多重債務で借金の返済が不能となった場合、何らかの債務整理を検討する必要があります。
その債務整理にはいくつかの方法がありますが、比較的利用しやすく、借金軽減の効果も大きい方法として個人再生という制度があります。
この個人再生をする場合、借金をする際に保証人や連帯保証人をつけているために問題となることがあります。
「保証人にだけは迷惑をかけたくない」と思われる方もたくさんいらっしゃいます。
保証人に迷惑がかかるなら、個人再生しないほうがよいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
では実際のところ、個人再生した場合の保証人への影響はどうなのでしょうか。
今回こちらでは、個人再生をすると保証人にどのような影響があるかなどについてご説明します。
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個人再生した場合の債権者の対応
金銭の貸し手である消費者金融やクレジットカード会社など金融会社のことを法律上、「債権者」といいます。また、金銭を実際に借り受ける者のことを保証人との関係において「主債務者」、その借金の返済を保証する人のことを「保証人」といいます。
消費者金融などの債権者は、主債務者が個人再生した場合、その債務に保証人がついているときには保証人に債務の返済を請求することになります。
保証人には主債務者の「肩代わり」をする責任がある
保証人は、金銭などの実際の借り手である主債務者がその借金などの返済が満足にできない場合、残債務などの一切を返済する法律上の責任を負っています。
保証人には法律上、「通常の保証人」と「連帯保証人」がいますが、そのどちらも主債務者がお金を返済しない場合には、主債務者の「肩代わり」をして支払い義務を履行する責任があるのです。
個人再生すると保証人に迷惑がかかる!
個人再生するに際して、債務の中に保証人がついている借金がある場合、残念ながら保証人に迷惑がかかることになります。うえで述べたように、個人再生した場合には、債権者である金融会社などから保証人に対して請求がいくことになるからです。
まずは保証人に相談を
個人再生する場合に、法律上の要件としては、保証人の許可は不要です。極端な話になりますが、個人再生することを保証人が反対していたとしても、個人再生するかどうかを決めるのは債務者本人の自由ということです。
しかし、保証人は通常、好意で借金の保証をしてくれた人です。そのため、個人再生する場合には事前に保証人に相談し、個人再生することに関し理解を得ておくことが望ましいでしょう。
保証人が個人再生を許してくれない場合には
うえで述べたように、個人再生する場合には、事前に保証人に相談することが望ましいといえます。しかし、保証人が個人再生することを、必ずしも理解してくれるとは限りません。保証人自身に迷惑がかかってくることになるからです。
そのため場合によっては、個人再生しないように要求してくることも考えられます。
しかし、個人再生するために保証人の許可は不要なのです。
保証人との人間関係にもよりますが、場合によっては保証人の反対を振り切り、個人再生しなければならないこともあるでしょう。まずは自分自身の生活の再建を最優先し、手続きの申し立てを判断する必要があるかもしれません。
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保証人の負う責任について
借金などをした本人である主債務者が個人再生する場合、保証人には「保証債務」を履行する責任が発生します。
保証債務とは
保証債務の内容としては、主債務者の借金などの残債務の返済をするのは当然です。しかし、保証人の責任はそれだけにはとどまりません。
さらに、主債務者が借金の返済をしなかったため発生した損害金など、主債務者の債務不履行から発生する一切の債務を返済する義務も負わなければならないのです。
保証人が負うべき債務の内容とは
金融会社などの債権者は、主債務者の借金の残債務額と、債務不履行によって発生した損害金などを合算した金銭の返済を保証人に対して請求してくることになります。
しかも通常、この返済は一括で行わなければなりません。
保証人の種類について
保証人には法律上、「通常の保証人」と「連帯保証人」があります。これらは、それぞれつぎのような性質を持っています。
①「通常の保証人」について
保証人である以上、その借金の借り手が返済不能となった場合、保証債務の履行責任が発生します。つまり、上記のとおり残債務全額と債務の不履行から発生する一切の損害金などの返済をしなければなりません。
ただし、通常の保証人の場合で、ほかにも保証人がいる場合、ひとりで全責任を負う必要がありません。この場合、返済総額を保証人の人数で割った金額を支払えば、保証人としての責任をすべて果たしたことになるのです。
たとえば、通常の保証人が3人いる場合で、肩代わりすべき債務額が300万円である場合、通常の保証人の1人は100万円を支払えば、その保証人の責任を果たしたことになります。
その他、通常の保証人には、債権者からの請求を一定の場合に拒むことのできる「抗弁権」(「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」)というものが認められています。
②「連帯保証人」について
保証人として負わなければならない責任の内容は、通常の保証人と同じです。ただし、連帯保証人は通常の保証人の場合より、法律上の責任が重くなります。
たとえば、上記と同様の事例を考えてみましょう。
連帯保証人が3人いる場合で、肩代わりすべき債務額が300万円の場合、各連帯保証人は全員がそれぞれ300万円全額を支払う法律上の責任があるのです。通常の保証人であれば、100万円を支払うことで保証人としての責任から解放されます。これに対して連帯保証人の場合には、100万円を支払っても、まだ残りの200万円を支払わない限り法律上の責任が残るのです。
また、通常の保証人に認められている各種「抗弁権」も、連帯保証人には認められません。これらの理由のため、連帯保証人の責任は非常に重いものとなるのです。
なお、一般の契約で要求される「保証人」とは、通常この連帯保証人を指します。
保証人も債務整理が必要となることも!
うえで述べたように、借金の借り手である主債務者が個人再生し場合、貸し手である金融業者などは保証人に保証債務の履行を求めることになります。これは法律上正当なものですので、その請求を拒否することはできません。
この請求に対して保証人に返済できる資力があれば問題ありませんが、それが無い場合、保証人独自の債務整理が必要となることも多くあります。連帯保証人などの保証債務も、結局は金銭の支払い義務ということですから、連帯保証人などがその債務の免除を求め自己破産などをすることができるのです。
保証人も債務整理する場合
保証人が保証債務を履行することができない場合、保証人独自の債務整理を検討しなければなりません。冒頭でも述べたように、債務整理にはいくつかの方法がありますが、どの方法を選択すべきかは保証人の資力を基準に判断することになります。
①任意整理
保証人に、ある程度以上の資力がある場合には、まずは任意整理を検討してみましょう。債権者との交渉次第では、返済額をある程度減額してもらうなど、返済可能な条件を引き出すことができるかもしれません。
②個人再生
保証人に保証債務全額の履行をするような余裕はないけれど、ある程度定期的な収入がある場合には、個人再生を検討するとよいでしょう。通常の場合、保証債務の大半が免除されるので、返済が非常に楽になる可能性があります。
③自己破産
保証人に保証債務を履行できるような収入や資産がない場合には、自己破産を検討する必要があります。裁判所で自己破産が認められた場合には、当然ですが保証債務の支払い義務が免除されることになります。
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個人再生する債務の中に奨学金がある場合
最近では、奨学金債務の返済に行き詰まり、破産や個人再生する方が増加しています。近年は学費が増加しているうえに、非正規雇用が広がり、奨学金の返済資力に不足をきたす人が増加していることが背景とされています。
奨学金の返済債務について
奨学金の返済債務は、かなり負担の重いものです。奨学金債務は通常、数百万円以上の返済となることが多く、その元本の支払いだけでも相当な経済的負担となります。奨学金の種類よっては無利息の場合もありますが、実際には低利率であるとはいえ利息が発生する場合が多く、元本にプラスして利息が付くのでさらに負担が重くなります。
奨学金の連帯保証人について
奨学金を借りる際に多くの方が、親や親族を連帯保証人としています。この場合、借り手であるお子さんなどが奨学金を返済できない時には、奨学金の貸主である債権者は連帯保証人である親や親族に返済を求めることになります。
親子で債務整理が必要となることも!
奨学金を借りる際に、親や親族を保証人としている方が個人再生する場合、奨学金の返済義務は保証人である親や親族が肩代わりすることになります。親や親族がこの返済義務を履行できない場合、親子や親族ぐるみで何らかの債務整理が必要となります。
個人再生した場合、保証人になれるのか?
保証人となるためには、金銭の貸し手などの債権者と「保証契約」という契約を締結することになります。保証人となる以上、万一借り手などが債務の返済を行わない場合には、借り手の代わりに債務の返済をしなければなりません。
法律上、保証人には、その返済能力があることが必要とされています。このため、保証契約に際して金銭の貸主など債権者は、保証人として返済能力があるかどうかを審査することになります。
この審査は、大別するとつぎのような2つのパターンがあります。
「保証人」の2つのパターン
保証人になる場合、保証契約の対象となる元の債務がどのようなものかによって扱いが異なります。大まかに区別すると、つぎの2つになります。
①金融会社からの借り入れなどについての連帯保証人となる場合
銀行やクレジット会社・消費者金融など金融業者から金銭を借り入れる場合などに保証人が必要となるケースでは、借り入れをする借主本人だけでなく、保証人も個人の信用情報がチェックされます。
個人再生すると「ブラックリスト」に載る!
個人再生した場合、その事実が数回「官報」という政府の広報誌に掲載されることになります。このため、個人信用情報機関によってはこの情報を基に事故情報を記録する扱いとしている場合があり、このため「ブラックリスト」に登録されることがあります。
個人信用情報機関とは
世の中には「個人信用情報機関」というものがあり、個人の金融関係に関する今までのデータを記録しています。このため、過去に消費者金融などから借り入れたお金を返さないことがあったり、何らかの債務整理をしたことがある場合には、その事実が「事故情報」としてその人のデータに記録されるのです。
これがいわゆる「ブラックリスト入り」の状態です。
ブラックリストに載っている間は保証人になれない!
金融会社から金銭を借り入れる債務などに関して保証人となろうとする際に、以前に個人再生したことがある場合には保証人について事故情報が記録されている可能性があります。
この場合、残念ながら保証人として審査に通らない可能性があります。つまり、保証人になれない可能性が高い、ということです。
ブラックリストからは一生消えないのか?
個人再生すると、ブラックリストに名前が載ることになります。しかし、これは一生というわけではありません。ブラックリストに載っている期間には、制限があるのです。
ブラックリストから抹消される期間について
個人信用情報機関によって扱いは異なりますが、「個人再生した」という「事故情報」は、基本的にその事実の発生した時から5年から10年程度で抹消されることになっています。そのため、個人再生後この期間が無事に経過している場合には、保証人になれる可能性があることになります。
②アパートなどの賃貸借契約についての連帯保証人の場合
アパートなどを借りる際には、不動産会社と賃貸借契約を取り交わす必要があります。賃貸借契約では通常、連帯保証人が必要となりますが、基本的に保証人が過去に個人再生していた事実が問題となることはありません。
金融会社などは、それぞれ個人信用情報機関に加盟しているため、その情報機関のデータを照会することで事故情報の有無をチェックすることができます。しかし、不動産会社はこのような情報機関に加盟していないため、個人の信用情報をチェックしないからです。
そのため、保証人が不動産会社の要求する条件をクリアーしているのであれば、賃貸借契約の連帯保証人になることはできる可能性が高いと考えてよいでしょう。
まとめ
個人再生しようとする際に、借金の保証人がいる場合には、なかなか面倒な問題となります。
保証人は、かつては自分を信用して借金の保証をしてくれた相手です。一般的な感情としては、保証人にだけは「なんとしても迷惑をかけたくない」「迷惑をかけることはできない」などと考えてしまうものです。
そのため、個人再生する場合には事前に、なるべく保証人の理解を得られるように最大限の努力をすべきです。その結果、保証人の理解が得られるのであれば、これに越したことはありません。
しかし、不幸にも理解が得られないようであれば、人間関係の破綻を覚悟のうえで個人再生に踏み切ることが必要な場合もあるでしょう。
借金問題は急を要する人生の重大問題です。できるだけ早急な解決が必要です。何よりも自分の経済的な生活を立て直すことを第一に考えるべきです。
まずは、個人再生することによって経済生活を再建することが大切です。経済生活の再建を果たした後、保証人に対して何らかの償いをすることのできる日が来るかもしれません。
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