
「内縁関係にあるパートナーに裏切られた…慰謝料を支払わせて制裁を加えたい!」
そう考えてはみたものの、「でも婚姻関係にないから慰謝料請求は無理なのでは…」という不安を抱いている方もいることでしょう。
しかしご安心ください。籍を入れていないからといって何をしても法的に許されるわけではなく、慰謝料請求できるケースもあります。
そこでここでは、
- 「内縁関係で慰謝料請求ができるケース・できないケース」
- 「内縁関係の慰謝料相場」
- 「内縁相手から慰謝料を得るための条件や方法」
などについて、男女問題に強い弁護士がわかりやすく解説していきます。
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目次
そもそも内縁関係とは
内縁関係(事実婚ともいいます)とは、お互いに結婚の意思は持ちつつも入籍せずに同居して生活している男女関係のことを言います。
≫事実婚(内縁)とは?法律婚との違いについて一覧表つきで解説
そして、内縁関係は法律的には婚姻に準じる関係として法律婚(婚姻届けを出して結婚すること)と同様に夫婦としての権利義務が認められています。
つまり、内縁関係にある男女間においても慰謝料請求ができるということです。
ただし、ある男女が内縁関係にあるとして法的保護を受けるためには、主としてつぎの2つの条件が必要です。
- (1)同居していること
- (2)婚姻の意思があること
それぞれの条件について、確認していきましょう。
(1)同居していること
法律上、内縁関係が認められるためには男女が同居していることが必要となります。
また、生計を一緒にしていたり、共有財産を所有していることも必要です。
仮に男女間に婚約が成立していたとしても、一緒に住んでいない場合には内縁関係が成立しないのが原則です。
(2)婚姻の意思があること
同居している男女間に内縁関係が認められるためには、当事者間に婚姻の意思があることが不可欠です。
世間でたまに耳にする話として、「3年以上同棲していれば内縁関係となる」という情報がありますが、婚姻の意思がない場合には単に同棲しているだけになります。
「3年以上の同棲」は上で説明した「(1)同居していること」の条件を満たす大まかな目安に過ぎませんので注意してください。
婚姻の意思があるかどうかについては、婚約しているか、挙式をあげたか、互いの親族に夫婦だと認識されているか、男女の間に認知された子供がいるかどうか、などによって外形的に判断することができます。
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内縁相手に対する慰謝料請求が認められるケース
上記のように、男女間に内縁関係が認められる場合、当事者の関係の継続に支障を及ぼす行為をした当事者に対しては慰謝料の請求をすることが認められます。
内縁関係にある男女間においては、主につぎのようなケースの場合に慰謝料請求が認められます。
- (1)一方的に内縁関係を解消させられたケース
- (2)一方的に別居したケース
- (3)相手方に不貞行為があったケース
- (4)相手方が既婚者であったケース
それでは、それぞれについて見ていくことにしましょう。
(1)一方的に内縁関係を解消させられたケース
内縁関係が成立しているにもかかわらず、当事者の一方が正当な理由もなく内縁関係を解消した場合、慰謝料の請求が可能となります。
この場合、「正当な理由」があるかどうかに関しては、法定離婚事由の有無によって判断されることになります。
つまり、内縁関係の当事者に以下に掲げる5つの法定離婚事由(民法770条1項)に該当する事実がある場合には、内縁関係の解消は正当な理由があることになります。
第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
「五 その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、例えば、DV、モラハラ、借金問題、性格の不一致、性交渉に応じない、過度な宗教活動などが挙げられます。
上記5つの事由に該当しないにもかかわらず、相手方が一方的に内縁関係を解消した場合には慰謝料請求できることになります。
(2)一方的に別居したケース
法律上の夫婦には、同居・協力・扶助の義務が課せられます(民法752条)。
すでにご紹介させていただいたように、内縁関係の男女には法律上正式な婚姻関係にある夫婦に準じた権利義務が認められることになります。
このため、内縁関係の男女には同居する法律上の義務が認められます。
別居することに特別な理由がある場合には問題ありませんが、正当な理由なしに内縁関係の相手方と別居した場合には「悪意の遺棄」に該当し慰謝料請求できる可能性があります。
(3)相手方に不貞行為があったケース
内縁関係の当事者の一方が異性と不貞行為を行った場合、慰謝料請求することができます。
また、内縁相手の浮気相手に対しても同様に慰謝料請求できます。
なお、「不貞行為」とは内縁関係以外の異性と肉体的に性的な関係を持つことを言います。
そのため、浮気の相手方との行為がキスやプラトニックな関係にとどまっている場合には、慰謝料請求は認められないので注意が必要です。
(4)相手方が既婚者であったケース
内縁関係を結んだ当時、すでに相手方が結婚しているという事実を隠していた場合、相手方に対して慰謝料請求できる可能性があります。
相手方が結婚していることをまったく知らずに内縁関係を結んだ場合には、独身であると偽って内縁関係を結ばせたことを理由として貞操権侵害の慰謝料請求が認められるケースもあるでしょう。
内縁相手に対する慰謝料請求が認められないケース
上記の場合と異なり、つぎのようなケースでは内縁関係の相手方に対して慰謝料請求できない可能性があります。
- (1)内縁関係の立証ができないケース
- (2)内縁関係がすでに破綻しているケース
- (3)重婚的内縁関係のケース
それぞれについて、確認していきましょう。
(1)内縁関係の立証ができないケース
内縁関係の相手方に対して慰謝料請求が認められるためには、その前提として当事者間に内縁関係が存在することを立証する必要があります。
内縁関係の証明のためには、住民票など各種の証拠が必要になります(後述)。
慰謝料請求が認められるためには当事者が内縁関係にあることが必要ですので、当事者間に婚姻の意思がなく、単に同棲しただけであるような場合には慰謝料請求は認められません。
(2)内縁関係がすでに破綻しているケース
過去において内縁関係にあったとしても、現在ではその関係が破綻(終了)していると判断されるようなケースでは、慰謝料請求が認められない可能性があります。
たとえば内縁関係の継続期間と比較して相当長期間別居が続いている場合において、相手方が不貞行為を行ったとしても慰謝料請求が認められないことが考えられます。
(3)重婚的内縁関係のケース
内縁関係の当事者の一方または両方が、すでに結婚していることを知った上で内縁関係を結ぶことを「重婚的内縁関係(じゅうこんてきないえんかんけい)」といいます。
当事者の関係が重婚的内縁関係の場合、相手方が不貞行為を行ったり、一方的に内縁関係を解消するなどの行為があったとしても慰謝料請求が認められない可能性があります。
ただし例外として、内縁関係を結んだ当時において、すでに婚姻関係が破綻していた場合には慰謝料請求が認められる可能性もあります。
≫重婚的内縁関係とは?保護の条件や婚姻費用、財産分与、慰謝料について
内縁関係での慰謝料の相場
繰り返しになりますが、内縁関係にある男女間の法律関係は、法律上正式な婚姻関係にある夫婦に準じた扱いとなります。
このため、慰謝料として認められる金額に関しても婚姻関係の場合に認められる相場に準じることになります。
例えば、夫婦間での不貞行為の慰謝料は50万円から200万円が一般的な相場とされています。
とはいえ、慰謝料請求する場面はなにも不貞行為に限ったものではありませんので、離婚でいくら慰謝料がもらえる?ケース別の相場がすぐにわかる!でご自身のケースに当てはまる慰謝料相場を確認しましょう。
有力な証拠が多ければ多いほど内縁相手に請求できる慰謝料は高額となる傾向がありますので、どのような証拠を準備しておくべきか弁護士に相談しておきましょう。
内縁関係の相手方から慰謝料をもらうための条件
不貞行為や一方的な内縁関係の解消などの理由によって、内縁関係の相手方に対して慰謝料請求するためには、つぎの2つの条件を備えることが大切です。
- (1)内縁関係であることを証明すること
- (2)相手に責任があることを証明すること
(1) 内縁関係であることを証明すること
相手方への慰謝料請求が認められるためには、前提として当事者が内縁関係であることを証明しなければいけません。
そのためには、つぎのような資料が役に立ちます。
- ①住民票
- ②家計簿
- ③相手方とのメッセージなどの記録
- ④友人・知人などの証言
もちろん、相手方が内縁関係にあることを認めてくれれば証拠は不要です。
しかし、内縁関係を否定する場合に備えて、一応証拠資料を集めておくことをおすすめします。
(2)相手に責任があることを証明すること
内縁関係の相手方への慰謝料請求が認められるためには、内縁関係の解消などに関して相手方に責任があることが必要です。
相手方に何らかの責任があることを証明するための証拠としては、つぎのような資料が役に立ちます。
【一方的に内縁関係書解消された場合】
- 内縁の解消を告げるメールやラインの通信記録など
- 当事者の会話の録音データなど
【不貞行為があった場合】
- 浮気現場の写真や動画
- クレジットカードの利用履歴
- 浮気相手とのメールやラインの通信記録
繰り返しになりますが、慰謝料請求を有利に進めるために最も大切なのは有力な証拠です。
もし自分だけで証拠を集めることが難しいようであれば、必要に応じて探偵事務所などへの相談や依頼を検討してみるのも有効な手段です。
内縁関係の相手方への慰謝料請求方法
内縁関係の相手方への慰謝料請求の方法としては、主としてつぎの3つのパターンが考えられます。
- (1)当事者同士で話し合う
- (2)内容証明郵便で請求する
- (3)裁判所を利用して請求する
それぞれについて、順次解説いたします。
(1)当事者同士で話し合う
慰謝料を貰うためのもっとも基本的な方法は、相手方と話し合い、直接慰謝料を請求することです。
いざとなった場合に相手が内縁関係を否定する可能性も考えられますので、内縁関係を証明する証拠をそろえてから話し合いを持ちかけることをおすすめします。
(2)内容証明郵便で請求する
すでに内縁関係が解消されるなどの理由で相手方と別居している場合、慰謝料の請求は内容証明郵便を利用するとよいでしょう。
慰謝料請求権には3年という消滅時効期間が定められていますので、内容証明で請求すれば消滅時効が成立する前に慰謝料請求した事実を証明することが可能です。
(3)裁判所を利用して請求する
慰謝料の話し合いについて、内容証明郵便を送っても合意が成立しない場合、裁判所を利用して請求することになります。
裁判所を利用して慰謝料を請求する方法としては、以下の2つの方法があります。
- ①内縁関係調整調停
- ②慰謝料請求訴訟
①内縁関係調整調停
内縁関係の相手方に対して慰謝料を請求する場合には、家庭裁判所に対して内縁関係調整調停を申立てることができます。
調停では、調停委員などが当事者の仲介をしてくれるため合意が成立しやすくなるというメリットがあります。
内縁関係調整調停の詳細については、以下の裁判所のサイトを参照してください。
②慰謝料請求訴訟
内縁関係の相手方に対して慰謝料を請求する選択肢の1つとして、裁判を起こす方法があります。
ただし、裁判は調停の申立てよりも専門的な知識が必要となりますので、弁護士への相談や依頼が不可欠です。
内縁関係で認められた慰謝料の金額
最後に、実際に内縁関係で裁判上慰謝料が認められた事例を、いくつかご紹介しましょう。
(1)一方的に内縁関係が破棄された事例
過去20年以上もの長い期間、内縁関係を結んでいたにもかかわらず、一方的に関係を破棄したことを理由として裁判になった事例では、当事者の諸事情を総合的に判断し400万円の慰謝料の支払いが命じられました。
(2)不貞行為の相手方に慰謝料請求した事例
不貞行為の相手方に対して起こされた慰謝料請求訴訟では、被告(不貞行為の相手方)は内縁関係が存在することを知りながら不貞行為を行ったと判断され、その不貞行為の結果内縁関係が破綻したことから300万円と年5%の遅延利息の支払いが命じられました。
上記の事例は2つとも高額な慰謝料の支払いが認められていますが、かならずしも多額の慰謝料が認められるとは限りません。
実際、不貞行為の相手方に対して行われた慰謝料請求訴訟では、有力な証拠がなかったために慰謝料が認められなかった事例も存在します。
裁判を検討している場合には、とにかく証拠を集めることが重要なのです。
9.まとめ
今回は、内縁関係の男女が不倫した場合における不倫相手への慰謝料請求の条件や、請求するための手順などをメインに解説させていただきました。
法律上正式に結婚している夫婦でなかったとしても、一定の条件を満たしている場合には、不倫の相手方に対して慰謝料請求することが可能です。
もし内縁関係の一方が不倫した場合には、不倫相手への慰謝料の請求などについて弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士に相談すれば、慰謝料請求ができるのかどうかだけでなく、具体的事情に基づいた慰謝料の相場など知りたい情報を得ることができるはずです。
当事務所は、全国どちらからでも24時間ご相談・ご依頼を承っております。
慰謝料請求などの問題でお悩みの場合には、ぜひお気軽にご相談ください。
きっと、ご満足いただけると思います。
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