かつては、就職を希望する企業の内情を知りたいと思ったら同じ大学の卒業生を探してOB訪問をしたり、知り合いをたどって社員を探すといった方法しかありませんでした。
しかし現在は、ネット上でさまざまな生の情報を手に入れることができます。そのひとつがみん就(みんなの就職活動日記)です。ここでは就活に必要なさまざまな情報を得ることができるようになっています。
しかし、口コミサイトという特性上、中には虚偽の情報や企業、個人に対する誹謗中傷の口コミが寄せられることもあります。
こうした誹謗中傷の口コミが掲載され、そのまま削除されずに公開され続けてしまうと、企業としては大きなイメージダウンにつながりかねません。
そこで今回は、みん就における誹謗中傷の口コミが投稿されてしまったときに、企業がその投稿を削除するための方法と、書き込みした者を特定する方法を弁護士がわかりやすく解説していきます。
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記事の目次
みん就(みんなの就職活動日記)とは
みん就(みんしゅう)は、楽天株式会社が運営する、就職活動をする学生をターゲットとした就活情報サイトです。
もともとは早稲田大学の学生が1996年12月にプライベートで制作し、2002年4月に「みんなの就職株式会社」を設立、2004年5月に楽天株式会社が連結子会社とし、2009年7月に吸収合併されています。
口コミ数は?
2020年2月現在、日本全国にある29,000社以上の企業に関し、内定者志望動機が25万3,000件、選考・面接体験記が約13万5000件と、かなりの数の口コミが掲載されています。
さらに約55万人もの登録者数がおり、毎年30万人~40万人ほどの就活生が就職活動のための企業研究や面接対策のために利用しています。
みん就の特徴は?
みん就では、各種メーカー、金融、商社、保険、情報通信コンサル、マスコミ、人材、サービスなどのジャンルごとにカテゴライズされた企業検索することができるため、業種を絞って就職活動をしている学生にとっても企業を比較しやすいというメリットがあります。
また、企業の内定者による志望動機なども公開されているほか、選考や面接を実際に受けた人がどのような質問をされてどのように回答したのかといった体験談、これから選考を受ける人に対してどのようなことに気をつければ良いかといったアドバイスなども豊富に掲載されているのが特徴です。
みん就は元社員や現社員などが書き込むわけではないため、企業に対して大きくネガティブな感情を持つ人が書き込むことがないというのも特徴のひとつといえます。
そういった点では、一般的な転職口コミサイトなどに比べると誹謗中傷の程度も低く、プラスの口コミが多いサイトでもあります。
みん就で誹謗中傷はなぜ起こるのか
ただ、そうした特徴をもつみん就であっても、やはり誹謗中傷などの口コミはゼロではありません。みん就の誹謗中傷はどのようにして起こるのでしょうか。
選考漏れした学生からの誹謗中傷
みん就では、選考が進んで面接などに行き、企業の採用担当者や経営者、役員などの内部の人と接触した人が口コミを書くケースがあります。
そうした中で、面接に落ちたことの逆恨みなどから面接官に対して暴言を吐いたり、経営者に対して暴言を吐いたりといったケースがあります。
他企業などからの誹謗中傷
就職活動をしている学生ではなく、競合している企業に勤める社員などがライバル企業のイメージを低下させるため、みん就に書き込むケースもあります。このように、みん就に寄せられる誹謗中傷は学生によるものだけではありません。
誹謗中傷を受けたときの影響
こうした誹謗中傷が書き込まれた場合、企業にとっては大きな損害につながる恐れもありますが、果たしてどのような悪影響が考えられるのでしょうか。
企業イメージの悪化
みん就は、就職活動を行う学生が主に閲覧しています。企業に対して同じ立場の学生たちからネガティブな口コミが投稿された場合、それは就職活動中の学生に見られることになってしまいます。
仮にみん就でその投稿を見た学生が多くはなかったとしても、投稿を見た学生が、自分の友人や同じ大学の知人に向けて、その投稿を見るように注意喚起する可能性があります。
また、FacebookやTwitterなどのSNSにその投稿のスクリーンショットを載せて拡散する可能性も否定できません。こうして誹謗中傷の事実はどんどん拡散され、企業のイメージは大きく悪化してしまいます。
さらに、みん就を見ているのは学生だけではありません。大学の就職課のスタッフや他企業の人事部の社員など、いろいろな立場の人がみん就を見ている可能性があります。
こうした人に対しても、企業のネガティブなイメージが拡散されてしまうことにつながるのです。
優秀な人材が獲れなくなる
企業に応募を考えていた人が誹謗中傷の口コミを見て「この会社に応募するのは辞めよう」と思う可能性があります。特に優秀な人材は、他の企業もほしがるため引き合いが多いものです。
こうした人材があえてイメージの悪い会社に応募するケースなど、ほとんどないと言っていいでしょう。誹謗中傷を受けたことによって、優秀な人材を採用できなくなる可能性は高いといえます。
大学の就職課の推薦がなくなる
大学では、自学の学生に向けて就職課で「この企業は良いですよ」といって推薦を行うことがあります。しかし就職課や大学関係者のスタッフがみん就に掲載されている誹謗中傷の口コミを知れば、その企業を学生に推薦しなくなる可能性もあります。
こうして誹謗中傷によって、企業は思わぬところで人材獲得のチャンスを失っているといえます。こうした被害を最小限に抑えるためにも、誹謗中傷の口コミは早急に何らかの対策を取らなければなりません。
みん就で削除される誹謗中傷の口コミとは
誹謗中傷の口コミに対してまず一番に行わなければならないのが、その口コミを削除して人の目に触れる機会を失わせることです。
削除方法についてお伝えする前に、どういった投稿が削除の対象になるのか、みん就の利用規約を基にご紹介しましょう。
こうした口コミサイトでは、利用規約に違反する口コミは運営によって削除されやすいからです。逆に言えば、利用規約に反しているとは言いがたいと運営が判断したものについては、削除されないこともあります。
そこでまずは、みん就の利用規約について確認することが重要です。
みん就では、利用規約3条によって禁止行為を定めています。その中から誹謗中傷に関連するものを2つピックアップしました。
誹謗中傷や名誉、信用を毀損する行為
誹謗中傷とは、「徹底的に悪口を言い、相手のことを罵る」行為を指します。
「この会社の人事部は無能だ」という発言や「この会社は存在価値がないゴミだ」というような発言は、誹謗中傷にあたるといえます。
また、名誉や信用を毀損する行為も誹謗中傷のように会社のブランドイメージを下げて「この会社は信頼できない会社だ」と思わせますが、みん就では、こうした行為を禁止しています。
法令違反となる行為
みん就では、広く法令違反となる行為やそのおそれのある行為も禁止しています。誹謗中傷に関連して法令違反となりうるケースがこちらです。
プライバシーの侵害
みん就はあくまでも企業に対する口コミサイトです。企業内の個人の特定につながるような情報の掲載は禁止されています。
なりすまし
みん就は誰でも無料でアカウントを取得することができますが、アカウントは匿名のため、悪意のあるユーザーがなりすまし行為を行って誹謗中傷を書き込む可能性があります。
例えば、人事担当や採用担当であるとしてみん就に投稿を行うことは、それが誹謗中傷に関わらない場合でも規約によって禁止されています。
この他、以下のような行為も法令違反となる行為です。誹謗中傷は、こうしたこうした違法な行為に該当することがあります。
- 業務妨害罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
みん就の誹謗中傷にあたる口コミを削除する方法
ではいよいよ、具体的な削除の方法について見ていくことにしましょう。
削除依頼フォームを通じて削除依頼を行う
最初の手順は、みん就の削除依頼フォームを通じて削除依頼を行う方法です。
この削除依頼は社団法人テレコムサービス協会のガイドラインに準じて行われるものとなっていますが、テレコムサービス協会のガイドラインに従うとすると、書面で削除依頼を送付しなければなりません。
そうした手続きを取っていると対応が遅れてしまうことから、オンライン上で削除依頼ができるようになっています。
削除依頼をするときの注意点
削除依頼を行うときには、注意しておきたいことがあります。
削除理由は簡潔・明確に
削除理由は、みん就側が削除依頼を受け取って「この内容なら削除処理が適切だ」とすぐに判断できるようにしておかなければなりません。そのためには、余計な情報を多く書き込まず、必要十分な内容を簡潔に書き込むことが大切です。必ず記載したいのは以下の内容です。
- 口コミ投稿が規約のどの部分に違反しているのか
- 被害に遭っている人
- 被害に遭っている人がどのような権利を侵害されているのか
少なくともこの3点についてはしっかりと明記しておきましょう。逆に、「この投稿によってひどく不快な思いをしています」「本当に困っています」などの感情的な情報は書き込む必要はありません。
必ず削除されるとは限らない
みん就側が「削除は不適切だ」「規約には違反していない」という判断を下した場合、口コミ投稿は削除されないまま残ることになります。
こうした可能性があることも踏まえて削除依頼を行いましょう。もしも削除されない場合は、次の「仮処分命令」という手続きに進むかどうかも併せて検討しなければなりません。
削除までに7日~14日程度かかる
仮に削除が認められたとしても、1,2日で削除されるわけではありません。削除処理がなされるまでには、最低でも7日程度かかることを念頭に置きましょう。すぐに削除されないからといって何度も削除依頼を行わないよう注意してください。
削除依頼は1件ずつ行う
削除依頼フォームを見るとわかるとおり、削除依頼フォームには、書き込み者のニックネームや書き込み日時など、詳細の情報を書かなければならなくなっています。
これはみん就側が迅速に該当の口コミを特定するためです。そこで、もしも複数件誹謗中傷を受けていた場合でも、削除依頼は1件ずつ行うようにしてください。
削除されないときは、裁判所の仮処分命令を申し立てる
削除依頼をしてもみん就が削除に応じてくれない場合、原因としては投稿そのものが規約に違反していないケースが考えられますが、権利侵害が行われているのにその事実をうまくみん就側に伝え切れていない可能性も捨てきれません。
そういったときには、裁判所の仮処分命令を申立て、裁判所からみん就に対して投稿の削除命令を出してもらうという方法があります。
仮処分命令とは、違法状態が続いてしまうと被害者にとって被害が大きいとき、暫定的に被害を食い止めるために、民事保全法に基づいて裁判所が出す処置のことです。
誹謗中傷の投稿が公開され続けてしまうことで、企業には大きな損害が出てしまう可能性があります。そのため、暫定的に被害を食い止める必要があると裁判所が判断すれば、投稿を削除するように仮処分命令が出されるのです。
訴訟を起こして判決を待つのとは違い、仮処分なので最終的な結論が出るまで時間がかかりません。2週間から1ヶ月ほどで命令が出るため、もしもみん就が投稿削除に応じてくれない場合は、仮処分命令の申立手続きに進むという方法があります。
ただ、仮処分命令の申立は裁判所に対して行うことになるため、誹謗中傷の口コミによって権利侵害が行われていることなどを客観的に証明する必要があります。
申立書にも法律の知識に基づいた内容を書かなければならないなど難易度が高いため、早期解決を目指すのであれば弁護士に依頼することをお勧めします。
投稿を削除する以外の方法
投稿の削除がうまくいったとしても、すでに企業に大きな損害が生じてしまっている場合には、誹謗中傷の口コミを投稿した人に対して損害賠償を請求することも検討する可能性もあります。
その場合、投稿削除だけではなく投稿者を特定して損害賠償請求を行うという流れになります。このときに必要になる対策が「発信者情報開示請求」です。
発信者情報開示請求の流れ
発信者情報開示請求とは、その名の通り、発信者つまり誹謗中傷の書き込みを投稿した人物の情報を、みん就などに対して「開示してください」と請求する手続きです。発信者情報開示請求によって口コミの投稿者の名前や連絡先を入手するためには、以下の2段階の手順を踏まなければなりません。
- みん就に対して発信者情報開示請求を行い、発信者のIPアドレスを開示してもらう
- IPアドレスから発信者が利用していたインターネットプロバイダを特定し、インターネットプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う
- 発信者の名前や連絡先が開示される
このように、みん就およびインターネットプロバイダ会社が発信者情報開示請求に応じてくれて初めて、投稿者の氏名や連絡先が入手できることになります。
発信者情報開示請求は認められにくい
ただ、発信者情報開示請求を私人が行ったとしても、やはりみん就やインターネットプロバイダ側はなかなか情報を開示してはくれません。
それは、開示を求められている情報が個人情報にあたるからです。そこで、発信者情報開示請求についても弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。
まとめ
今回は、みん就で誹謗中傷の口コミを投稿されたときの投稿削除の方法や、投稿者の特定方法についてご紹介しました。
みん就での誹謗中傷を放置すると、企業のイメージ悪化だけでなく、人材確保にも大きく影響を及ぼす可能性があります。誹謗中傷の口コミを投稿されてしまった場合は、できるだけ早い段階で対策をとるようにしましょう。
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