
婚約破棄によって深刻な精神的苦痛を受け、「自殺を考えるほど追い詰められた場合、慰謝料はどのくらい認められるのか」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、婚約破棄が原因で自殺未遂に至ったものの、慰謝料が30万円にとどまった判例を紹介し、裁判所がどのような事情を考慮してこの金額を認定したのかを解説します。婚約に至る経緯に不貞関係が絡んでいた場合、慰謝料額にどう影響するのかを知る参考にしていただければ幸いです。
| 誰でも気軽に弁護士に相談できます |
|
婚約破棄が原因で自殺未遂に至り慰謝料30万円が認められた判例
事案
この事案は原告であるXが、被告であるYに、婚約破棄により受けた精神的苦痛に対する慰謝料200万円等を請求した事案です。
Xは、Yから執拗に交際を求められたため、結婚を前提として交際を開始しました。しかし、交際当時、Yは既婚者であり、元妻との間に子どもがいました。その後、Yは元妻と離婚し、XとYはXの両親に結婚の報告をして正式に婚約しました。
ところが、婚約後しばらくして、Yは一方的に婚約を破棄しました。この出来事により、Xは深刻な精神的苦痛を受け、自殺を図るまで追い詰められました。結果として、Xは長期間の集中治療を受けることとなり、仕事を辞めざるを得ませんでした。
さらに、XとYの関係が不貞関係にあったことがYの元妻に知られ、そのことでYの元妻からXに対して損害賠償請求がされました。Xは、この請求に応じ、不貞行為に対する慰謝料を支払いました。
このような経緯から、婚約破棄による精神的苦痛に対する慰謝料200万円等を請求しました。
判決
裁判所は、以下のように判示したうえで、XのYに対する慰謝料30万円の支払いを認めました(東京地方裁判所平成28年10月20日判決)。
- Yが婚約を一方的に破棄したことは、Xに対する不法行為に該当する
- Xが有していた利益は、婚姻秩序そのものではなく、婚姻成就に対する期待権にすぎない
- Xの期待権はYの元妻の婚姻秩序を侵害しつつ発生したものである
- 自殺及び失職による精神的損害は、一種の特別損害として、Yが婚約破棄時にXの自殺及び失職を予見していたことまたは予見できたことの具体的な主張・立証がなければ、本件婚約破棄行為により賠償されるべき損害とすることはできない
婚約破棄の慰謝料が具体的にどの程度になるのかについては「婚約破棄の慰謝料はいくらもらえる?相場や請求できるケース」で詳しく解説しています。
まとめ
今回の判例のように、婚約破棄の慰謝料は婚約に至る経緯や破棄の態様など個別の事情によって金額が大きく左右されます。自殺未遂や失職といった深刻な結果が生じた場合でも、予見可能性や婚約の成り立ちによっては慰謝料が低額にとどまることがあります。
また、不貞関係を経て成立した婚約では、婚姻成就に対する期待権の保護が限定的に評価される可能性がある点も、本判例の重要なポイントです。
| 誰でも気軽に弁護士に相談できます |
|
この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

