
正当な理由がないのに婚約破棄された場合や、相手が原因で婚約破棄に至った場合、慰謝料を請求することができます。慰謝料の相場は通常50万円〜200万円程度ですが、状況に応じて金額が変動することもあります。
本記事では、婚約破棄の慰謝料請求に強い弁護士が、次の点について詳しく解説していきます
- 慰謝料請求の条件や認められるケース
- 慰謝料の相場や高額になる要因
- 高額慰謝料が認められた判例
- 慰謝料請求の流れ
なお、婚約破棄による慰謝料請求をご検討中の方で、ひとりで対応するのが不安に感じられる方は、ぜひこの記事をお読みいただき、全国どこからでも無料でご相談いただける当事務所の弁護士にお任せください。専門的なアドバイスを受けながら、適切な対応を進めていきましょう。
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目次
婚約破棄で慰謝料請求できる条件は?
婚約破棄をされた場合でも、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。慰謝料が法的に認められるためには、次の2つの条件のいずれかを満たしている必要があります。
- ① 相手に正当な理由がないまま婚約を破棄された場合
- ② 相手に重大な非があるために婚約を破棄し、慰謝料を請求する場合
つまり、慰謝料請求は「婚約破棄された側」だけでなく、「やむを得ず破棄した側」からも可能ということです。
なお、そもそも婚約破棄に関するトラブルでは「そもそも婚約が成立していたのか?」が争点になるケースも多くあります。次の項目では、婚約の成立や、慰謝料請求が認められる具体的な事情について詳しく解説していきます。
婚約破棄で慰謝料請求できるケース
慰謝料請求が認められるには、「婚約が成立していること」と「正当な理由がない婚約破棄であること」の両方を満たす必要があります。
ここでは、この2つの条件に沿って、具体的にどのような事情があれば慰謝料請求が認められるのかを、破棄された側・破棄した側それぞれの立場に分けて解説します。
婚約が成立していると認められるケース
婚約とは、将来結婚することについて当事者間で合意した状態をいいます。法的には、結婚を約束する「婚姻予約」という契約とされています。
婚約は口約束でも成立しますが、後になって「本当に婚約していたのか」が争点になることが多く、裁判では客観的な証拠が重視されます。
そこで重要になるのが、婚約の成立を証明できる証拠の存在です。以下のような事情や資料があれば、婚約の成立が認められやすくなります。
- 両親や親族を交えての顔合わせの記録(写真・動画など)
- 結納の実施や結納金の受け渡しに関する資料
- 結婚式場の予約申込書や、内金支払いの領収書
- 婚約指輪の購入・受け渡し記録(購入レシートや写真など)
- 親族や勤務先への紹介(メール・社内連絡など)
- 新居の契約書や引っ越し準備の資料
- 結婚を前提に退職(寿退社)したことを示す書類
- 結婚の意思が確認できるLINEやメールのやり取り、通話録音など
正当な理由がない婚約破棄による請求が認められるケース
婚約破棄によって慰謝料請求が認められるためには、相手が「正当な理由なく」一方的に破棄したことが必要です。
裁判所は、婚約破棄の理由が社会的に見てやむを得ないものかどうかを、交際期間や同棲の有無、破棄のタイミングなども考慮して総合的に判断します。
以下のような理由で婚約を破棄された場合には、「正当な理由がない」として、慰謝料請求が認められる可能性があります。
- 単に「性格が合わない」「気持ちが冷めた」といった抽象的な理由
- 親や親族からの反対を理由にした一方的な破棄
- 些細な生活観や金銭感覚の違いによる破棄
- 宗教や職業、居住地などについて、事前に説明・合意していたにもかかわらず、後から一方的に不満を示して破棄された場合
このように、相手の都合や感情の変化だけで婚約を破棄した場合には、精神的苦痛や財産的損失に対して損害賠償(慰謝料)が認められる可能性があります。
相手に重大な非がある場合、婚約破棄した側でも慰謝料請求できることも
一方で、相手の浮気やDV、重大な経歴詐称など、結婚生活に深刻な支障をきたすような事情がある場合には、むしろ婚約破棄した側が慰謝料を請求できるケースもあります。
代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 相手が婚約中に不貞行為を行った
- 暴力やモラハラ行為を受けた
- 相手が実年齢や年収・勤務先などを偽っていた
- 挙式直前に行方をくらました
- 結婚式当日や新婚初夜に社会常識を逸脱した異常な言動があった
このようなケースでは、婚約破棄は「やむを得ない事情によるもの」とされ、破棄した側からの慰謝料請求が認められる可能性があります。
婚約破棄の慰謝料相場
慰謝料相場
婚約破棄による慰謝料の相場は、おおむね50万円〜200万円程度が目安とされています。もっとも、これはあくまで一般的な相場に過ぎず、慰謝料の金額は各ケースの事情によって大きく異なります。
婚約破棄により被った精神的苦痛や、結婚に向けて進めていた準備の度合いなど、様々な要素を考慮して金額が決定されるのが通常です。
例えば、以下のような事情が考慮されることがあります。
- 交際・婚約に至るまでの期間や経緯
- 結婚に向けた準備の進行状況(式場予約・両家挨拶など)
- 婚約破棄の原因やその経緯
- 婚約破棄の時期(挙式直前など)
- 性交渉・妊娠・出産の有無
- 年齢や社会的立場・経済状況
婚約破棄の慰謝料が高額になる要因
婚約破棄の内容や破棄のタイミング、婚約中の事情が悪質であると判断される場合、慰謝料の金額が相場を超えて高額になることがあります。
特に、以下のような事情があると、精神的損害が大きいと評価されやすくなります。
- 交際・婚約期間が長期に及んでいた
- 結婚式場の予約や新居の契約など準備が進んでいた
- 結婚が職場や親族に知られていた(周知の事実だった)
- 退職(寿退社)するなど結婚を前提とした生活変更があった
- 婚約破棄の原因が相手の浮気・不貞行為だった
- 妊娠・出産があった、あるいは中絶を余儀なくされた
- 婚約破棄のタイミングが挙式直前など極めて遅かった
その他請求できる財産的損害
婚約破棄によって生じた財産的損害も請求できます。例えば、婚約指輪や結婚式のキャンセル費用、結納金、新居の契約費用、家財道具の購入費用、退職(寿退社)や転職に伴う減収など、婚約破棄が原因で発生した費用は、損害賠償として請求できる可能性があります。
婚約破棄で高額な慰謝料が認められた裁判例
前述の通り、婚約破棄に関する慰謝料請求では、一般的に50万円から200万円程度が相場とされています。しかし、破棄の理由や経緯、精神的苦痛の大きさによっては、これを大きく上回る慰謝料が認められた裁判例も存在します。以下では、慰謝料が高額となった代表的な裁判例をご紹介します。
妊娠中の婚約破棄で慰謝料300万円が認められた裁判例
男性が既婚者であることを隠して女性と婚約関係になり、結婚の約束をしていたにもかかわらず、女性の妊娠が判明すると一転して婚約を破棄。中絶を余儀なくされた女性が精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求した事例です。裁判所は、男性の不誠実な対応や妊娠中絶による女性の精神的負担などを考慮し、300万円という高額の慰謝料を認めました(東京地裁平成22年3月30日判決)。
被差別部落出身を理由に婚約破棄され、慰謝料500万円が認められた裁判例
この事例では、被差別部落出身であることを理由に婚約を破棄された男性が慰謝料を請求。裁判所はこの破棄が公序良俗に反する差別的行為であると判断し、500万円の慰謝料を認めました(大阪地方裁判所昭和58年3月28日判決)。
性格や容姿を理由に一方的に婚約破棄され、400万円の慰謝料が認められた裁判例
婚約者の性格や体形を理由に男性が婚約を破棄し、さらに母親の介入もあったことから、共同不法行為が成立。慰謝料として400万円の支払いが命じられました(徳島地方裁判所昭和57年6月21日判決)。
このように、差別的理由や妊娠中絶、人格否定など、婚約破棄の理由や状況が悪質と評価される場合には、慰謝料が相場を大きく上回る高額となるケースもあります。
婚約破棄で慰謝料請求をする流れ
婚約破棄に対して慰謝料を請求したい場合、次のような流れで対応していくのが一般的です。
- まずは相手に対して直接話し合いを持つ
- 内容証明郵便で正式に請求する
- 支払いに応じない場合は損害賠償請求訴訟を検討する
- 訴訟後に相手が支払いに応じない場合は強制執行を検討する
① まずは相手に対して直接話し合いを持つ
はじめは、口頭やメール・電話などを通じて、相手に対して婚約破棄が不当であることを伝え、慰謝料の支払いを求める方法が考えられます。相手が誠実に対応する姿勢であれば、この段階で解決に至ることもあります。
話し合いが成立した場合には、慰謝料の金額や支払い方法などを明確にし、口約束で済ませるのではなく、必ず合意書(示談書)を作成しておくことが重要です。後日のトラブル防止にもつながります。
② 内容証明郵便で正式に請求する
相手が話し合いに応じない場合や、慰謝料の金額面などで合意が難しい場合には、内容証明郵便によって正式に慰謝料請求を行います。
内容証明郵便には、請求金額、支払期限、支払い方法などを記載し、婚約破棄が不当であることと、それに基づく損害賠償請求の意思を明確に伝えます。配達証明も付けておくと、相手に届いた日が証明され、裁判になった際にも有効な証拠となります。
この手段によって、あなたの本気度が伝わり、相手が支払いに応じてくる可能性もあります。
③ 支払いに応じない場合は損害賠償請求訴訟を検討する
内容証明郵便を送付しても相手が慰謝料の支払いに応じない場合には、損害賠償請求訴訟を提起することになります。
訴訟を提起する場合は、まず婚約が成立していたこと、そして相手による婚約破棄に正当な理由がなかったことを立証する必要があります。これは慰謝料を請求する側の責任であり、主張や証拠の準備が重要です。
訴訟では、慰謝料だけでなく、結納金や式場キャンセル料といった他の金銭的損害も請求可能です。対応には法的な専門知識が求められるため、弁護士に相談し、見通しや適切な対応方法について助言を受けることをおすすめします。
④ 訴訟後に相手が支払いに応じない場合は強制執行を検討する
訴訟を提起して慰謝料の支払い命令が出ても、相手が支払いに応じない場合もあります。その場合には、強制執行という手続きで支払いを確実にさせる方法を検討します。
強制執行とは、相手の給与や預金口座を差し押さえて支払いを強制する手続きです。これには裁判所に申し立てが必要で、手続きが複雑であるため、弁護士に依頼して進めるのが一般的です。
強制執行においては、支払うべき金額が確定した後、必要な書類を整えて裁判所に申請します。これにより、相手からの支払いが行われない場合でも、法的手段で資産を差し押さえて支払いを強制することができます。
婚約破棄の慰謝料請求の時効は「3年または5年」です
婚約破棄に対する慰謝料請求には、時効があります。法的な請求根拠によって異なりますが、時効期間は「3年」または「5年」です。
- 不法行為に基づく請求(民法709条):婚約破棄された日から3年(民法724条)
- 債務不履行に基づく請求(民法415条):婚約破棄された日から5年(民法166条)
どちらが適用されるかは、婚約破棄に至った経緯や契約の有無などによって判断が分かれる場合があります。過去には、東京高裁の判例(昭和33年4月24日)で、婚約破棄を債務不履行と評価した例もあります。
なお、時効が完成すると、相手が任意に支払う場合を除き、法的に慰謝料を請求することはできません。
また、長期間が経過すると、証拠が散逸してしまったり、相手の資力が変化して慰謝料の回収が困難になるおそれもあります。
確実に慰謝料請求を行うためにも、婚約破棄から3年以内には手続きを始めることをおすすめします。早めに弁護士へご相談ください。
婚約破棄の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
婚約破棄に関する慰謝料請求を検討する際、弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。婚約破棄された側も、破棄をした側も、専門的なサポートを受けることで適切に対応することができます。
- 交渉の負担や精神的ストレスを軽減できる
→ 相手との直接交渉は、精神的に大きな負担になります。弁護士が代理人として対応することで、ご自身が相手と連絡を取る必要がなくなり、冷静に事案を進めることができます。 - 主張・立証の方針を整理し、適切な慰謝料請求ができる
→ 婚約成立や破棄の正当性について、どのように証拠を示すかは専門的判断が必要です。弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいた説得力ある主張が可能になります。 - 相手が本気で対応せざるを得なくなる
→ 弁護士から連絡が入ると、相手は「法的責任が問われる」と実感し、支払いに応じる可能性が高まります。 - 示談交渉がまとまった場合、適切な内容の示談書を作成できる
→ 自分で作成した示談書では不備がある場合もありますが、弁護士であれば清算条項や支払条件を含め、将来のトラブルを防ぐための合意書を確実に整備できます。 - 交渉が決裂した場合も訴訟や強制執行まで一貫して対応してもらえる
→ 弁護士は、訴状の作成・提出から証拠の準備、判決後の強制執行に至るまで、一連の手続きをすべて代理人として対応できます。
婚約破棄に関する慰謝料請求は、感情的にも複雑な問題を含むことが多くあります。精神的な負担を減らし、確実な解決を図るためにも、弁護士への依頼を前向きに検討しましょう。
婚約破棄で悩んでいる方へ|当事務所が親身・誠実に対応します
突然の婚約破棄に戸惑いや不安を感じていませんか?「慰謝料を請求したいけど、どう進めればいいか分からない」「相手との話し合いがうまくいかない」と感じている方も多いことでしょう。あなた一人で抱え込む必要はありません。
当事務所では、これまで多くの婚約破棄に関するトラブルに対応してきた実績があります。弁護士があなたの代理人となり、冷静かつ専門的に交渉を進めることで、精神的な負担を軽減しながら、最適な解決へと導きます。あなたの立場に立って、最も適切な方法で対応しますので、安心してご相談ください。
全国どこからでも、相談は無料で承っております。私たちは常に依頼者様の気持ちに寄り添い、親身かつ誠実に対応することを大切にしています。困難な状況でも一緒に前に進むためのサポートをお約束いたします。どんな小さな不安でも、まずはお気軽にご相談ください。
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