結婚を決めてから男性に婚約指輪を買ってもらったものの、諸般の事情で婚約破棄して別れることになった場合に、女性はこの婚約指輪(指輪代)を男性に返却しなければならないのでしょうか。
せっかくもらった指輪を返したくないという心情はわかりますが婚約指輪の法的な性質が深くかかわってきます。
そこでこの記事では、婚約破棄した場合、
- 婚約指輪を返却しなければならないケース
- 婚約指輪を返却しなくてもよいケース
- 返却する際は現物ではなく指輪代で返す必要があるのか
について、男女問題に強い弁護士が解説していきます。最後まで読むことで、婚約破棄による婚約指輪(指輪代)の法的な返還義務について理解することができます。
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婚約破棄で指輪を返却しなくてはならないケース
婚約指輪を贈ることは法的には「贈与」契約であると考えられています。ただし、無条件の贈与というわけではなく、双方が婚約状態にあることが前提となっていると考えられます。そこで婚約が破棄されると贈与契約は消滅してしまいます。このように契約の効力の消滅を不確実な事実に連動させていることを解除条件付きの契約といいます。
つまり婚約破棄が解除条件となり条件が成就すると贈与契約が消滅するということです。
そのため、婚約が破棄された場合には贈与契約は効力が否定される結果、贈与した男性側は贈与された女性側に対して不当利得返還として婚約指輪の返却を請求することができるのです(民法第703条)。つまり、原則として婚約破棄となった場合には解除条件が成就しますので女性側は男性側に指輪を返さなければなりません。
返却する際は現物ではなく指輪代で返す必要がある?
婚約破棄による婚約指輪の不当利得返還請求された場合には、制度趣旨からいって、指輪の現物を返却するというのが一般的です。「購入店に返品もできないし、物で返されても困るから指輪代金相当を払え」と言われても現物で返却しても構いません。
既に質屋や買い取り業者でお金に換えてしまっていた場合でも、不当利得は「その利益が存する限度」で返せばいいとされていますので、その受け取ったお金を男性に渡せば大丈夫です。購入時の金額で返す必要はありません。
婚約破棄で指輪を返却しなくてもよいケース
それではどのような場合でも婚約破棄となった場合には女性は男性に婚約指輪を返却しなければならないかというとそんなことはありません。
結納の返還に関するものですが、以下の判例があります。
「結納の授与者が自らの有責事由によって婚姻不成立の事態を招来したり、あるいは正当な事由もないのに婚約を破棄した場合には、信義則上、授与者はその返還を求め得ないと介すべきである。(大阪地裁 昭和43年1月29日判決)」
そして、婚約指輪の授受も結納と同様の性質を持つことから、男性の浮気やDVなど、婚約破棄の原因を専ら男性側が作った場合には婚約指輪を返却する必要はないのです。
では、婚約破棄に至った原因が双方にある場合はどうでしょうか。こちらも結納の返還請求に関するものですが以下の判例があります。
「結納者及び結納受領者双方に婚約解消についての責任が存するときは、信義則上ないし権利濫用の法理からして、結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできないと解するべきである。(福岡地裁 昭和48年2月26日判決)」
前述のように、婚約指輪と結納は同様の性質を持つことから、女性の責任の比重が重いなら指輪を返す必要がありますが、男性の責任の比重が重いなら女性は指輪を返す必要はありません。
ちなみに、女性が男性に婚約指輪を返さなくて良い場合、婚約指輪の所有権は女性にあります。そのまま使うこともできますし、リメイクして加工しても問題ありません。また、捨てるなり売るなり自由に処分することもできます。
まとめ
婚約破棄になった場合でも、破棄の原因が主に男性側にある場合は、女性は婚約指輪を返す必要はありません。
ただ、婚約破棄されて別れた腹いせから婚約指輪の返却を強引に迫ってきたり、それに加え、高額な慰謝料を請求してくる男性もいます。中には、恨みの感情から、嫌がらせや脅迫めいた言動で女性を怯えさせる男性もいます。
当法律事務所では、婚約破棄に伴うトラブル全般の解決を得意としており、実績もあります。”弁護士が依頼者を全力で守る”ことをモットーとしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。その一歩が解決へと近づきます。
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