
「内縁関係を解消したら、相手に養育費を請求できるのだろうか」「婚姻届を出していない事実婚でも、子どもの生活費を相手に払ってもらえるのか」と不安に感じていませんか。
内縁関係(事実婚)でも、相手男性が子を認知していれば養育費を請求できます。認知がまだの場合でも、任意認知や家庭裁判所の手続きを通じて認知を得たうえで請求できます。
この記事では、認知・養育費の男女トラブルに強い弁護士が、次の点について解説します。
- 内縁関係でも養育費を請求できる条件
- 認知を得て養育費を取り決めるまでの手順
- 取り決め前の法定養育費と出生時に遡る請求
お読みいただくことで、ご自身のケースで認知の手続きが必要かどうかと、請求までに何をすべきかを整理できます。
なお、相手との話し合いや手続きに不安がある方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へご相談ください。地域を問わずご相談を承っています。
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内縁関係解消後も養育費は請求できるのか
内縁関係(事実婚)の夫婦の間に生まれた子について養育費を請求できるか否かの分かれ目は、内縁の夫がその子を認知しているかどうかです。認知があれば、法律婚の夫婦が離婚したときと同じように請求できます。反対に、認知がない間は法律上の父子関係が存在しないため、扶養義務に基づく養育費を請求する根拠がないことになります。
内縁関係とは、婚姻届を出していないものの、お互いに結婚する意思を持ち、実際に夫婦として共同生活を営んでいる男女の関係をいいます。別居や関係を終わらせる申し出などによってこの共同生活が終わることが、内縁関係の解消です。婚姻届の有無という違いはあるものの、内縁関係にも法律婚に準じた保護が及ぶと考えられており、関係を解消する際には財産分与や慰謝料を請求できる場合があります。内縁関係の解消に伴う慰謝料については「内縁関係でも慰謝料請求できる4つのケースと相場・方法を解説」で詳しく解説しています。
ただし、子どもに関する取り扱いは法律婚と異なります。内縁関係にある男女の間に生まれた子は「嫡出でない子(非嫡出子)」と呼ばれ、母親との親子関係は出産の事実によって当然に成立する一方、父親との間には、認知がなければ法律上の親子関係が生じません(民法779条)。養育費は法律上の親子関係に基づく扶養義務から発生するものですから、認知があってはじめて、父親に対する養育費の請求が可能になります。逆にいえば、認知さえあれば、内縁関係の解消の前後を問わず、父親に養育費を請求できます。認知によって得られる効果や、認知されない場合の不利益は「子供の認知とは?効果や手続き、認知しない場合の不利益を解説」をご覧ください。
親権と相続についても、法律婚とは違いがあります。法律婚の夫婦の子は父母の共同親権となりますが、内縁の夫婦の子は母親の単独親権です。父親が認知した後も親権は原則として母親が行いますが、父母の協議によって、父母の双方または父親を親権者と定めることができます(民法819条4項)。相続については、認知されていない子は父親の法定相続人になれませんが、認知されれば法律婚の子と同じ相続分で父親の財産を相続できます。
内縁の夫への養育費の請求方法と認知から取り決めまでの流れ
養育費を受け取るまでの流れは、大きく分けて「認知を得る」「養育費を取り決める」の2段階です。まず、内縁の夫が認知していない場合に、どのように認知を得ればよいのかから見ていきます。認知には、相手男性が自らの意思で行う「任意認知」と、裁判所の手続きによって成立させる「強制認知」の2つがあります。任意認知は、相手男性が認知届を役所に提出することで成立し、子の戸籍に父親の氏名が記載されます。まずは話し合いで任意認知を促すのが、その後の養育費の支払いも受けやすく、負担の少ない進め方です。任意認知の届出の方法は「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」にまとめています。
相手男性が認知に応じないときは、家庭裁判所に「認知調停」を申し立てます。調停で相手男性が認知に合意すれば、裁判所の手続きを経て認知が成立します。相手男性が合意しない、あるいは調停に出席しないなどの理由で調停が不成立になった場合は、子の法定代理人として「認知の訴え」を提起し(民法787条)、DNA鑑定などの証拠に基づいて裁判所に父子関係を認めてもらうことになります。相手が認知を拒否していても、これらの手続きによって強制的に認知を成立させ、養育費を請求する道が開けます。認知調停の流れや必要な証拠については「認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?」で解説しています。
なお、最高裁の判例では、内縁関係が続いている間に妊娠した子について、嫡出推定規定(民法772条)の趣旨を類推し、内縁の夫の子と事実上推定する扱いが認められています(最判昭和29年1月21日)。認知の手続き自体は必要ですが、この推定が働く場合、認知を求める調停や訴訟において、親子関係の立証の負担が大幅に軽減されます。
認知が成立したら、父親となった内縁の夫に養育費を請求します。まずは、毎月いくらを、いつまで、どのような方法で支払うかを相手男性と話し合って決めましょう。養育費の金額は、内縁だからといって低くなるわけではなく、法律婚の場合と同じく、裁判所が公表している「養育費算定表」をもとに、父母それぞれの収入と子の人数・年齢から算定するのが一般的です。具体的な相場については「認知された子の養育費はいくら?相場をケース別に解説」をご参照ください。
話し合いで合意できた場合は、取り決めた内容を強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことをおすすめします。公正証書があれば、相手が支払いを怠った際に、裁判を起こさずに強制執行の手続きに移れます。
話し合いが難しい、話がまとまらないという場合は、家庭裁判所に対して「養育費請求調停」を申し立てます。調停でも合意に至らず不成立となった場合は、自動的に審判手続きに移行し、裁判官が養育費の金額などを決定します。
取り決めが済んでいない間の養育費についても、知っておきたい制度があります。2026年4月1日に施行された改正民法により、父母が養育費の取り決めをしないまま協議離婚した場合に、子を主に監護する親が、もう一方の親に対して法務省令で定める額の「法定養育費」を請求できる制度が設けられました(民法766条の3)。この規定は、父が子を認知した場合にも準用されます(民法788条)。認知後、取り決めがまとまるまでの間、当面の養育費の支払いを求める根拠になります。もっとも、相手が支払能力を欠くことなどを証明した場合は、支払いの全部または一部を拒まれることがあります(同条ただし書)。取り決めの話し合いが長引いているときは、この制度に基づいて当面の支払いを求めることも検討しましょう。なお、法定養育費は認知後に取り決めがない期間を対象とする制度であり、出生から認知までの期間の養育費をどこまで請求できるかは、次の裁判例のように別途の争点になります。
養育費をいつの時点から請求できるかについては、認知の効力が子の出生時に遡る(民法784条)ことを理由に、出生時に遡った請求を認めた裁判例があります。
大阪高等裁判所 平成16年5月19日決定
【事案】
内縁関係にあった男女の間に子が生まれたものの、相手男性が認知に応じなかったため、母親が認知審判を申し立て、認知が確定しました。母親は認知に関する戸籍届出の直後に養育費分担調停を申し立てましたが、調停は不成立となり審判手続きに移行しました。原審(家庭裁判所)は、母親が養育費の支払いを求めた時点を始期としましたが、母親側がこれを不服として抗告しました。
【裁判所の判断】
大阪高裁は、原審の判断を変更し、養育費の始期を子の出生時まで遡らせました。その理由として、認知審判が確定するまでは母親に養育費を請求する法律上の根拠がなかったのだから、請求時を始期とすることに合理的な根拠はないとしたうえで、民法784条の認知の遡及効(認知は出生のときに遡って効力を生じる)の規定に従い、出生時に遡って養育費の分担額を定めるのが相当であると判断しました。
この裁判例は、認知確定の直後に速やかに養育費の請求手続きをとったことが、出生時まで遡った請求を認める判断につながった点がポイントです。内縁関係の解消後、養育費をできるだけ多く受け取るためには、認知の手続きと養育費の請求をなるべく早く進めることが重要といえます。
最後に、認知がないまま内縁の夫が養育費の支払いを約束した場合について触れておきます。認知がなくても、相手が任意に養育費を支払うこと自体は可能です。ただし、法律上の扶養義務が発生していない以上、口約束や通常の合意書だけでは、相手が支払いを止めたときに、家庭裁判所の養育費の調停・審判で請求することはできず、合意に基づく債権として通常の民事手続きで請求することになります。合意内容を強制執行認諾文言を付けた公正証書にしておけば不払い時に強制執行は可能になりますが、将来の増額や事情の変化に対応しにくいため、できれば認知も求めておくのがよいでしょう。認知を伴わない合意の有効性と注意点については「認知しないで養育費を一括払い|合意の有効性と注意点」で解説しています。
内縁の養育費でお悩みの方は弁護士にご相談ください
内縁関係を解消した後に養育費を受け取るには、相手男性の認知を得たうえで、話し合いや調停で金額と支払方法を取り決め、公正証書に残しておくことが基本の流れです。認知と請求の時期は受け取れる養育費の総額に影響しうるため、できるだけ早く進めることが大切です。
弁護士に依頼すれば、認知に応じない相手への調停・訴えの申立てから、算定表に基づく適正な金額の交渉、公正証書の作成、不払い時の強制執行まで、一連の手続きを代理人として進められます。相手と直接やり取りせずに済むため、感情的な対立で話し合いが止まってしまう事態も避けやすくなります。
「相手が認知してくれない」「話し合いをしても金額で折り合いがつかない」「支払うと言っていたのに連絡が途絶えた」という状況では、お子さんを抱えながら一人で対応するのは精神的にも大きな負担でしょう。相手に内容証明を送ったものの返事がない場合や、すでに調停を申し立てたものの進め方に不安がある場合も、早めにご相談ください。
当事務所は、内縁・事実婚をめぐる認知や養育費の問題を数多く取り扱ってきました。ご相談者の状況を丁寧にうかがい、認知の手続きから養育費の取り決めまでを一括してお引き受けします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

