「自己破産すると生活にどのような制限がかかるだろうか?」
「破産した場合、家族にも悪影響が及ぶのでは?」
返済できないほど多くの借金を抱えてしまった場合、自己破産を検討せざるを得なくなることがあります。
しかし、その場合に最も気になるのが、自己破産した場合に発生するデメリットではないでしょうか?
自己破産が認められれば、基本的に借金のすべてを帳消しにしてもらうことができます。
しかし、その反面として各種のデメリットを受けることになるのも事実。
では現実問題として、いったいどのような制限や悪影響を受けることになるのでしょうか?
今回は、自己破産することでその後の生活にどのような影響が出るのか、また家族や保証人などへの影響について解説いたします。
冒頭のような各種の疑問について、債務整理のプロがわかりやすく解説いたしますので、ぜひ最後までお読みください。
なお当記事は重要ポイントを赤ペンで強調してありますので、お急ぎの方は強調部分だけに目を通していただければ、わずか1~2分で一通り理解可能です。
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誰でも破産できるわけじゃない|自己破産するための条件とは?
自己破産後の生活への影響を解説する前に、自己破産するための条件について確認しておくことにしましょう。
法律では自己破産することが認められるための条件が規定されているため、誰でも自己破産することができるわけではないからです。
自己破産することが認められるためには、以下のように2つの条件を満たしていることが必要です。
- (1)借金の返済に関して支払い不能状態であること
- (2)免責不許可事由に該当する行為がないこと
それぞれについて確認しておきましょう。
(1)借金の返済に関して支払不能状態であること
自己破産が認められるためには、借金の返済についてすでに支払不能状態にあることが必要です。
「支払不能状態」とは、債務者として所有している財産や収入などを返済に充当しても借金の完済が到底不能であると判断される状態のことを言います。
自己破産が認められるためには、借金の額の大小が問題となるのではなく、あくまでも債務者として借金の返済が可能であるかどうかが個別に判断されるのです。
(2)免責不許可事由に該当する行為がないこと
破産法では、債務者に一定の問題行為などがある場合には免責が認められないことを定めています。
この「一定の問題行為」などのことを「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」といいます。
つまり、債務者の行動の中に免責不許可事由に該当する行為がある場合には、自己破産することができない可能性があるということになります。
それでは、免責不許可事由に該当する行為とは、どのようなものなのでしょうか?
具体的には、主として以下のような行為が免責不許可事由に該当することになります。
①財産を隠す行為
自己破産する場合には債務者が所有している一定以上高額な財産に関しては、破産手続きによって処分・換金され、債権者への配当に回されることになります。
破産手続きによって財産が処分されてしまうことを避けるために、自分の財産を隠したり壊したりするような行為があった場合には免責不許可事由に該当することになります。
②クレジットカードで購入した商品を換金する行為
クレジットカードのショッピング枠を現金化するような行為は、免責不許可事由に該当します。
「ショッピング枠の現金化」とは、クレジットカードを利用して商品を購入し、すぐにそれを売却して現金化するような行為のことをいいます。
③一部の債権者への返済行為
自己破産をする場合には、すべての債権者は平等に扱わなければいけません。
つまり、ほかの債権者に弁済しないのに一部の債権者に対してだけ借金の返済をする行為は禁止されるのです。
よくある事例で説明すると、消費者金融やクレジットカード会社に返済しないにもかかわらず、友人からの借金だけを返済するような行為が該当します。
債務者においてこのような行為があった場合には免責不許可事由に該当するため、破産手続きにおいて免責が許可されなくなる可能性が出てくるのです。
④ギャンブルや浪費によって借金を作る行為
パチンコやスロットなどのギャンブル、ブランド物の購入やFXなどの投機行為は、すべて免責不許可事由に該当します。
上記4つの行為は、免責不許可事由に該当する行為として実務で問題となることの多い典型的な事例です。
しかし法律では、これら以外の行為も免責不許可事由として定めていますので注意が必要です。
免責不許可事由があっても自己破産できることも
すでにご紹介したように、免責不許可事由に該当する行為がある場合には破産が認められなくなる可能性があります。
しかし、免責不許可事由に該当する行為があるからといって、ぜったいに免責が認められなくなるわけではありません。
つぎで述べるように、破産法は裁判所に対して独自の裁量によって免責を決定する権限を与えているからです。
つまり、債務者について免責不許可事由に該当する行為があったとしても、裁判所が免責を与えてもいいと判断した場合には、免責をもらうことができるのです。
これを「裁量免責(さいりょうめんせき)」といいます。
裁量免責とは?|免責不許可事由があっても免責をもらえる!
上記のように破産法では免責不許可事由を定めており、これに該当する行為がある場合には破産が認められないことになっています。
しかし現実的に考えた場合、破産申立人の行為の中にまったく免責不許可事由に該当する行為が含まれないという事例は、ほぼ存在しないといってもよいでしょう。
実際には、多少なりとも該当する行為があるものです。
現実がこのような状況でながら、債務者において、ただ免責不許可事由に該当する行為があるという事実のみをもって自己破産が認められなくなってしまうとしたらどうなるでしょうか?
債務者の経済的更生を目的とする破産制度の存在意義が失われてしまうことにもなりかねません。
このため破産法は、裁判所に対して免責を許可するかどうかに関して裁量権を与えています。
つまり、破産申立人においてギャンブルや浪費など免責不許可事由に該当する行為があったとしても、裁判所が免責を許可すべきと判断した場合には免責を与えることができるのです。
事実、実際に申立てられている自己破産では、圧倒的大多数のケースで免責を得ることができています。
非免責債権には要注意!|破産しても支払い義務が残る借金もある
上で述べた「免責不許可事由」に似た問題として、非免責債権があります。
「非免責債権(ひめんせきさいけん)」とは、自己破産しても支払い義務が免除されることの無い種類の債権(債務・借金)のことを言います。
つまり、抱えている借金の中に非免責債権に該当するものが含まれている場合には、自己破産してもその債務に関しては支払い義務が残ることになります。
特に非免責債権に該当する債務の額が高額に上る場合には、自己破産してもあまり意味がないことになる可能性があるのです。
実務で問題となることの多い非免責債権の具体例は、主として以下のようになります。
- (1)税金・罰金(破産法253条1項1号、同7号)
- (2)不法行為に基づく損害賠償請求権(同2号・3号)
- (3)養育費や財産分与など夫婦間の請求権(同4号)
それぞれについて、順次ご紹介します。
(1)税金・罰金(破産法253条1項1号、同7号)
所得税や住民税・自動車税や固定資産税など、税金には多種多様なものがありますが、これらはすべて自己破産による支払い義務免除の対象外とされています。
また、罰金等の請求権も同様に自己破産しても支払い義務が免除されません。
(2)不法行為に基づく損害賠償請求権(同2号・3号)
悪意などで加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、自己破産しても支払い義務が残ります。
たとえば、人を殴ってけがをさせた場合における損害賠償請求権などが、これに該当します。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権のすべてが非免責債権に該当するわけではありません。
単なる過失による不法行為の場合には、損害賠償請求権も自己破産によって免責されるのです。
どのような損害賠償請求権が非免責債権となるのかについては複雑な問題がありますので、より詳しく知りたい場合には弁護士などに相談することをおすすめします。
(3)養育費や財産分与など夫婦間の請求権(同4号)
民法では夫婦間の婚姻費用分担義務や、離婚した場合の養育費の支払い義務などを定めていますが、これら夫婦間などにおける請求権も非免責債権とされています。
また、家族間の扶養義務なども同様に非免責債権とされているため、自己破産しても支払い義務は消滅しないことになっています。
自己破産のメリット・デメリット
自己破産には借金の免除など大きなメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットをも受けることになります。
場合によっては、取り返しのつかない悪影響を受ける可能性もありますので、手続きする前にはデメリットについて十分理解しておくことが必要です。
自己破産した場合、以下のように各種のメリット・デメリットを受けることになります。
自己破産のメリット
自己破産をする最大のメリットは、なんといっても基本的にすべての借金の返済義務が免除されることでしょう。
つまり、いくら多額の借金を抱えている人であったとしても、裁判所で自己破産することを認めてもらうことができれば借金を帳消しにしてもらうことができるのです。
ただし繰り返しになりますが、非免責債権に該当する債務の支払い義務は消滅しませんので、それに関しては自己破産後も返済する必要があります。
自己破産のデメリット
自己破産した場合、主として以下のようなデメリットを受けることになります。
- (1)一定以上高額な財産を処分される
- (2)ローンやクレジットカードを利用できなくなる
- (3)官報に名前が掲載される
- (4)失業する可能性がある
もし、これらのデメリットを受けたくない場合には、自己破産以外の債務整理方法を選択することで、一部のデメリットを避けることができる可能性もあります。
自己破産のデメリットが気になる場合には、債務整理のプロである弁護士に相談してみることをおすすめします。
上記各デメリットはどれも非常に重要なポイントとなるものですので、それぞれ確認していくことにしましょう。
(1)一定以上高額な財産を処分される
自己破産によって借金の免除を受けるためには、債務者として精いっぱいの返済を行うことが前提条件となります。
つまり債務者に一定以上高額な財産がある場合には、それらはすべて売却・換金し、そのお金を債権者への返済に充当する必要があるのです。
自己破産する場合には、基本的に20万円以上する財産は処分されることになると考えておいたほうがよいでしょう。
破産申立人名義の自宅を持っている場合には、自宅は当然処分の対象となります。
もし自宅を手放さずに借金問題を解決したい場合には、個人再生を検討する良いでしょう。
(2)ローンやクレジットカードを利用できなくなる
自己破産した場合、個人信用情報機関にいてブラックリストに入ることになります。
この場合の「ブラックリスト」とは、そういう名前の名簿があるわけではなく、信用情報機関における自己破産者のデータに「事故情報(異動情報)」が記録されることを言います。
つまり、自己破産した場合には、その人の信用情報に事故情報が記録されることになるのです。
その結果、ブラックリストから名前が削除されるまでの間は、新たにローンを組んだりクレジットカードを作ることができなくなってしまいます。
ただし、自己破産後5年から10年経過すればブラックリストから自動的に名前が削除されるため、その後はローンやクレジットカードを利用することができるようになります。
(3)官報に名前が掲載される
自己破産した場合、官報でその事実が世間に公表されることになります。
「官報(かんぽう)」とは、国が発行する広報紙のようなものです。
自己破産すると官報に「破産者」として、破産した人の住所や氏名など一定の事項が掲載されることになっているのです。
ただし、官報はごく限られた人しか閲覧するものではないので、官報から自分が破産したことが周囲にバレるということはまずありません。
なお一部のネット記事では、自己破産すると本籍地の市区町村役場に備えてある「破産者名簿」に名前が掲載されることになるなどと解説されていますが、実際にはそのようなことはありません。
破産手続きにおいて問題なく免責をもらうことができれば、現在では破産者名簿に名前が載ることはなくなっています。
(4)失業する可能性がある
自己破産の大きなデメリットの1つとして、資格制限を受けることが挙げられます。
「資格制限」とは、法律の定める一定の職業などに一定の期間就職することができなくなることを言います。
資格制限の及ぶ資格や職業に就いている場合において自己破産した場合には、最悪のケースとして失業する恐れまであるのです。
ただし、会社員や公務員など一般的な職業に就いては資格制限が及ぶことはありませんので過度な心配は不要です。
自己破産にかかる費用
自己破産は地方裁判所で行う手続きであるため、裁判所の定める一定の費用の納付が必要になります。
また、自己破産を弁護士などの専門家に依頼する場合には、その専門家に支払う費用も発生します。
多額の借金の返済に追われている方にとっては厳しい現実ですが、自己破産する以上はどうしてもこれらの費用を準備する必要があるのです。
それでは、これら各々の費用はいったい、いくらくらい必要になるのでしょうか?
こちらでは、以下の2つに分けて解説いたします。
- (1)裁判所にかかる費用
- (2)弁護士にかかる費用
(1)裁判所にかかる費用
裁判所にかかる費用は、破産の処理方法が「同時廃止事件(どうじはいしじけん)」となるのか「管財事件(かんざいじけん)」となるのかによって大きく異なります。
①同時廃止事件の場合|1万数千円
自己破産を申立てる人にめぼしい財産がない場合、破産の処理方法は同時廃止事件となることが一般的です。
同時廃止事件では、破産手続きが非常に簡略化されるために裁判所にかかる費用も1万数千円と少額で済むようになっています。
②管財事件の場合|20万円以上
自己破産申立人が20万円以上の高額な財産を所有していたり、免責不許可事由に該当する可能性があることが疑われるようなケースでは、破産処理は管財事件となります。
管財事件では、破産管財人などによって厳格に手続きが進められるため、裁判所にかかる費用は20万円以上と高額になります(少額管財の場合)。
(2)弁護士にかかる費用
自己破産を弁護士に依頼した場合、専門家への報酬として最低でも30万円以上の費用が発生すると考えたほうがよいでしょう。
破産手続きが管財事件となる複雑なケースでは、それ以上かかる可能性もあります。
弁護士費用は各専門家によって異なりますので、詳しくは依頼予定の専門家に問い合わせてください。
自己破産が家族や保証人などに与える影響
それではここで、自分が自己破産した場合に家族や保証人に与える影響について考えてみることにしましょう。
自己破産した場合、すでにご紹介したような各種のデメリットが発生することになりますが、これらはすべて破産者だけに及ぶ悪影響です。
このため、基本的には家族に対してデメリットが及ぶことはありません。
ただし、まったくないわけではなく、ある程度の悪影響が及ぶ可能性は残っています。
また、借金した際に保証人を立てている場合には、自己破産することで保証人に迷惑をかけることになります。
こちらでは、以下2つの事例に場合分けしてみてみることにします。
- (1)自己破産した場合の家族への影響
- (2)自己破産した場合の保証人への影響
(1)自己破産した場合の家族への影響
自己破産しても、基本的には家族に悪影響が及ぶことはありません。
自己破産すると一定の期間ローンやクレジットカードを利用することができなくはなりますが、それはあくまでも破産した本人に限定されます。
このため、破産者以外には影響が及ばず、その配偶者や家族はローンを組んだりクレジットカードの作成・利用についてまったく制限がかかることはあません。
ただし配偶者や家族名義の財産であっても、実質的に破産者のものと判断される場合には、その財産は破産手続きによって処分される可能性があるので注意が必要です。
(2)自己破産した場合の保証人への影響
自己破産によって免除を受ける借金の中に保証人を立てて借りたものがある場合、自己破産することで保証人に迷惑がかかることになります。
自己破産することを裁判所に認めてもらえれば、借金をした張本人である「債務者」は借金の支払い義務を免除してもらうことができます。
しかし、その保証人となっている人は「保証人」として法律上借金の返済義務が残るため、債権者は保証人に対して返済の請求をすることになるからです。
この際に保証人も借金の返済が不可能な場合には、債務者と一緒に自己破産するケースもよく見かけます。
保証人がいるケースにおいて自己破産する場合には、手続きを踏む前に保証人の理解を得るように話し合いをすべきでしょう。
まとめ
今回は、みなさんにとって非常に気になる話題である「自己破産後の生活」をテーマとして各種の知識をご紹介しました。
自己破産すれば、それまでの借金が基本的にすべて帳消しになるという非常に大きなメリットを受けることができます。
しかしその反面として、自己破産後にはいろいろな制限を受けることになりますので、手続きを行う際には慎重に検討する必要があります。
自己破産した場合、破産者は各種のデメリットを受けることになりますが、その家族に対して悪影響が及ぶことはまずありません。
ただし、保証人に対しては確実に迷惑をかけることになるので、自己破産する際には事前に報告しておくことが最低限のマナーだと考えるべきでしょう。
自己破産するかどうかをお悩みの場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
ベテラン弁護士が懇切丁寧に対応させていただきます。
ご相談の結果によっては、自己破産ではなくほかの手続きのほうが適していることが判明する可能性もあります。
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