
「発信者情報開示に関する意見照会書」という書類が、ある日突然あなたの自宅に届いたら…。そこには、トレントを使ってAV(アダルトビデオ)をダウンロードしたことが記録されており、著作権者から個人情報の開示を求められていると記載されています。
「一度だけだから問題ないはず」
そう考えていた方でも、トレントの仕組みにより知らぬ間にアップロードも行っていたとされ、著作権侵害を理由に損害賠償請求や刑事告訴に発展するリスクがあります。近年、AV制作会社やプロダクションによる発信者情報開示請求は急増しており、放置すれば高額な和解金を求められるケースも少なくありません。
この記事では、トレントを利用したAVのダウンロードがどのように著作権侵害にあたり得るのか、プロバイダーから発信者情報開示請求が届いたときにどう対応すべきかについて、実際の相談事例に沿って解説します。最後までお読みいただければ、開示請求が届いた際に慌てず、どのように行動すればよいかが具体的に見えてくるはずです。
なお、トレントでAVをダウンロードして意見照会書が届き、対応にお困りの方は、この記事を参考に状況を整理したうえで、全国どこからでも無料でご相談いただける当事務所までお気軽にご連絡ください。
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記事の目次
【相談事例】トレント利用してAVをダウンロードしたら開示請求されました
40代会社員のMさん(仮名)は、休日の午後、自宅のポストを確認すると見慣れない法律事務所からの封筒が届いていることに気付きました。親展と書かれた封筒を開封すると、「発信者情報開示に関する意見照会書」という書類が入っていました。
この書類は、Mさんが契約するインターネットプロバイダーの代理人弁護士から送られたもので、AV制作会社がMさんによる著作権侵害を主張し、氏名や住所などの個人情報開示をプロバイダーに求めているという内容でした。添付資料には、IPアドレス、アクセス日時、問題となったAVファイルの詳細情報が記載されており、Mさんに対して「開示に同意する」か「同意しない」かを14日以内に回答するよう求めていました。
Mさんには心当たりがありました。約3ヶ月前、インターネット上でトレント(BitTorrent)を使ってAV動画をダウンロードしたことがあったのです。しかし当時のMさんは、単に個人的に視聴するためのダウンロードであり、著作権侵害になるとは考えていませんでした。
意見照会書を読み進めると、Mさんがトレントソフトを使用してAV動画を「ダウンロード及びアップロード」し、これが送信可能化権侵害に該当すると権利者側が主張していることが記載されていました。Mさんは混乱しました。「確かにAVはダウンロードしたが、アップロードなど全くしていない。なぜアップロードしたことになっているのか」と疑問に感じました。
慌てたMさんはスマートフォンでトレント関連の情報サイトを検索しました。しかし、「開示請求は無視すれば問題ない」「すぐに同意して示談交渉に応じるべき」「徹底抗戦が正解」など真逆の意見ばかりで、正しい対処法が分からず不安が募りました。
職場の同僚や家族にAVダウンロードの件が知られるのは絶対に避けたいと考えたMさんは、自己判断では危険と感じ、当事務所に相談に来られました。
Mさんのトレント利用は著作権侵害に当たるのでしょうか。著作権者からの開示請求にどう対応すべきでしょうか。トレントの仕組みと法的問題について解説します。
※本事例は、個人情報保護のため内容の一部を変更・匿名化しています。
トレントでAVをダウンロードすると著作権法違反?
ご相談者のMさんのように「ダウンロードはしたがアップロードはしていないから大丈夫だ」と考えている方は多いですが、トレントの仕組みを正しく理解する必要があります。
まず、トレントそのものは違法ではありません。
著作権者が許可したファイルをダウンロード・アップロードする分には、何ら問題はありません。
問題となるのは、違法にアップロードされた著作物だと知りながらダウンロードした場合です。
ご相談のケースでは、Mさんが違法サイトから違法にアップロードされたAV動画であることを認識しながらトレントでダウンロードしたため、著作権侵害に該当する可能性があります。
Mさんのような「ダウンロードはしたがアップロードはした覚えはない」という疑問は、トレントが採用している技術に原因があります。
一般的なインターネットでのファイルダウンロードは、中央のサーバーからユーザーがデータを受け取る「クライアント・サーバー方式」で行われます。一方、トレントは「P2P(ピア・ツー・ピア)」という技術を用いており、特定のサーバーやサイトを介さず、ユーザー同士が直接データをやり取りする仕組みです。
P2P方式では、目的のファイルをダウンロードする際、複数のユーザーが持つファイルの断片を少しずつ集めることで、高速かつ効率的にダウンロードが完了します。このとき、あなたがファイルをダウンロードすると同時に、あなたがダウンロードしたデータの断片が、他のユーザーに送信される仕組みになっています。つまり、ダウンロードと同時にアップロードも行われているのです。
そのため、ご相談者のMさんは、トレントでAVをダウンロードしたことで、他の不特定多数のユーザーに対して、そのAV動画を違法にアップロードしている状態になります。
したがって、Mさんの行為は、個人的な視聴目的の違法ダウンロードだけにとどまらず、公衆送信権(送信可能化権)侵害という、より重い著作権法違反に問われる可能性があるのです。
ご相談者のMさんにプロバイダーから届いた意見照会書に「ダウンロードおよびアップロード」と記載されていたのは、このためです。
違法アップロードの罪は、「10年以下の拘禁刑」もしくは「1000万円以下の罰金」、またはその両方が科される可能性がある非常に重いものであるため注意が必要です。
トレント利用における発信者情報開示請求について
Mさんのようにトレントを利用して著作権侵害が疑われた場合、多くの方が最初に直面するのが「発信者情報開示請求」です。これは、著作権者が侵害を主張し、誰が行為者なのかを特定するために用いられる法的手続きです。突然プロバイダーや代理人弁護士から「意見照会書」が届くと動揺してしまいますが、その意味や流れを理解しておくことで、適切な対応が可能となります。ここでは、トレント利用における発信者情報開示請求の仕組みと注意点を解説します。
発信者情報開示請求とその流れ
AV制作会社などの著作権者は、著作権を侵害した者に対して損害賠償や刑事告訴をすることが可能です。しかし、そもそも「誰が」著作権を侵害したのかを特定できなければ、法的な措置を講じることはできません。
そこで行われるのが「発信者情報開示請求」という手続きです。この手続きは、違法な投稿やダウンロードを行った人物を特定するために利用されます。
トレントを利用した著作権侵害の場合、AV制作会社は以下の流れで発信者情報を特定します。
- モニタリング会社による監視
→AV制作会社から委託を受けたモニタリング会社が、「トレントモニタリングシステム」と呼ばれる専門の調査ソフトウェアを利用して、トレントサイト上の違法アップロードを常時監視し、アクセスしているユーザーのIPアドレスを収集・記録します。Mさんのケースでは、この段階でMさんが使用したIPアドレスが特定されたと考えられます。 - 弁護士への調査報告
→モニタリング会社は収集したIPアドレスと証拠を調査報告書としてまとめ、AV制作会社の代理人弁護士に提出します。この調査報告書には、Mさんのような利用者のアクセス記録が詳細に記載されています。 - プロバイダーへの開示請求
→弁護士は調査報告書を添付して、IPアドレスを管理しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対し、そのIPアドレスの契約者情報(氏名、住所など)の開示を請求します。 - 意見照会書の送付
→プロバイダーは、いきなり個人情報を開示するわけではありません。契約者本人のプライバシー保護のため、個人情報の開示に同意するかどうかを確認する「発信者情報開示に関する意見照会書」を、Mさんのような契約者本人に送付します。
意見照会書が届いたらどうすればいい?
Mさんが受け取った意見照会書に記載されている14日以内の回答期限は非常に重要です。この書類にどう対応するかで、その後の展開が大きく変わります。
もしあなたが意見照会書に対し「開示に同意する」と回答した場合、プロバイダーはあなたの氏名や住所などの個人情報を権利者に開示します。
一方、回答を無視することも危険な行為です。意見照会書はあなたの意思を確認するための重要な書類であり、回答しないということは、事実上プロバイダーに判断を委ねていることになります。この場合、プロバイダーは開示請求に応じてしまう可能性があります。
また、意見照会書で「開示に同意しない」と回答すれば、プロバイダーが任意で情報開示に応じる可能性は低くなります。しかし、それで終わりではありません。著作権者は、プロバイダーを相手取って裁判所に「発信者情報開示命令の申立て」を行います。裁判の結果、情報開示が認められれば、プロバイダーはあなたの情報を開示せざるを得なくなります。
ご自身で「同意する」または「同意しない」の判断をするのは非常に難しいものです。状況が悪化するのを防ぐためにも、意見照会書が届いた時点で、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
発信者情報開示請求が認められた場合のリスク
発信者情報開示請求が裁判所で認められ、プロバイダーからあなたの氏名や住所といった個人情報が開示されてしまうと、その後は具体的な法的責任を問われる段階に進みます。考えられるリスクは大きく分けて次の2つです。
- ① 損害賠償請求を受けるリスク
- ② 刑事告訴されるリスク
①損害賠償請求されるリスク
発信者情報開示請求が認められ、あなたの個人情報が著作権者に開示されてしまった場合、法的な責任を問われることになります。
まず、発信者情報が開示されると、権利者から直接、または代理人弁護士を通じて損害賠償請求がなされる可能性が高いです。
これは、著作権侵害によって生じた損害を補償するためのものです。
損害賠償額の算定方法は非常に複雑で、明確な基準はありません。しかし、過去の事例から、AV作品1本あたり数十万円の和解金が提示されるケースが多く見られます。
なお、経験上、当事務所が対応をした事案においてAV制作会社から損害賠償請求される金額は、AV作品1本あたり22万円であることが多く、複数の作品について包括的に和解を希望する場合は55万円(33万円から77万円のケースもあり)での示談提示が多い印象です。
一方で、裁判になった場合は、違法ダウンロードされた回数や期間などに基づいて損害額が算定されることがあります。
知的財産高等裁判所の令和4年4月20日判決では、「ダウンロードされた著作物の本数×著作物をストリーミング配信により販売する際の利益額」が損害額として認定されています。
そのため、ファイルの保存期間が長くなると、より多くの人にダウンロードされる可能性が高くなります。トレントの場合、複数のAV作品をダウンロードしているケースも多く、その分だけ賠償額も雪だるま式に増えていくことになります。
実際、作品のダウンロード回数に応じて数十万円〜数百万円の請求をしてくる権利者もあります。損害賠償額を少しでも抑えるためには、違法ダウンロードしたAVデータとBitTorrentクライアント自体を削除することが重要です。
②刑事告訴されるリスク
Mさんのケースでは示談交渉による解決が現実的ですが、著作権侵害は、民事上の責任だけでなく、刑事罰の対象にもなります。
著作権法違反の法定刑は、違法ダウンロードのみであれば2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方です。しかし、トレントを利用した場合は違法アップロードに当たるため、より重い10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
個人への刑事告訴はまれではありますが、悪質なケースや、見せしめとして告訴される可能性もゼロではありません。示談交渉に応じず、高額な賠償を請求される事案では、刑事告訴も辞さないという姿勢を著作権者側が示すこともあります。
このような事態に陥らないためにも、発信者情報開示請求が届いた際には、早期に弁護士へ相談し、適切な対応を検討することが不可欠です。
トレントでAVをダウンロードして開示請求された場合の対処法
Mさんのようにトレントを利用してAV動画をダウンロードし、発信者情報開示請求を受けてしまった場合、適切な対応を取ることが極めて重要です。対応を誤ると、より重い法的責任を問われたり、高額な損害賠償請求に発展したりする可能性があります。ここでは、開示請求を受けた際の具体的な対処法について、心当たりの有無に応じて詳しく解説します。
身に覚えがある場合は著作権者と示談交渉をする
ご相談者のMさんのように、トレント利用で開示請求を受けた場合、心当たりの有無によって対応が変わります。
まず、Mさんのケースのようにトレントを利用してAV動画をダウンロードした事実に心当たりがある場合は、速やかに権利者側と示談交渉を行うのが最も現実的な対処法です。
示談交渉に応じることで、著作権者との間で話し合いによる解決を目指せます。これにより、民事訴訟への発展や、より重い刑事告訴をされるリスクを回避できる可能性が高まります。交渉においては、過剰な金額を請求される場合があるため、弁護士を介して適正な金額での解決を目指すことを強くおすすめします。
弁護士に依頼すれば、相手方と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担も軽減されます。
身に覚えがない場合は?
今回のMさんのケースでは心当たりがありましたが、中にはトレントを利用した覚えが全くないのに、開示請求の書類が届くケースも存在します。
これは、自宅のWi-Fi回線が不正アクセス(ただ乗り)されたり、マルウェアに感染して第三者に利用されたりする可能性が考えられます。
このような場合、意見照会書に対して「開示に同意しない」と回答することが考えられます。しかし、それでも著作権者が裁判所に申し立てを行い、裁判で開示が認められてしまう可能性はゼロではありません。万が一開示が認められれば、次の段階として損害賠償請求がなされる可能性があります。
そのため、もし身に覚えがない場合は、以下の準備を進めることが重要です。
- ①家族に事実確認をする
- ②「自分が犯人ではない」証拠を集める
- ③弁護士に相談する
【①家族に事実確認をする】
まずは、同居している家族がトレントを利用していないか確認しましょう。特に、家族名義の回線を利用している場合は、本人が気づかないうちに家族が使っていることもあり得ます。
【②「自分が犯人ではない」証拠を集める】
開示請求を受けた時点で、直ちに自分が著作権侵害行為を行っていないことを証明する証拠を集めましょう。例えば、問題となった日時に自宅にいなかったことを証明する外出先のレシートや交通機関の利用履歴などが有効な証拠となります。
【③弁護士に相談する】
交渉や裁判で不利な状況に陥らないよう、早い段階で弁護士に相談し、適切な防御策を講じることが不可欠です。弁護士に依頼すれば、事実関係の調査から、相手方への対応、裁判での主張まで、専門的なサポートを受けられます。
ご自身の状況に応じて、最適な対処法は異なります。不安な気持ちを一人で抱え込まず、まずは一度専門家である弁護士への相談をおすすめします。
トレントで開示請求された場合に弁護士に相談するメリット
Mさんのようにトレント利用による発信者情報開示請求を受けた場合、自分ひとりで判断して対応すると、不利な結果を招くリスクが高まります。弁護士に相談することで、法的リスクの正確な把握から交渉対応まで専門的なサポートを受けることができ、安心して解決に向けた行動を取ることが可能となります。具体的なメリットとしては次のような点が挙げられます。
- ① 法的なリスクを正確に見極められる
- ② 意見照会書に適切に対応できる
- ③ 示談交渉や訴訟対応を一任できる
①法的なリスクを正確に見極められる
トレントでAVをダウンロード・アップロードした場合、著作権侵害にあたる可能性が高いですが、ご自身の行為が法的にどのようなリスクを伴うのか、正確に把握することは非常に困難です。
弁護士に相談すれば、現在の状況や集められている証拠から、著作権法違反の可能性や、刑事告訴・損害賠償請求に発展するリスクを総合的に分析してもらえます。また、今後どのような手続きが必要になるのか、どのような方針で進めていくべきかなど、具体的なアドバイスをもらえるため、漠然とした不安を解消できるでしょう。
②意見照会書に適切に対応できる
プロバイダーから届く意見照会書への対応は、その後の法的展開を左右する重要な分岐点です。
意見照会書の回答期限は短く、適切な対応をしなければ、不利益な結果につながる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、相手方の主張内容を詳細に精査した上で、法的に最も効果的な回答書を作成してもらえます。
早期に弁護士へ相談することで、意見照会書への適切な対応が可能となり、個人情報の開示を防げる可能性が高まります。
③示談交渉や訴訟対応を一任できる
発信者情報が開示された後、多くの場合、AV制作会社から損害賠償を求める示談交渉が持ちかけられます。相手方は弁護士を通じて交渉を進めてくるため、法律の専門知識がない個人が交渉するのは非常に不利です。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、不当に高額な請求をされた場合に減額交渉を行うなど、依頼者にとって有利な条件での解決を目指してもらえます。万が一訴訟に発展した場合でも、裁判手続きを全て任せることができるため、精神的な負担が大幅に軽減されるでしょう。
トレントの利用で意見照会書が届いた方は当事務所までご相談を
トレントを利用してAVをダウンロードした結果、「発信者情報開示に関する意見照会書」が届いてしまった場合、対応を誤ると損害賠償請求や刑事告訴といった深刻な事態に発展するおそれがあります。
インターネット上の情報を鵜呑みにして自己判断で対応してしまうと、不利な条件での示談や高額な賠償請求につながることも少なくありません。大切なのは、早い段階で専門家に相談し、適切な対応を取ることです。
当事務所では、これまでにトレント関連の解決実績が300件以上あります。特に示談による解決を得意としており、これまで逮捕者ゼロという結果を維持しています。ご依頼者一人ひとりに対し、親身かつ誠実に向き合い、弁護士が全力でサポートいたします。
意見照会書が届いて不安を抱えている方は、全国どこからでも無料で相談できますので、一人で悩まず、お気軽にお声かけください。安心して未来に進めるよう、経験豊富な弁護士がしっかりと対応いたします。
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