でも、婚姻関係にないから慰謝料請求は無理なのでは…
このような悩みを抱えていませんか?
しかしご安心ください。籍を入れていないからといって何をしても法的に許されるわけではなく、慰謝料請求できるケースもあります。
そこでここでは、男女問題に強い弁護士が、
- 内縁関係で慰謝料請求ができるケース・できないケース
- 内縁関係の慰謝料相場
- 内縁相手から慰謝料を得るための条件や方法
などについて、わかりやすく解説していきます。
内縁関係の相手に裏切られたけどこのまま泣き寝入りしたくないという方は最後まで読んでみて下さい。
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目次
内縁関係でも慰謝料請求できる?
内縁関係とは?
内縁関係(事実婚ともいいます)とは、お互いに結婚の意思は持ちつつも入籍せずに夫婦同然の同居生活をしている男女関係のことを言います。
”婚姻の意思”があるかどうかについては、
- 婚約しているか
- 挙式をあげたか
- 互いの親族に夫婦だと認識されているか
- 男女の間に認知された子供がいるかどうか
などによって外形的に判断することができます。
”夫婦”同然の同居生活”であるかどうかは、一般的には3年以上同居し、生計を一緒にしている、共有財産を所有しているなどの事情から判断されます。
したがって、婚姻意思のない同居は単なる「同棲」であって、5年同棲しようが10年同棲しようが内縁関係とはなりません。また、婚約していても一緒に住んでいない場合も内縁関係ではありません(単身赴任など仕事上の都合での別居は除く)。
内縁の夫(妻)に慰謝料請求はできる?
「内縁関係は法律的には婚姻に準じるものとして保護されるべき生活関係にあたる(最高裁昭和33年4月11日)」と考えられており、法律婚(婚姻届けを出して結婚すること)の夫婦とほぼ同じように、
- 扶養・協力・同居義務
- 貞操義務
- 婚姻費用の分担義務
- 日常家事債務の連帯責任
- 財産分与を請求できる権利
- 慰謝料を請求できる権利
といった権利・義務があります。
したがって、内縁の夫(妻)が正当な理由なく内縁関係の解消(破棄)をした場合や、貞操義務に反して不貞行為(肉体関係を伴う浮気)をした場合などには、内縁関係であっても法律婚の夫婦と同じく相手に対して慰謝料請求をすることができます。
内縁関係で慰謝料請求ができるケース
上記の通り、男女間に内縁関係が認められる場合は婚姻に準じた扱いとなるため、内縁関係の継続に支障を及ぼす行為をした当事者に対しては慰謝料の請求をすることが認められます。
内縁関係にある男女間においては、主につぎのようなケースの場合に慰謝料請求が認められます。
(2)正当な理由なく別居されたケース
(3)内縁の夫(妻)に不貞行為があったケース
(4)内縁の夫(妻)が既婚者であったケース
それでは、それぞれについて見ていくことにしましょう。
(1)正当な理由なく内縁関係を解消させられたケース
内縁関係が成立しているにもかかわらず、当事者の一方が正当な理由もなく内縁関係を解消した場合、慰謝料の請求が可能となります。
この場合、「正当な理由」があるかどうかに関しては、離婚事由と同様に、法定離婚事由(民法770条1項)の有無によって判断されることになります。つまり、内縁関係を解消させられた側に、以下に掲げる5つの法定離婚事由に該当する事実がある場合には、相手が内縁関係の解消をしたことに正当な理由があることになります。
第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
「五 その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、例えば、DV、モラハラ、借金問題、性格の不一致、性交渉に応じない、過度な宗教活動などが挙げられます。
内縁関係を解消された側に上記5つの事由に該当する事実がないにもかかわらず、相手方が一方的に内縁関係を解消した場合には慰謝料請求できることになります。
(2)正当な理由なく別居されたケース
法律上の夫婦には、同居・協力・扶助の義務が課せられます(民法752条)。すでにご紹介させていただいたように、内縁関係の男女には法律上正式な婚姻関係にある夫婦に準じた権利義務が認められることになります。このため、内縁関係の男女には同居する法律上の義務が認められます。
別居することに特別な理由がある場合には問題ありませんが、正当な理由なしに内縁関係の相手方と別居した場合には「悪意の遺棄」に該当し慰謝料請求できる可能性があります。
(3)内縁の夫(妻)に不貞行為があったケース
内縁関係の当事者の一方が異性と不貞行為を行った場合、慰謝料請求することができます。また、内縁相手の浮気相手に対しても同様に慰謝料請求できます。
なお、「不貞行為」とは内縁関係以外の異性と肉体的に性的な関係を持つことを言います。そのため、浮気の相手方との行為がキスやプラトニックな関係にとどまっている場合には、慰謝料請求は認められないので注意が必要です。
(4)内縁の夫(妻)が既婚者であることを隠していたケース
相手が結婚している事実を隠して内縁関係を結んだ場合には、独身であると偽って内縁関係を結ばせたことを理由として貞操権(誰と性行為をするのかを自分で決定する権利)侵害を理由として慰謝料請求が認められるケースもあります。
内縁関係で慰謝料請求ができないケース
つぎのようなケースでは内縁関係の相手方に対して慰謝料請求できない可能性があります。
- (1)内縁関係の立証ができないケース
- (2)内縁関係がすでに破綻しているケース
- (3)重婚的内縁関係のケース
それぞれについて、確認していきましょう。
(1)単なる同棲である場合や内縁関係の立証ができないケース
慰謝料請求が認められるためには当事者が内縁関係にあることが必要ですので、当事者間に婚姻の意思がなく、単に同棲しただけであるような場合には慰謝料請求は認められません。
また、後述しますが、慰謝料請求が認められるためには、その前提として当事者間に内縁関係が存在することを立証する必要があります。内縁関係の存在を証明する証拠がない場合には慰謝料請求が認められません。
(2)内縁関係がすでに破綻しているケース
過去において内縁関係にあったとしても、現在ではその関係が破綻(終了)していると判断されるようなケースでは、慰謝料請求が認められない可能性があります。
たとえば内縁関係の継続期間と比較して相当長期間別居が続いている場合において、相手方が不貞行為を行ったとしても慰謝料請求が認められないことが考えられます。
(3)重婚的内縁関係のケース
男女の一方または双方がすでに結婚して配偶者がいる状態で内縁関係を結ぶ状態のことを「重婚的内縁関係」といいます。
当事者の関係が重婚的内縁関係の場合、相手方が不貞行為を行ったり、一方的に内縁関係を解消するなどの行為があったとしても慰謝料請求が認められない可能性があります。
ただし例外として、内縁関係を結んだ当時において、相手の婚姻関係がすでに破綻していた場合には慰謝料請求が認められる可能性もあります。
重婚的内縁関係とは?保護の条件や婚姻費用、財産分与、慰謝料について
内縁関係での慰謝料の相場
繰り返しになりますが、内縁関係にある男女間の法律関係は、法律上正式な婚姻関係にある夫婦に準じた扱いとなります。このため、慰謝料として認められる金額に関しても婚姻関係の場合に認められる相場に準じることになります。
例えば、夫婦間で、不貞行為により離婚に至った場合の慰謝料は50万円から300万円が一般的な相場とされています。
もっとも、この相場はあくまでも目安です。裁判においては以下のような事情を考慮して慰謝料額が決定されます。
- 内縁関係の期間
- 内縁解消に至った理由
- 精神的苦痛の程度
- 相手の不法行為の程度や頻度
- 相手の社会的地位・年齢・資力
- 子の有無 など
したがって、状況によっては相場以下、あるいは相場以上の慰謝料額が認められることもあります。
また、慰謝料を請求する場面はなにも不貞行為に限ったものではありませんので、離婚でいくら慰謝料がもらえる?ケース別の相場がすぐにわかる!でご自身のケースに当てはまる慰謝料相場を確認しましょう。
有力な証拠が多ければ多いほど内縁相手に請求できる慰謝料は高額となる傾向がありますので、どのような証拠を準備しておくべきか弁護士に相談しておきましょう。
内縁関係の相手から慰謝料をもらうための条件
不貞行為や一方的な内縁関係の解消などの理由によって、内縁関係の相手方に対して慰謝料請求するためには、つぎの2つの条件を備えることが大切です。
- (1)内縁関係であることを証明すること
- (2)相手に責任があることを証明すること
(1)内縁関係であることを証明すること
相手方への慰謝料請求が認められるためには、前提として当事者が内縁関係であることを証明しなければいけません。そのためには、つぎのような資料が役に立ちます。
- 住民票の続柄欄
- 賃貸借契約書の同居人欄
- 生計を一緒にしていることがわかる家計簿
- 結婚式や披露宴を挙げたことがわかる資料
- 婚約指輪
- 相手方とのメッセージなどの記録
- 友人・知人などの証言
もちろん、相手方が内縁関係にあることを認めてくれれば証拠は不要です。しかし、内縁関係を否定する場合に備えて、「内縁を証明する必要性と証明に役立つ証拠」を参考に一応証拠資料を集めておくことをおすすめします。
(2)内縁の夫(妻)に責任があることを証明すること
内縁の夫(妻)への慰謝料請求が認められるためには、内縁関係の解消などに関して相手に責任があることが必要です。
相手に何らかの責任があることを証明するためには、例えば、一方的に内縁関係を解消されたケースでは、
- 内縁の解消を告げるメールやラインの通信記録
- 当事者の会話の録音データ
などが証拠となります。
また、相手に不貞行為があったケースでは、
- 浮気現場の写真や動画
- クレジットカードの利用履歴
- 浮気相手とのメールやラインの通信記録
などが証拠となります。
繰り返しになりますが、慰謝料請求を有利に進めるために最も大切なのは有力な証拠です。もし自分だけで証拠を集めることが難しいようであれば、必要に応じて探偵事務所などへの相談や依頼を検討してみるのも有効な手段です。
これは浮気・不倫の証拠になるもの?と迷った人のための情報まとめ
内縁の夫(妻)への慰謝料請求方法
内縁の夫(妻)への慰謝料請求の方法としては、主としてつぎの3つのパターンが考えられます。
- (1)当事者同士で話し合う
- (2)内容証明郵便で請求する
- (3)裁判所を利用して請求する
それぞれについて、順次解説いたします。
(1)当事者同士で話し合う
慰謝料を貰うためのもっとも基本的な方法は、相手方と話し合い、直接慰謝料を請求することです。
いざとなった場合に相手が内縁関係や不法行為(不貞行為・DVなど)を否定する可能性も考えられますので、内縁関係や不法行為を証明する証拠をそろえてから話し合いを持ちかけることをおすすめします。
(2)内容証明郵便で請求する
すでに内縁関係が解消されるなどの理由で相手方と別居している場合、電話やメールでも慰謝料請求の意思を伝えることができますが、できれば内容証明郵便を利用するとよいでしょう。
内容証明自体に法的な拘束力はありませんが、書面で伝えることで内縁相手に対して慰謝料請求をする強い意思表示ができます。
また、慰謝料請求権には、加害者及び損害を知ってから3年(または不法行為の時から20年)という消滅時効期間が定められていますが、内容証明郵便で慰謝料の支払いを催促することで、時効が進行するのを6ヶ月止めることができます(民法第150条1項)。
(3)裁判所を利用して請求する
当事者での話し合いや内容証明郵便でも慰謝料の合意が成立しない場合、裁判所を利用して請求することになります。
裁判所を利用して慰謝料を請求する方法としては、以下の2つの方法があります。
- ①内縁関係調整調停
- ②慰謝料請求訴訟
内縁関係調整調停とは、内縁関係の当事者の間に家庭裁判所の調停委員を挟み、当事者だけではまとまらない内縁関係の解消について話し合っていく手続きです。この手続きの中で、財産分与のほか、慰謝料についても協議することができます。
内縁関係調整調停の詳細については、「内縁関係調整調停(裁判所サイト)」が参考になります。
なお、調停の成立には双方の合意を必要としますので、合意が得られない場合には慰謝料請求訴訟を起こす必要があります。ただし、裁判は調停の申立てよりも専門的な知識が必要となりますので、弁護士への相談や依頼が不可欠です。
内縁関係で慰謝料請求が認められた判例
内縁関係の不当破棄に慰謝料の支払いが認められた事例
事案の概要
この事案はある女性が男性と内縁関係にあったものの、子どもができなかったことを理由に男性側から一方的に切り捨てられてしまいました。女性側はこのことが「内縁関係の不当破棄」にあたるとして慰謝料の支払いを男性側に請求しました。
これに対して男性側は内縁関係は終了していたので不法行為は成立しないと反論しました。
裁判所の判断
裁判所は、内縁破棄の不法行為を認め、損害賠償として慰謝料230万円と弁護士費用23万円の合計253万円の支払いを認めました。
その際裁判所は以下のような事実を考慮して内縁関係を認定しています。
- 交際をはじめ性交渉を持ってマンションで同棲を開始した
- 女性は勤務先を退職して家事に専念するようになった
- 性交渉の際、避妊をしていなかったため女性が妊娠し、流産したこと
- 2人は協力して不妊治療を行ったが男性は女性に子どもができたら結婚するつもりであったこと
- その後も転居してこれまで同様の生活を1年半続けたこと
この事案で男性が、女性に秘したまま現妻と婚姻して女性との内縁関係を一方的に破棄した不誠実な行為は、女性の「将来結婚できるという期待」をはなはだしく裏切り女性の人格権を侵害するものである、と述べて不法行為を認定しました(東京地方裁判所平成30年11月16日判決)。
内縁関係のDV被害について慰謝料等が認められた事例
事案の概要
この事案は、女性が男性と内縁関係にあったものの、男性が別の女性と不貞を行い、男性から複数回暴力を振るわれたとして慰謝料などを請求した事例です。
これに対して、内縁関係の成立期間や、男性による暴行行為があったのか否かという点が争われました。
裁判所の判断
この事案で男性と女性は交際当時、双方に配偶者がいたため、双方とも離婚が成立するまでは内縁関係が生じないとされました。
そして双方に離婚が成立した後、
- 女性が手術で入院した際に、男性が女性との関係を「妻である」と記載した手術の承諾証明書に署名していたこと
- 同居するマンションを賃貸する際に賃貸借契約書に女性のことを「妻」と記載していたこと
を認定してこの当時「婚姻の意思をもって夫婦共同生活を営み、社会的にも夫婦として振舞い、婚姻の届出をしていないため法律上は夫婦ではないが、事実上の夫婦関係(内縁関係)であった」として不貞行為を認定しました。
そしてDVについても男性側は喧嘩闘争の末、女性が怪我を負っただけだと反論しましたが、裁判所は男性が「故意に女性と男性の身体が衝突する状況を作り出し、それを継続したのであり、男性の行為は暴行にあたる」とDV行為を認定しました。
この事例で裁判所は不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料等合計約160万円の支払いを認めました(東京地方裁判所令和3年10月6日判決)。
内縁関係の不貞行為に対する慰謝料が認められた事例
事案の概要
この事案は女性とかつて内縁関係にあった男性が不貞行為や暴力・暴言をはたらいたことで内縁関係が破綻したとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。2人は交際を開始して婚約し婚姻届けを作成したものの提出せずに交際を続けていました。その後も長年同居していましたが、あるとき男性の外泊が多くなり、調査の結果別の女性宅に宿泊した事実が発覚しました。
これに対して男性側は婚姻の意思はなかったと反論して内縁を否定しました。
裁判所の判断
裁判所は、男性が女性に送信したメールに「婚姻届けを提出すること」、「一緒になること」を求める文言、男性の女性に対する好意などが記載されていることから当時男性が「婚姻の意思があったことは客観的に明らかである」と認定しました。
そのうえで内縁期間の長さ、女性が男性の子の中絶と結果として妊娠の望めない身体になったこと、男性の女性に対する暴力の程度や受傷の程度、無責任な応訴態度などを総合考慮して女性の精神的苦痛に対する慰謝料額については、250万円を下回ることはないと判断されました(東京地方裁判所平成28年5月20日判決)。
内縁関係の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
今回は内縁関係の男女トラブルの場合における、慰謝料請求の条件や慰謝料請求するための手順について解説してきました。
以上で説明してきたように内縁関係であっても、相手方に対して慰謝料を請求できる場合があります。ただ内縁関係の場合には法律婚と異なり「そもそも内縁関係が成立していたか否か」が争われることも多く、証拠を示して立証していく必要もあります。
そのため内縁関係で相手方に慰謝料請求を検討されている方は、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に相談することで、あなたの事案で慰謝料請求の見込みがあるのか、必要となる証拠としてどのようなものがあるのか、取り戻せる慰謝料の相場などの情報を説明してもらえるでしょう。
内縁関係の慰謝料請求をお考えの方は一人で悩まず、是非男女トラブルに精通した当所の弁護士に一度ご相談ください。親身誠実に弁護士が慰謝料を全力でサポートします。
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