普段、内縁を証明しなければならない場面はそう多くはないでしょう。
もっとも、場合によってはどうしても内縁であることを証明しなければならない場面は少なからず出てきます。
そうした場合に、万が一、内縁の証明に失敗すると、あなたにとって大きな損ともなりかねません。
本記事では、内縁の証明で失敗しないために、内縁の証明で役立つ証拠などについて説明していいますので、転ばぬ先の杖だと思って、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
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目次
内縁関係を証明する必要性
内縁とは、法律上の夫婦のように、同居して共同生活を営んでいるものの、役所に婚姻届を提出していないため、法律上の夫婦とは認められない関係性のことをいいます。婚姻届を提出している法律婚に対して事実婚と言われることもあります。
内縁関係が認められると、日常生活においては、
- 相手の健康保険の被扶養者になれる(=保険料の負担なく、健康保険の各種給付を受けることができる)
- 国民年金の第3号被保険者になれる(=保険料の負担なく、将来、年金を受け取ることができる)
などのメリットを受けることができます。
また、万が一、相手から内縁関係の解消を迫られた場合でも、内縁関係にあったと認められる場合には、慰謝料・財産分与・養育費の請求などが認められ、法律婚と同等の保護を受けることができる可能性があります。
もっとも、あなたがいくら「内縁関係にあります」ということを主張して保護を受けようとしても、相手から内縁関係にあることを否定されることも想定されます。
また、相手が内縁関係にあることを認めていたとしても、第三者からあなたと相手との関係を見た場合、その実態が分からないため、「本当に内縁関係にあるのか」、「単なるお付き合いの関係、同居・同棲・交際関係にすぎないのではないか」などという疑いの目で見られてしまい、社会が内縁関係にあることを受け入れてくれないかもしれません。
そのため、あなたが上記でご紹介したような保護を受けるためには、あなたが相手と内縁関係にあること、あるいはあったことを証明する必要が出てくるのです。
内縁関係を証明するための方法、証拠
では、どのような方法、書類を使って相手と内縁関係にあることを証明していくのでしょうか?
この点、法律婚の場合は役所に婚姻届を提出し、受理された段階で、通常は夫を筆頭者とする戸籍に婚姻の事実や配偶者(あなた)の氏名などが記載されます。
そのため、その戸籍によって法律婚であることを証明することができます。
これに対して、内縁の場合は、役所に婚姻届を提出していないことが前提ですから、上記のような戸籍は作成されず、戸籍以外の書類や方法で内縁関係を証明していくほかありません。
証明するべき事項は、内縁の定義にも表れているように、「夫婦のように(婚姻意思を有していること)」、「同居して共同生活を送っていること」の2点です。
以下では、内縁を証明するための方法や書類について解説していいますが、どれか一つがあれば内縁関係を証明できるというものではなく、様々な要素を考慮して内縁関係にあるかどうかが判断されることに注意が必要です。
住民票
住民票は、内縁関係であることを証明するための書類の中でももっとも証拠価値の高い書類です。
住民票の「続柄」の欄に「妻(未届)」、「夫(未届)」と記載しておけば、絶対ではありませんが、内縁関係にあると判断されやすくなります。
他方で、「続柄」の欄に「妻(同居人)」、「夫(同居人)」と記載されている場合は「婚姻意思はない」とみなされ、上記と比べて内縁関係にあると判断されにくくなりますが、少なくとも「同居して共同生活をしていること」を証明するための証拠として使うことは可能です。
なお、一定の条件(法律上の婚姻条件)を満たしている場合は、役所で手続きをすることで続柄の記載を「同居人」から「未届」に変更することも可能です。
いかなる条件を満たすと変更できるのか、手続きをするために何を持参すればよいかなど不明な点がある場合は、事前に役所に問い合わせてみるとよいでしょう。
では、仮に、あなたが相手と同棲することを決め、これから現住所から相手の住所に住所を異動させるとしましょう。
その際は、まず始めにあなたと相手のいずれが住民票上の世帯主となるか、あるいは双方が世帯主となるかを決める必要がありますが、以下では、相手を世帯主とする場合とあなたと相手の双方を世帯主とした場合とに分けて解説します。
相手を世帯主とする場合
相手と世帯主とする場合は、異動後に新しい住所の役所に提出する「転入届(同じ市区町村を異動する場合は「転居届」)」の「続柄」の欄に「妻(未届)」と記載します。
もっとも、この方法だと相手の住民票にあなたの氏名等も記載されてしまうため、相手が職場などに住民票を提出しなければならない際、提出先にあなたと同棲していることがバレる可能性があります。
また、万が一、あなたが相手との内縁を解消し、住所を異動した場合でも、相手が他の市区町村に異動しない限り、あなたの氏名等の上には二重線が引かれ、形の上では住民票から除票されたことになりますが、氏名等は住民票に記載されたままになります。
そうすると、相手にとっては住民票の提出先にあなたと内縁関係にあることはもちろん、内縁関係を解消したこともバレてしまう可能性があります。
世帯主を相手とするかどうかは、上記の事情も踏まえた上で、相手とよく話し合って決める必要があります。
双方を世帯主とする場合
双方を世帯主とする場合は、同じ屋根(住所)の下にあなたと相手の世帯主が二人いるイメージです。
この場合は、相手の住民票にあなたの氏名等が記載されることはありませんから、「相手を世帯主とする場合」でご紹介したような心配をする必要はなくなります。
もっとも、相手の住民票の続柄欄には「妻(未届)」と記載できず、その住民票の内縁関係を証明するための証拠価値としては低くなるほか、相手の被扶養者となれず健康保険の各種給付を受けることができなくなるなどデメリットがあります。
相手との内縁関係を証明するためには、相手の住民票とあなたの住民票を合わせて「同居して共同生活を送っていること」を証明するなどの工夫が必要でしょう。
賃貸借契約書など
同居しているお住いが賃貸物件の場合は、不動産会社から交付を受けた賃貸借契約書をよく確認してみましょう。
賃貸借契約書の「同居人」の欄に、「内縁の妻」、「内縁の夫」、「妻(未届)」、「夫(未届)」などと記載されている場合は内縁関係を証明するための証拠として使えます。
これから相手と賃貸物件を探して同棲を始める方は、契約の際、担当者に「同居人」の欄に上記の文言を入れるよう申し出ておくとよいでしょう。
また、賃貸借契約書以外にも、たとえば、家具・家電を購入した際の契約書、代金を支払った際に受け取った領収書なども、相手との内縁関係があることの証拠として使えます。
健康保険証
あなたが、相手が加入している「健康保険証」を持っている場合は、その健康保険証を、相手と内縁関係にあることを証明するための証拠として使うことができます。
ご存知のとおり、健康保険証は健康保険の「被保険者」や「被保険者の被扶養者」に交付されるものですが、健康保険について規定する健康保険法では、「被保険者の配偶者で届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあるものの父母及び子であって、その被保険者と同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの」は被扶養者に含まれると規定されています。
つまり、相手と内縁関係にあるあなたも、相手の被扶養者となり、相手が加入する健康保険の健康保険証を取得できる可能性があるということです。
もっとも、相手の扶養に入るためには、相手と同一世帯に属すること(住民票上の世帯主を相手としておくこと)、主として相手により生計を維持していること(あなたの年収が130万円未満であること)などの条件をクリアする必要があります。
給与明細書
相手が毎月、会社から扶養手当(家族手当)、住宅手当を受け取っており、その金額が相手の給与明細書に記載されている場合には、その給与明細書も、相手と内縁関係にあることを証明するための証拠として使うことができます。
相手が扶養手当、住宅手当を受け取っているということは、少なくともあなたは、相手の会社からは相手の被扶養者であると認められたことを意味しています。
相手が扶養手当、住宅手当を受け取ることができるかどうかは、会社の就業規則の内容などによります。
遺族年金証書
内縁関係にあった相手が死亡し、遺族年金を受け取っている場合は、遺族年金証書を相手との内縁関係を証明するための証拠として使うことができます。
もっとも、遺族年金を受け取るには、内縁関係にあったこと(夫婦のように、同居して共同生活を送ってきたこと)、相手によって生計を維持してきたことを各種書類によって証明する必要があります。
そのため、遺族年金証書も大切ですが、いかなる書類を提出して遺族年金を受け取ることができたかという点がより重要です。
前述した健康保険証についても同じことがいえます。
結婚式・披露宴の予約、実施に関する各種証拠
結婚式・披露宴をこれから開く予定があるという場合は、申込書の控え、内金を支払った際に受け取った領収書、親族、知人・友人等に送付した案内状・招待状、送付者のリストなど、婚約指輪を受け取っている場合はその婚約指輪自体が「婚姻意思を有していること」を裏付ける証拠とすることができます。
また、すでに結婚式、披露宴を開いた後の場合は、参列者の証言、結婚式・披露宴の動画、写真などは有力な証拠とすることができます。
相手と取り交わした契約書
あなたがいくら相手と内縁関係にあると認識していても、相手は内縁関係にはないと認識しているなどの認識のズレから、法的保護を受けられず、不安定な立場に立たされる可能性もあります。
そのため、安心して内縁生活を送るために、相手と契約書を交わしておくことも一つの方法です。
そして、契約書を交わした場合には、その契約書を内縁関係にあることを証明するための証拠として使うことができます。
契約書に含める内容は法律で決まっているわけではありませんが、内縁が解消された場合のことを想定した内容のものとすることが基本です。
民生委員が作成する証明書
お住いの地域を管轄する民生委員によっては内縁関係にあることを証明する証明書を作成してくれることもあります。
もっとも、民生委員によって作成された証明書であればすべて証拠価値を有するかといえばそういうわけではありません。
重要なのは、民生委員がどこまであなたと相手との関係性や生活実態を把握して証明書を作成したか、ということです。
それ如何によっては証拠価値のない単なる紙切れに終わってしまう可能性もあるので注意しましょう。
LINE、メール、相手との会話を録音したICレコーダー
相手が婚姻意思を有していることを証明しうるものであれば証拠とすることができます。
相手がどういう経緯、意図で発言しているのか、会話の前後からよく吟味することも大切です。
まとめ
あなたが相手との内縁関係を証明しなければならない場面は、あなたが何らかの保護を受けようとする場合でしょう。
法律婚と異なり、内縁の場合はその事実を客観的に証明することが難しいですので、お困りの場合は、早めに弁護士に相談し対策を取っておく必要があります。
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