公務執行妨害の有名判例を弁護士が解説

①公務執行妨害罪の「暴行」の意義を判示した判例

事案の概要

この事例は、県教職員組合の役員である役員である被告人が、組合活動に非協力的な教諭の態度に憤慨して、教室内にいる被害者に暴行した事例です。

この事例では被害者が「職務を執行するにあたり」、被告人が「暴行を加えた」といえるか、という点について詳しく認定されています。

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判例分抜粋

この事例に対して判例は、「刑法九五条にいわゆる暴行とは、公務員の身体に対し直接であると間接であるとを問わず不法な攻撃を加えることをいうのであつて、被告人の本件所為が右の暴行にあたることは明らかである」と判示しています(最高裁判所昭和37年1月23日判決)。

弁護士の解説

本件では組合活動について加害者と揉めた際、被害者は児童に対して自習・教室内の清掃の指導監督をするために、被告人にかまわず事務室を出ていってしまいました。

これに対して被告人は「まだ話は終わっていない」と迫り、被害者の手首を掴み無理やり教室外に連れ出そうと引っ張り、床に倒れたのにそのまま廊下を約6m引っ張ったというものです。

まず被害者の教諭が児童に自習・清掃を指示することは、学習指導要領に定める教育課程に属しており、児童教育の職務権限を持つ教諭が行う「職務」に該当すると認定しています。

そのうえで、公務執行妨害罪の「暴行」とは、公務員の身体に対し直接または間接に不法な攻撃を加えることをいうと判示し、間接暴行が含まれている点で単純暴行よりも広い概念であることを明らかにしています

②1回の投石行為が公務執行妨害罪にあたるとされた判例

事案の概要

この事例は、無許可示威行進の際などに警察官が実力行為によって解散させようとした際に、警察官に対して1回石を投げつけた行為が公務執行妨害に問われた事案です。

控訴審は「投石行為は暴行ではあるが、いずれも只一回の瞬間的な暴行にすぎない程度のものであるから、未だ以て公務執行の妨害となるべきものとは思われない」として公務執行妨害罪の成立を否定して単純暴行罪を肯定しましたが、最高裁は公務執行妨害罪を認めました。

判例分抜粋

この事例に対して判例は、「公務執行妨害罪は公務員が職務を執行するに当りこれに対して暴行又は脅迫を加えたときは直ちに成立するものであつてその暴行又は脅迫はこれにより現実に職務執行妨害の結果が発生したことを必要とするものではなく、妨害となるべきものであれば足りるものである。(昭和二四年(れ)第二八九八号、同二五年一〇月二〇日第二小法廷判決、集四巻一〇号二一一五頁参照)。そして投石行為はそれが相手に命中した場合は勿論、命中しなかつた場合においても本件のような状況の下に行われたときは、暴行であることはいうまでもなく、しかもそれは相手の行動の自由を阻害すべき性質のものであることは経験則上疑を容れないものというべきである」と判示しています(最高裁判所昭和33年9月30日判決)。

弁護士の解説

最高裁は、公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行・脅迫が加えられれば直ちに公務執行妨害罪が成立するとして、被告人の投石行為がたとえ1回の瞬間的なものであったとしても直ちに公務執行妨害罪が成立すると判断しています。

そして、暴行・脅迫によって現実に職務執行妨害の結果が発生する必要はなく、妨害の危険性があれば足りると判断しています。

③「職務執行するにあたり」の意味について判断した判例

事案の概要

この事例は、駅の助役が、その職務行為である点呼の執行を終了した直後に、その点呼を行った場所およびその出入口付近で暴行を受けた事案です。

同助役がその後同所から数十メートル離れた助役室において事務引継という職務行為を執行することになっていたことから、「職務を執行するにあたり」といえるかが問題となりました。

判例分抜粋

この事例に対して判例は、「公務員の勤務時間中の行為は、すべて右職務執行に該当し保護の対象となるものと解すべきではなく、右のように具体的・個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲およびまさに当該職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為にかぎつて、公務執行妨害罪による保護の対象となるものと解するのが相当である」と判示しています(最高裁判所昭和45年12月22日判決)。

弁護士の解説

この判例は、公務執行妨害罪の保護の対象となるべき職務執行について、具体的・個別的に特定された職務の執行の開始から終了までの時間的範囲及び当該職務の執行と「時間的に接着し、これと切り離し得ない一体的関係にある範囲内の職務に限る」と限定して判断してます。

本件で保護の対象となるのは駅の助役の「点呼」の執行や「事務引継ぎ」の執行であるとし、その「事務引継ぎ」の行なわれる場所に赴くこと自体は、「事務引継ぎ」の予備的段階であつて、「事務引継ぎ」そのものではないと判断しています。

そのうえで点呼場から助役室に赴くことは職務自体とは考えられないとして、職務執行性を否定しています。

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