このようにお考えではないでしょうか。
結論から言いますと、質問箱Peingの質問者を特定することは非常に困難です。発信者情報開示請求により質問(質問の名を借りた誹謗中傷)をした質問者を特定するには名誉権の侵害があったことが必要です。名誉権の侵害があったというためには公然と他人の社会的評価を低下させる投稿を行ったと言える必要があります。しかし、Peingは基本的に回答者しか閲覧することができないため公然性の要件を満たさず、開示請求が認められない可能性が高いのです。
この記事では、ネット誹謗中傷の犯人特定を得意とする弁護士が、上記内容につきわかりやすく解説していきます。
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質問箱Peingの誹謗中傷の犯人は特定できる?
質問者を特定するには開示請求が必要
質問箱Peingで、質問の名を借りて誹謗中傷の投稿をした質問者を特定するためには、まずはサービスのコンテンツプロバイダ(デジタル化された情報の提供を行う事業者。質問箱Peingの場合は「Digitalmonkey株式会社」)に対してIPアドレスの開示請求を行います。
もっとも、IPアドレスの開示を受けても質問者の氏名や住所は分かりません。そのため、コンテンツプロバイダから開示されたIPアドレスをもとにアクセスプロバイダ(ネット接続サービスを提供する事業者)に対して契約者情報の開示請求をします。
情報開示を受けることができれば、質問者が投稿に使ったアクセスプロバイダが保有している契約者情報(氏名や住所など)が特定できることになります。
質問箱Peingの開示請求は難しい
上記では、質問箱Peingで悪口などの誹謗中傷を行った質問者を特定するための発信者情報開示請求の手続きの流れにつき解説しました。
しかし、質問箱Peingによる誹謗中傷ケースで、発信者情報開示請求を行うのは簡単ではありません。
発信者情報開示を請求するためには、「権利が侵害されたことが明らかである」ことが必要です。そのため、質問者による質問が権利侵害にあたる必要があります。
質問者による質問が名誉毀損・名誉権の侵害にあたるというためには、公然と他人の社会的評価を低下させるような発言を行ったと言える必要があります。
しかし、Peingは基本的に回答者しか閲覧することができず、不特定または多数のユーザーが閲覧できるものではありません。そのため、Peingには名誉毀損の要件である公然性がないため、権利侵害の明白性があるとはいえない可能性があるのです。
回答があれば権利侵害が認定されて開示請求できる?
質問箱Peingでは回答者が回答すると連携しているTwitter(X)に自動で質問内容も投稿されることになります。
そのため、質問者がそのシステムを認識したうえで誹謗中傷する内容の質問を投稿すれば、名誉毀損や侮辱の「公然性」要件が認められる可能性があります。
すなわち、特定の相手への質問の投稿であっても、事実の摘示は、特殊関係で限定された者のみに対してではなく、不特定多数人が閲覧することができる状態において行われた(伝播可能性があった)として、「公然性」があったと評価することができます。
ただし、このような法律構成の場合、むしろ回答者の方で、誹謗中傷する質問を公けにする行為を積極的に行っていることになります。
回答者が質問に回答することが論理必然であるという前提はやや不自然であり、やはり、質問者が公然と行為をしたとはいえないのではないか、という疑問が残ります。
したがって、回答者の回答行為によりその質問内容が公となったとしても、開示請求が認められない可能性も十分あります。また、仮に開示請求が認められて損害賠償請求をしたとしても、回答行為が過失と認定され、過失相殺により損害賠償額が減額される可能性もあるでしょう。
過去にIPアドレスが公開されたケースはある
過去には質問箱Peingにおいて、複数人に誹謗中傷の質問を繰り返した質問者のIPアドレスが、回答者の自衛のためという理由から開示されたケースがあります。
ただし、IPアドレスがわかったからといってそれだけでは、質問者の個人情報が特定されるわけではありません。前述の通り、上記で得たIPアドレスをもとに、アクセスプロバイダに対する発信者情報開示を求め、アクセスプロバイダから質問者の氏名、住所、メールアドレス、電話番号などの情報が開示してもらう必要があります。
もっとも、権利侵害の明白性が認められない限りアクセスプロバイダが任意で開示請求に応じることはないため、公然性の要件を満たさない質問箱Peingでの発信者情報開示請求のハードルは決して低いとはいえません。
「脅迫」があった場合は警察が質問者を特定することも
脅迫とは、本人や親族の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合に成立する犯罪です(刑法第221条)。
例えば、「殺す・痛めつける」「背後から刺されないように注意しろ」などと質問箱に投稿した場合には脅迫に該当する可能性があります。
そして、脅迫の場合は、先ほどの名誉権の侵害とは異なり、「公然性」は要求されていませんので、発信者情報開示請求が認められるようにも思えます。
しかし、発信者情報開示請求について規定するプロバイダ責任制限法は、不特定多数に向けられた投稿が対象となっています。すなわち、基本的に回答者のみが質問内容を閲覧できる質問箱Peingで脅迫にあたる投稿がなされたとしても、不特定多数に向けられた投稿ではないと判断されて、開示請求が認められない可能性があります。
もっとも、警察などの捜査機関が刑事事件として捜査を開始すれば、プロバイダに捜査関係事項照会を行うなどして質問者の身元を特定し、検挙・逮捕してくれることも期待できます。
まとめ
以上、質問箱Peingで誹謗中傷を受けたとしても質問者の特定を行うのは非常に難しいです。もちろん、それを承知で弁護士に発信者情報開示請求の仮処分の申し立てや訴訟を依頼することも可能ですが、開示請求が認められなかった場合でも弁護士費用(着手金)は負担することになりますのでよく検討すべきでしょう。
一方、脅迫事件のようなケースでは、事件化することで捜査機関が質問者の身元を特定することが期待できますので、被害を受けた方は被害届や告訴状を提出するようにしましょう。質問者が逮捕されれば、代理人弁護士を介して示談交渉を申し入れてくる可能性が高いため、示談金という形で損害賠償(慰謝料)を受け取れることも期待できるでしょう。
なお、質問箱Peingにとどまらず、X(旧twitter)やインスタで誹謗中傷の被害に遭われている方は弁護士までご相談ください。不特定多数が目にする形で投稿がなされたのであれば、弁護士が発信者情報開示請求を行い投稿者を特定することも可能です。また、相手方に慰謝料を請求する場合も弁護士に依頼しておけば法的な請求や任意の交渉を一任することができます。
ネット上に残された誹謗中傷や脅迫などは放置しておくと被害が拡大していく場合もありますので、お困りの場合には、ネットトラブルの解決実績が豊富な当事務所にご相談ください。
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