これから内縁関係にある夫(妻)と内縁を解消する場合、
と考える方は多いでしょう。
法律婚の夫婦と同等、あるいはそれ以上に、親密に共同生活を送ってきた内縁関係の男女も多いでしょうから、上記のような疑問を抱くことも当然といえます。
結論から言うと、内縁関係を解消する場合であっても、解消から2年以内であれば内縁の妻(夫)は財産分与を受けることができます。ただし、内縁の夫婦の一方が亡くなった場合には、財産分与を受けることはできません。
この記事では、上記内容につき、内縁問題に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
なお、内縁関係の解消に伴う財産分与でお困りの方で、この記事を最後まで読んでも問題解決しない場合には、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
内縁関係の解消でも財産分与は受けられる
内縁関係とは、役所に婚姻届を提出せず、法的な婚姻関係にはないものの、法的な婚姻関係にある夫婦同様に共同生活を送っている男女の関係のことをいいます。役所に婚姻届を提出し受理され婚姻した「法律婚」に対して「事実婚」と呼ばれることもあります。
財産分与とは、法律婚の夫婦が離婚する場合に、婚姻中に夫婦が協力して築き上げてきた財産を、それぞれの貢献度に応じて分配することです。
財産分与は、本来、法律婚の夫婦が離婚する場合に認められる権利です(民法768条)。しかし、判例(最高裁平成12年3月10日判決)は、「内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得る」と判示しており、内縁関係を解消する場合でも財産分与を受けることができると認めています。
ただし、財産分与をしたくない相手から「内縁関係にはなかった」と反論された場合には、内縁関係が証明できないと財産分与請求が認められない可能性があります。内縁関係にあったことを証明するための証拠については、内縁関係を証明する10個の方法!必要書類や証明書は?をご覧になってください。
財産分与の対象となる財産はどこまで?
内縁関係の解消で財産分与の対象となるのは、内縁関係が成立してから内縁関係が解消されるまでの間に、内縁の夫婦が協力して形成してきた財産です。
内縁関係成立後に取得した財産であれば、名義や夫婦のいずれが財産を形成したかは問われません。たとえば、夫が会社員、妻が専業主婦の場合で、主に夫の給与や賞与が振り込まれている夫名義の銀行口座の預貯金も財産分与の対象となります。これは、たとえ専業主婦であったとしても財産を築くことを陰で支えており、財産形成への貢献度は等しいと考えられているためです。そのため、財産分与の割合は原則的には内縁の夫婦共2分の1です。
他方で、内縁関係成立前から夫婦の片方が所有していた財産や、夫婦の片方が自身の親族の死亡で相続により得た財産など、夫婦の協力によって形成されたものではない個人的な財産(特有財産といいます)は財産分与の対象とはなりません。
財産分与の対象となるものとして、例えば、
- 現金・預貯金
- 不動産
- 有価証券
- 保険解約返戻金
- 車
- 退職金
- 家財道具
などが財産分与の対象となります。
ただし、財産分与の対象となるのは、預貯金などのプラスの財産のみならず、住宅ローンや生活・子供の教育のための借金などのマイナスの財産も対象となる点に注意が必要です。
内縁の財産分与の時効は2年
法律婚の場合、離婚による財産分与の請求権は、離婚成立のときから2年以内という期間制限があります(民法第768条2項)。同様に、内縁関係の場合にも、内縁関係を解消したときから2年以内であれば、財産分与を請求することができます。
「内縁関係を解消したとき」とは具体的にどのような場合をいうのかについては、内縁が事実状態であることから、同居を解消したときと考えるのが一般的だと考えられます。つまり、内縁の財産分与は、別居した時から2年が経過すると請求できなくなります。
なお、この2年という期間制限の性質は、消滅時効ではなく、除斥(じょせき)期間であると考えられています。消滅時効であれば、援用(時効完成により利益を受ける者が時効完成を主張すること)を行う必要がありますが、除斥期間の場合には期間の経過により当然に権利が消滅すると考えられています。また、除斥期間は消滅時効と違い、期間の進行を中断させることはできません。もっとも、2年経過後でも相手が任意に応じてくれる場合には財産分与をすることができます。
財産分与の方法は?
相手に財産分与を請求するには、まず、内縁関係後に所得した財産をすべてリストアップします。前述のとおり、財産分与はプラスの財産のみならずマイナスの財産も対象となりますから、両方をすべてリストアップしましょう。
リストアップする際は財産の裏付けとなる資料(預貯金であれば通帳の写し、借金であれば償還表など)を集めておきます。すべての財産を把握できたら、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて割り出した財産が財産分与の対象となる財産です。
不動産や自動車など単純に半分ずつで分けることができない財産は、専門業者に依頼して評価額を出してもらった上で、売却して余ったお金を半分ずつ分け合う、いずれかが所有し評価額とローンの残高との差額分の半分を分け合う(いずれもアンダーローンの場合)などの方法を取る必要があります。
財産分与の対象とできる財産を把握できたら、まずは話し合いで財産分与の割合を決めます。話し合いで合意できればその内容で財産分与をすることができます。ただし、後で言った言わないと揉めないよう、口約束ではなく、合意内容を公正証書などの書面に残しておくようにしましょう。
話し合いで話がまとまらない場合は、家庭裁判所に対して「内縁関係調整調停」を申し立てて、調停委員を間に入れて話し合いを行います。それでも、話がまとまらない場合は自動的に審判へ移行し、裁判官から判断を示されます。
財産分与で話がまとまらない場合の内縁関係調整調停とは
上記で、内縁関係調整調停について触れましたが、ここでもう少し詳しく見ていきましょう。
内縁関係調整調停とは?
事実上の夫婦関係にある当事者間で、内縁関係の解消について当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合に、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
これを内縁関係調整調停といいます。
調停手続きは、家庭裁判所の調停委員が間に入り、当事者それぞれから話を聞き、解決に向けて提案するなどして、話し合いを進めていくことになります。
調停手続では、内縁関係の解消のみではなく、解消に際しての財産分与や慰謝料についてどうするかといった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。また、内縁関係を解消した方がよいかどうか迷っている場合にも、この調停手続を利用することができます。
内縁関係を解消することにはお互い合意できているけれども、財産の分け方について争いが生じているという場合にも、内縁関係調整調停を申立てることができます。
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調停の流れ
内縁関係調整調停の手続きは、一般的に以下のような流れで進んでいきます。
- 内縁関係調整調停の申立て
- 家庭裁判所から調停期日の連絡・呼出状が届く
- 第1回調停期日
- 第2回以降の調停期日
- 双方が合意に達すれば調停成立により終了
- 合意ができなかった場合には調停不成立により終了
調停期日は、1か月に1回程度の頻度で必要に応じて次回期日が指定されることになります。期日間で双方が調停委員会を介して、意向や主張を伝えて話し合いを進めていくことになります。
調停の申立ての概要
申立の概要については、以下のとおりです。
申立人 |
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申立先 | 相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
申立に必要な書類 |
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申立に必要な費用 |
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内縁関係で死別した場合の財産分与は?
死別の場合は財産分与を受けることはできない
内縁関係にある相手がお亡くなりになった場合は、財産分与によって財産を分けてもらうことはできません。財産分与は「離婚」を契機として夫婦で協力して築いた財産を清算して分配することであるためです。
死別の場合に財産を引き継ぐ契機となるのは「財産分与」ではなく「相続」です。しかし内縁配偶者は法定相続人ではありませんから、基本的には相手との死別によって遺産相続をすることもできません。
先ほど紹介した判例(最高裁平成12年3月10日判決)においても、「死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところ」等として、民法768条の類推適用の否定、すなわち、内縁関係の一方の死亡による生存配偶者の財産分与請求権は認められないとしています。
つまり、内縁関係の夫婦の一方が死亡した場合は、もう一方は財産分与も相続も受けることは出来ず、原則的には一切の財産を引き継ぐことができません。
ただし、ただし、相手の生前、死後に以下の方法を取ることによって、死別の場合でも財産を引き継ぐことが可能となります。
死別の場合でも財産を引き継ぐための対策
相手に遺言書を作成してもらう
相手が作成する遺言書の中に、内縁配偶者であるあなたを対象として財産を引き継ぐ旨の文言を入れてもらうことであなたも遺産を取得することができます。
もっとも、法定相続人の中でも被相続人の配偶者や子供には、遺産の最低限の取り分である「遺留分」が確保されています。遺言書の内容が遺留分を侵害していると、被相続人の配偶者や子供から「遺留分を侵害している分は返して欲しい」という請求を受ける可能性があります。
また、遺言書の内容によっては、被相続人の配偶者や子供らと遺産分割協議に参加しなければならず面倒なことになります。遺言書の書き方には注意が必要ですので、弁護士に遺言書の作成を依頼することをお勧めします。
生命保険金、死亡退職金の受取人に指定してもらう
相手の死亡によって発生する生命保険金は、受取人を特定の人に指定している場合は、その人の固有の財産となり、相続の対象となる財産(=相続財産)とはなりません。すなわち、生前、内縁関係にある相手に、内縁配偶者であるあなたを生命保険金の受取人と指定してもらえれば、あなたはその生命保険金を受け取ることができるというわけです。
また、死亡退職金についても、相手が勤める会社の退職金規定に内縁配偶者であっても受取人となることができる旨の規定が設けられている場合は受け取ることができます。
なお、生命保険金と死亡退職金は、相続税上は「みなし相続財産」となり、内縁配偶者の場合は非課税枠の適用がないことなどから、相続税を納付しなければならない可能性が高くなる点に注意が必要です。
生前贈与を受けておく
生前贈与とは、生存している間に財産を別の者に贈与することです。内縁関係の夫婦の一方が他方に生前贈与をしておくことで確実に財産を残してあげることができます。
ただし、生前贈与をした方が亡くなった後で、その法定相続人から本当に生前贈与があったのかどうか疑われて揉めることもありますので、贈与契約書を作成しておくべきでしょう。
また、年間で110万円を超える贈与を受けた場合は贈与税が課税されます。一括で多額の生前贈与を受けると高額な贈与税を負担しなくてはならない可能性があるため注意が必要です。
特別縁故者になる
特別縁故者とは、被相続人に配偶者や子供などの法定相続人がいない場合に、被相続人と一定の身分関係にあり、かつ、家庭裁判所によって被相続人の財産を引き継いでもよいと認められた方のことです。
内縁関係者も一定の身分関係があった者として、特別縁故者になれる可能性があります。
特別縁故者として被相続人の財産を引き継ぐには、被相続人に相続人がいないと確定してから3か月以内に、家庭裁判所に対して申し立てを行う必要があります。
まとめ
内縁関係の解消(離別)では財産分与が可能です。ただし、死別の場合は財産分与も相続も受けることはできません。もっとも、死別の場合でも、遺言等によって財産を引き継ぐことは可能です。
弊所では、内縁関係の解消に伴う財産分与や慰謝料請求の交渉、調停・審判・訴訟の代理、遺言書や贈与契約書の作成に至るまで経験豊富な弁護士が対応しております。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますので、まずは弁護士までご相談ください。相談する勇気が解決へと繋がります。
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