調停とは
上記で、内縁関係調整調停について触れましたが、ここでもう少し詳しく見ていきましょう。
内縁関係調整調停とは?
内縁関係を解消する際、当事者だけの話し合いでは条件が折り合わない、あるいは相手がそもそも話し合いに応じてくれないというケースもあります。そうしたときに利用できるのが、家庭裁判所の「内縁関係調整調停」です。
調停では、中立的な立場の調停委員が当事者の双方から交互に事情や希望を聞き取り、争点を整理したり解決案を示したりしながら、合意に向けた話し合いを取り持ちます。
話し合える範囲は内縁関係の解消そのものにとどまりません。解消に伴う財産分与や慰謝料といったお金の問題もあわせて取り上げられます。財産の分け方をめぐって対立しているケースだけでなく、内縁を解消するか自体を迷っている段階でも申し立てられます。内縁解消時の慰謝料について詳しくは「内縁関係でも慰謝料請求できる4つのケースと相場・方法を解説」をご参照ください。
調停の流れ
内縁関係調整調停は、おおむね次のような流れで進みます。
- 内縁関係調整調停の申立て
- 家庭裁判所から調停期日の連絡・呼出状が届く
- 第1回調停期日
- 第2回以降の調停期日
- 双方が合意に達すれば調停成立により終了
- 合意ができなかった場合には調停不成立により終了
調停期日は、1か月に1回程度の頻度で必要に応じて次回期日が指定されることになります。期日間で双方が調停委員会を介して、意向や主張を伝えて話し合いを進めていくことになります。
調停の申立ての概要
申立の概要については、以下のとおりです。
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申立人 |
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申立先 |
相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
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申立に必要な書類 |
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申立に必要な費用 |
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なお、内縁関係の解消に際して子供がいる場合には養育費の問題も生じます。具体的な請求方法については「内縁関係解消後に内縁の夫に養育費を請求できる?請求方法を解説」をご覧ください。
内縁関係で死別した場合の財産分与は?
死別の場合は財産分与を受けることはできない
内縁関係にある相手がお亡くなりになった場合は、財産分与によって財産を分けてもらうことはできません。財産分与は「離婚」を契機として夫婦で協力して築いた財産を清算して分配することであるためです。
死別の場合に財産を引き継ぐ契機となるのは「財産分与」ではなく「相続」です。しかし内縁配偶者は法定相続人ではありませんから、基本的には相手との死別によって遺産相続をすることもできません。
先ほど紹介した最高裁判所(平成12年3月10日決定)も、死亡によって内縁が解消した場合には民法768条を類推適用できないと判断し、亡くなった相手に対する生存配偶者からの財産分与請求を否定しました。同決定は、その理由を次のように述べています。
死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところ
つまり、内縁関係の夫婦の一方が死亡した場合、もう一方は財産分与も相続も受けられず、原則として一切の財産を引き継げません。
ただし、以下のような方法を生前または死後に取っておくことで、死別の場合でも財産を引き継ぐ余地があります。
死別の場合でも財産を引き継ぐための対策
相手に遺言書を作成してもらう
相手が作成する遺言書の中に、内縁配偶者であるあなたに財産を引き継ぐ旨の文言を入れてもらえば、あなたも遺産を取得できます。
もっとも、法定相続人の中でも被相続人の配偶者や子供には、遺産の最低限の取り分である「遺留分」が確保されています。遺言書の内容が遺留分を侵害していると、被相続人の配偶者や子供から「遺留分を侵害している分は返して欲しい」という請求を受ける可能性があります。
また、遺言書の内容によっては、被相続人の配偶者や子供らと遺産分割協議に参加しなければならず面倒なことになります。遺言書の書き方には注意が必要ですので、弁護士に遺言書の作成を依頼することをお勧めします。
生命保険金、死亡退職金の受取人に指定してもらう
相手の死亡によって発生する生命保険金は、受取人を特定の人に指定している場合は、その人の固有の財産となり、相続の対象となる財産(=相続財産)とはなりません。すなわち、生前、内縁関係にある相手に、内縁配偶者であるあなたを生命保険金の受取人と指定してもらえれば、相続とは無関係にあなたが保険金を受け取れます。
また、死亡退職金についても、相手が勤める会社の退職金規定に内縁配偶者であっても受取人となることができる旨の規定が設けられている場合は受け取ることができます。
なお、生命保険金と死亡退職金は、相続税上は「みなし相続財産」となり、内縁配偶者の場合は非課税枠の適用がないことなどから、相続税の負担が生じる可能性が高い点にも気を付けておきましょう。
生前贈与を受けておく
生前贈与とは、生存している間に財産を別の者に贈与することです。内縁関係の夫婦の一方が他方に生前贈与をしておくことで確実に財産を残してあげることができます。
ただし、生前贈与をした方が亡くなった後で、その法定相続人から本当に生前贈与があったのかどうか疑われて揉めることもありますので、贈与契約書を作成しておくべきでしょう。
また、年間で110万円を超える贈与を受けた場合は贈与税が課税されます。一括で多額の生前贈与を受けると高額な贈与税を負担しなくてはならない可能性があるため注意が必要です。
特別縁故者になる
特別縁故者とは、被相続人に配偶者や子供などの法定相続人がいない場合に、被相続人と一定の身分関係にあり、かつ、家庭裁判所によって被相続人の財産を引き継いでもよいと認められた方のことです。
内縁関係者も一定の身分関係があった者として、特別縁故者になれる可能性があります。
特別縁故者として被相続人の財産を引き継ぐには、被相続人に相続人がいないと確定してから3か月以内に、家庭裁判所に対して申し立てを行う必要があります。
また、内縁の相手と死別した場合には、遺族年金を受け取れる可能性もあります。詳しくは「遺族年金を内縁(事実婚)の妻が受給する条件と必要な証明書類」で解説しています。
内縁関係の財産分与でお困りの方は弁護士にご相談ください
内縁を解消するときは、法律婚の離婚と同じように財産分与を求めることができます。一方で、相手が亡くなったときには財産分与も相続も認められないため、遺言書の作成や生命保険の受取人指定といった生前の備えが欠かせません。
内縁関係の財産分与では、対象財産の把握や評価、相手との交渉、内縁関係の証明など、法的な知識と交渉力が求められる場面が多くあります。特に相手が財産分与に応じない場合や内縁関係の成立自体を争う場合には、弁護士のサポートを受けることで適切な解決が期待できます。
内縁関係の解消をめぐる問題は、精神的な負担も大きいものです。すでに別居をしている場合や、相手と財産の分け方で折り合いがつかない場合には、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
当事務所では、財産分与や慰謝料請求の交渉から、調停・審判・訴訟の代理、遺言書や贈与契約書の作成まで、経験豊富な弁護士が幅広く対応しております。全国どこからでも無料相談をご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

