児童ポルノの時効は?製造・所持・提供の時効を弁護士が解説

児童ポルノ禁止法違反の時効は次の表の通りです。

罪名公訴時効
児童ポルノ製造罪3年
児童ポルノ所持罪単純所持罪3年
提供目的所持罪(特定の少数者への提供目的)3年
提供目的所持罪(不特定・多数者への提供目的)5年
公然陳列目的所持罪5年
児童ポルノ提供罪提供罪(特定・少数の者に提供)3年
提供罪(不特定・多数者への提供)5年

児童ポルノ禁止法では、児童ポルノ(①児童の性交等の姿態、②児童の性器を触っている、児童が他人の性器を触っている姿態、③衣服の全部または一部を着けない児童の姿態等の写真や電磁的記録)を、製造、所持、提供、運搬、輸入、輸出、公然陳列する行為を禁止しています。

この記事では、児童ポルノの製造罪、所持罪、提供罪の時効につき解説するとともに、

  • 児童ポルノの時効の進行はいつからスタートするのか
  • 児童ポルノの民事(損害賠償)の時効
  • 児童ポルノの時効完成を待つリスク
  • 時効完成を待たずにすべきこと

などについても詳しく解説していきます。

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児童ポルノの時効は?

そもそも時効(公訴時効)とは?

公訴時効とは、一定の期間が経過することで、犯罪を行った者に刑罰が科せられなくなるという制度です。

刑事訴訟法には、「時効が完成した事件」について公訴提起をしても「免訴」判決が言い渡されると規定されています(刑事訴訟法第337条4号4号参照)。「免訴」とは、検察官が起訴しても裁判所は実体の内容に踏み込まず門前払いになるということです。したがって、公訴時効が経過している事件については免訴になるため、検察官もわざわざ起訴するということがないのです。

しかし、時効が完成した場合の効果は、検察官が起訴できなくなることにとどまります。捜査機関は引き続き児童ポルノ事件の捜査を行うことが可能ですが、起訴ができなくなった時点で、捜査には目的がなくなるため、事実上、児童ポルノ事件の捜査は終了することになります

児童ポルノ製造の時効は?

児童ポルノ製造罪の公訴時効の期間は「3年」です。

公訴時効の期間は、法定刑の上限を基準に決まります

児童ポルノを提供する目的で製造した場合は「児童ポルノ製造罪」が成立します。また、児童ポルノを提供する目的がなくても、児童に児童ポルノに該当する姿態をとらせ、写真や記録媒体にその姿を描写することによって製造した場合(同条4項)、あるいはひそかに児童ポルノに該当する児童の姿態を写真や記録媒体に描写することによって製造した場合(同条5項)でも、児童ポルノ製造罪は成立します。

児童ポルノ製造罪の法定刑は、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(児童ポルノ禁止法第7条3項)。この罪の法定刑は、「長期5年未満の懲役または罰金に当たる罪」に分類されるため、公訴時効は「3年」と定められています(刑事訴訟法第250条2項6号)。

したがって、児童ポルノを製造してから「3年」が経過した場合には、製造行為によって罪に問われて刑罰を受けるというリスクが消滅します。

児童ポルノ所持の時効は?

児童ポルノ単純所持罪および児童ポルノ提供目的所持罪(特定の少数者への提供目的)の公訴時効は「3年」です。一方、児童ポルノ提供目的所持罪(不特定・多数者への提供目的)および児童ポルノ公然陳列目的所持罪の公訴時効は「5年」です。

まず、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した場合(自己の意思に基づき所持し、かつそのことが明確に認められる場合)には、「児童ポルノ単純所持罪」が成立します(児童ポルノ禁止法第7条1項前段)。

また、児童ポルノを特定の少数者に提供する目的で所持した場合には、「児童ポルノ提供目的所持罪」が成立します(同条第3項)。

さらに、児童ポルノを不特定または多数の者に提供する目的で所持した場合には、「児童ポルノ提供目的所持罪(不特定・多数者への提供目的)」が成立します。また、児童ポルノを公然と陳列する目的で所持した場合には、「児童ポルノ公然陳列目的所持罪」が成立します(同条第7項)。

児童ポルノ単純所持罪および児童ポルノ提供目的所持罪の法定刑は、「人を死亡させた罪」以外で「長期5年未満の懲役または罰金に該当する罪」に該当するため、公訴時効は「3年」です(刑事訴訟法第250条2項6号)。

一方、児童ポルノ提供目的所持罪(不特定・多数者への提供目的)、および児童ポルノ公然陳列目的所持罪の法定刑は、「人を死亡させた罪」以外で「長期10年未満の懲役に該当する罪」に該当するため、公訴時効は「5年」となります(刑事訴訟法第250条2項5号)。

罪名法定刑公訴時効
児童ポルノ単純所持罪「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」3年
児童ポルノ提供目的所持罪(特定の少数者への提供目的)「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」3年
児童ポルノ提供目的所持罪(不特定・多数者への提供目的)「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金」5年
児童ポルノ公然陳列目的所持罪「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金」5年

児童ポルノ提供の時効は?

児童ポルノ提供罪(特定・少数の者に提供)の公訴時効は「3年」です。一方、児童ポルノ提供罪(不特定・多数者への提供)の公訴時効は「5年」です。

児童ポルノを特定・少数の者に提供した場合には、児童ポルノ提供罪が成立します。児童ポルノ提供罪の法定刑は、「3年以下の懲役または300万円以下」が科されることになります(児童ポルノ禁止法第7条2項)。

これに対して、児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合には、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」が科されることになります(同条第6項)。

児童ポルノ提供目的所持罪(特定・少数)の法定刑は、「人を死亡させた罪」以外で「長期5年未満の懲役または罰金に当たる罪」であるため、公訴時効は「3年」となります(刑事訴訟法第250条2項6号)。

児童ポルノ提供罪(不特定多数)が成立した場合の法定刑の法定刑は、「人を死亡させた罪」以外で「長期10年未満の懲役に当たる罪」であるため、公訴時効は「5年」となります(刑事訴訟法第250条2項5号)。

罪名法定刑公訴時効
児童ポルノ提供罪(特定・少数の者に提供)「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」3年
児童ポルノ提供罪(不特定・多数者への提供)「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金」5年

児童ポルノの時効はいつからスタートする?

起算点は「犯罪行為が終わった時」

それでは児童ポルノ禁止法違反の罪の公訴時効がスタートするのはいつからなのでしょうか。

この点、公訴時効については「犯罪行為が終わった時」から進行すると規定されています(刑事訴訟法第253条)。

例えば、児童ポルノの所持の場合、所持をやめた時から3年が経過すると時効となり、不特定多数に提供した場合は、提供行為が終了してから5年が経過すれば時効が成立することになります。犯罪に該当する所持や提供行為が終了してから時効期間が経過することで、刑罰を受けることはなくなります。

ここで重要なのは、「犯罪行為が終了した時」という点です。

所持や提供罪の時効の起算点については、以下で解説するように、注意が必要となります。

所持罪・提供罪の起算点に注意

児童ポルノの所持のように継続的な犯罪において、児童ポルノの所持を続けている間は時効期間が進行するのでしょうか。この場合には、犯罪行為が終わったとはみなされず、時効のカウントは始まらないのでしょうか。

児童ポルノを所持してから3年が経過しても、その所持が続いている場合には公訴時効は成立しません。公訴時効は犯罪行為が終了した時点から開始されるため、所持行為を続けている限りは「行為が終わった」とはみなされないのです。つまり、所持行為をやめない限り時効のカウントは始まりません

具体的には、児童ポルノを所持し、その後完全に削除または所持をやめた時点から3年が経過して初めて時効が成立することになります。所持行為を継続している場合は、何年経過しても時効は成立しませんので、十分に注意が必要です

また、インターネット上に児童ポルノを公開してから5年が経過したとしても、必ずしも公訴時効が成立するわけではありません。不特定多数への提供行為についての時効は、提供行為が終了してから5年が経過した時点で成立します。

したがって、ネット上で公開を続けている間は提供行為が継続していると見なされ、公訴時効のカウントは始まりません。

時効を成立させるためには、公開を停止し、提供行為が終わったと認められる状態にした上で、そこから5年が経過する必要があります。つまり、公開や提供を続けている間は、何年が経過しても時効は成立しない点には注意しておく必要があります

児童ポルノの時効についての注意点

公訴時効が停止することがある

公訴時効については、一定の事由が発生した場合に、時効期間の進行が一時停止することがあります。これを「公訴時効の停止」と言います。

公訴時効が停止するのは、以下のような事由がある場合です(刑事訴訟法第254条、255条)。

  • 当該事件について公訴が提起された場合
  • 共犯の1人に対して公訴が提起された場合:他の共犯に対しても公訴時効が停止する
  • 犯人が国外にいて有効な起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった場合:国外にいる期間は時効が停止する
  • 犯人が逃げ隠れしているため有効な起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができなかった場合:逃げ隠れしている期間について時効が停止する

例えば、児童ポルノの所持が終了してから2年が経過したあとに犯人が国外に逃亡し、その5年後に日本に帰国したような場合には、未だ児童ポルノ所持罪の3年の時効は成立していません。帰国してから1年後に時効が成立することになるため、帰国後にすぐに検挙されてしまうと刑事罰に科される可能性があります。

公訴時効が完成しても民事責任を追及される可能性がある

児童ポルノ禁止法違反の罪で公訴時効が完成した場合、刑事罰を科されることはなくなります。しかし、公訴時効が完成しても、被害者から民事責任(損害賠償責任)を追及される可能性は残ります

児童ポルノ禁止法違反の行為は民法上の不法行為に該当し、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます(民法第709条)。公訴時効が完成しても、民事上の賠償責任は消滅しません。

民法では、不法行為に基づく損害賠償請求権に消滅時効が設けられています(民法第724条、724条の2)。具体的には、以下の2つの条件が満たされると、請求権は時効となります。

  • 被害者が損害及び加害者を知った時から「3年」が経過
  • 事件が発生した時から「20年」が経過

これらの期間が経過すると、民法上の賠償責任を免れることができます。

なお、2017年の民法改正により、生命や身体を害する不法行為の時効期間が「5年」に延長されました。児童ポルノの被害において、精神的苦痛は「身体を害する不法行為」には含まれませんが、もしPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神的障害が発症した場合、身体を害する不法行為として扱われ、時効が「5年」に延長される可能性もあります

このように、刑事罰に関する公訴時効が成立しても、民事責任については最長20年間追及される可能性があるため、加害者は引き続きリスクを抱えることになります。

児童ポルノの時効完成を待つリスク

児童ポルノに関連する犯罪では、時効が完成するまで待つことは非常にリスクが高いです。警察はこの種の性犯罪に対して厳格に捜査を行っており、さまざまな経路を通じて児童ポルノ関連の犯罪が発覚する可能性があります。

具体的には、児童ポルノ関連犯罪については、以下のように発覚する可能性があります。

  • サイバーパトロールによる発覚
    警察はインターネット上の掲示板やSNSを定期的に監視しています。サイバーパトロールと呼ばれるこの活動により、個人間でのやり取りや不審な活動が確認されると捜査対象となる場合があります。匿名性を信じて行動していても、デジタル情報は簡単に追跡可能であり、発覚するリスクは常に存在しています。
  • 違法サイトや業者の摘発
    違法な販売業者や児童ポルノを扱うサイトが摘発された場合、顧客リストやサーバー情報が押収されることがあります。その結果、顧客や利用者にまで捜査の手が及ぶ可能性が高まります。「自分は大丈夫だろう」と考えるのは大きな間違いです。
  • 被害児童の告白
    被害を受けた児童が事情を打ち明けた場合、そこから捜査が始まることも少なくありません。別件で補導された児童が被害を告白したり、親が不審に思って児童から事情を聞きだしたりして捜査が開始されるケースは少なくありませんん。
  • 別件捜査からの発覚
    児童買春や盗撮など別の犯罪で捜査を受けた際、押収されたスマートフォンやパソコンを解析することで、児童ポルノが発見されるケースもあります。削除されたデータであっても、専用の技術を用いれば復元可能なため、「データを消したから安全」という考えは通用しません。

単純所持であっても発覚しない保証はありません。警察はあらゆる角度から捜査を進めており、「時効まで待てば問題ない」といった認識は極めて危険です。特に、履歴を消したりデータを少量にとどめたりするだけではリスクを回避できません。

児童ポルノ事件で警察に逮捕されるのではないかと不安な場合には、速やかに弁護士に相談して、慎重な対応をとることが求められます。

児童ポルノの時効完成を待たずにすべきこと

前述の通り、児童ポルノの時効完成を待っている間、犯罪がいつ警察に発覚し、逮捕されるか分からないリスクが常に伴います。そのため、時効を待つのではなく、早期に適切な対応を取ることが重要です。

そこで、ここでは児童ポルノ禁止法違反に該当する行為をした方が、逮捕や起訴を回避するために取るべき対応策を解説します。具体的には、次の2つの対応策が考えられます。

  • ①自首する
  • ②児童の保護者と示談する

①自首する

児童ポルノ事件で逮捕や不起訴を獲得するためには、捜査機関に自首をすることを検討してください。自首とは、犯人が自発的に自己の犯罪事実を申告し、捜査機関にその訴追を含む処分を委ねることをいいます。

罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首した場合には、その刑を減軽することができると刑法に規定されています(刑法第42条1項)。そのため自首が成立するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 自発的に自分の犯罪事実を申告すること
  • 自身への刑事処分を求めていること
  • 捜査機関に対して申告すること
  • 事件の犯人と発覚する前に申告すること

また、自首をすることで、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断され、逮捕を回避できる場合があります。自首によって反省の意志を示すことで、検察官が不起訴処分を選択する可能性も高まります

そして、自首する際には、自身の行為がどのような犯罪に該当するのか、法的な影響を正確に理解することが必要です。そのため、自首をする際には、弁護士に相談したうえで同行を依頼するようにしてください。弁護士が同行することで、逮捕の必要性がないことの上申書を提出したり、捜査機関からの威圧的な取り調べを避けるためのアドバイスを受けたりすることが期待できます。

②児童の保護者と示談を成立させる

児童ポルノ事件で示談が成立すると、被害者側が被害届や告訴を取り下げる場合があります。この場合、捜査機関は被害者の意思を考慮して、逮捕や起訴を見送ることがあります。また、示談が成立することで、加害者が謝罪や反省を示したことが認められ、犯罪の違法性が一定程度減少したと評価されることがあります。これにより、検察官や裁判官に有利な事情として考慮されることがあります。

ただし、児童ポルノ関連事件では、加害者が直接示談交渉を行うことは難しい場合がほとんどです。示談交渉の相手は通常、児童の法定代理人である保護者となりますが、保護者は加害者に対して強い処罰感情を抱いていることが多く、加害者本人が直接交渉することは難航することがあります。また、児童側の連絡先が分からない場合、捜査機関に連絡先を教えてもらう必要がありますが、捜査機関は加害者にその情報を提供しません。

この点、弁護士が公正中立な第三者として示談交渉を行うことで、保護者の感情的な反発を和らげることができ、冷静に示談の条件をまとめることが可能です。また、弁護士であれば、捜査機関を通じて児童側の連絡先を得ることができ、交渉を進めることができます。

このように、直接交渉が難しい場合でも、弁護士が代理人として交渉を行うことで、示談が成立する可能性を大きく高めることができます

まとめ

児童ポルノ禁止法に違反した場合、公訴時効期間は3年〜5年です。しかし、時効が完成するまで待つのは得策ではありません。警察は児童ポルノ関連犯罪に対して厳しい捜査を行っており、さまざまな方法で犯罪が発覚する可能性があるため、いつ逮捕・起訴されてもおかしくありません。

時効が成立するまで何年も不安に暮らすことのないよう、早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士に相談して自首や示談交渉を行うことで、逮捕や起訴を回避できる可能性があります。

児童ポルノ禁止法違反で逮捕されるのではないかと不安な方は、ぜひ一度弁護士に相談してください。

当事務所では、児童ポルノ事件の示談交渉の示談交渉や逮捕・起訴回避に豊富な実績があります。親身かつ誠実に、弁護士が依頼者を全力で守りますので、児童ポルノ事件を起こしてしまいお困りの方は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。

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