自己破産が裁判所によって認められた場合、基本的に借金はすべて免除されることになります(※)。
しかし、そのためには裁判所で破産に関する手続きを行わなければいけません。
そのため、自己破産する場合には、裁判所に一定の費用がかかることになります。
自己破産は自分だけでも行うことはできますが、弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼したほうが確実です。
自己破産は、うまく手続きを行わないと借金の免除を受けられない可能性もあるからです。
自己破産を法律の専門家に依頼した場合、専門家に報酬を支払う必要があります。
このように、自己破産する場合には各種の費用がかかることになります。
今回は、自己破産する場合にかかる費用をテーマに解説させていただきます。
本記事をお読みいただけば、自己破産にかかる各種の費用の相場だけでなく、費用を用意できない場合の対処法までお分かりいただけますので、ぜひ最後までお読みください。
※非免責債権は免除の対象外となります。
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1.自己破産の2つの処理方法|「同時廃止事件」と「管財事件」
自己破産の費用に関してご説明させていただく前に、自己破産の種類についてご紹介したいと思います。
種類の違いによって、自己破産に要する費用がかなり変わってくるからです。
世間では、ひとくちに「自己破産する」と言ったりしますが、実は自己破産には大きく分けて2つの処理方法があります。
それが、「同時廃止(事件)」と「管財事件」です。
(1)同時廃止事件
「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」とは、破産申立人にこれといった財産がない場合に採用される自己破産の処理方法です。
自己破産手続きが同時廃止事件として処理されるための大まかな基準としては、自己破産する人が20万円以上の財産を持っているかどうかが判断基準となります。
20万円以上の財産を持っていない場合、同時廃止事件で処理される可能性が高くなります。
自己破産の処理方法が同時廃止事件となる場合、手続きが簡略化される分、裁判所にかかる費用も法律の専門家に要する費用も安くなるのが一般的です。
ただし、20万円以上の財産を持っていない場合でも、破産申立人に免責不許可事由に該当する行為がある場合には管財事件とされることがあるので注意が必要です。
なお、自己破産の処理方法を同時廃止にするか管財事件にするかの判断基準に関しては、手続きを行うことになる地方裁判所によって大きく異なる可能性があります。
(2)管財事件
「管財事件(かんざいじけん)」とは、破産申立人の持つ一定以上の財産を処分・換金し債権者に分配するなど厳格に手続きが行われる処理方法です。
本来、自己破産は管財事件で処理されるのが原則です。
破産申立人に一定以上の財産がある場合、または免責不許可事由に該当する行為があるなどの場合には、破産処理は管財事件とされることがあります。
大雑把に言うと、20万円以上の財産を持っている場合には、破産処理は管財事件になると考えておくとよいでしょう。
自己破産が管財事件として処理される場合、弁護士の中から破産管財人が選任され一定の職務を行うことになります。
この場合、自己破産の手続きが厳格に行われることになるため、裁判所にかかる費用や法律の専門家に支払う費用は同時廃止事件の場合よりも高額となります。
破産処理が管財事件となった場合には、破産申立人の持っている一定以上の財産は処分されたり、各種自由の制限を受けることになります。
また、資格制限が発生するため、職業によっては仕事を失う恐れもあるので注意が必要です。
「少額管財」について
自己破産が管財事件となる場合には、裁判所に要する費用が比較的に少なくて済む「少額管財(しょうがくかんざい)」という方法で処理されることがあります。
法人などが破産する場合には通常の管財事件となり、裁判所に要する費用は少なくとも50万円、多ければ100万円以上となることもあります。
これに対して個人が自己破産する場合には、裁判所にかかる費用が、より少額で済む手続きとして「少額管財」という方法が用意されています。
なお、少額管財でない管財事件を「通常管財」と呼ぶことがあります。
通常管財の場合と同様に少額管財でも破産管財人が選任され、破産申立人が持っている一定以上の高額な財産などを処分し債権者に分配などすることになります。
2.自己破産の費用
自己破産する際には、大きく分けてつぎの2種類の費用がかかることになります。
- (1) 裁判所にかかる費用
- (2) 法律の専門家にかかる費用
それぞれについて、順次見てみることにしましょう。
3.(1)裁判所にかかる費用
自己破産は、地方裁判所で行う手続きです。
自己破産の手続きをするためには、裁判所所定の費用を収める必要があります。
裁判所にかかる費用の具体的な内訳は、つぎのとおりになります。
① 申立手数料(収入印紙代)
破産申立手数料として1000円、免責申立手数料として500円の合計1500円分の収入印紙代が必要になります。
金額は、全国どこの地方裁判所でも同じです。
収入印紙は、代表的なコンビニエンスストアでも購入可能です。
② 郵便切手代
裁判所が破産申立人や破産債権者などに書類を送付するため、数千円程度の郵便切手を納付する必要があります。
この具体的な内訳は、手続きを行う地方裁判所によって異なりますので、事前の確認が必要となります。
郵便切手代は、債権者の数が多いほど額が多くなり、同時廃止よりも管財事件のほうが高額となる傾向があります。
③ 予納金
自己破産を裁判所に申し立てるときに、破産申立書と一緒に提出する裁判費用のことです。
原則として、現金を一括で納付する必要があります。
クレジットカードなどは利用できませんので、ご注意ください。
予納金の額は、破産手続きが同時廃止になるのか管財事件になるのかによって、大きく異なります。
同時廃止事件の場合
自己破産の処理方法が同時廃止事件とされた場合、裁判所にかかる費用は、申立手数料・郵便切手代・予納金すべてを合計して約15,000円~20,000円程度が一般的な相場となります。
なお、同時廃止の場合には破産管財人が選任されることがないため、裁判所への予納金は官報公告費用として10,584円のみを負担すればよいことになっています。
管財事件の場合
自己破産の処理方法が管財事件となる場合、裁判所にかかる費用については、通常の管財事件と少額管財の場合に分けて考える必要があります。
しかし、通常管財・少額管財どちらの場合でも破産管財人が選任されるため、予納金は高額となります。
①通常管財の場合
管財事件の場合、破産管財人が選任されることになります。
破産申立人は、破産管財人への報酬などを予納金として、事前に裁判所に一括して納めなければなりません。
予納金の納付に関しては基本的に分割が認められないので、あらかじめ予納金全額を用意しておく必要があります。
ただし、一部の裁判所では分割納付を受け付けていることがありますので、手続きを予定している裁判所または地元の法律の専門家に相談してみるとよいでしょう。
自己破産が通常管財事件となった場合、裁判所にかかる費用は各種費用を合計すると最低でも50万円以上となります。
ただし、通常管財となるのは、あくまでも法人などが破産する場合が原則です。
個人の自己破産が管財事件となる場合には、つぎの少額管財で処理されるのが一般的です。
通常管財の場合の予納金の額
通常管財の場合、つぎのような高額な予納金が必要となります。
負債額 | 予納金の額 |
---|---|
5000万円未満 | 50万円 |
5000万円以上1億円未満 | 80万円 |
1億円以上5億円未満 | 150万円 |
通常管財の場合、破産に利害関係を持つ債権者などが多数に上ることが多いため、このように高額な予納金が定められています。
②少額管財の場合
現在では、全国ほとんどの地方裁判所で少額管財が採用されています。
ただし、少額管財による処理が認められるためには、破産申立人に弁護士が付いていることを条件としている裁判所もありますので注意が必要です。
自己破産が少額管財として処理される場合、裁判所にかかる費用の総額は20万円前後となることが一般的です。
多めに見積もっても25万円前後を考えておけば、たいていの場合足りるでしょう。
4.(2)法律の専門家にかかる費用
自己破産の手続きは、専門家に依頼せず自分だけで行うことも可能です。
しかし、弁護士など法律の専門家に依頼した場合、手続き上各種のメリットを受けることができます。
このため、自己破産する場合にはできるだけ弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
自己破産手続きを依頼することのできる法律の専門家には、弁護士と司法書士がいます。
弁護士は破産申立人の代理人として行動できるのに対して、司法書士は基本的に破産申立書など手続きに必要な書類の作成や裁判所への提出の代行をするという点で大きな違いがあります。
法律の専門家に自己破産を依頼した場合、上記のような裁判所にかかる費用のほかに、専門家への報酬を支払う必要があります。
専門家への報酬額については、自己破産する債務の内容や破産処理の方法などの違いによって、つぎのように費用が変化します。
なお、法テラスの民事法律扶助制度を利用した場合、法律専門家への費用の援助を受けることができます(後述)。
①弁護士に依頼する場合の費用
自己破産を弁護士に依頼する場合、一般的にはつぎのような費用が発生します。
これらの費用は、もちろん自己破産による免除の対象にはならないため、自分でお金を用意する必要があります。
次項では弁護士にかかる費用について基本的なパターンをご紹介しますが、実際に要する費用に関しては、それぞれの弁護士によって異なる可能性があります。
具体的な費用に関しては、手続きを依頼しようと思っている事務所に確認してください。
相談料
弁護士に自己破産を依頼する場合、通常は相談をすることから始まります。
まずは相談をし、信頼できる専門家であると判断した場合には、正式に自己破産手続きを依頼することになります。
弁護士に相談した場合、基本的には相談料の支払いが必要となります。
相談料は、1時間5,000円から1万円程度が相場です。
ただし、弁護士事務所によっては、無料で相談を受け付けてくれることもあります。
当事務所も、相談は何度でも無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。
着手金
弁護士に自己破産を依頼した場合、着手金が発生することになるのが一般的です。
自己破産手続きは、最終的に裁判所によって債務の免除(「免責」)を受けることによって成功しますが、着手金は手続きの成功の有無にかかわらず支払う必要があります。
成功報酬をもらわないとする事務所の場合、着手金として30万円から50万円程度が自己破産を依頼する時の報酬の相場です。
ただし、破産の規模が大きい場合や通常管財の場合には、より高額となることがありますので注意が必要です。
成功報酬
弁護士に依頼した仕事が成功のうちに終了した場合、弁護士に対して成功報酬を支払うことになるのが一般的です。
しかし、自己破産に関しては着手金のみで成功報酬をもらわないとする事務所が多いようです。
②司法書士に依頼する場合の費用
自己破産を司法書士に依頼した場合、破産処理が同時廃止となることが見込まれる案件では20万円前後から30万円前後が報酬の相場です。
管財事件となる場合には、30万円以上かかることになりますので、具体的な金額に関しては各事務所に問い合わせるとよいでしょう。
このように弁護士と比較した場合、報酬的には司法書士のほうが安く抑えることができます。
しかし、ケースによっては弁護士に依頼したほうがメリットの多い場合もあります。
弁護士の方が有利なこともある
自己破産を弁護士に依頼する場合、司法書士と比べて最低でも10万円から20万円程度は費用が多くかかることになります。
しかし、弁護士は破産申立人の代理人としての活動が認められるため破産の手続き上、各種のメリットを受けられるという利点があります。
弁護士に依頼すると少額管財の利用ができる
すでにご紹介させていただいたように、ある程度以上財産のある人や免責不許可事由に該当する行為のある人が自己破産する場合、破産は管財事件として処理されることになります。
管財事件では、破産管財人が選任され厳格で複雑な手続きをする必要があるため、裁判所への予納金が50万円以上かかることも珍しくありません。
しかし、その処理方法が少額管財となる場合、予納金は20万円前後で済むことになります。
このように、少額管財は破産申立人にとってメリットの大きいものではありますが、どんな場合でも少額管財事件となるわけではありません。
東京地裁など多くの地方裁判所では、弁護士が代理人となっていることを条件として少額管財での処理が認められることになっています。
このため、破産処理が同時廃止事件としてではなく、管財事件となる場合には自己破産を依頼する専門家は司法処理よりも弁護士のほうが適していることになります。
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5.自己破産の費用を用意できない場合の対処法
これまでご覧いただいたように、自己破産する場合にはある程度の費用を負担する必要があります。
これらの費用は、すべて破産を申立てる本人が負担しなければなりません。
しかし、場合によっては、これら費用を用意することができないケースもあるでしょう。
そのような場合には、つぎのような方法を検討してみてください。
- (1) 自力で自己破産手続きをする
- (2) 専門家に分割払いをお願いする
- (3) 法テラスを利用する
順を追って見ていきましょう。
(1)自力で自己破産手続きをする
繰り返しになりますが、自己破産手続きは専門家へ依頼せず自分だけで行うことも可能です。
ただし、自己破産は裁判所で行われる厳格な手続きであるため、法律知識のあまりない人からするとハードルの高い手続きといえます。
自己破産の手続きを自分だけで行う場合、つぎのようなメリット・デメリットが考えられます。
自力で自己破産手続きをするメリット
法律の専門家に依頼せず、自分の力だけで自己破産をする場合の最大のメリットは費用を最小限に抑えることができる点です。
自己破産が同時廃止とされる場合には、わずか1万数千円程度の負担で手続きを行うことができる可能性があります。
自力で自己破産手続きをするデメリット
自己破産の手続きを自分で行う場合、主につぎのようなデメリットを受けることが考えられます。
- ① 法律上、正確な借金額を知ることが難しい
- ② 破産申立書や添付書類などを自分で作成・収集する必要がある
- ③ 管財事件となる場合、予納金が高額となる
- ④ 債権者や裁判所とのやり取りを自分でこなさなければならない
- ⑤ 免責を受けられない可能性が高くなる
順を追って、詳しく解説させていただきます。
①法律上、正確な借金額を知ることが難しい
消費者金融などからの借り入れが、いわゆるグレーゾーン金利時代から続いているような場合、現在業者が主張している残債務額は法律上正しい借金額ではないかもしれません。
法律上正確な債務額を把握するためには、「引き直し計算」という特別な計算をする必要があります。
しかしこの計算をするためには、まず業者から「取引履歴」という、これまで繰り返してきた「借り入れ」と「返済」すべてのデータを記録した書類が必要となります。
取引履歴は業者に請求し郵送などしてもらう必要があるので、個人で行うには少しハードルの高い作業となります。
自己破産せずに済むケースもある
いわゆる「グレーゾーン金利」(2010年まで認められていた違法金利)での借入期間が7,8年以上の長期間に及んでいる場合には借金がすべて返済終了していて、さらに過払い金が発生している可能性もあります。
仮に現時点ではすでに返済が完了している場合でも、返済終了後10年以内であれば、まだまだ過払い金の返還請求は可能です。
つまり、2010年までに消費者金融などからの借り入れの返済が完了している場合、過払い金が発生している可能性は非常に高いと考えられます。
自己破産手続きを専門家に依頼した場合には、法律上正確な残債務額(借金額)を把握できるだけなく、もし過払い金が発生している可能性がある場合には、その調査や返還請求をしてもらえるという点も大きなメリットといえるでしょう。
自己破産の相談に来られた方の債務額を調査した結果、過払い金が発生していることが判明。
その結果、自己破産しないで済み、さらに過払い金が戻ってきたという事例もたくさん存在するのです。
②破産申立書や添付書類などを自分で作成・収集する必要がある
自己破産の申立てをするためには、破産申立書の作成はもちろん、その添付書類として意外と大量の書類の取り寄せ・作成が必要となってきます。
自分だけで自己破産の手続きを行う場合、これらの作業はすべて自分自身で行わなければいけません。
作成すべき書類の内容も専門的なものであるため、ある程度以上法律的な知識を持っている人でないと作成するのは非常に困難となります。
万一、内容に不備があった場合などには自己破産の手続きを裁判所に受け付けてもらえない、免責が得られないなど不都合な結果を招く可能性があります。
③管財事件となる場合、予納金が高額となる
借金内容が複雑でなく、めぼしい財産も持っていない場合、自己破産の処理方法は同時廃止となる可能性が高いと考えられます。
この場合には、自分だけで手続きを行うことも不可能ではないかもしれません。
しかし、破産の処理方法が管財事件となる場合、手続きは非常に複雑化され裁判所への予納金も高額となります。
弁護士に依頼した場合には少額管財として予納金が20万円前後で済むことになる場合でも、自分だけで手続きを行うとなると50万円以上と高額となることが予想されます。
④債権者や裁判所とのやり取りを自分でこなさなければならない
自己破産を専門家居に依頼しない場合には、債権者や裁判所とのやり取りも、すべて自分一人で行わなければなりません。
自己破産を申立てる前後には、債権者と直接交渉をする必要がありますし、破産申立後には裁判所で各種の手続きを自分だけで行う必要が出てきます。
特に債権者の中に自己破産の申立てを快く思わない業者がいる場合、債権者との交渉を自分だけで行うのは非常に精神的な負担となることが予想されます。
これに対して専門家に依頼した場合には、債権者や裁判所とのやり取りなども専門家が行ってくれますので、精神的にも安心して手続きを進めることが可能になります。
⑤免責を受けられない可能性が高くなる
司法統計によれば、申し立てのあった自己破産事件に関しては、そのほとんどに対して免責許可決定が出ています。
しかし、裁判所とのやり取りを間違ったりした場合には、免責を得られなくなる可能性があります。
弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼した場合、法的知識やノウハウに基づき必要に応じて適切なアドバイスなどしてくれるため、ほぼ確実に免責を得ることができるはずです。
仮に万が一、免責をもらうことが難しいような特別な事情があるのであれば、自己破産以外での借金問題解決方法である「個人再生」などへの手続きの変更を検討してもらうこともできるでしょう。
できれば専門家に依頼すべき
上記のように、自分で自己破産手続きをする場合にはメリット・デメリットがありますが、ご覧いただいたようにデメリットのほうが多いのがお分かりいただけるでしょう。
自己破産手続きは最終的に裁判所によって免責をもらうことができれば、どれだけ多額の借金があったとしても、その返済を免除してもらうことができます(「非免責債権」を除く)。
いわば、借金は「帳消し」。
免除される借金の総額から比べれば、専門家に支払う報酬などの費用はたかが知れているともいえるのではないでしょうか。
専門家への費用を節約しようと自分で破産手続きをした結果、免責が得られなかったとなっては元も子もありません。
破産手続きで確実に免責をもらい、借金の免除を受けるためには専門家への依頼をおすすめします。
実際たまに見かける事例ですが、最初は自分で自己破産手続きをしたものの、手続きがあまりに複雑なため、結局私のところに手続きの依頼をしてこられる方もいらっしゃいます。
裁判所によっては、専門家に依頼するようにと、事実上の勧告を受けるケースもあるようです。
(2)専門家に分割払いをお願いする
弁護士や司法書士への報酬は、一括での支払いが原則です。
しかし、報酬の支払いに関しては各専門家の事務所ごとに扱いは千差万別。
絶対に一括でなければ依頼を受けてくれない事務所もあれば、分割での支払いを認めてくれる事務所もたくさんあります。
現在では、いつでも無料で相談に応じてくれる事務所も多くなってきていますので、まずは無料相談を受けてみてはいかがでしょうか。
その中で報酬の支払いに関しても相談し、分割を受けてくれる事務所に自己破産を依頼するというのも賢い方法だと思います。
(3)法テラスを利用する
みなさんは、「法テラス」という機関をご存じでしょうか?
法テラスとは、国民の各種の法律問題の解決をサポートするために全国に設置されている国の機関です。正式名称は「日本司法支援センター」といいます。
法テラスは北海道から沖縄まで、日本全国に100か所以上設置されています。
法テラスには、「民事法律扶助制度」というものがあり、自己破産する際に必要となるお金を援助してもらうことができます。
利用するためには一定の条件がありますが、この制度を利用すれば専門家への費用なども低額に抑えることが可能となるなど、各種のメリットを受けることができます。
最寄りの法テラスは、下記のサイトから検索可能です。
「民事法律扶助制度」とは?
法テラスで利用することのできる民事法律扶助とは、自己破産や裁判など法的な手続きを行おうとする場合に弁護士や司法書士への費用の援助を受けることのできる制度です。
自己破産する場合には、専門家への費用などを立て替え払いしてもらうことができます。
立て替え払いしてもらった費用に関しては、あとから分割で返済することが原則ですが、一定の条件を満たした場合には返還不要とされることもあります。
専門家への費用が一定
法テラスの民事法律扶助制度を利用して弁護士や司法書士などに自己破産の手続きを依頼する場合、専門家への費用は専門家ごとに一律に定められています。
そのため、法テラスを通さず自分で直接専門家に依頼する場合と比べると、費用の節約ができます。
民事法律扶助制度を利用するための3つの条件とは?
法テラスで民事法律扶助制度を利用するためには、つぎのような3つの条件をすべて満たしていることが必要です。
- ① 収入等が一定額以下であること
- ② 勝訴の見込みがないとは言えないこと
- ③ 民事法律扶助の趣旨に適すること
各条件について、順にご紹介しましょう。
①収入等が一定額以下であること
民事法律扶助制度を利用するためには、収入等が一定額以下であることが条件となります。
収入が少ない方を救済するのが、法律扶助制度の趣旨だからです。
具体的には、毎月の収入額と所有している財産の総額の2つの基準が定められています。
自己破産を検討されている方は、ほとんどの場合に条件を満たしていると思われますが、一応確認しておいてください。
収入要件
民事法律扶助制度の利用が認められるための具体的な収入額は、以下のようになっています。
※申込者の居住地が、生活保護一級地に該当するかどうかは、生活保護の基準に定める一級地をご覧になってください。
家族構成 | 一般的収入基準 | 生活保護一級地の場合 |
---|---|---|
単身者 | 182,000円 | 200,000円 |
2人家族 | 251,000円 | 276,100円 |
3人家族 | 272,000円 | 299,200円 |
4人家族 | 299,000円 | 328,900円 |
以下、家族1人増加するごと 299,000円に30,000円ずつ加算。生活保護一級地の場合は328,900円に33,000円ずつ加算。
上記の金額は、利用希望者の手取り月収をベースとして計算されることになります。
つまり、毎月の手取り収入が上記に記載する金額以下の場合には、収入要件を満たしていることになります。
なお、毎月教育費や医療費などの支出がある場合には、相当額が控除されます。
また、住宅ローンや家賃の支出があるケースでは、つぎの表の金額を上限として上記収入基準に加算することが認められています。
家族構成 | 一般的収入基準 | 生活保護一級地の場合 |
---|---|---|
単身者 | 41,000円 | 53,000円 |
2人家族 | 53,000円 | 68,000円 |
3人家族 | 66,000円 | 85,000円 |
4人家族 | 71,000円 | 92,000円 |
資産要件
民事法律扶助制度を利用するためには、上記の毎月の収入条件を満たしているうえに、以下の財産に関する条件をも満たしている必要があります。
具体的には、現金や預貯金はもちろん、有価証券や不動産(自宅は除外)などの財産の総額で判断することになります。
世帯構成 | 財産の総額 |
---|---|
単身者 | 180万円以下 |
2人家族 | 250万円以下 |
3人家族 | 270万円以下 |
4人家族 | 300万円以下 |
教育費や医療費として支出があった場合、相当額が控除されます(3か月以内)。
②勝訴(免責)の見込みがないとは言えないこと
自己破産で法律扶助を利用する場合には、免責を得られる見込みがあれば制度の利用が可能です。
司法統計によると実際に申立ての行われた自己破産では、ほぼすべてのケースで免責を得られています。
このため、ほとんどの場合、この条件を満たしていると判断されると思われます。
③民事法律扶助の趣旨に適すること
民事法律扶助は、法律上の問題に悩んでいる人の解決を支援するための制度です。
そのため制度を利用するための目的が、単に相手に対する報復的感情を満たすため又は宣伝のためなどの場合、または権利濫用的な訴訟の場合などでは援助を受けることができないと定められています。
借金の免除を求めて自己破産しようとする場合、この条件は満たしていると考えてよいでしょう。
法律相談も無料
民事法律扶助では、専門家に相談する場合の料金も無料とされます。
ただし、1つの問題に関しては3回までという制限があります。
なお、無料法律相談を受けるためには、利用希望者の持っている現金と預貯金の総額が上記「資産要件」を満たしていれば利用可能です。
また、医療費や教育費を向こう3か月以内に出費する予定がある場合には、その額を控除して計算することが認められます。
予納金は援助の対象外!
ご覧いただいたように法テラスの民事法律扶助は、利用者にとっては非常にありがたい制度です。
しかし、援助の対象となるのは基本的に法律の専門家にかかる費用のみとなるので注意が必要です。
つまり、裁判所に納付することになる予納金に関しては援助の対象外とされています。
このため、予納金に関しては自分の力で用意する必要があります。
ただし、つぎの場合は例外的に予納金も援助してもらうことが可能です。
生活保護受給者は予納金も援助される
上記のように、民事法律扶助による援助の対象は、法律の専門家に要する費用に限定されるのが原則です。
しかし、制度の利用希望者が生活保護の受給者である場合に限って、裁判所への予納金も援助してもらうことができることになっています。
ただし、その額は20万円が上限です。
立替えてもらったお金の返済について
法テラスで立替えてもらった専門家への費用などに関しては、原則として契約の2か月後から返済を開始する必要があります。
通常、毎月5千円から1万円程度が指定の銀行口座から引き落とされることになります。
なお、立替金は無利息です。
立替金の返済が免除されることも
民事法律扶助制度によって立替えてもらった専門家への費用は、上記のように原則として全額を返済する必要があります。
しかし、手続き終了後において、つぎのような状況にある場合には立替金の一部または全額について返済が免除されることがあります。
- 生活保護を受給している場合
- 上記と同程度の経済状態にあり、将来も資力を回復する見込みが少ないと認められる場合
上記に該当する場合には、ぜひ積極的に制度を利用し、借金問題の解決を図っていただければと思います。
まずは、お近くの法テラスに電話で問い合わせてみることから始めるとよいでしょう。
6.まとめ
今回は、自己破産する際にかかる各種の費用にスポットを当てて解説させていただきました。
自己破産する場合には、大きく分けて裁判所と法律の専門家に対して費用がかかることになります。
裁判所にかかる費用は、基本的に一括で支払う必要がありますが、法律の専門家への支払いは場合によっては分割を受け付けてくれる事務所もあります。
また、一定の条件を満たしていることが必要とはなりますが、法テラスを利用することで費用を立て替えてもらうことができます。
今回ご紹介させていただいた知識を有効に活用し、前向きに自己破産手続きを進めていただければ幸いです。
自己破産の手続きは自分だけで行うことも可能ですが、弁護士に依頼した場合には自分で手続きする場合よりも、はるかに有利に手続きを進めることが可能になります。
現在、返済しきれないほどの借金を抱え自己破産しようか悩まれているのであれば、まずは当事務所へお気軽にご相談ください。
当事務所では、全国どこからでも24時間相談可能です。しかも、相談は何度でも無料で承っております。
借金問題は、悩んでばかりいても解決することはありません。
まずは、相談から始めてみてはいかがでしょうか。
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