
「発信者情報開示請求をされたかもしれない」「意見照会書が届いたけれど、このまま無視しても大丈夫だろうか」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
発信者情報開示請求は、投稿を削除したり意見照会書を無視・拒否したとしても、最終的に訴訟を起こされれば逃げ切ることは困難です。一方で、投稿が権利侵害として認められないケースや、プロバイダのログ保存期限を過ぎてしまったケースなど、結果として身元の判明にいたらず逃げ切れる場面も存在します。
この記事では、ネット誹謗中傷問題に強い弁護士が、次のポイントについて解説します。
- 発信者情報開示請求から逃げ切れる6つのケース
- 意見照会書を無視・拒否した場合のリスク
- 逃げ切れなかった場合に取るべき対処法
なお、発信者情報開示請求についてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。
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発信者情報開示請求は逃げ切れる?まず知っておくべき基礎
発信者情報開示請求から逃げ切れるかを判断するためには、まず手続きの仕組みと、よく誤解されがちな「投稿削除」「無視・拒否」の限界を押さえておく必要があります。
発信者情報開示請求とは
インターネット掲示板(5ちゃんねるや爆サイなど)やX(旧Twitter)・InstagramなどのSNS、ファイル共有ソフトなどで名誉毀損やプライバシー権侵害、著作権侵害などの被害を受けた人は、投稿した相手(発信者)に対して、民事上の損害賠償を求めることができます。
また被害者は、発信者の行動が犯罪に当たる場合には、捜査機関に対して刑事告訴をすることもできます。
もっとも、こうした民事・刑事の責任追及をするためには発信者を特定する必要があります。匿名で投稿されたケースでは、被害者個人がどこの誰かを知る術はありません。
そこで法律上、掲示板やSNSを運営するコンテンツプロバイダ(サイト運営者)や通信を媒介するアクセスプロバイダ(通信事業者)に対して、発信者の氏名、住所、メールアドレス、IPアドレス、電話番号などの開示を申し立てる手続きが設けられています。
このようにプロバイダに対して発信者の個人情報の開示を求める手続きを「発信者情報開示請求」といいます。
発信者情報開示請求の費用や全体像については、「発信者情報開示請求とは?費用や期間などの情報をまとめました」もあわせてご確認ください。
発信者情報開示請求のおおまかな流れ
発信者情報開示請求は、おおむね次のような手続きで進みます。
- 裁判所にコンテンツプロバイダ(サイト運営者)に対する開示命令を申し立てる
- サイト運営者からアクセスプロバイダ(通信事業者)の情報を取得する
- 取得したアクセスプロバイダに対しても開示命令を申し立てる
- 申立てが認められると、IPアドレスや氏名、住所、メールアドレス、電話番号などが開示される
開示までの期間は、ケースにもよりますがおおむね半年から1年程度を見ておく必要があります。
2022年10月施行の改正プロバイダ責任制限法(プロ責法)により、それまで2段階の裁判手続きを要した発信者情報開示請求が、1つの手続きの中で行えるようになりました。これにより、申立人側の負担が軽くなった一方で、発信者側にとっては従来より特定までのスピードが上がっている点に注意が必要です。
※同法は2025年4月1日施行の改正により、「情報流通プラットフォーム対処法」(通称:情プラ法)へ名称が変更されています。
意見照会書を無視・拒否しても逃げ切れる?
発信者情報開示請求がなされると、契約しているプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届きます。これは、開示請求に応じるか否かを契約者本人に確認するための書面です。
「無視すれば情報は開示されないのではないか」と考える方もいますが、結論として意見照会書を無視・拒否しても、最終的には裁判所の判断で発信者情報が開示される可能性があります。
無視や開示拒否を選んだ場合、プロバイダは原則として契約者の同意なしには情報を開示しません。しかし、その後に開示命令の申立てや訴訟が起こされ、裁判所が「開示すべき」と判断すれば、本人の意思に反して情報が開示されます。
また、すでに相手の手元に投稿の画像保存や魚拓が残されていれば、投稿を後から消しても証拠は残ります。「届いたあとに慌てて消す」という対応にも限界があります。
意見照会書への具体的な回答方針については「開示請求の意見照会書が届いたら?回答書と正しい対処法」で詳しく解説しています。
発信者情報開示請求から逃げ切れる6つのケース
発信者情報開示請求は強力な制度ですが、すべての請求が認められるわけではありません。以下の6つに該当する場合は、結果として発信者の身元が判明せずに済む(逃げ切れる)可能性があります。
- ①投稿内容が権利侵害にあたらない
- ②発信者の特定が技術的に困難
- ③相手が証拠を保存する前に投稿を削除した
- ④削除を見届けた相手が責任追及を断念した
- ⑤意見照会書への拒否回答が認められた
- ⑥開示請求の前に示談が成立した
それぞれのケースを具体的に見ていきます。
①投稿内容が権利侵害にあたらない
そもそも問題の投稿が他人の権利侵害に該当しなければ、開示請求の要件自体が成立しません。
法律上、開示が認められるためには「権利が侵害されたことが明らか」であることが必要です。発信者には表現の自由・通信の秘密・プライバシーがあるため、被害者の救済とのバランスを保つ趣旨です。
情報の流通によって典型的に問題となる権利侵害は、次のようなものです。
- 名誉毀損
- プライバシー権侵害
- 著作権・著作隣接権の侵害
- 商標権侵害 など
たとえば、店舗に対する「サービスが悪かった」という主観的な感想や、公共性のある事実を公益目的で指摘する内容は、社会通念上許される表現の範囲内と評価されることがあります。投稿に名前や住所が出ていても、その対象が誰であるかを第三者が読み取れない場合も同様に、権利侵害の「明らかさ」が認められない傾向にあります。
権利侵害にあたるかどうかの判断には法的な評価が必要となるため、自分だけで「これは大丈夫だ」と決め込まず、弁護士に投稿内容を確認してもらうことをおすすめします。
②発信者の特定が技術的に困難
権利侵害が明らかであっても、技術的に発信者を特定できなければ開示請求は実を結びません。
最も多いのは、アクセスログの保存期間切れです。プロバイダ側はアクセスログを永続的に保管する義務を負っておらず、保存期間は一般に3か月から6か月程度で、これを過ぎると古いログから消去されてしまいます。申立てがこのタイミングを過ぎてしまうと、IPアドレスをたどっても契約者にまで行き着けません。
海外プロキシサーバー経由の投稿も、同様にハードルが高い類型です。日本のプロ責法を海外企業に適用できるのか、裁判所の管轄が及ぶのかといった準拠法上の問題があり、仮に手続きが進められる場合でも、開示までに長い期間と高額な費用がかかり、国内事案に比べて格段に難易度が上がります。
カフェや駅などの公衆無線LAN(フリーWi-Fi)から投稿された場合、判明するのは施設の管理者や運営会社のIPアドレスにとどまり、誰が端末を操作したかまでは特定できません。
ネットカフェや集合住宅の備え付けインターネット設備から投稿されたケースでも、開示されるのは経営会社や管理会社の情報にとどまり、個人の特定までは至りません。
これらに該当する場合、そもそも「発信者情報開示に係る意見照会書」自体が手元に届きません。
なお、特定が困難なケースの詳細は「IPアドレス開示請求は意味ない?犯人特定ができない4つのケース」もご参照ください。
③相手が証拠を保存する前に投稿を削除した
権利侵害にあたる投稿であっても、相手方が証拠化する前にすばやく削除できた場合には、開示請求の対象となる投稿そのものが特定できなくなります。
開示請求では、「どの投稿が、どの権利を、どのように侵害したか」を申立人側で主張・立証する必要があります。スクリーンショットや魚拓などで投稿が保存されていなければ、申立て自体が立ち行きません。
特にSNS上でのやり取りでは、「訴える」「開示請求する」と相手から告げられて慌てて投稿を消した結果、相手側で証拠を残せないまま終わった事例も実際に存在します。
もっとも、意見照会書が届いている段階では、すでに相手側で投稿のスクショなどが取られている可能性が高い点には注意が必要です。
④削除を見届けた相手が責任追及を断念した
証拠は保存済みであっても、投稿が消えたことで相手が満足し、それ以上の手続きに踏み込まないケースもあります。
発信者情報開示請求は、申立人にとっても弁護士費用や裁判手続きの負担が大きい手続きです。投稿の削除によって権利侵害状態が解消されれば、「これで十分」と判断されることは少なくありません。
意見照会書が届いた段階で投稿を削除した結果、相手が開示請求の続行を断念したという事例もあります。削除自体に「逃げ切り」を保証する効力はないものの、相手の手間と費用を踏まえると、結果的に手続きが止まる余地はあります。
⑤意見照会書への拒否回答が認められた
意見照会書に対して、適切な法的根拠を示して開示を拒否する旨を回答することで、開示がなされないこともあります。
プロバイダは、契約者から不同意の意思表示があった場合、原則として任意では発信者情報を開示しません。請求者側がそこで諦めれば、その時点で手続きは止まります。
仮に請求者が訴訟・開示命令の申立てに進んだとしても、回答書で示した法的反論がプロバイダ側の主張に組み込まれ、裁判所が「権利侵害は明らかとは言えない」と判断すれば、請求は棄却されて開示にはいたりません。
ただし、事実に反する弁明や感情的な反論を並べるだけでは、裁判官の心証を害するだけです。回答書には、開示要件を満たさない具体的な理由を、法的に整理して書く必要があります。個人での対応には限界があるため、回答期限内に弁護士へ相談することが現実的です。
具体的な拒否回答の進め方は「発信者情報開示請求は拒否でも大丈夫?拒否するとその後どうなる?」で解説しています。
⑥開示請求の前に示談が成立した
誹謗中傷の相手と面識があり、開示請求の手続きが本格化する前に謝罪と示談(当事者同士の話し合いによる合意)が成立した場合には、その後の責任追及そのものが回避できる可能性があります。
被害者の側にとっても、訴訟や開示命令の申立てには時間とコストがかかります。投稿者が早期に誠意を示し、適切な解決金で和解できれば、それ以上踏み込まないという判断は十分あり得ます。
自ら投稿者であることを明かす形にはなりますが、最終的に身元が判明する見込みが高い事案であれば、先手を打って示談に動くほうが、相手にも誠意が伝わりやすく、慰謝料額も抑えやすくなります。
ただし、当事者同士の直接交渉では、感情的な対立や法外な解決金の請求などトラブルが起きがちです。示談を検討する場合は、弁護士に交渉の代理を依頼することが現実的です。
発信者情報開示請求から逃げ切れなかった場合のリスク
ここまでは「逃れられる」側のケースを見てきましたが、要件を満たしてしまえば最終的には情報が開示されます。逃げ切れなかった場合に発信者が負うリスクは大きく4つです。
民事手続きで損害賠償請求される
開示請求から逃げ切れず最終的に発信者が特定されると、民事手続きによる損害賠償請求が待ち受けます。
名誉毀損、プライバシー権侵害、著作権侵害が認められると、不法行為に基づく精神的損害の賠償責任が発生します。
慰謝料の金額は事案によって幅がありますが、10万円から100万円程度が一つの目安です。侵害の態様が悪質で被害者への影響が深刻だと判断された事案では、100万円を超える金額が認容されることもあります。
弁護士費用(調査費用)を請求される
損害賠償請求の場面では、慰謝料に上乗せする形で、開示請求の手続きにかかった弁護士費用まで請求されるのが通常です。
発信者の特定に要した弁護士費用(調査費用)として、30万円〜70万円程度が請求されるのが一般的な水準です。
通常の民事訴訟では、損害賠償金の10%程度が弁護士費用として認められる裁判例が多くあります。そのため、上記の調査費用に加えてさらに10%の弁護士費用を上乗せされるケースもあります。
慰謝料が大きくなるほど、損害として計上される弁護士費用も連動して増える構造になっています。
刑事手続きで刑罰が科される
開示請求から逃げ切ろうと不誠実な態度を取ると、被害者の被害感情を強めることにつながりかねません。その結果、捜査機関へ刑事告訴され、刑事罰を求められるおそれもあります。
ネット上の投稿で問題になりやすい罪名と法定刑は次のとおりです。
| 名誉毀損罪(刑法第230条1項) | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪(刑法第231条) | 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料 |
| 著作権侵害(著作権法第119条1項) | 10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科 |
| 脅迫罪(刑法第222条1項) | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 業務妨害罪(刑法第233条・234条) | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
※2025年6月1日施行の改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。
起訴され有罪判決が確定すると、罰金刑や拘禁刑が科され、前科記録が残ることになります。
捜査機関に逮捕・勾留されると、起訴・不起訴の判断が出るまで最大23日間にわたって身体拘束を受ける可能性が出てきます。仮に不起訴処分(刑事裁判にかけられない処分)で終わったとしても、その間の仕事や学校、日常生活への影響は避けられません。
なお、トレント(BitTorrent)などのファイル共有ソフトを使った著作権侵害については、調査会社によって投稿時のIPアドレスが押さえられているケースが多く、誹謗中傷型の案件と比べて逃げ切りが難しい類型といえます。
ネット投稿が刑事事件化する可能性のある方は「誹謗中傷でも前科になる!前科がつかないためにすべきことを解説」もあわせてご確認ください。
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示談がまとまりづらくなる
無視や拒否で粘った末に開示された場合、被害者の側から見れば「最後まで不誠実な対応をした相手」として記憶されます。その結果、示談交渉が難航しやすくなります。
投稿内容が相手の権利を侵害していることが明らかな事案では、早い段階で素直に認め、宥恕(許してもらうこと)を求めていくほうが、結果として穏当に収束しやすい傾向にあります。
発信者情報開示請求でお困りの方は弁護士にご相談ください
発信者情報開示請求は、投稿の削除や意見照会書の無視・拒否だけでは逃げ切ることが難しく、対応を誤ると損害賠償や刑事罰のリスクがかえって大きくなる手続きです。
どのように対応すべきかは、投稿内容が権利侵害にあたるかどうか、アクセスログの保存状況、相手方の出方など、個別の事情によって判断が分かれます。弁護士に相談すれば、意見照会書への回答方針を法的根拠から組み立て直し、必要に応じて早期の示談交渉に動くことで、訴訟や刑事事件への発展を抑えることもできます。
意見照会書には回答期限があり、対応が遅れるほど取りうる選択肢は狭くなります。「すでに意見照会書が届いている」「投稿の心当たりがあり開示請求を覚悟している」という方は、おひとりで抱え込まず、できるだけ早い段階でご相談ください。
当事務所は、発信者情報開示請求への対応や示談交渉を数多く取り扱ってきた実績があり、相手方との交渉から職場・家族への影響の最小化まで配慮しながら、依頼者の不利益を抑えるべく弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
ネット誹謗中傷の削除請求・犯人特定・損害賠償請求に豊富な実績を持つ。掲示板やSNSでの名誉毀損・プライバシー侵害・風評被害に対し、発信者情報開示請求による投稿者の特定から慰謝料請求まで一貫して対応。法人・個人を問わず、ネット上の権利侵害から依頼者を守るために迅速に行動している。

