- 「Youtubeのコメント欄で誹謗中傷を書き込まれた。訴えるにはどうすればいいのだろう…」
- 「訴えるための前提として、犯人特定のための開示請求は難しいのだろうか…」
このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、Youtubeに誹謗中傷コメントを書き込んだ犯人を訴えるには、まずは裁判所に対して「発信者情報開示請求」という法的手続きを申し立て、犯人の氏名・住所等を特定する必要があります。ただし、法律の専門知識や訴訟経験がない方にとって開示請求の手続きは難しいため、弁護士に依頼して対応してもらった方が良いでしょう。
この記事では、ネット誹謗中傷の削除・犯人特定を得意とする弁護士が、Youtubeの誹謗中傷コメントを書き込んだ犯人を特定して訴えるための方法を中心にわかりやすく解説していきます。
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記事の目次
Youtubeでの誹謗中傷コメントと法的な問題
Youtubeで誹謗中傷コメントを書き込んだ犯人を特定する方法を知る前に、まずはそのようなコメントが法的にどのような問題があるのかを確認する必要があります。なぜなら、コメントが犯罪や権利侵害に該当しないと訴えることができない、あるいは、訴えても裁判で勝ち目がないためです。以下で確認していきましょう。
名誉毀損罪
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合には名誉毀損罪が成立します(刑法第230条1項参照)。その事実の有無に関わらず犯罪が成立することになります。
「名誉」とは、人に対する社会的評価、世評、名声、社会的名誉(外部的名誉)のことをいいます。
「事実」とは、それ自体として人の社会的評価を低下させるような具体的事実(社会的評価に関する事実)を指します。
したがって以下のようなコメントは名誉棄損罪に該当することになります。
- こいつは不倫している
- こいつは脱税をしている
- こいつは会社の金を着服している など
名誉毀損罪の法定刑として、「3年以下の懲役若しくは禁錮」または「50万円以下の罰金」が科されることになります。
侮辱罪
「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合には侮辱罪が成立します(刑法第231条参照)。名誉棄損との違いはまずは具体的な事実の摘示があるかどうかです。
事実を摘示しないで他人の社会的地位を軽蔑する犯人の抽象的判断を公然と発表することが侮辱罪です。そのため他人の社会的地位を害するにたるべき具体的事実を公然と告知する名誉毀損罪とは異なります。
具体的には以下のようなコメントは侮辱罪に該当します。
- 不細工、デブ、ブス
- バカ、ボケ、カス
- キモい など
侮辱罪の法定刑として、「1年以下の懲役」若しくは「30万円以下の罰金」又は「拘留」若しくは「科料」が科されます。
脅迫罪
「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合には脅迫罪が成立します(刑法第222条1項参照)。
具体的に以下のようなコメントは脅迫罪に該当することになります。
- 近々、殺しに行きます
- 痛い目に遭わせる、家も知ってるから
- これからお前の家を燃やしに行こうと思います など
脅迫罪の法定刑は、「2年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されることになります。
業務妨害罪
業務妨害罪として偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の2つの類型があります。
「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて」業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪が成立します(刑法第233条参照)。
「虚偽の風説を流布」するとは、行為者が確実な資料・根拠を有しないで述べた事実、少なくとも一部が客観的真実に反する噂や情報を不特定または多数人に伝播することをいいます。
「偽計を用いて」とは、人を欺罔し、あるいは人の錯誤や不知を利用することを指します。
具体的には以下のようなコメントが偽計業務妨害罪に該当することになります。
- この会社の商品は粗悪品
- 商品の中に有毒な材料が使われている
- 残業代も有給も与えず、セクハラ・パワハラが横行しているブラック企業 など
また、「威力を用いて人の業務を妨害した」場合には、威力業務妨害罪が成立することになります(刑法第234条参照)。
「威力を用いて」とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力のことをいい、暴行や脅迫よりも広い概念であると考えられています。一定の好意の必然的結果として、人の意思を制圧するような勢力を用いていればよく、必ずしもそれが直接現に業務に従事している他人に対してなされる必要はありません。
- 活動を継続する場合には、〇月〇日〇時に事務所を襲撃します
- 後日、爆発物を持って来店します
- ここの客になったヤツは、殺す など
偽計業務妨害罪も威力業務妨害罪も危険犯であると考えられているため、妨害結果が実際に発生する必要はなく、業務を妨害するに足りる行為が行われれば「妨害した」に該当することになります。したがって、コメントするだけでも業務妨害罪が成立する可能性があるのです。
偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪の法定刑として、「3年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます。
信用毀損罪
「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し」た場合には信用棄損罪に該当することになります(刑法第233条参照)。
「信用」とは、人の支払い能力や支払い意思に関する信用や、商品の品質に対する社会的信用のことを指します。
したがって、以下のようなコメントは信用毀損罪に該当することになります。
- こいつは○○万円踏み倒して逃げ回っている
- 輸入品を国産と偽った粗悪品のゴミ
- 詐欺グループとつるんでるので関わらない方がいい など
信用棄損罪の法定刑として、「3年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科されます。
プライバシー権の侵害
匿名で活動している人や本人が公表していないことをYoutubeのコメントなどに書き込む場合には、「プライバシー権侵害」になる可能性があります。プライバシー権侵害は、民法上の不法行為に該当するため、加害者は被害者に対して慰謝料などの損害賠償を支払う民事上の義務が発生します(民法第709条参照)。
なおプライバシーに該当するためには、「私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報」であり、「一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に、他者に開示されることを欲しないであろうと認められる情報」であり、「一般人の未だに知られていない情報」であることが必要とされています。
例えば以下のようなコメントはプライバシー権侵害に該当する可能性が高いです。
- 以前は○○の風俗店で風俗嬢として働いていた
- 連日風俗通いをして、性病持ちだ
- こいつの自宅は○○○○ など
プライバシーの侵害とは?事例・判例・慰謝料請求などの対処法を解説
Youtubeの誹謗中傷コメントで訴えるための方法
Youtubeの誹謗中傷コメントをした犯人を訴えるには、民事で訴える方法と刑事で訴える方法の2種類があります。
民事で訴える方法
まず、Youtubeでの誹謗中傷コメントの犯人に対して民事訴訟で損害賠償請求していく方法です。
名誉棄損や侮辱、プライバシー権侵害、業務妨害についてはいずれも個人の権利を侵害する不法行為に該当する違法行為です。そのため、被害者は加害者である投稿者に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償請求をする流れは以下となります。
- まずはコメントした犯人の氏名・住所を特定(方法は後述します)
- 特定が済んだら犯人に内容証明郵便で損害賠償(慰謝料)を請求
- 犯人が請求に応じる姿勢を見せたら話し合いで賠償額や支払い方法について交渉
- 双方の合意が得られたら示談書を作成し賠償手続きは完了
- 合意が得られない場合は少額訴訟・支払い督促・損害賠償請求訴訟の提起
なお、ネット誹謗中傷のおおよその慰謝料相場は以下となります。
名誉毀損のケース |
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侮辱のケース | 数万円~10万円 |
プライバシー侵害のケース | 10万円~50万円 |
刑事で訴える方法
相手の行為が過激・悪質な場合には、被害者が告訴状を捜査機関に提出して刑事告訴することで刑事事件として扱ってもらえる可能性があります。
名誉棄損罪や侮辱罪など刑事告訴をすることで警察が捜査を開始し、犯人を逮捕してくれるケースもあります。
YouTubeのコメントやネット上の誹謗中傷が、刑事事件として立件されるには相当悪質な書き込みや執拗に投稿されているという事情が必要でしょう。1〜2回の悪口程度では警察も本腰を入れて捜査してくれない可能性が高いです。
刑事手続きは、犯人に刑事罰を科すべきか否かを判断するための手続きですので、犯人が逮捕されたからといって直ちに被害者に被害弁償(損害賠償)がされるものではありませんので注意が必要です。
Youtubeの誹謗中傷コメントで訴えるには発信者情報開示請求が必要
上記の通り、Youtubeの誹謗中傷コメントに対して損害賠償請求訴訟を提起するには、犯人の氏名や住所といった情報が必要となります。また、刑事告訴するに際しても、誹謗中傷した犯人の特定を事前に求められることも多いです。
Youtubeのコメントはほぼ全て匿名での書き込みですので、発信者情報開示請求という制度を利用して、犯人ががどこの誰であるのかを特定する必要があります。以下ではその方法や費用につき解説していきます。
開示請求の方法
具体的な手続きとして、最初にYouTubeを運営するGoogle社に対して、発信者情報開示請求書を送り、投稿者のIPアドレスを開示してもらいます。Google社が開示に応じない場合は、裁判所に対して発信者情報開示の仮処分命令を申し立てます。仮処分命令が認められた場合、Google社は裁判所からの命令に従い、IPアドレスを開示する必要があります。
その後、開示されたIPアドレスから投稿者が使用したインターネットサービスプロバイダー(OCN、So-net、BIGLOBEなど。以下「ISP」)を特定し、書面で契約者情報を開示するよう求めます。ただし、プロバイダーは契約者の個人情報を簡単に開示することはできません。そのため、発信者情報開示請求訴訟を起こす必要があります。訴訟が認められれば、プロバイダーから契約者の氏名や住所などの個人情報を開示してもらえます。
ただし、ISPで通信ログ(通信に使用したIPアドレス、接続日時、契約者を識別する番号など)を保存している期間は、ISPにもよりますが、3ヵ月~6ヵ月です。この通信ログが削除されてしまうとIPアドレスから投稿者をたどれなくなってしまいますので、発信者情報開示請求訴訟を起こす前に「発信者情報消去禁止仮処分(ログ保存処分)」という裁判手続きを行う必要があります(ISPによっては裁判手続きによらなくても任意にログの保存に応じてくれることもあります)。
なお、既にISPが通信ログを消去してしまっている場合には、Youtube(Google)に対してアカウント情報の開示訴訟を提起して投稿者を特定する方法もあります。Googleアカウントの新規作成時にSMSによる電話番号認証が必要な場合があるため、開示請求が認められれば投稿者の電話番号が判明することもあります。弁護士であれば弁護士照会という手続きを利用して電話番号の契約者情報(氏名・住所等)を調べることも可能ですので、Youtubeに誹謗中傷コメントを投稿した犯人にたどり着くことができます。
開示請求の期間
発信者情報開示の手続きを開始してから、実際に開示されるまでの期間は、通常8か月から10か月程度です。ただし、手続きが任意開示(発信者情報開示請求書による開示請求)であるか、仮処分命令の申し立てや訴訟によるものであるかによって期間は異なります。
また、Youtube(Google)に対してアカウント情報の開示訴訟にかかる期間はおおよそ3ヵ月~6ヵ月程度となります。
開示請求の費用
発信者情報開示の仮処分命令の申し立てや発信者情報開示請求訴訟をご自身でする場合には、以下のような費用がかかります。
- 仮処分命令の申し立て:印紙代2000円+郵便切手代+担保金10万円~30万円
- 訴訟:印紙代13000円+切手代
弁護士に依頼する場合には上記金額に加え、以下で挙げる弁護士費用がかかります。
依頼内容 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
発信者情報開示の仮処分命令の申し立て | 20万円~30万円 | 10万円~20万円 |
発信者情報開示請求訴訟 | 20万円~30万円 | 10万円~30万円 |
開示請求は難しいので弁護士に依頼
発信者情報開示請求を自力で行うのは難しいケースが多いので、そのような場合には弁護士に依頼しましょう。
まず発信者情報開示をする場合、権利侵害の主張をする必要がありますが、法律の専門的な知識がなければ投稿内容のどの部分が被害者のどのような権利を侵害しているのかを適切に説明することは至難の業でしょう。
また発信者の個人情報の任意開示を求めても、サイト管理者やプロバイダが応じてくれないというケースがほとんどです。このような場合には、裁判所に対して発信者情報開示請求訴訟を提起していく必要がありますので、民事訴訟の知識がない一般人が進めていくのは非常に苦労が多いと思います。
したがって、発信者情報開示手続きは複雑なため、プロである弁護士に任せた方がスムーズに進むはずです。
Youtubeの誹謗中傷コメントを削除するには
Youtubeの誹謗中傷コメントの犯人を訴えるにしても、そのコメントを放置したままでいると、名誉権やプライバシー権といった権利の侵害が続くことになります。訴える為の手続きを進めると同時にコメントの削除についても実施していきましょう。以下では、Youtubeでのコメント削除方法などについて解説します。
Youtubeでコメントが削除される基準
YouTubeのコミュニティガイドラインに違反する場合
YouTubeにはコミュニティガイドラインが制定されており、安全で活気のあるコミュニティを維持するために禁止行為を規定しています。
このコミュニティガイドラインによれば以下のようなものは禁止行為に当たります。
- なりすまし詐欺
- ポルノ、ヌード
- 暴力行為、いやがらせ など
このガイドラインに違反する事実が発覚すると、運営から警告が入ることになります。この警告を90日間のうち3回受けた場合や、違反行為をすることのみを目的としたアカウントと判断された場合にはアカウント停止措置を受けることになります。
YouTubeのプライバシーガイドラインに違反する場合
Youtubeのプライバシーガイドラインは、ユーザーの個人情報を保護するための規定です。
このガイドラインによると、投稿された動画の中に以下のような個人情報が入っている場合には削除対象の動画となります。
- 個人の顔写真
- 個人の音声やフルネーム
- 政府発行の個人番号
- 個人の銀行口座番号
- 住所やメールアドレス など
Youtubeのコメントを削除する方法
投稿された動画ページから通報する方法
誹謗中傷するコメントについては、そのコメントの三点リーダーから「報告」を選択することができます。それをクリックすると報告理由が複数表示され選択することができます。
Youtubeの運営スタッフが通報(報告)内容を適時確認し、不適切だと思った投稿は直ちに削除されます。
また動画投稿を行っている投稿者の場合は、自身のチャンネルのコメント欄を自由に管理することができますので、運営スタッフを介さずとの自分の判断で削除することもできます。
なお、Youtubeに誹謗中傷コメントを通報しても削除されないので意味ないのでは?という意見もネットでは見受けられますが、悪質なコメントについては実際に削除されているケースもあります。また、多数のユーザーから通報がなされると削除されやすい傾向もありますので、意味がないとあきらめずに通報はしておくべきでしょう。
また、通報すると、Youtubeに誹謗中傷コメントを書き込んだ相手に通報したことがバレるのではと心配する方もいますが、通報したことが相手に通知されることはありません。
プライバシー侵害の申立てをする方法
自身のプライバシーを侵害している投稿がある場合には、「プライバシー侵害」を理由に削除依頼することもできます。
専用の問い合わせフォームから「プライバシー侵害の申し立て手続き」をすることで運営側に判断してもらうことができます。
具体的には、個人情報、個人の安全を侵害するような内容、プライベートな状況が映された動画が配信されていたり、コメント内で投稿されたりしている場合などです。
ここで申立てを行う場合には、スクリーンショットなどで投稿されている状況を証拠としてい保管しておくこともポイントです。なぜなら同一アカウントにより繰り返し嫌がらせ投稿をされる場合もあるため、ひとつの動画やコメントが削除されたとしても事態が収束するとは限らないからです。
事後的に訴訟などに発展する場合には、権利侵害の状態を証明することができる証拠が必要となることは注意しておきましょう。
Youtubeで誹謗中傷のコメントをした犯人を訴えるなら弁護士に相談
Youtubeで誹謗中傷のコメントを書き込まれてお困りの場合には、一度弁護士に相談するようにしてください。
相手がどこのだれか分からないという場合も、弁護士に依頼して発信者情報開示請求を行うことで加害者を突き止められる可能性があります。
また相手方に慰謝料を請求する場合も弁護士に依頼しておけば任意の話し合いや交渉を任せることができます。
ネット上に残された誹謗中傷などは放置しておくと被害が拡大していく場合もありますので、見つけた場合にはすぐにネット問題に明るい弁護士を頼るようにしてください。
当事務所では、Youtubeの誹謗中傷コメントをした犯人の特定、損害賠償請求訴訟・任意での交渉を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力でサポートしますのでお困りの方はご相談ください。お力になれると思います。
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