プライバシーの侵害とは?判断基準と事例、慰謝料請求などの対処法

「ネットに住所や前科を書き込まれたのは、プライバシーの侵害にあたるのか」「勝手に載せられた顔写真を消してもらえるのか」と不安を抱えていませんか。

他人に知られたくない私生活上の情報を本人の同意なく公開する行為は、プライバシーの侵害になりえます。侵害そのものを処罰する法律はありませんが、民事上の手段で、投稿の削除や慰謝料の支払いを求めることができます。

この記事では、ネットの誹謗中傷やプライバシー問題に強い弁護士が、次の点について解説します。

  • どこからが侵害になるのか、その判断基準
  • ネット上で侵害にあたる具体的な事例
  • 名誉毀損との違いと罪になるケース
  • 投稿の削除や慰謝料請求など訴える方法

お読みいただくことで、ご自身のケースが侵害にあたるかを見極め、次に何をすべきかを整理できます。

なお、ネット上で私生活の情報を晒されてお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。

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プライバシーの侵害とは?

プライバシーの侵害とは、他人に知られたくない私生活上の事柄(住所や病歴、私的な写真など)を、本人の同意なく、みだりに公開されることをいいます。

プライバシー権(私生活をみだりに公開されない権利)は法律に明文の規定がなく、「宴のあと」事件(東京地判昭和39年9月28日)などの裁判例を通じて認められてきました。現在は、憲法13条が保障する幸福追求権に含まれると考えられています。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

出典:e-Gov法令検索

プライバシー権の侵害が認められれば、民法709条の不法行為(故意または過失によって他人の権利や利益を害すること)として、加害者に損害賠償(損害を金銭で償ってもらうこと)を請求できるほか、人格権に基づいて投稿の削除を求めることもできます。

どこからがプライバシーの侵害?成立要件と判断基準

どこからがプライバシーの侵害になるかについて、「宴のあと」事件の判決は、公開された内容に関して次の3つの要件を挙げています。

  • 私生活上の事実か、事実らしく受け取られるおそれのある事柄
  • 一般人の感受性を基準に本人の立場に立てば、公開してほしくないと考えられる事柄
  • 一般の人にまだ知られていない事柄

あわせて判決は、公開によって本人が実際に不快や不安を覚えたことも必要としています。

もっとも、要件にあてはまれば必ず違法になるわけではありません。最高裁の判例は、私生活の事実について「公表されない法的利益」と「公表する理由」とを比較衡量(両者の重さを比べること)し、前者が上回るときに不法行為が成立するという考え方を示しています(最判平成15年3月14日)。

要件を欠く場合や、公表する理由の方が重い場合など、次のようなときはプライバシーの侵害にあたらないことがあります。

  • 本人が自分で広く公開している場合
  • 本人が公開に同意している場合
  • 政治家など公人の職務に関わる公共性の高い情報で、公表する理由の方が重いとされる場合
  • 誰も事実だとは受け取らない、明らかな作り話の場合

友人限定で見せた投稿や一部の人にだけ打ち明けた話を、他人が不特定多数に広めれば侵害にあたる場合があります。また、明らかな作り話でプライバシーの侵害とならない場合でも、侮辱などにあたることはあります。

ネット上でプライバシーの侵害にあたる事例

プライバシーとして保護される可能性がある情報には、たとえば次のようなものがあります。

  • 氏名・住所・電話番号・勤務先・メールアドレス
  • 顔写真や私的な写真・動画
  • 病歴・通院歴
  • 前科・前歴(逮捕歴など)
  • 家族関係・交際歴・性的な事柄
  • 収入や借金など金銭に関する情報
  • マイナンバーや運転免許証の情報

SNSや掲示板でのプライバシーの侵害で典型的なのが、氏名や住所を晒されるケースです。Xなどで匿名アカウントを使っていても、書き込みの内容から本名や自宅を突き止められ、「このアカウントの持ち主は〇〇市に住む△△だ」などと投稿されることがあります。住所を知られると、見知らぬ人が自宅まで来るおそれもあり、私生活の平穏が脅かされます。

氏名や住所などの個人情報は秘密性が高いとはいえませんが、最高裁は、大学が講演会参加者の学籍番号・氏名・住所・電話番号を本人に無断で警察に開示した事件で、こうした情報も「自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なこと」だとして、法的保護の対象になると判断しました(最判平成15年9月12日)。

前科などの犯罪歴や、病歴・性的な事柄を掲示板やSNSで暴露される被害も深刻です。最高裁は、前科は「人の名誉、信用に直接にかかわる事項」であり、前科のある人も「これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」と判断しています(最判昭和56年4月14日)。病歴や性的な事柄は、就職や結婚に響きかねない情報です。

顔写真や私的な写真・動画をInstagramなどに無断で投稿された場合は、肖像権(自分の顔や姿をみだりに撮影・公表されない権利)の侵害にもあたりえます。最高裁も、撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益を認めています(最判平成17年11月10日)。既婚者が別の異性と親しくしている様子や、風俗店から出てくる様子など、写っている場面によっては、プライバシーの侵害の程度がいっそう高くなります。

名誉毀損との違いと罪になるケース

名誉毀損(めいよきそん)とは、人の社会的評価を低下させる事実を、不特定または多数の人に向けて示すことです。これに対し、プライバシー侵害は、社会的評価が下がるかどうかにかかわらず、私生活上の情報を公開されること自体が問題になります。

もう一つの大きな違いは、内容が真実だった場合の扱いです。名誉毀損では、書き込んだ人が公共の利害に関わる事実を専ら公益を図る目的で示し、真実だと証明されれば、罰せられず、損害賠償の責任も負いません(刑法230条の2第1項、最判昭和41年6月23日)。一方、プライバシーの侵害は、公開された情報が本当のことでも成立します。

1つの投稿が両方にあたることもあります。たとえば「〇〇〇〇さん(実名)は吉原のソープで働く風俗嬢です」という書き込みは、私生活上の情報を明かすと同時に、その人の社会的評価も下げるため、プライバシーの侵害と名誉毀損の両方が問題になりえます。

では、プライバシーの侵害は罪になるのでしょうか。侵害そのものを罰する規定はないため、それだけでは犯罪として警察に動いてもらうのは難しいのが実情です。

ただし、プライバシーを侵害する投稿が同時に名誉毀損罪(刑法230条:3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)や侮辱罪、脅迫罪にあたる場合や、私的に撮影された性的な画像が本人と分かる形でネット上に公開された場合(リベンジポルノ防止法違反)には、被害届(被害を警察に申告する書類)を出して捜査を求めたり、刑事告訴(犯人の処罰を求める申告)をしたりできます。このうち脅迫罪以外は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴されない罪)で、告訴できるのは犯人を知った日から6か月以内です(刑事訴訟法235条)。

警察に相談するときのポイントは「ネットの誹謗中傷で警察が動かない理由と3つの対処法を解説」で詳しく解説しています。

プライバシーの侵害で訴えるには?被害を受けたときの対処法

プライバシーの侵害に該当する投稿を見つけたら、削除を求める前に、投稿のURL・日時・内容が分かるスクリーンショットを撮って証拠を残しましょう。そのうえで、次の3つの手段で対処します。

投稿の削除を求める

まずは、投稿先のSNSや掲示板の運営者に、通報や削除依頼のフォームなどからプライバシーの侵害にあたる投稿の削除を求めます。

応じてもらえないときは、情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月1日にプロバイダ責任制限法から改称)に基づいて、運営者に送信防止措置(投稿を削除するなどして閲覧できなくする措置)を依頼する方法があります。依頼書の書き方は「送信防止措置とは?削除依頼が無視されても出せる依頼書の書き方」にまとめています。

送信防止措置を依頼しても削除されない場合は、人格権に基づく差止め(権利侵害をやめさせること)を求めて、裁判所に削除の仮処分(正式な裁判の前に、暫定的に削除を命じてもらう手続き)を申し立てることも考えられます。

投稿者を特定する

プライバシーの侵害をした匿名の投稿者に慰謝料などを請求するには、相手の氏名と住所を突き止める必要があります。そのための手続きが、発信者情報開示請求です。サイトの運営者から投稿に使われたIPアドレス(ネット上の住所にあたる番号)などの開示を受け、そこから分かった通信事業者(プロバイダ)に契約者の氏名・住所の開示を求める、という流れで進みます。

2022年10月に施行された法改正(当時のプロバイダ責任制限法の改正)では、発信者情報開示命令(裁判所が事業者に開示を命じる制度)が新設されました。開示命令の手続きでは、あわせて申し立てる別の命令によって、サイト運営者とプロバイダへの申立てを同じ裁判所でまとめて審理してもらえるため、従来より早く投稿者を特定できる場合があります。

ただし、投稿者の特定に必要な通信記録(ログ)は数か月程度で消されることが多いため、早めに弁護士に相談することが大切です。開示請求の手続きの流れは「発信者情報開示請求とは?開示命令による手続きを解説」で確認できます。

損害賠償として慰謝料請求をする

投稿者が分かったら、民法709条の不法行為に基づいて損害賠償を請求します。プライバシーの侵害で受けた精神的苦痛についても、財産以外の損害として慰謝料を請求できます(民法710条)。内容証明郵便(送った文書の内容を郵便局が証明する郵便)などで支払いを求めて相手と示談交渉する方法と、裁判所に損害賠償請求訴訟を起こす方法があります。

慰謝料の額は、公開された情報の内容や広がり方、投稿の悪質さなどで大きく変わります。ネット上のプライバシーの侵害では10万〜50万円程度とされることが多い一方、悪質な事案では100万円を超える例もあります。

なお、損害賠償を請求する権利は、損害と加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年が過ぎると、時効(期間の経過で権利が消える制度)によって消滅します(民法724条)。投稿者を特定できたら、早めに請求の準備を進めましょう。

投稿者への請求の流れは名誉毀損の場合と共通するため、「名誉毀損の慰謝料相場はいくら?請求できる条件を弁護士が解説」をご覧ください。

ネット上のプライバシーの侵害でお困りの方へ

ネット上でプライバシーの侵害を受けても、泣き寝入りする必要はありません。投稿の削除、投稿者の特定、損害賠償の請求という民事上の手段で対処できます。

ただし、削除の仮処分や発信者情報開示の手続きには専門的な知識が必要で、対応が遅れると、保存期間が過ぎて投稿者の特定に欠かせないログが消えてしまうおそれもあります。弁護士に依頼すれば、こうした手続きをまとめて任せられます。なお、報酬を受け取って削除や開示の手続きの代理人を務められるのは、原則として弁護士に限られます(弁護士法72条)。

自分の住所や写真がネット上に晒されている状況は、大きな精神的苦痛を伴います。すでに投稿を見つけている場合や、情報が拡散してデジタルタトゥーとして残りそうな場合は、早めの対応が大切です。

当事務所はネット上の誹謗中傷・プライバシー侵害問題に豊富な対応実績があります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

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