自己破産する人に一定以上高額な財産がある場合、破産手続きによってある程度の財産が没収・差押えされ、最終的に処分されることになります。
破産によって借金の免除が受けられる以上、これはある意味仕方のないことだといえます。
しかし、このような話を聞くと、自己破産することに不安を覚えられる方もたくさんいらっしゃるでしょう。
「破産すると財産すべてを失うことになるのでは?」
このように心配される方がいらっしゃいますが、実際には破産後に生活するために必要な財産は処分の対象から除外されるので心配は不要です。
今回は、自己破産することで処分される財産と手元に残せる財産について解説させていただきます。
- 「自己破産すると、誰の財産が処分されるのか?」
- 「破産しても処分されない財産とは何か?」
- 「破産した場合、財産が処分されるのはいつか?」
上記のような疑問にお答えしますので、最後までお読みいただければ幸いです。
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1.自己破産で処分されるのは誰の財産?|破産申立人の財産だけ
自己破産した場合、処分の対象となるのは自己破産を申立てた本人が持っている財産に限定されるのが原則です。
自己破産申立人の親・配偶者・子供など家族や親族であっても、破産申立人本人が持っている財産でなければ処分の対象とはなりません。
自己破産の申立人が専業主婦であり、それほど高額な財産を持っていない場合には、破産しても夫の所有している財産が処分の対象となることはほぼありません。
しかし、完全に自分一人で所有しているのではない財産(共有財産)に関しては、自己破産することで処分の対象となる可能性があるので注意が必要です。
たとえば、夫婦共有名義で購入した自宅不動産などは、夫婦のどちらか一方でも自己破産した場合には処分の対象となる可能性があります。
2.処分の対象となる財産・対象外の財産
自己破産した場合、自己破産を申立てた人が所有している一定以上高額な財産は、借金返済の資金に充当するために没収・処分されることになります。
そして、没収された財産は換金され、その金銭が破産債権者に対して配当されることになります(管財事件の場合)。
ただし、破産申立人が所有しているすべての財産が処分・換金の対象となるわけではありません。
破産後も生活するために必要とされる一定の財産に関しては、処分の対象外とされています。
なお、破産の処理方法が「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」とされる場合には、資格制限など一定の制限を受けることはありますが財産はいっさい処分されることがありません。
破産が「管財事件」で処理される場合、財産の処分を受けるだけでなく、日常生活を送るうえでの自由に関しても制限を受けることがあります。
処分の対象となる財産|現預金・不動産・車・退職金など
それでは、自己破産手続きで処分の対象となる財産とは、いったいどのような物なのでしょうか?
具体的には、つぎのような財産が処分の対象となります。
- (1)現金
- (2)預貯金
- (3)不動産
- (4)自動車
- (5)退職金
- (6)生命保険の解約返戻金
- (7)その他
それぞれに関して、詳しく確認していくことにしましょう。
(1)現金
破産申立人が持っている現金は、当然のことながら破産手続きによる処分の対象となる財産です。
しかし、法律上99万円以下の現金に関しては処分の対象外とされています。
このため、現金を持っていたとしても99万円までであれば自己破産する場合でも、その現金が没収の対象となることはありません。
(2)預貯金
破産申立人の預貯金は、処分の対象とされます。預貯金は、現金に準ずる扱いとなるのが一般的です。
(3)不動産
自己破産申立人名義の不動産は、破産手続きによって処分されることになるのが原則です。
このため、自己破産する場合にはマイホームは手放すことになります。
自己破産する以上、自宅不動産を維持することは、まず不可能であることを覚悟してください。
どうしても自宅を手放したくない場合の対処法|個人再生
自己破産する場合、自宅不動産は手放すことになります。
借金問題を解決する以上、これはある意味仕方のないことです。
しかし事情によっては、どうしてもマイホームを手放したくないというケースもあるでしょう。
そのような場合には、借金問題の解決法としては自己破産ではなく、個人再生という手続きを検討するとよいでしょう。
個人再生によって自宅を維持する場合、住宅ローンは当初の契約どおり支払う必要はありますが、その他の借金に関しては最大80%~90%の免除を受けることが可能です。
借金の残額に関しては支払う義務が残りますが、基本的に3年間での分割で支払うことが可能であり、残債務について将来利息も発生しません。
このため、借金の支払いが非常に楽になることが一般的です。
(4)自動車
自己破産する人が車を持っている場合、その自動車は破産による処分の対象となります。
ただし、初年度登録から10年以上経過しているなど各種の理由によって経済的価値が低いと判断される場合には処分の対象外となり、手元に残せる可能性もあります。
(5)退職金
会社員が自己破産する場合、退職金が問題となることがあります。
会社を辞めた際に支給される退職金の額が一定以上となる場合には、退職金の全部または一部が破産手続きによる差し押さえなどの対象となるからです。
ただし、破産手続きで退職金が処分の対象となるからといって、会社を辞めることを強制されることはありませんので過度の心配は無用です。
(6)生命保険の解約返戻金
積み立て型の生命保険に加入している場合、保険を解約すると保険会社から解約返戻金が戻ってくることがあります。
この解約返戻金は破産申立人の財産とみなされるため、破産手続き上、没収・差押えの対象となります。
このため、最悪の場合には生命保険の解約が必要となることもあり得るので注意が必要です。
ただし、解約返戻金が20万円以下の場合には基本的に生命保険の解約は不要です。
返戻金の額が20万円を超える場合には、生命保険は解約するのが原則となります。
しかし、対処の方法によっては生命保険を維持することも可能ですので、興味がある方は以下の記事を参考にしてください。
(7)その他
有価証券・ブランド品・貴金属類・骨とう品など高額な財産に関しては、基本的に20万円以上の価値がある場合に処分の対象となります。
このため、そのような高額な財産を持っている場合には、自己破産によって手放すことになると考えておいた方がよいでしょう。
つぎの項で解説しますが、法律の規定によって処分の対象外とされている財産以外は、破産することによって処分されることになるのが原則です。
自己破産することによって、どのような財産が処分の対象とされるのかについて具体的に知りたい場合には、弁護士や司法書士など債務整理の専門家に相談することをおすすめします。
どうしても手放せない財産がある場合には、借金問題の解決法としては自己破産ではなく、個人再生や任意整理、特定調停などその他の債務整理方法を検討する必要があります。
手元に残せる財産|家財道具・99万円以下の現金など
法律の規定によって、自己破産しても処分されない財産も存在します。
主として、つぎのような財産がこれに該当します。
- (1)新得財産
- (2)家財道具など生活必需品
- (3)99万円以下の現金
- (4)自由財産の拡張を受けた財産
- (5)その他の財産
それぞれについて、簡単に確認しておきましょう。
(1)新得財産
自己破産することによって処分されることになる財産は、あくまでも裁判所によって破産手続きの開始決定がなされる以前の所有物に限定されます。
このため、自己破産の開始決定がなされた後に取得した財産は、破産手続きによる処分の対象外となります。
このような財産を「新得財産(しんとくざいさん)」といいます。
新得財産の代表的な例としては、破産手続き開始決定後の給料などを挙げることができます。
(2)家財道具など生活必需品
自己破産後も生活するために必要となる家財道具は、破産手続きによる処分の対象外です。
家電製品なども同様です。
破産しても、これらの財産が処分されることはありません。
ただし、一定以上高額な家電などについては処分の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
携帯電話・スマホも処分の対象外
今や携帯電話やスマートフォンは、生活の必需品といっても過言ではないでしょう。
自己破産しても携帯電話・スマホなどは処分されることはありません。
(3)99万円以下の現金
法律上、99万円以下の現金に関しては破産手続きによる処分の対象外とされています。
このため99万円以下の現金であれば、持っていても処分されることはありません。
99万円を超える現金を持っている場合には、超えている部分が処分の対象となります。
ただし、持っている現金が20万円を超えている場合には、破産の処理方法は同時廃止ではなく管財事件となることが原則です。
破産手続きによる処分の対象となる現金の額と、同時廃止事件・管財事件の振り分け基準とは異なりますので注意してください。
(4)自由財産の拡張を受けた財産
本来は破産手続きによって処分される財産であっても、裁判所の許可を受けた場合には処分の対象外とされることがあります。
これを「自由財産の拡張(じゆうざいさんのかくちょう)」といいます。
生活の必要上、どうしても処分されては困るような財産がある場合には自由財産の拡張によって手元に残せる可能性があるのです。
(5)その他の財産
法律上、差し押さえが禁止されている財産(債権など)があります。
たとえば給料などに関しては一部について差押えはできますが、全額を差し押さえることは禁止されています。
法律によって差し押さえが禁止されている財産については、自己破産しても処分の対象外となります。
自己破産による処分の対象外となる財産の詳細に関しては、以下の記事を参照してください。
3.財産はいつ処分されるのか?
自己破産することによって財産が処分されるのは、破産の処理方法が管財事件となる場合に限定されます。
管財事件では、「破産管財人(はさんかんざいにん)」が裁判所によって選任され、破産手続き上必要な職務を遂行することになります。
自己破産申立人の財産を処分するのは、実際にはこの管財人がメインとなって行われます。
破産手続きによって処分される財産は各種ありますが、それらがどのタイミングで処分されることになるかは管財人の判断次第であるため、一概に言うことはできません。
自己破産が管財事件で処理される場合、破産申立人は処分の対象となりうる財産に対して管理処分権を喪失することになります。
このため、自己破産の申立てを検討している段階から、処分の対象となる財産に関しては手放す覚悟をしておいたほうがよいでしょう。
自宅不動産からの退去時期はいつ?|6か月は居住可能
すでにご紹介させていただいたように、不動産を所有している人が自己破産する場合、それらはすべて破産手続きによって処分されることになります。
このため自宅不動産に住んでいる人が自己破産する場合、自宅から退去しなければならなくなるのが一般的です。
しかしだからといって、自己破産の申立て後すぐに退去する必要はありません。
通常のケースでは、破産申立後6か月前後はそのまま自宅不動産に住み続けることができます。
実務では、その期間内に新しい転居先を探し引っ越すことが一般的です。
自動車の扱いには要注意
自己破産する場合、自動車ローンの残っている車については注意が必要となります。
普段自分の自由に利用できるため、ローンの残っている自動車であっても自分の所有物と勘違いされている方がたくさんいらっしゃいます。
しかし法律的に見た場合、ローンが残っている以上、その車はローン会社の所有物なのです。
ローンの支払いを続けていれば利用できますが、支払いが滞った場合、その車は利用できなくなってしまうのです。
自己破産すると、借金に対する一切の返済が禁止されます。
当然、自動車ローンの支払いもできなくなるため、自動車はローン会社によって回収されることになってしまうのです。
ただし、その場合でも対応次第では自動車を手元に残すことが可能となるケースがあります。
生活の必要上どうしても自動車が不可欠な場合には、自己破産しても車を残したいひと必見!手元に残せる7つのパターンを参考にして対処されることをおすすめいたします。
4.まとめ
今回は、自己破産することで処分の対象となる財産と処分の対象外となる財産についてご紹介しました。
自己破産手続きが管財事件となる場合、一定以上の高額な財産に関しては処分されるため手放す必要があります。
しかし、破産後も生活に必要とされる財産に関しては処分の対象外とされます。
ただし、破産手続きが同時廃止事件とされる場合には、破産申立人の財産は基本的にいっさい処分されることがありません。
ご自分が自己破産する場合、どのような財産が手元に残せるのかなどについて不安があるなら当事務所へご相談ください。
借金問題は、いつまで悩んでいても解決しません。一番大切なことは、解決に向けて積極的に行動することなのです。
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