個人再生によって借金を減額し、現在も残債務の返済を続けてはいるものの、何らかの事情によって支払いが難しくなってしまった……。
世間では、よく耳にする話です。
そのような場合には、いつまでも悩んでいるのではなくハードシップ免責を受けることを検討してはいかがでしょうか?
「ハードシップ免責」とは、特別な事情によって個人再生の残債務支払いが難しくなってしまった場合に一定の条件のもとに、それ以降の返済がすべて免除される制度です。
今回は、「ハードシップ免責」についてご紹介します。
「ハードシップ免責とは何なの?」
「制度利用のための条件とは?」
「免責を受けられない場合の対処法とは?」
みなさんがお持ちの上記のような疑問について、債務整理のプロがわかりやすく解説します。
なお、当記事は重要ポイントを赤ペンで強調してあります。
お急ぎの場合には、そのポイントだけを読んでいただければ一通り理解可能です。
その場合、ほんの1~2分程度で最後まで目を通していただけるようになっています。
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再生計画による返済が困難なケースの救済法
個人再生は裁判所の認可を受けることで借金の大半を免除してもらい、残りの借金を3年間(最長5年間)分割払いすることで借金問題を解決する手続きです。
債務者は個人再生によって認められた再生計画に基づき、手続き後基本的に3年の間毎月一定額の支払いを継続することになります。
しかし、何らかの特別な事情が発生し再生計画どおりの返済が難しくなってしまった場合、どのような救済法が用意されているのでしょうか?
「ハードシップ免責」とは?|個人再生の残債務を免除する制度
再生計画どおりに返済ができなくなってしまった場合、対処法はいくつか存在しますが、その中でもっとも債務者にとってありがたい制度がハードシップ免責です。
ハードシップ免責とは一定の条件を満たした場合に、それ以降債務の支払い義務を免除してもらえる制度です。
ハードシップ免責の注意点
ハードシップ免責の利用を検討する際には、以下のような点に注意が必要となります。
- (1)マイホームも手放すことになる
- (2)利用の条件が厳しい
それぞれ簡単に確認しておきましょう。
(1)マイホームも手放すことになる
ハードシップ免責を受けた場合、債務を免責する効果は住宅ローンにも及びます。
つまり、消費者金融やクレジット会社からの借金だけでなく、住宅ローンの支払い義務も免除されることになるのです。
このためハードシップ免責を受けた場合には、せっかく入手したマイホームも手放すことになってしまいます。
(2)利用の条件が厳しい
すでにご紹介したようにハードシップ免責が認められると、それ以降借金の残額を支払う必要がなくなります。
ある意味自己破産と同じような強力な効果がある分、ハードシップ免責が認められるための条件は非常に厳しくなっています(後述)。
そのため実際の運用では、ハードシップ免責が認められる事例はとても少なく、東京や大阪など大都市圏の地方裁判所において年に数件存在する程度です。
ハードシップ免責が認められるための4つの条件
ハードシップ免責が認められるためには、以下の4つの条件すべてを満たしている必要があります。
- (1)債務者に責任のない原因によって再生計画に基づく返済が極めて困難であること
- (2)返済すべき総額の4分の3以上の返済が終わっていること
- (3)ハードシップ免責の決定が、債権者の一般の利益に反しないこと
- (4)再生計画の変更によっても再生計画に基づく返済が極めて困難であること
順次、みていくことにしましょう。
(1)債務者に責任のない原因によって再生計画に基づく返済が極めて困難であること
債務者本人に責任がある場合、ハードシップ免責を受けることはできません。
そのような場合には、債権者を犠牲にしてまでも債務者を救済しなければならない理由がないからです。
ハードシップ免責を受けるためには、債務者本人には責任がない原因によって債務の返済が極めて困難になったという事情が必要です。
具体的には、以下のようなケースではこの条件を満たすと考えてよいでしょう。
- リストラされてしまい、再就職先が見つからない
- 急な病気や事故によって長期間にわたって働けなくなってしまった
- 災害によって事業の継続ができなくなった
(2)返済すべき総額の4分の3以上の返済が終わっていること
ハードシップ免責を受けるためには、再生計画に基づいてある程度以上の期間返済を継続しなければいけません。
具体的には、個人再生による残債務額の4分の3以上の返済が終わっていることが必要です。
(3)ハードシップ免責の決定が、債権者の一般の利益に反しないこと
ハードシップ免責が認められた場合、債権者は再生計画どおりの返済を受けられないことになります。
債権者の利益が害されないようにするためには、債務者が自己破産する以上の返済を受ける必要があります。
このため、ハードシップ免責を受けるためには、債務者が所有している財産の清算価値以上の返済がなされていることが必要です。
また、裁判所は免責の判断に際しては債権者の意見を聴取することになっています。
(4)再生計画の変更によっても再生計画に基づく返済が極めて困難であること
再生計画による返済が難しい場合、計画を変更し返済期間を最長5年まで延長することができることになっています。
返済期間を延長することによって毎月の返済額が少なくし、返済の継続を可能にしようという趣旨です。
ハードシップ免責を受けるためには、再生計画の変更によっても返済が極めて困難であるという特別な事情が必要です。
ハードシップ免責を利用するための流れとは?
ハードシップ免責を利用する場合には、最初に個人再生手続きを行った地方裁判所に以下の書類を提出します。
- ①「免責申立書」
- ②返済できないことを証する書面
申し立てを受けた裁判所は債権者の意見を聴取し、最終的に免責を許可するかどうか決定します。
なお、申し立てをすることができるのは債務者本人のみです。
計画どおりに返済できない場合の対処法
個人再生によって減額された借金は、3年間で分割払いすることが原則となっています。
しかし、ひとくちに「3年間」とはいっても、実際にはとても長い期間です。
返済中に特別な事情が発生し、再生計画どおりに支払っていくことが難しくなることもあるでしょう。
「勤務先が倒産した」「リストラされた」「残業がなくなった」などなど、収入が激減する原因というものは私たちの周りにあふれています。
特別な事情によって再生計画どおりに返済することが難しくなってしまった場合、まずは債権者と話し合うことをおすすめします。
債権者に連絡する
再生計画どおりに返済できなくなってしまった場合には、できるだけ早く債権者に連絡するように心がけてください。
返済が難しくなってしまったことを伝え、理解を得るよう努めることが大切です。
放置するのはぜったいにダメ!
再生計画どおりに返済できなくなった場合には、以下のような対策をとりましょう。
返済できないからといって何もせずに滞納を続けていると、後述するように再生計画が取り消されてしまうなど取り返しのつかない事態になる可能性がありますのでくれぐれもご注意ください。
再生計画が取り消しになることも!
再生計画に基づく返済ができなくなってしまった場合、何の対策もせずにただ延滞していることは最悪の事態を招く恐れがあります。
返済を受けられなくなった債権者が裁判所に申立てをして、再生計画が取り消しになることも考えられるのです。
再生計画が取り消しになると、せっかく苦労して行った個人再生手続きがすべて無駄になりかねません。
元の借金が復活してしまう
再生計画が取り消しされてしまうと、個人再生手続きによって最大80%~90%も減額されたはずの借金が復活することになります。
つまり、また以前のように借金に苦しむ生活に逆戻りすることになってしまうのです。
そのようなことにならないようにするためにも、返済できなくなった場合には積極的に何らかの対策を講じるようにしてください。
法律的な対処法|「再生計画の変更」と「ハードシップ免責」
再生計画どおりに返済できない場合、以下のような2つの方法を検討してみましょう。
- (1)再生計画の変更
- (2)ハードシップ免責
それぞれについて確認していきましょう。
(1)再生計画の変更|返済期間は最大5年まで延長可能
再生計画どおりに返済することが難しくなってしまった場合、裁判所に申立て再生計画の変更を求めることができます。
再生計画の変更が認められるためには特別な事情の存在が必要ですが、変更が認められた場合には、再生計画に基づく返済期間を最大5年間まで延長することができます。
たとえば個人再生後の残債務額が200万円の場合、返済期間が3年(36回払い)では毎月5万6千円弱の支払いが必要ですが、返済期間が5年(60回払い)に延長された場合には毎月3万4千円弱支払えばよいことになります。
このように返済期間を延長することで毎月の返済額が低額になるため、返済計画どおりに支払いを継続できる可能性が高くなります。
(2)ハードシップ免責
再生計画の変更によって返済期間を5年まで延長しても借金の返済が難しい場合には、ハードシップ免責の利用を検討することになります。
ただし、ハードシップ免責が認められるためには非常に厳しい条件をクリアする必要があるので注意が必要となります。
再生計画の変更が難しく、さらにハードシップ免責も期待できない場合には自己破産を検討する必要があるかもしれません。
ハードシップ免責のデメリット
最後にハードシップ免責のデメリットについてご紹介します。
ハードシップ免責を受けた場合、つぎのようなデメリットを受けることになりますので注意が必要です。
①一定の期間自己破産できなくなる
ハードシップ免責を受けた場合、その後7年間は自己破産することが法律上認められなくなります。
これはハードシップ免責後7年以内の自己破産の申立てが、法律上「免責不許可事由」とされているためです。
この場合でも裁判所による「裁量免責」を受けることのできる余地はありますが、自己破産するためのハードルが上がることは間違いありません。
②マイホームを手放さなければならなくなる
個人再生では、住宅ローン特則を利用することによってマイホームを維持しながら債務整理することができることになっています。
これはある意味、個人再生の大きなメリットの1つです。
しかしハードシップ免責を受けた場合、免責の効果が住宅ローンにまで及ぶことになってしまうため、住宅ローンの残額も支払う義務が免除されます。
その結果、マイホームを手放さなければならなくなってしまいます。
まとめ
今回は、「ハードシップ免責」についてご紹介しました。
何らかの事情によって個人再生による債務の返済が難しくなってしまった場合、ハードシップ免責を利用することで、それ以上の支払いの免除を受けることができます。
ハードシップ免責を受けるためには、その旨の申請をして裁判所で許可を受けることが必要ですが、返済に行き詰まっている方は選択肢の一つとして検討されてはいかがでしょうか?
今回ご紹介した知識を活用していただき、明るい生活を取り戻していただければ幸いです。
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