
交際していた彼氏が、実は既婚者だったと知ったら、怒りや悲しみでどうしていいかわからなくなるかもしれません。「絶対に許せない」「復讐したい、仕返しをしたい」と考えるのも無理はありません。
しかし、感情的な行動を取ってしまうと、逆に自分が法的責任を問われたり、不利な立場に追い込まれるリスクがあります。知らず知らずのうちに違法行為に該当し、慰謝料請求や刑事罰の対象となる可能性もあるため、慎重に対応しなければなりません。
では、どのような行動がNGなのか?そして、正しく対処する方法とは?
男女問題に強い弁護士が、次の点について詳しく解説します。
- 絶対に避けるべきNGな仕返し・復讐(違法になる可能性のある行動)
- 不適切な行動をとった場合に生じるリスク(慰謝料・刑事責任)
- 適切な証拠の集め方と正しい対処法
- 慰謝料請求をする際のポイント
もし、独身を装った彼氏に騙され、慰謝料請求をご検討されている方は、まずはこの記事をお読みいただき、全国無料相談の弁護士までご相談ください。
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目次
彼氏が既婚者だった場合にNGな仕返し・復讐
彼氏が既婚者だったと発覚すると、怒りや悲しみから思わず仕返し・復讐をしたくなるかもしれません。しかし、感情的な行動を取ると、逆にあなたが法的責任を問われたり、不利な立場に追い込まれる可能性があります。
適切な対応をとるためにも、絶対に避けるべき行動は次の通りです。
- ① 奥さんにバラす
- ② 自宅や勤務先に押し掛ける
- ③ 嫌がらせをする
- ④ 脅す・金銭を要求する
- ⑤ SNSで拡散させる
①奥さんにバラす
彼氏が既婚者だった場合、相手の奥さんに浮気をバラしてやりたいと思う方もいるでしょう。
しかし、いくら彼氏に騙されていたとはいえ、相手の奥さんからすればあなたも「不倫相手」でしかないため、得策とはいえません。
彼氏の奥さんに彼氏との関係をバラしてしまうと、あなた自身が不貞行為を理由に慰謝料を請求されてしまうリスクがあります。
「既婚者であると騙されてたのだから自分も被害者である」と考える方もいるかもしれませんが、不貞行為の過失が認定されてしまうおそれがあります。
慰謝料を支払う責任が発生するためには、あなたに故意・過失が存在していることが必要です(民法第709条)。仮に、彼氏が既婚者であることを知らなかったとしても、通常必要とされる注意を尽くしていれば既婚者であると気づくことができたといえる場合には、過失が認定されてしまいます。
【合わせて読みたい】既婚者と知らなかった場合の不倫慰謝料の支払義務と対応方法
このように、慰謝料を請求されてしまうリスクがあるため、相手の奥さんに関係をバラすことは控えましょう。
②自宅や勤務先に押し掛ける
彼氏の自宅や勤務先に押し掛ける行為もNGです。
正当な理由がないのに、人の住所若しくは人の看守する邸宅、建造物などに侵入しまたは要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合には、住居(建造物)侵入罪に問われることになります。
また、個人が不倫をしている事実を職場の同僚や近隣の住人などの第三者に知らせることは、名誉毀損罪(刑法第230条1項)や侮辱罪(刑法第231条)に問われるリスクがあります。
名誉毀損行為や侮辱行為については、刑事責任のみならず民事責任として、不法行為に基づき慰謝料請求がなされる可能性があります。
また、上記のような暴露行為を原因として不倫相手が仕事を続けることが難しくなり失職した場合には、一定期間の給料相当額を損害として賠償請求されてしまうおそれもあります。
③嫌がらせをする
彼氏に対して執拗な無言電話や、怪文書を送り付けるなどの嫌がらせ行為を行うことも控えましょう。
上記のような行為はストーカー規制法が禁止している「つきまとい等」に該当する可能性があります。特定の者に対する恋愛感情その他の行為の感情またはそれがみたされなかったことに対する怨念の感情を充足する目的でなされた行為は、「つきまとい等」に該当する可能性があります。
ストーカー規制法に違反する行為をした場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
④脅す・金銭を要求する
不倫の事実をバラすなどと彼氏を脅迫したり、黙っておくことと引き換えに金銭を要求することもNGです。
本人やその家族に対して「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合には、「脅迫罪」が成立することになります。
また、脅迫したうえで交際を継続するように迫ったり金品を要求してきたりする場合には「強要罪」や「恐喝罪」に該当します。
いずれも刑事責任及び民事責任の両方の責任を追及されてしまうリスクがありますので、上記のような行為をするのは控えましょう。
⑤SNSで拡散させる
彼氏が既婚者であるとをSNSなどインターネット上で拡散する行為もNGです。
不倫の事実をインターネット上に晒す行為は、不倫当事者の人格権やプライバシー権を侵害する違法行為に該当する可能性もあります。
この場合には、民事上の責任として慰謝料などの賠償金の支払いを請求されてしまうリスクがあります。
不倫の被害者から一転して、インターネット上に公表したことで加害者として相手から損害賠償請求されてしまうといった立場に陥るリスクがあるため、SNSでの拡散行為も控えるようにしましょう。
彼氏が既婚者だった場合の正しい対処法
彼氏が既婚者だったと発覚したら、冷静に対応することが重要です。感情的になって不適切な行動をとると、逆にあなたが法的責任を問われる可能性があります。適切な証拠を集め、慰謝料請求の可否を判断し、トラブルを回避するための対策を講じましょう。
具体的な対処法は、次の通りです。
- ① まずは彼氏が独身を装っていた証拠を集める
- ② 慰謝料請求を検討する
- ③ 彼氏の配偶者からの慰謝料請求に備える
- ④ 慰謝料請求を弁護士に相談する
①まずは彼氏が独身を装っていた証拠を集める
彼氏が既婚者であることが発覚した場合、適切な対応を取るためには、まず「彼が独身を装ってあなたと交際していた証拠」を集めることが重要です。特に、後述する慰謝料請求を行う際には、証拠の有無が大きく影響します。
相手が「独身だとは言っていない」などと反論する可能性もあるため、しっかりとした証拠を確保しておきましょう。たとえば、以下のようなものが有効です。
- 彼氏が独身・未婚と告げているLINEやメールのやり取り、または録音データ
- 彼氏が独身者向けのマッチングアプリや婚活サイトに登録していた証拠(プロフィール画面のスクリーンショットなど)
- 婚活パーティーや結婚相談所で彼と知り合ったことを示す資料 など
これらの証拠があれば、「彼が独身だと嘘をついていた」という事実を裏付けることができます。
②慰謝料請求をする
交際相手が既婚者であることを隠していた場合には、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求することができます。
貞操権とは、性的な関係について、他人の不当な干渉を受けることなく自由に意思決定ができる権利のことです。
相手が独身であると偽って交際していた場合には、あなたの貞操権が侵害されたとして、不法行為に基づき慰謝料を請求することができます。
貞操権侵害を主張するためには、相手方と肉体関係(性交渉)があったことが必要となります。キスやハグなどプラトニックな交際関係にとどまる場合には、基本的に貞操権侵害とはみなされません。しかし、肉体的な接触に近い行為があった場合、貞操権侵害が認められる可能性があります。
ただし、彼氏が「交際していたが肉体関係はなかった」と反論してくる可能性もあります。そのため、以下のような証拠も確保しておくと、より有利に慰謝料請求が進められるでしょう。
- 彼氏と肉体関係を持ったことが分かるLINEやメールのやり取り、または音声データ
- 彼氏と旅行へ行ったことを示す予約票やレシート、クレジットカードの明細書、写真
- 妊娠や中絶をした場合の同意書
これらの証拠を可能な限り確保することで、彼氏が独身を装って交際していた事実を立証し、慰謝料請求の成功率を高めることができます。
③彼氏の配偶者からの慰謝料請求に備える
交際相手が既婚者であると知らずに付き合っていた場合でも、何らかのきっかけでその事実が配偶者に知られ、慰謝料を請求されるリスクがあります。
そのため、事前に対策を講じておくことが大切です。
まず、交際相手に対して、これまでの関係について口外しないよう約束させることが重要です。
ただし、口外を控えるよう求めたとしても、相手の配偶者に事実が発覚する可能性はゼロではありません。
相手方の配偶者に交際関係が発覚してしまうと、逆にあなたが不貞行為を理由に慰謝料を請求されてしまうリスクがあります。
万が一、相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、「相手が既婚者であることを知らなかった」と主張できる証拠があると、有効に相手方に反論することができます。
相手が既婚者であることを知らなかった証拠については、「既婚者だと知らなかった証拠は?証拠の適切な活用方法を解説」に詳しく書かれていますので、参考にしてください。
④慰謝料請求を弁護士に依頼する
慰謝料請求をする際は、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に依頼することで、不法行為の成立の有無を正しく判断し、適切な対応をとることができます。
慰謝料請求には貞操権侵害が認められる必要がありますが、すべてのケースで請求できるわけではありません。弁護士に相談すれば、ご自身のケースで慰謝料を請求できるのかどうかを見極め、適切な対応方法をアドバイスしてもらうことができます。
また、弁護士を通じて請求することで、相手が無視しづらくなり、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。さらに、内容証明郵便の送付や合意書の作成、訴訟対応などの手続きをすべて弁護士に任せることができ、負担を軽減できます。
訴訟に発展した場合も、適切な法的主張を行い、有利に進めることが可能です。
加えて、弁護士に依頼することで精神的負担も軽くなります。既婚者だった交際相手に慰謝料を請求するのは精神的に辛いものですが、弁護士が代理で交渉し、あなたの気持ちを代弁してくれるため、ストレスが軽減されます。
こうした理由から、慰謝料請求を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
交際していた彼氏が既婚者であることを隠していた場合には、貞操権侵害を理由に相手に慰謝料を請求できる可能性があります。
貞操権侵害が認められるためには、以下の条件を証拠に基づいて証明する必要があります。
- 彼氏が独身であると嘘をついていたこと
- 結婚する気がないのに結婚する意思を示したこと
- 彼氏と肉体関係があったこと
また、彼氏の妻から不貞の慰謝料を請求された場合に備えて、「彼氏が既婚者であると知らなかった」ことを立証できる証拠を確保しておくことも重要です。
彼氏が既婚者だった際の、適法な仕返しは、適切な賠償金を相手から回収することです。
当事務所では、独身を装って女性の心と体を弄んだ男性に対する慰謝料請求において、豊富な実績があります。親身かつ誠実に寄り添い、全力で対応しますので、彼氏が既婚者であった場合の慰謝料請求を検討している方は、ぜひ当事務所の弁護士までご相談ください。
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