コンカフェは、メイド喫茶をはじめとした特定のコンセプトを前面に打ち出したカフェのことです。飲食店営業許可を取得するだけで開業することも可能ですが、従業員がお客に対して「接待」を行う場合には風営法上の風俗営業の許可を取得する必要があります。この許可を得ずにコンカフェで接待行為が行われると、風営法違反で逮捕・摘発される可能性があります。
また、仮に風俗営業の許可を得てコンカフェを運営した場合でも、未成年者を接待にあたらせるなどの行為があれば、風営法の処罰対象となります。これからコンカフェを開業する方はもちろん、既に経営されている方も、逮捕・摘発を回避するために、風営法についての知識をしっかりと身につける必要があるでしょう。
この記事では、風営法違反事件に強い弁護士が、
- コンカフェで風営法違反等で逮捕・摘発されるケースや逮捕事例
- コンカフェで風営法違反での逮捕・摘発を回避する対策
などについて詳しく解説していきます。
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目次
そもそもコンカフェとは?
そもそも「コンカフェ」とは、どのような店のことをいうのでしょうか。
「コンカフェ」とは、「コンセプトカフェ」の略称で、特定のテーマやコンセプトを前面に押し出すことで、他のカフェと差別化を図ろうとしている飲食店のことです。
例えば、メイドカフェは、メイドに扮した女性スタッフにサービスを提供してもらえるというコンセプトを取り入れたカフェです。メイドカフェの他にも、漫画やアニメ、ゲーム、鉄道模型などのコンセプトを取り入れたカフェや、猫や爬虫類などの生き物とのふれあいをコンセプトとしたカフェ、男性スタッフが女性をもてなすメンズカフェ、男性が女装して接客にあたる男の娘カフェなどもあります。コンセプトカフェは、喫茶店としてコーヒーや軽食を提供している業態のお店もありますが、中には酒類を提供して夜遅くまで営業しているお店もあります。
また、コンカフェとガールズバーは混同されがちですが、ガールズバーは、女性従業員とカウンター越しで会話を楽しみながらお酒が飲めるお店ですが、コンカフェとは以下の点で異なっています。
- コンセプトの有無:コンカフェには明確なコンセプトがありますが、ガールズバーにはそのようなコンセプトがない場合が多いです。
- 接客スタイル:コンカフェの女性スタッフはコンセプトに合う衣装を着てホールを担当することが多いですが、ガールズバーではカウンター越しに接客することが多いです。
- 営業時間や従業員の年齢:コンカフェは昼から夜にかけて営業していることが多く、18歳未満でもアルバイトが可能ですが、ガールズバーは深夜営業している店も多く、その場合、従業員も18歳以上の必要があります。
コンカフェが風営法違反などで逮捕・摘発される4つのケースと罰則
コンカフェが風営法違反やその他の法律に違反して逮捕・摘発される可能性のある主なケースは次の通りです。
- ①無許可営業
- ②未成年に接待にあたらせる
- ③20歳未満への酒の提供
- ④児童福祉法違反
①無許可営業
コンカフェで、接待を伴う飲食営業をする場合は、「風俗営業」に該当します(風営法第2条1項1号)。風俗営業を行おうとする場合には、風俗営業の種別に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(風営法第3条1項)。
ここで「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されており、料理やドリンクを提供するといった通常の業務を超えた接客行為を指します(風営法第2条3項)。単にお酌をしたり、水割りを作ったりするだけでテーブル席からすぐに離れる場合には「接待」に該当しませんが、特定の客の隣に座って会話をしたり、一緒にお酒を飲むような場合には、「接待」に該当する可能性があります。
その他にも、次のようなケースでは、警察から接待行為と判断される可能性があります。
- 客と一緒にボードゲームなどの遊戯を楽しむ
- カラオケでデュエットする
- 必要以上のスキンシップをとる
- キャバクラのような同伴・アフター・指名のシステムがある など
風俗営業許可を取得せずにコンカフェで接待行為を行えば、風営法上の無許可営業として摘発の対象となるリスクがあります。
無許可営業をしていた場合には、罰則として2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはそれらが併科される可能性があります(風営法第49条1号、3条1項)。また、偽りその他不正の手段により許可を受けた場合にも同様の刑罰が科されます(同法第49条2号)。
風営法違反は逮捕される?よくある違反行為と罰則を弁護士が解説
②未成年者を接待にあたらせる
風俗営業許可を取得してコンカフェを経営する場合でも、18歳未満の者(未成年者)に客の接待をさせることは風営法で禁止されています(風営法第22条1項3号)。
また、営業所で午後10時〜翌日の午前6時までの時間において、18歳未満の者を「客に接する業務」に従事させることも禁じられています(同第4号)。「客に接する業務」には接待の他、酒類またはタバコを提供することも含まれています。
風営法の規制に違反して未成年に接待を行わせた場合、刑事罰として1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらが併科されることがあります(風営法第50条1項4号)。
③20歳未満への酒の提供
未成年者飲酒禁止法は、飲食店が未成年者であることを知りながら酒類を提供・販売することを禁止しています。また、風営法においても、風俗営業を営む者は営業所で20歳未満の者に酒類またはたばこを提供することは禁止されています(風営法第22条1項6号)。
したがって、コンカフェに来店した20歳未満のお客にお酒を提供することはできません。お客の年齢が20歳以上であることの確信が持てない場合は、身分証を提示してもらい、確認がとれるまでお酒を提供しないことが重要です。
なお、令和4年(2022年)4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが、酒類やたばこを飲んだり吸ったりできる年齢は20歳のままですので、注意が必要です。
以上のような風営法上の規定に違反して20歳未満の者に酒を提供した場合には、刑事罰として1年以下の懲役または100万円以下の罰金、またはこれらが併科されるおそれがあります(風営法第50条1項4号)。
④児童福祉法違反
児童を保護する児童福祉法の規制にも注意が必要となります。
児童福祉法は、「満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為」を禁止しています(児童福祉法第34条1項5号)。
この規定に違反した場合には、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらが併科されます(同法第60条1項)。風営法違反の罪よりも重い法定刑が規定されているため注意が必要です。
コンカフェでチェキの撮影は風営法違反になる?
コンカフェでチェキを撮影することは、風営法に違反することになるのでしょうか。この点については、チェキの撮影が「接待」に該当するかどうかが問題となります。接待を伴わない飲食営業であれば、風営法による規制の対象とはならないからです。
そもそも、チェキを撮影する行為が一概に「接待」に該当するとはいえません。コンカフェを訪れた記念にコスチュームを着た店員さんと記念に一枚写真を撮ってもらうというのはよくある話です。
しかし、接待に該当する場合には、風営法上の規制対象となります。前述の通り、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に「通常伴う役務の提供を超える程度」の会話やサービス行為を行った場合には、風営法に違反することになります。
例えば、チェキを撮影する際に、客と身体を密着させたり、手を握ったり等客の身体に接触する行為や、客の口もとまで飲食物を差し出し、客に飲食させる行為などは「接待」と評価されます。
したがって、常識的に記念写真の範囲を超えるサービスを提供している場合には、注意が必要です。
ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触や、単に飲食物を運搬、食器の片づけ、客の荷物・コート等を預かる行為などについては「接待」には該当しません。
コンカフェで風営法違反により逮捕された事例
ここでは、コンカフェで風営法違反により経営者や従業員が逮捕された事件を紹介します。
無許可営業と未成年者を接待にあたらせた容疑で逮捕された事例
この事例は、東京都新宿区歌舞伎町のコンセプトカフェで、無許可で女性キャストに男性客を接待させていたなどとして、店の経営者(男性・28歳)と店長(女性・22歳)が風営法違反で逮捕された事例です。
また、同人らは、共謀のうえ、未成年(当時17歳)の少女を雇い、男性客に対してカウンター越しにお酒を注いだり、談笑したりするなどの「接待」を行わせた疑いが持たれています。
この店は氷のお城をコンセプトにしたコンカフェで、開店からわずか8か月の間に5000万円もの売上を得ていたと言われているものの、警視庁によると容疑者は容疑を認めているとのことです。
参考:《歌舞伎町の無許可営業コンカフェが摘発》キャストには「17歳女性」も…逮捕された経営者らに同業者は「真面目に頑張っている女の子もいる」|NEWSポストセブン
20歳未満の少女二人に酒を提供したとして逮捕された事例
この事例は、東京都新宿区歌舞伎町でコンセプトカフェを経営している役員(男性・41歳)が、20歳未満の者に対する酒類提供などの容疑で逮捕された事例です。
逮捕された男性は、客として来店した当時高校生の少女(当時18歳)とアルバイトの少女(当時18歳)の2人に対し、20歳未満と知りながらシャンパンなどの酒類を提供したなどの疑いが持たれています。
同店は、若い女性をターゲットに男性店員が接客するメンズコンセプトカフェで、少女はそれぞれ、数十万単位のお金をこのお店で使っていました。警察によると、売上の8割程度が20歳未満への酒類提供などによる違法な売上と見られています。
参考:少女2人にシャンパン提供、80万円売上か 歌舞伎町コンカフェ摘発:朝日新聞デジタル
13歳の女子中学生を働かせたとして児童福祉法違反で逮捕された事例
この事例は、東京都秋葉原のコンセプトカフェで女子中学生を雇い、未成年に客の接待をさせたとしてコンカフェの店長(男性・34歳)と従業員(男性・27歳)が、児童福祉法違反の疑いで逮捕された事例です。
この店では、当時13歳であった女子中学生を従業員として雇い入れ、客に対して酒を注ぐなどの接待行為をさせたとして、「満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせ」たと見られています。
参考:メイド姿の女子中学生にお酌の接待させる…秋葉原のコンセプトカフェ : 読売新聞
コンカフェで風営法違反の逮捕・摘発を回避するための対策
コンカフェで風営法違反で逮捕・摘発されないようにするためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
営業形態に合わせた許可の取得・届出をする
コンカフェを経営するにあたり、どのような営業形態にするかどうかで必要となる許可や届出の種類が異なります。営業形態に沿った正しい許可・届出がなされていないと風営法違反で逮捕・摘発されるおそれがあります。以下は、コンカフェの営業形態に応じた許可・届出の種類となりますのでしっかりと確認しておきましょう。
- ①接待・深夜の酒類提供を行わない:「飲食店営業許可」
- ②深夜の酒類提供をする:「飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店営業の届出」
- ③接待を伴う:「飲食店営業許可+風俗営業許可」
①接待・深夜の酒類提供を行わない:「飲食店営業許可」
コンカフェの事業を考えている場合、接待を行わず、深夜0時以降の酒類提供も伴わない飲食店事業であれば、飲食店の営業許可を取得すれば適法にコンカフェを営業することができます。これは、食品衛生法に基づく営業許可です。
食品衛生法に基づく営業許可は、食品の製造や加工、販売、飲食など、公衆衛生に与える影響が大きい業種を行う際に必要となる許可です。
営業許可を取得するには、コンカフェの所在地を管轄する保健所に申請を行い、施設が食品衛生法で定める基準を満たしていることを示す必要があります。
②深夜の酒類提供する:「飲食店営業許可+深夜酒類提供飲食店営業の届出」
コンカフェで接待は行わないものの、深夜0時以降も酒類を提供する場合には、前述の「飲食店営業許可」と「深夜酒類提供飲食店営業の届出」が必要となります。後者は「深夜営業許可」と呼ばれることもあり、風営法に基づき、深夜(午前0時〜午前6時)に酒類を提供する飲食店は、都道府県公安委員会に届け出なければなりません。
一般的にはバーや酒場など設備を設けて酒類を提供して営む飲食店が対象となります。ただし、米飯類、パン類、めん類、ピザパイ、お好み焼きなど「通常主食と認められる食事」を提供して営むものは酒類提供飲食店営業には当たりません。
③接待を伴う:「飲食店営業許可+風俗営業許可」
お客に接待を行うコンセプトカフェの場合には、「飲食店営業許可」のほかに「風俗営業許可」を取得する必要があります。
「接待」とはどのような行為を指すのかについては後ほど詳しくお伝えしますが、特定の客または客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為を行うと「接待」と評価されます。
なお、風俗営業許可は、原則として午前0時までの営業しかできません。そのため、「深夜営業許可」と併用することはできませんので注意が必要です。
その他の対策
まず、接待を伴わないコンカフェ事業の経営を検討されている場合には、サービスが接待にならないように店舗運営や仕組みを策定しておくことが重要でしょう。
また、風営法に違反しないようにするためには、18歳未満の採用や接待をしないようにする必要があります。18歳未満の者を採用しないように、採用面接時には公的な書面により本人確認を慎重に行うことが重要です。また、風俗営業に該当する場合には、18歳未満の者が店に出入りしないように入店時の年齢確認を徹底する必要があります。
さらに、「客引き」行為も風営法で禁じられています。「客引き」とは、相手を特定してお店の客として来るように勧誘する行為を指します。従業員が違法な客引き行為を行わないように教育・指導することも重要な対策となります。
まとめ
以上、コンカフェを経営する場合、お客を「接待」する場合には、風俗営業許可が必要となります。営業許可を取得したとしても、18歳未満のスタッフにお客を接待させたり、18歳未満の者をお店に立ち入らせたりすることはできません。
実際、コンカフェを経営する場合に、どのような許可が必要となるのかについては、専門家に相談しないと判断できないという可能性もあります。そのため適法にお店を経営したい・摘発を受けないか不安という場合には、風営法や事業経営に詳しい当事務所の弁護士に相談することが大切です。もし、風営法違反の疑いで警察に摘発を受けそうという場合には、すぐに弁護士に相談して対応してもらう必要があります。
当事務所は風営法に関するトラブルや経営トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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