「自己破産しても失敗するのではないだろうか?」
「自己破産が失敗する確率とは?」
自己破産を検討している方々にとって、破産の成功確率は非常に気になるものです。
しかし実際の手続きでは、圧倒的多数のケースにおいて自己破産は免責をもらえており、最終的に成功しています。
その成功確率は、なんと約97%!
失敗するのは、わずか3%程度に過ぎないのです。
しかし、3%とはいえ失敗する事例があるのは事実。
それでは、どのようなケースで自己破産は失敗するのでしょうか?
今回は、自己破産に失敗する確率や失敗してしまうパターンなどについて解説いたします。
債務整理のプロが冒頭のような疑問にしっかりとお答えしますので、ぜひ最後までお読みください。
なお、当記事は重要ポイントを赤ペンで強調してありますので、強調部分だけに目を通していただければ1~2分で一通り理解可能です。
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自己破産で免責をもらえない確率|たったの3%
自己破産で借金を帳消しにするためには、破産手続きの最後の段階において裁判所から免責をもらう必要があります。
裁判所から免責決定を受け、それが確定することで、法律上借金の支払い義務が消滅することになるからです。
では実際に全国の地方裁判所に申立てられる自己破産において、免責をもらえる確率はどのくらいなのでしょうか?
実際の運用では、申立てられた破産事件の実に97%もの事例で免責が許可されています。
つまり、免責がもらえないのは全体のわずか3%に過ぎず、ほとんどの事例で免責をもらえ自己破産することに成功しているのです。
このように申立てられた自己破産の圧倒的多数が免責を受けることができているのですが、3%ではあっても免責をもらうことができず、結局自己破産に失敗する事例も存在します。
それでは、実際の手続きの中で自己破産に失敗するのには、どのようなパターンがあるのでしょうか?
自己破産に失敗する可能性のある7つのパターン
自己破産の手続きに関しては、破産法という法律によって定められています。
この法律では、破産申立人において一定の原因などがある場合には、裁判所は破産申立人に対して免責を与えてはいけないことを定めているのです。
このような「一定の原因」のことを「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」といいます。
つまり、破産申立人において免責不許可事由に該当する行為がある場合には破産の申立てをしても借金の免除が受けられず、自己破産に失敗する可能性があるのです。
それでは一体、どのような行為が免責不許可事由に該当するとされているのでしょうか?
破産法では、252条において免責不許可事由を定めています。
免責不許可事由に該当するため自己破産に失敗してしまう事例には、いくつかのパターンがありますが、実務でよく見かけるパターンは主として以下のように7つに分けることができます。
- (1)ギャンブルや浪費などで借金を作った場合
- (2)財産を隠した場合
- (3)クレジットカードのショッピング枠を現金化した場合
- (4)これから自己破産することを認識しつつ借金した場合
- (5)一部の債権者にだけ借金を返済した場合
- (6)7年以内に自己破産などをしている場合
- (7)裁判所に虚偽の申告をした場合
これらの各行為は、裁判所における実際の手続きで問題となることが非常に多いため、少し詳しく解説いたします。
(1)ギャンブルや浪費などで借金を作った場合
ギャンブルやブランド物の購入など浪費によって借金を作った場合、自己破産しても免責が得られない可能性があります。
また、FXなど投機的行為も免責不許可事由に該当する行為とされています。
(2)財産を隠した場合
自己破産の申立人が20万円以上の財産を持っている場合、その財産は破産手続きによって処分換金されることになるのが原則です。
その処分を逃れるため、稀に財産を隠そうとしたり壊したりする人がいますが、そのような行為は免責不許可事由に該当し免責をもらえなくなる可能性がありますので注意が必要です。
また、財産隠しなどの行為は「詐欺破産罪(さぎはさんざい)」に該当し、最悪の場合には刑事罰などを受ける可能性があります。
(3)クレジットカードのショッピング枠を現金化した場合
クレジットカードで購入した商品を、すぐに売却して現金化するような行為は免責不許可事由に該当します。
自己破産の申立て費用をねん出するためについ……などという場合には、そのような行為をするのではなく、法テラスの民事法律扶助の利用を検討してください。
法テラスでは、一定の条件のもとに自己破産にかかる費用を立て替えてもらうことが可能です。
(4)これから自己破産することを認識しつつ借金した場合
破産手続開始の申立てのあった日から起算して1年前の日から破産手続開始決定があった日までの間に、破産することを認識していながら借金などをした場合、免責不許可事由に該当することになります。
このような借り入れなどは、詐欺と同様な行為と判断されるからです。
(5)一部の債権者にだけ借金を返済した場合
自己破産する場合には法律のルールとして、すべての債権者を平等に扱う必要があります。
債務者としては借金を負っている以上、債務の返済を行うことは正当な行為と判断しがちなものです。
しかし自己破産する以上、一部の債権者だけに返済を行う行為は法律によって禁止されているのです。
自己破産の手続きに入っているにもかかわらず一部の債権者に対して行う返済は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という違法行為となり、免責不許可事由に該当することになります。
保証人にだけは迷惑をかけたくないという思いから、保証人を立てて借りた借金だけは弁済しようとする方がいらっしゃいますが、これも当然免責不許可事由に該当することになってしまいます。
もし、どうしても保証人に迷惑をかけずに債務整理したい場合には、自己破産ではなく任意整理などを検討したほうがよいでしょう。
(6)7年以内に自己破産などをしている場合
以前に自己破産したことがある場合、その時から7年以内に再び自己破産することはできません。
給与所得者等再生の場合も同様で、前回の手続きから7年経過していない場合には自己破産できないこととされています。
(7)裁判所に虚偽の申告をした場合
自己破産手続きでは、債権者に与える損失を最小限にするため破産申立人の収入や財産、債務状況などに関して詳細な調査が行われることになります。
破産の申立てをする際には、それらを裏付けるたくさんの書類を提出することになりますし、場合によっては破産管財人などから個別に質問などを受けることもあるでしょう。
そのような場合に非協力的だったり、虚偽の申告などをした場合には免責不許可事由に該当することになります。
免責不許可事由があっても実際には免責を受けられる!|裁量免責
このように破産法では免責不許可事由を定め、それに該当する行為がある場合には破産申立人は免責を受けることができないことを規定しています。
しかし破産法は同時に、免責不許可事由があったとしても裁判所が免責を許可すべきと判断した破産申立人に対しては免責を与えることをも認めているのです。
裁判所の判断で免責が与えられることを「裁量免責(さいりょうめんせき)」といいます。
実際にはほとんどのケースで免責を受けられる!
現実問題として考えた場合、破産を申立てる人の行動の中に免責不許可事由に該当する事実は大なり小なりあるものです。
それほど重大でもない事実でありながら、単に免責不許可事由に該当する事実が存在するという理由をもって一律に免責がもらえないのでは、各種の不都合が生じます。
借金を帳消しにして債務者の経済的更生を図ろうとする自己破産制度の存在意義が失われることにもなりかねないからです。
そのため破産手続きの実際の運用においては、広く裁判所によって裁量免責が与えられているのです。
このため、債務者に反省する態度がない場合や破産手続きに協力しないなど悪質な事例を除いて、ほぼすべてのケースで裁判所による裁量によって免責が得られることになっています。
そして最終的には冒頭でご紹介したとおり、免責を受けられないのはわずか3%程度と非常にまれな事例となっているのです。
参考までに、自己破産に関して2017年に行われた調査に関する統計をご紹介しておきましょう。
(統計)破産申立の最終結果 | |
---|---|
①免責許可決定 | 96.77% |
②免責不許可決定 | 0.57% |
このように実際に免責不許可決定が出るのは、たったの0.5%程度に過ぎないのです。
普通の態度で手続きに臨みさえすれば、自己破産に失敗する心配はほぼないと考えてよいでしょう。
自己破産できない場合の対策
それでは残念ながら自己破産に失敗した場合には、いったいどのように対処すればよいのでしょうか?
そのようなケースでは、以下のような方法を検討してみるとよいでしょう。
- (1)即時抗告する
- (2)自己破産以外の債務整理方法を試みる
- (3)時効の成立を待つ
それぞれの方法について、簡単にご紹介します。
(1)即時抗告する
裁判所で免責不許可決定を受けてしまった場合、その日から7日以内であれば即時抗告することができます。
「即時抗告(そくじこうこく)」とは、裁判所の出した決定などの内容に不服がある場合において、より上級の裁判所に対して再審理を求め決定内容の変更を求める手続きのことを言います。
自己破産は地方裁判所で行われる手続きであるため、即時抗告は高等裁判所に対して行うことになります。
免責不許可決定に対して不服がある場合には、即時抗告することも対策の1つです。
ただし、実務では免責不許可の決定が覆ることはまずありませんので、あくまでも対策の1つの選択肢として考える必要があります。
(2)自己破産以外の債務整理方法を試みる
借金問題を解決するための方法は、何も自己破産だけに限ったものではありません。
債務整理には、自己破産以外にもいくつかの方法が残されているのです。
自己破産以外で借金問題を解決する方法として有力なものとしては、以下の2つの方法が挙げられます。
- ①任意整理
- ②個人再生
それぞれについて、簡単に確認しておくことにしましょう。
①任意整理
自己破産で保証人に迷惑をかけたくない場合、もっとも有力な選択肢が任意整理です。
将来利息のカットを受ければ借金残額が3年間の分割払いまたは5年程度の分割払いで完済できる場合には任意整理で借金問題を解決できる可能性があります。
任意整理では自己破産や個人再生と異なり、借金元本の免除や大幅カットを期待することはできません。
しかし、借金元本にかかる利息の免除を受けることができるため、返済が楽になることが一般的です。
なお、自己破産だけでなく個人再生の場合でも、手続きを行うことによって保証人に迷惑をかけることになってしまいます。
保証人に迷惑をかけずに債務整理を行いたい場合には、任意整理を検討するとよいでしょう。
②個人再生
自己破産以外の債務整理方法の中で、もっともおすすめなのが個人再生です。
個人再生では、自己破産のように借金を帳消しにしてもらうことはできません。
しかし、借金の元本に関して最大80%~90%もの免除を受けることができ、残債務に関しては基本的に3年間での分割払いで返済することが認められます。
しかも、残債務については将来利息がまったく発生しないので、毎月の返済が非常に楽になるのです。
また、個人再生では自己破産と異なり、免責不許可事由などのような制限がありません。
ただし、個人再生では借金の一部を返済しなければならないため、安定した収入がなければ利用することはできません。
しかし、もし安定収入がある場合には、非常に有効な債務整理方法だということができるでしょう。
なお、詐欺破産罪などが疑われて免責不許可となったケースでは、個人再生も認められない可能性があります。
その場合には、任意整理など個人再生以外の方法を検討すべきでしょう。
(3)時効の成立を待つ
消費者金融など金融会社からの借り入れなどは、法律上「商事債権」に該当し、5年間の消滅時効が定められています。
自己破産に失敗した場合には、最後の手段として借金の返済を放置しておき、時効の成立期間である5年の経過を待つという方法も一考の価値があるかもしれません。
ただし、時効完成前に訴訟を提起され敗訴した場合には、時効期間は10年まで延長されることになってしまうので注意が必要です。
しかし実際には、自己破産申立の時点で破産申立人に対する貸金などに関して損金処理してしまう金融業者もある程度存在するようです。
そのため、免責が不許可となっても金融業者からの取り立てが行われないこともあり、その場合には5年が経過することで時効が完成する可能性があるのです。
時効が完成した場合、業者に対して「時効援用の意思表示(じこうえんようのいしひょうじ)」をすることで、借金の支払い義務の消滅という効果が法律上確定することになります。
なお、免責が不許可になった場合の対策に関しては、法律的に難しい問題がありますので弁護士に相談して慎重に対応を検討することをおすすめします。
まとめ
今回は、自己破産に失敗する確率や失敗するパターンなどをテーマとして解説させていただきました。
自己破産したからといって、必ずしも借金が帳消しになるとは限りません。
自己破産は一定の条件を満たしていない場合には、利用すること自体ができない制度です。
また、制度の利用ができる場合であったとしても、免責不許可事由に該当する行為があったりすると免責を受けられない可能性もでてきます。
ただし、その場合でも大半のケースでは裁判所の裁量によって免責を受けられていますので過度な心配は不要です。
今回ご紹介したような知識を活用し、ぜひ自己破産を成功させていただきたいと思います。
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相談料は基本的に無料となっておりますので、自己破産を検討されている方は、この機会にぜひご相談ください。
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