談合罪とは、公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した場合に成立する犯罪です。刑法第96条の6第2項に規定されています。罰則は3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
1941年(昭和16年)に創設・追加された談合罪は、平成23年の情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律によって現在の形になりました。
談合罪自体には形式的な文言の変更はなかったものの、強制執行関係売却妨害罪(刑法第96条の4)の新設に伴い保護対象が公共契約関係の競売・入札に限定され、法定刑の上限の引き上げ、そして選択刑としての懲役刑と罰金刑の併科の導入が行われました。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、
- 談合罪の構成要件
- 談合罪と独占禁止法の違い
などについてわかりやすく解説していきます。
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談合罪の構成要件
談合罪の成立要件は、
- 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、
- 談合した
ことが必要となります。
以下それぞれの要件について具体的に解説していきます。
「談合した」とは?
「談合」とは、公の競売・入札において所定の目的で競争者が互いに通謀してある特定の者を契約者にしようとするため他の者は一定の価格以下または以上に入札しないことを協定することをいいます。
上記のような協定を結べば「談合」にあたり、その協定にしたがって実際に行動するところまでは必要ではありません(最高裁判所昭和28年12月10日決定)。
このように談合罪は公務の執行を妨害する抽象的危険犯であるとされているため、そのような危険性がある談合であれば、入札参加者の一部による談合であるか全部による談合であるかを問わず談合罪が成立することになります(最高裁判所昭和32年12月13日判決)。
「公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で」とは?
「公正な価格」とは、入札を離れて客観的に測定されるべき価格をいうのではなく、その入札において公正な自由競争が行われたならば成立したであろう価格のことをいいます。
例えば、談合が行われても入札施行の結果が自由な競争により到達したのと同一の結果に帰着する場合には、談合が公正な価格を害する目的でなされたものということはできず、自由競争によっても当該落札価格より低い入札価格の申立てがあり得たという事情がない限り、本罪は適用されません(東京高等裁判昭和27年8月18日判決)。
また、「不正な利益」とは、談合によって得る金銭その他の経済的利益のことをいいます。
例えば、社会通念上いわゆる「祝儀」の程度を超え不当に高額な場合には、「不正の利益」にあたります(最高裁判所昭和32年1月22日判決)。
また談合金が落札金額の約3%で、その金額・分配方法が社会常識上儀礼的なものその他正当のものとは認められないときも、このような金銭の授受を目的とする談合は「不正な利益を得る目的」にあたります(最高裁判所昭和32年1月31日判決)。
ただし、落札者が自己の採算を無視し、公正な価格の範囲内で利潤を削減して談合金を捻出し分配するような場合には、これを収受する意思をもって談合しても「不正な利益を得る目的」があるとは言えないとされた裁判例があります(大阪高等裁判所昭和29年10月30日判決)。
談合罪と独占禁止法の違いについて
これまで解説してきたように、談合行為をすると、談合罪が成立します。ただし、談合行為は、談合罪だけでなく独占禁止法にも抵触します。
独占禁止法第3条は「不当な取引制限」を禁止していますが、不当な取引制限に該当する行為には、「カルテル(※)」などのほか、「入札談合(※)」も含まれているからです。
もっとも、談合罪の成立には、前述のように「公正な価格を害する目的」「不正な利益を得る目的」という主観的な要件が要求されており(このように、犯罪の成立に故意のほかに一定の目的を必要とする犯罪を「目的犯」といいます)、その立証も容易ではありません。
他方で、独占禁止法の不当な取引制限の罪は目的犯ではありません。
そのため、捜査機関は談合罪で立件せずに独占禁止法の不当な取引制限の罪等で立件することもありえます(独占禁止法第3条、89条1項1号)。
また、独占禁止法違反の罪に問われた場合には5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されますが、談合罪(3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれらの併科)よりも重い刑罰となっております。
※「カルテル」とは、事業者または業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為のことをいいます。
※「入札談合」は、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し、事前に、受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為です。
まとめ
公の競売・入札において不正な行為をしたとして談合罪などに問われるのではないかと不安な方は、弁護士に相談するようにしてください。
身に覚えがない場合には、証拠によって事情を明らかにする必要があります。また、不正について身に覚えがある場合には、業界や地域的な事情や不正に関与するに至った経緯など業者側に有利な事情を証拠とともに説明できることが重要となります。
本格的に捜査機関が動き出す前に弁護士に相談・依頼することで適切な対応をとれる可能性もあります。
談合罪で逮捕・起訴される不安のある方は、一度刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に相談するようにしてください。
当事務所では、逮捕の回避、不起訴の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、談合の罪で逮捕されるおそれのある方や、既に逮捕されてしまった方のご家族の方は当事務所の弁護士までご相談ください。お力になれると思います。
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