自己破産とは|多額の借金をゼロにして人生を再出発するための方法

多額の借金を抱えてしまっている場合、一日でも早く借金問題を解決する必要があります。
借金問題は、解決が一日遅れればその分、確実に深刻になっていくからです。

返済しきれないほどの借金がある場合、自己破産することで借金問題を解決することができます。
しかし、いざ自己破産を検討する場合、多くの方が多種多様な不安や疑問を持つものです。

今回は、「自己破産」について解説させていただきます。

  • 「自己破産すると財産はどうなるの?」
  • 「なにか制限を受けることはある?」
  • 「自己破産する際にかかる費用はいくら?」
  • 「自己破産の流れはどうなるの?」

みなさんがお持ちである上記のような疑問や不安にお答えしますので、ぜひ最後までお読みください。

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1.自己破産とは?

自己破産とは、多額の借金を抱えてしまい、もはや自力で全額の返済が不可能となってしまった人を救済するための制度です。
手続きは地方裁判所で厳格に行われる必要がありますが、裁判所によって自己破産が認められた場合には、それまで背負っていた借金の返済義務が免除されます。
つまり、自己破産することに成功すると借金がゼロになるということです。

このように自己破産には借金の支払い義務が免除されるというメリットがありますが、その反面、各種のデメリットも存在するので注意が必要です。

2.自己破産のメリット

自己破産した場合、以下のように各種のメリットを受けることができます。

  • (1)借金が免除される
  • (2)誰でも利用可能
  • (3)業者からの取り立てをストップできる
  • (4)一定の財産を手元に残せる

順を追って解説させていただきます。

(1)借金が免除される

自己破産を利用する際の最大のメリットは、借金が免除されるという点です。
自己破産するためには地方裁判所で複雑な手続きを経る必要はありますが、裁判所によって自己破産することが認められれば借金はすべて免除されることになります。

ただし、一定の種類の債務(「非免責債権」)に関しては自己破産しても返済義務が免除されないので注意してください。

(2)誰でも利用可能

自己破産制度を利用するためには、返済不可能なほどの借金を抱えていることが条件となります。
この状態のことを「支払不能」状態といいます。

多額の借金を抱え支払い不能な状態に陥っていれば、その人の職業などにかかわらず誰でも自己破産することが可能です。
会社員はもちろんのこと、公務員であっても自己破産制度を利用することが可能です。

(3)業者からの取り立てをストップできる

自己破産を弁護士や司法書士など債務整理の専門家に依頼した場合、専門家から債権者である金融業者などに受任通知が発送されます。
「受任通知(じゅにんつうち)」とは、借金問題を解決する仕事を専門家が引き受けたことを相手業者に通知するために発送される書面のことを言います。

受任通知が相手業者に到達すると、その業者は債務者に対して直接連絡することが禁止される効果が発生します。
このため、自己破産を専門家に依頼すると最短即日、遅くとも数日以内に業者からの取り立ての連絡がストップするのが一般的です。

また、債務整理の専門家に依頼せず自分で自己破産を申立てる場合には、地方裁判所で発行される自己破産の受付票(受理証明書)を提示することで、業者からの取り立てを止めることも可能です。

(4)一定の財産を手元に残せる

自己破産する場合、借金の免除を受ける代わりに、所有している一定以上の価値のある財産が没収・処分されることになるのが原則です。
しかし、すべての財産が没収・処分されてしまうわけではありません。

人間である以上、自己破産後も生活していかなければいけません。
生活していくためには家財道具はもちろん、ある程度のお金も必要です。
このため、人間が生活していくために必要な最低限度の財産は自己破産しても没収・処分の対象外とされているのです(このような財産のことを「自由財産(じゆうざいさん)」といいます)。
たとえば、現金に関しては99万円までは自由財産として没収を受けることはありません。

このように自己破産する場合には一定額以上の高額な財産を持っている場合、それらが処分され債権者に対する借金の返済の一部に充当されるのが原則です(この手続きを「管財事件(かんざいじけん)」といいます)。
このため所有している自動車や退職金などに一定以上の経済的価値がある場合、自己破産することで没収される可能性があります。
また、積み立て型の生命保険などを契約している場合には、その解約返戻金が没収の対象となることもあるのです。
しかし、自己破産の処理方法が「管財事件」ではなく「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」とされた場合には、所有している財産は一切処分されることがありません。

3.自己破産のデメリット

自己破産すると上記のような各メリットを受けることができますが、その反面として以下のようなデメリットを受ける可能性があります。

  • (1)財産が処分されてしまう
  • (2)職業の制限を受ける可能性がある
  • (3)ブラックリストに載る
  • (4)保証人に迷惑がかかる
  • (5)家族に迷惑がかかる可能性がある
  • (6)日常生活の自由を制限される可能性がある
  • (7)破産者として官報に住所・氏名が掲載される

順を追って解説いたします。

(1)財産が処分されてしまう

自己破産は、借金の支払い免除を受けるのと引き換えに、所有している財産で一定以上高額なものが処分される手続きです。

たとえばマイホームや自動車、生命保険の解約返戻金、会社員の場合には退職金などは処分の対象となる代表例です。

ただし、上記のように自己破産の処理方法が「同時廃止事件」となった場合には、財産はいっさい処分されることがありません。

(2)職業の制限を受ける可能性がある

自己破産した場合、法律の規定によって職業の制限を受けることがあります。
これを「資格制限(しかくせいげん)」といいます。

資格制限の対象となる職業などに就いている場合、うっかり自己破産してしまうと大変なことになりかねないので注意が必要です。
場合によっては、失業するなど重大な悪影響を受ける恐れがあるからです。

どのような職業が資格制限の対象となるかについては、それぞれの資格を規制する法律によって定められています。

このため、どのような職業や資格が制限の対象となるかを一律に解説することはできません(資格制限を受ける職業や資格については、以下の記事を参照してください)。

なお、自己破産による資格制限は「復権(ふっけん)」することで解除され、その職業に就職することができるようになります。

(3)ブラックリストに載る

借金問題を法律的に解決する方法である債務整理には、自己破産を含めて4つの方法があります。
自己破産に限らず何らかの債務整理をする場合には、個人信用情報機関においてブラックリストに載ることになるので注意が必要です。
個人信用情報機関においてブラックリストに載った場合、その後一定の期間内は新たにローンを組んでお金を借りたり、新しいクレジットカードを作ることができなくなってしまいます。

ただし、この制限は一生続くわけではありません。
自己破産後5年から10年経過することで解除されます。

(4)保証人に迷惑がかかる

借金をする際に保証人を立てている場合、自己破産すると保証人に迷惑がかかることになります。

お金を借りた本人は自己破産することで借金の返済義務が消滅しますが、借金の貸し手である金融業者は保証人に対して借金の返済を求めることになるからです。

この場合、保証人は借金の残額すべてを支払わなければなりません。

保証人がいる場合に自己破産する際には、保証人への何らかのケアが求められることになります。

申し立てをする前に事情を話し、納得してもらえるように努力することが望ましいといえます。

(5)家族に迷惑がかかる可能性がある

親子や兄弟姉妹であったとしても、人間が別である以上、法律的には他人です。

このため親族の中に多額の借金を抱えている人がいたとしても、自分が返済義務を負うことはありません。

しかし、親族がお金を借りるときなどに保証人となっている場合には話が異なります。

お金を借りた本人が借金の返済をしない場合には、保証人として借金全額を返済する義務が発生するからです。

このため自己破産の対象である債務の中に家族を保証人として借りた借金がある場合には、自己破産することで家族に迷惑がかかることになります。

また、同居の親族に対しては、事実上の悪影響が及ぶ可能性があることが報告されています。

自己破産後に同居の親族がローンなどを組もうとする際には審査に通りづらくなる可能性が否定できませんので、この点に関しても自己破産前に十分理解しておく必要があります。

(6)日常生活の自由を制限される可能性がある

自己破産の処理方法には、「同時廃止事件」という方法と「管財事件(かんざいじけん)」という2つの方法があります。

ある程度以上高額な財産を持っている人が自己破産する場合、基本的には管財事件として手続きが処理されることになります。

自己破産が管財事件として処理される場合、郵便物が破産管財人に開封されたり、旅行や引越しなど各種の自由の制限を受けることになるので注意が必要です。

(7)破産者として官報に住所・氏名が掲載される

自己破産した場合、その事実及び住所氏名が複数回「官報(かんぽう)」という政府の広報誌に掲載されることになっています。
官報の内容に関しては、現在ではインターネット上でも確認することができるため、自分が自己破産したことが会社や近所などにバレてしまうのではないかと思い破産をためらう方が後を絶ちません。

実際には官報の内容から破産の事実が周囲にバレてしまう可能性は極めて低いのですが、可能性がゼロではないという点においてはデメリットと考える必要があるでしょう。

自己破産以外の選択肢も

自己破産することから発生する以上のようなデメリットを受けたくない場合、自己破産以外の方法で借金問題を解決する必要があります。
その際、有力な候補となるのが「個人再生(こじんさいせい)」という手続きです。

個人再生する場合には、自己破産の場合のように借金全額の免除を受けることはできません。
しかし、債務の大幅なカットが認められ、最大80%~90%もの借金が減額される可能性があります。

個人再生した場合には、自己破産と比較してつぎのような点でメリットを受けることができます。

  • (1)財産が処分されることがない
  • (2)職業の制限を受けることがない
  • (3)日常生活の自由を制限されることがない

ただし、個人再生する場合にも住所・氏名が官報に掲載されたり、保証人に迷惑がかかるなどデメリットがあります。
これらの不利益を避けたい場合には、任意整理などの債務整理を検討する必要があるかもしれません。

4.自己破産に対する世間の誤解について

世間では破産手続きすると、以下のようなウワサを耳にすることがあります。

  • (1)戸籍に破産したことが記載される
  • (2)選挙の投票権がなくなる
  • (3)会社をクビになる
  • (4)アパートを借りられなくなる
  • (5)財産すべてが処分される
  • (6)旅行が禁止される

しかし、これらのウワサはすべて事実ではありません。
それぞれについて、簡単に解説いたします。

(1)戸籍に破産したことが記載される

自己破産しても、その事実が戸籍に記載されることはありません。

確かに以前の扱いでは自己破産した場合には、「破産宣告」などと戸籍に記載されることがありました。

しかし現在では、自己破産しても戸籍にはいっさい記載されることはありませんので心配は不要です。

(2)選挙の投票権がなくなる

自己破産すると、国政選挙の際などに投票権がなくなるという根強いウワサが流れています。

しかし実際には、自己破産しても選挙の投票権がなくなることはありません。

自己破産しても、まったく問題なく投票権が認められますので心配無用です。

(3)会社をクビになる

自己破産しても、会社をクビになるようなことはありません。

仮に自己破産したことが会社にバレたとしても、そのことを理由として会社が社員などを解雇することはできません。

これは公務員の場合も同様です。自己破産後も公務員として働いている方は、世間にたくさんいらっしゃいます。

このように自己破産したからといって勤務先をクビになったり、働きづらくなったりすることはありませんので過度に心配する必要はありません。

(4)アパートを借りられなくなる

自己破産したとしても、アパートを借りられなくなるようなことはありません。

通常の場合、自己破産したことが大家さんにバレることはありませんので、アパートを借りた後に毎月家賃を支払えば問題となることはありません。

(5)財産すべてが処分される

自己破産した場合、手続きが管財事件となるときには、ある程度以上の財産が処分されることになります。

この点は間違いありませんが、持っているすべての財産が処分されるわけではありません。

99万円以下の現金や家財道具など、自己破産後も生活していくために必要とされる一定の財産に関しては処分されることはないのです。

また、破産の処理方法が同時廃止事件とされる場合には、財産はまったく処分されないこともあります。

(6)旅行が禁止される

自己破産したからといって、かならずしも旅行が禁止されるわけではありません。

破産の処理方法が「同時廃止事件」とされた場合には、そもそも旅行の制限を受けることはいっさいありません。

しかし、破産の処理方法が「管財事件」となった場合には、旅行や引越しなどの自由が制限されることがあります。

ただし、その場合でも事前に裁判所の許可を得れば旅行などをすることは可能です。

自己破産すると、まったく旅行できなくなるなどと言うことはありません。

5.免責不許可事由|自己破産が認められないケースもある

自己破産は返済しきれないほどの借金を抱えてしまった人にとって、とてもありがたい制度です。

一定の財産の処分や職業制限を受けるなど各種のデメリットも存在しますが、借金が帳消しになるというメリットは非常に大きなものがあります。

しかし自己破産を申立てる人において、つぎのような事実に該当する行為がある場合には自己破産することが認められない可能性があるので注意してください(破産法252条1項)。

これら自己破産することが認められなくなってしまう事柄のことを、「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」といいます。

  • (1)財産隠しなど(同項1号)
  • (2)クレジット枠の現金化など(同2号)
  • (3)偏頗弁済(同3号)
  • (4)ギャンブル・浪費による財産減少行為(同4号)
  • (5)詐欺まがいの借り入れ(同5号)
  • (6)裁判所による調査の拒否など(同8号)
  • (7)前回の破産・個人再生から7年以内であること(同10号)
  • (8)その他

それぞれの詳細について、順次みていくことにしましょう。

(1)財産隠しなど(同項1号)

自己破産して借金の帳消しを認めてもらうためには、所有している一定以上の財産をすべて手放さなければならないのが原則です。

このため破産手続きで財産が処分されるのを逃れようと思い、財産を隠そうと考える方がいます。

このような行為が裁判所などに発覚した場合、免責不許可事由に該当するため自己破産が認められないことになります。

財産隠しは、刑事罰まで定められている重大な違法行為ですので、決して行わないように気を付けてください。

(2)クレジット枠の現金化など(同2号)

破産手続きの開始を遅延させることを目的として、著しく不利な条件で債務を負担したり、クレジットカードの利用枠を現金化するなどの行為がある場合、免責不許可事由に該当することになります。

クレジットカードの利用枠の現金化とは、カードの限度額まで商品などを購入し、その商品をすぐに売却し現金化する行為のことを言います。

このような行為を行うことによって結果的に自己破産の開始決定を遅らせたとみなされた場合、免責不許可となる可能性が高くなりますので注意してください。

(3)偏頗弁済(同3号)

特定の債権者に利益を与える目的、または他の債権者を害する目的で特定の債権者に債務の返済などをした場合、免責不許可事由に該当することになります。

法律上の大原則として、債権者はすべて平等に扱う必要があります(「債権者平等の原則」)。

このため、金融業者への借金は返済しないにもかかわらず、友人や知人など特定の債権者にのみ債務の返済などを行うと偏頗弁済(へんぱべんさい)として免責が得られなくなる可能性がありますので注意が必要です。

(4)ギャンブル・浪費による財産減少行為(同4号)

競艇・パチンコなどギャンブルやブランド物の購入などによって財産を減少させた場合、免責不許可事由に該当することになります。

しかし実際に自己破産しようとされる方の中には、ギャンブルや浪費などで借金を作ってしまったケースがたくさん存在します。

れをすべて免責不許可(自己破産によって借金の免除が認められないこと)としてしまっては、自己破産制度の存在意義が失われることにもなりかねません。

そのため実際の破産手続きでは、本人の反省の度合いなどに応じて「裁量免責(さいりょうめんせき)」という制度が認められています。

裁判所によって裁量免責が得られれば、免責不許可事由があったとしても免責が得られるのです。

実際の裁判所の運用では、この裁量免責によってたくさんの事例で免責が認められています。

(5)詐欺まがいの借り入れ(同5号)

自分が近い将来自己破産することを分かっていながら他人から金銭を借り入れたりしたような場合、詐欺まがいの借り入れとなります。

自己破産するつもりでありながら他人や金融機関などから金銭を借り入れるということは、返さないことを知りながらお金を借りるということであり、その行為は詐欺的と判断されるからです。

自己破産の申立てからさかのぼって1年以内の間にこのような行為がある場合、免責不許可事由となり、破産手続きをしても借金の免除が認められなくなる可能性がありますので注意が必要となります。

(6) 裁判所による調査の拒否など(同8号)

自己破産する場合、裁判所は必要に応じて自己破産申立人の財産や債務内容などに関して調査を行うことがあります。

このような調査は破産管財人によって行われますが、自己破産の申立人はその調査に協力する義務があります。

破産管財人の調査に協力しなかったり、調査を拒否した場合、免責不許可事由に該当することになります。

裁判所から免責を受ける可能性を少しでも高めるためには、破産管財人の調査に関しては積極的に協力し、裁判所の心証をよくするように努めることが大切です。

前回の破産・個人再生から7年以内であること(同10号)

自己破産は人生で一度しかできない、という制度ではありません。

もちろん自己破産せずに済むこと越したことはありませんが、一定の条件を満たせば複数回破産することは法律上可能です。

再度の自己破産が認められるためには、前回の破産手続きから7年以上経過していることが条件の1つとされています。

また、同様に給与所得者等再生をしている場合には、その手続き終了後7年以上経過していることが自己破産が認められる条件とされています。

つまり、前回の自己破産または給与所得者等再生の手続き終了後7年が経過していない場合には、自己破産を申立てても免責不許可事由に該当するため自己破産することが認められません。

(8)その他

破産法では上記以外にも、いくつか免責不許可事由を定めています。
詳しくは、以下の記事を参照してください。

6.非免責債権|自己破産しても免除されない債務とは?

みなさんご存じのとおり、自己破産するとそれまでの債務(借金)の免除を受けることができます。

その結果、どれだけ多額の借金を背負っていたとしても、それら借金はもはや返済する義務が消滅します。

これは、自己破産最大のメリットといえます。

しかし、一定の債務に関しては自己破産しても返済義務の免除が認められない性質のものが存在するので注意が必要です。

そのような種類の債権のことを「非免責債権(ひめんせきさいけん)」といいます。

具体的には、つぎのようなものが非免責債権に該当します。

  • (1)税金など
  • (2)損害賠償の支払い債務
  • (3)養育費の支払い義務など

順を追って見てみましょう。

(1)税金など

税金の支払いは、憲法30条によって国民の義務とされています。

税金の支払い債務は、裁判所によって自己破産が認められても免除されません。

税金は滞納していると、どんどん延滞税が付いてしまい、完済することが難しくなっていきます。

このため税金を滞納している場合には、その状態を放置せず、なるべく早い段階で解決策を講じる必要があります。

また、刑事罰として罰金刑などを課されている場合、その支払い義務も自己破産による免責の対象外です。

このため、仮に自己破産手続きによって免責が認められたとしても、罰金の支払い義務は存続することになるので注意してください。

(2)損害賠償の支払い義務など

不法行為に基づく損害賠償を支払う義務は、非免責債権とされています。

たとえば悪意で人に怪我をさせ、その損害賠償として100万円の支払い義務がある場合、自己破産しても損害賠償金100万円の支払い義務は消滅しません。

(3)養育費の支払い義務など

未成年の子供を持つ親には、その子供が成人するまで養育費を支払う義務があります。

法律上、この養育費の支払い義務も非免責債権とされています。

このため、養育費の支払い義務を負っている人が自己破産しても、その養育費支払い義務は免除されません。

もし、養育費の支払いが厳しいようであれば、家庭裁判所で調停を行うなどの方法によって養育費の減額を検討する必要があります。

世間では養育費が不払いとなっている事例が相当多数ありますが、近年の法改正により養育費の不払いに対しては強制執行を受ける可能性が高まっています。

養育費の支払いが滞っている場合には、その状態を放置せず、減額を求めるなど積極的に行動することが大切です。

7.自己破産の流れについて

こちらでは、自己破産を申立てたときの手続きの大まかな流れについてご紹介いたします。

自己破産には「同時廃止事件」と「管財事件」という2つの処理方法があり、どちらの方法で破産が処理されるかによって手続きの流れは大きく異なることになります。

そして、破産の処理方法が同時廃止事件とされるのか管財事件となるのかに関しては、主として破産申立人に一定以上の高額な財産があるかどうかによって判断されます。

(1)同時廃止事件の場合

自己破産の申立人にめぼしい財産がない場合、破産の処理方法は同時廃止事件となることが一般的です。

ここでいう「めぼしい財産」とは、大雑把に言って20万円を超える財産と考えてよいでしょう。

つまり、自己破産しようとしている人に20万円を超える財産がない場合、破産処理は同時廃止事件とされる可能性が高いと考えられます。

破産が同時廃止事件とされる場合、破産手続きはかなり簡略化されて進められることになります。

このため、手続きに要する時間は短くなり、手続きに要する費用も少額となります。

同時廃止では管財事件の場合と異なり、自己破産申立人の財産はいっさい処分されず、すべて自分の手元に残すことが可能です。

ただし、自己破産申立人にめぼしい財産がなかったとしても免責不許可事由に該当する事実があることが疑われるような場合には、管財事件となることがあるので注意が必要です。

(2)管財事件の場合

自己破産の申立人が20万円を超える財産を持っている場合、破産の処理方法は管財事件とされることが原則です。

ただし、細かい運用に関しては破産手続きを行う地方裁判所によって異なる可能性がありますので、正確な情報を知りたい場合には地元の専門家などに相談するとよいでしょう。

破産処理方法が管財事件とされた場合には、破産申立人の財産を金銭に換え、最終的にそのお金を債権者に分配する手続きが行われることになります。

このため、破産申立人が所有する一定以上の財産に関しては没収や差押えの対象となり、処分されます。

管財事件では各手続きが厳格に行われるため、手続きが終了するまでには時間がかかり、裁判所や専門家に依頼する場合の費用も高額となります。

8.自己破産の費用とは

自己破産は、地方裁判所で行われる手続きです。

自己破産は、無料で行うことのできるものではありません。破産するためには、裁判所が定める一定の費用を支払う必要があるのです。

また、自己破産を債務整理の専門家に依頼した場合には、その専門家へ支払う費用も発生します。

裁判所に要する費用

自己破産するためには、裁判所に費用を支払う必要があります。

この費用は、もっとも手続きが簡単に処理される同時廃止事件の場合、大まかに言って1万数千円かかると考えてよいでしょう。

しかし、より複雑な処理方法となる管財事件の場合には、費用は高額となり20万円以上かかることがあります。

ある程度以上の財産を持っている方が自己破産する場合には、予め費用を用意するようにしてください。

同時廃止事件の場合の費用|約2万円

自己破産の処理方法が同時廃止事件となる場合、手続きを行う地方裁判所によって若干の差異はありますが、費用は大体2万円程度かかることになります。

異時廃止事件の場合の費用|最低でも20万円前後

自己破産が同時廃止事件として処理される場合、裁判所にかかる費用は最低でも20万円前後になることが一般的です。

同時廃止事件の場合と比較すると相当高額となります。

場合によっては20万円以上となる可能性もありますので、事前に十分確認しておくことが大切です。

詳しくは債務整理の専門家に相談されることをおすすめします。

9.専門家に依頼する時に知っておくべき2つの知識

繰り返しになりますが、自己破産は地方裁判所で行われる手続きです。

自己破産は専門家に依頼せず、自分だけで手続きすることも不可能なことではありません。

しかし、高度に専門的な手続きであるため、なるべくであれば債務整理の専門家に依頼して手続きすることが好ましいといえます。

専門家に依頼した場合のメリット

専門家に依頼すれば手続きをスムーズに行うことができ、かなり高い確率で自己破産を成功させることができるようになります。

自己破産は最終的な段階において、裁判所から「免責(めんせき)」を貰えなければ失敗したも同然となってしまいます。

免責を貰うことによって、それまで背負っていた借金が免除されることになるからです。

裁判所から免責を貰い、借金の免除を受ける可能性を高めるためには、自己破産は専門家に依頼することがベストな方法なのです。

(1)自己破産を依頼できる専門家とは|弁護士と司法書士

自己破産を依頼することのできる専門家には、弁護士と司法書士がいます。

どちらに依頼しても自己破産手続きを行うことができますが、場合によっては弁護士に依頼したほうが有利となるケースも存在します。

(2)専門家に要する費用とは

自己破産を債務整理に依頼する場合、専門家によってつぎのような費用がかかります。

①弁護士に依頼する場合
同時廃止事件30万円~40万円
管財事件40万円~70万円
②司法書士に依頼する場合
同時廃止事件20万円~30万円
管財事件30万円~50万円

ただし、上記はあくまでも一般的な相場ですので、実際にかかる費用に関しては依頼する専門家に問い合わせる必要があります。

なお、専門家にかかる費用は一括で支払うことが原則ですが、事務所によっては分割払いを受け入れてくれるところもありますので事前に問い合わせるとよいでしょう。

10.ほかの債務整理方法との比較

それでは最後に、自己破産とその他の債務整理方法との違いについて比較してご紹介しましょう。
債務整理には自己破産以外に、つぎのような3つの方法が存在します。

  • (1)任意整理
  • (2)特定調停
  • (3)個人再生

順を追って解説いたします。

(1)任意整理

任意整理とは、裁判所などを利用せず借金の返済に関して債権者(金融業者など)と直接交渉する債務整理方法です。

債権者との交渉には高度な法律的知識やノウハウなどが必要なため、通常のケースでは債務整理の専門家に依頼して行うことになります。

任意整理では借金元本の減額や将来利息のカット、毎月の支払額を少なくするなど各種の交渉が行われます。

しかし、任意整理の場合には相手業者には交渉に応じる法律的な義務が存在しないため、なかなか有利な条件で合意が成立することが難しいのが現実です。

相手業者が交渉に応じない場合には、個人再生や自己破産など強力な債務整理方法を検討する必要があります。

(2)特定調停

特定調停は、簡易裁判所を利用して行う借金問題の解決方法です。

任意整理を行うには債務整理の専門家に依頼して債権者との交渉を依頼する必要がありますが、特定調停では裁判所の調停委員などが行ってくれるため費用が安く済むというメリットがあります。

しかし、その反面として過払い金が発生していても、その返還を請求してもらうことができないなど一定のデメリットが存在します。

このため、特定調停は実務ではあまり行われていないのが現状です。

(3)個人再生

自己破産ほどメジャーな方法ではありませんが、個人再生は非常に強力な借金問題の解決方法です。

自己破産のように借金全額の免除は認められませんが、最大で80%~90%もの借金がカットされ、残額については基本的に3年間の分割払いで支払えば借金を完全に支払い終えることができます。

たとえば500万円の借金を抱えている人が個人再生した場合、400万円の借金がカットされ、残額の100万円を3年間で支払えばよいことになります。

この場合、毎月3万円弱を支払うだけで済むことになりますので、借金の返済が非常に楽になるのが一般的です。しかも、借金の残額には将来利息も付きません。

自己破産した場合、マイホームなど高額な財産は手放すことになりますが、個人再生ではマイホームを残しつつ借金問題の解決を図ることが可能です。

11.まとめ

今回は「自己破産」がどのような手続きなのかをテーマに解説させていただきました。

自己破産すれば、借金をゼロにして人生をリセットすることができます。
しかし、その反面として各種のデメリットも受けることになります。
自己破産を検討する際には、メリットだけに目を向けるのではなく、どのような場合にどんなデメリットを受けるのかに関しても十分に理解しておくことが重要です。

当事務所では、日本全国どちらからのご依頼・ご相談でも承っております。
多額の借金問題でお悩みの場合には、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。
借金問題の相談は、けっして恥ずかしいものではありません。
問題を抱えているのであれば一刻も早く相談し、解決に向けて行動すべきです。
ご相談いただければ、かならずベストな解決方法をアドバイスさせていただきます。

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