既婚者だと知らなかった場合の慰謝料請求の支払義務と対処法

交際していた相手が実は既婚者で、その配偶者から突然慰謝料を求められ、「相手が既婚者だなんて知らなかった」のに支払わなければならないのか、とお悩みではないでしょうか。

結論からお伝えすると、相手を既婚者だと認識しておらず、しかも気づけなかったことに落ち度(過失)もない場合は、慰謝料の支払義務は生じません。ただし、「知らなかった」と主張するだけでは足りず、出会いの経緯やお付き合いの状況からみて独身と信じたのが自然だと言える事情があるか、これが判断の分かれ目になります。

この記事では、不倫問題に強い弁護士が、次の点について解説します。

  • 既婚者と知らなかった場合の支払義務の判断基準
  • 過失あり・過失なしを分けた4つの裁判例
  • 慰謝料請求を受けた場合の対処法

なお、既婚者と知らずに慰謝料請求を受けてお困りの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へご相談ください。

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そもそも不倫の慰謝料とは?

不倫とは?

不倫とは、民法上「不貞行為」と呼ばれる行為を指します。不貞行為とは、配偶者が自由な意思のもとで、配偶者以外の者と肉体関係を持つことをいいます。

食事やデートを重ねたり、キスや手をつなぐといったスキンシップがあったりしただけでは、不貞行為には該当しません。不貞行為の成立には、実際に肉体関係があったことが必要であり、キスや連絡のやり取りのみで配偶者から慰謝料を請求されても、原則として支払義務は生じません。ただし、肉体関係に近い行為があった場合や、家庭を顧みないほど親密な交流が続いていた場合には、慰謝料の支払いを命じられることもあります。

不倫の慰謝料とは?

不倫の慰謝料とは、不貞行為によって、配偶者が受けた精神的苦痛を賠償するために支払われる金銭です。配偶者は互いに「貞操義務」を負っており、配偶者以外の者と肉体関係を持つことはこの義務に違反します。さらに、不貞行為の相手方も、もう一方の配偶者の「婚姻共同生活の平和的維持」という法的に保護される権利を侵害したとみなされ、精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務を負うことがあります。

既婚者だと知らなかった場合の不倫慰謝料の支払義務は?

慰謝料を支払う義務があるケース

交際相手が既婚者だと知っていた場合(故意)はもちろん、知らなかったことに過失があった場合にも、慰謝料の支払義務が生じます。慰謝料の支払義務は、民法第709条の不法行為責任として生じます。

ここでいう「過失」とは、通常求められる注意を払えば既婚者だと気づけたのに、それを怠った場合を指します。具体的には、次のような状況が複数重なるケースです。

  • 相手が結婚指輪を付けていた
  • 平日の夜など特定の時間帯にしか会えなかった
  • 土日や連休には連絡がとれなかった
  • 親族や友人を一度も紹介されなかった
  • デートが相手の自宅やホテルなど人目につかない場所に限られていた

逆に、交際相手が積極的に独身を装っていた(未婚だと偽っていた)など、客観的に見て独身だと信じることがやむを得ない事情があれば、過失は否定される余地があります。この枠組みは、いわゆるワンナイトのような一度きりの関係でも変わりません。関係が短く相手の素性を確かめる余地がなかったといえるかどうかで、過失の有無が判断されます。

慰謝料の支払義務がないケース

①交際相手の婚姻関係が破綻していた場合

不倫に至った当時、相手の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、「婚姻共同生活の平和的維持」の期待が失われているため、法的な権利侵害がないと判断されます。つまり、不倫の時点で夫婦関係がすでに破綻していたなら、慰謝料の請求は認められません。また、実際には破綻していなくても、破綻していると信じ、その信じたことに過失がない場合には、過失が否定される可能性があります。

②消滅時効が完成している場合

民法第724条は、不法行為による損害賠償請求権の時効を、被害者(配偶者)が損害および加害者を知った時から「3年」、不法行為の時から「20年」と定めています。相手の配偶者が不倫の事実と相手(あなた)の存在を知った時から3年が経過していれば、時効の完成を主張することで支払義務を免れられます。

故意・過失についての裁判例

故意も過失も否定された判例

妻が不倫相手の女性に慰謝料440万円を請求した事案です。被告女性は相手男性がすでに離婚していると誤信し、新居を探したり両親に交際相手として挨拶したりするなど積極的に結婚を考えており、既婚と判明した後の困惑を知人に報告していた事実もありました。裁判所は男性が独身だと信じたことについて過失は認められないと判断しました(東京地方裁判所令和3年9月16日判決)。

元妻が元夫と被告女性に慰謝料300万円を請求した事案です。裁判所は、当時の被告女性が元夫の既婚を認識していた証拠はなく故意を否定し、さらに元夫が独身を装って既婚を意図的に隠していたこと、被告女性が容易に既婚を知り得る手段もなかったことを踏まえ、独身だと信じたことに過失はないと判断しました(東京地方裁判所令和元年6月28日判決)。

故意は認められなかったが過失はあったとされた判例

妊娠中の妻の出産予定日に夫が不倫相手と2泊3日の温泉旅行を計画していた事案で、妻が慰謝料300万円を請求しました。夫は「妻とは離婚した」と説明し自分の情報のみの住民票抄本を示していましたが、結婚と出産間近を聞いてから1か月程度しか経っていないこと、同居していると説明していたこと、住民票をよく見れば抄本だと分かること等から、女性が説明を軽信した点に過失があったと認定されました(東京地方裁判所令和4年1月26日判決)。

夫の不貞行為で別居に至ったとして妻が慰謝料440万円を請求した事案です。被告女性は「夫婦関係が冷え切っている」と聞かされていたことを根拠に破綻していたと信じたと主張しましたが、裁判所は、裏付ける具体的事情がないこと、不貞行為後も男性が帰宅していた事実を認識していたことから、破綻を信じたことに相当な理由はないと判示しました(東京地方裁判所令和3年12月10日判決)。

不倫慰謝料の相場と減額・増額のポイント

慰謝料相場は?

不貞行為を理由とする慰謝料の相場は、おおむね50万円〜300万円とされています。金額は、不倫が夫婦関係に与えた影響の大きさで変動します。

夫婦関係の状況 慰謝料の目安
不倫が発覚しても婚姻関係が継続 50万〜100万円程度
不倫により別居に至った 100万〜200万円程度
不倫により離婚に至った 200万〜300万円程度

もっとも、これはあくまで目安です。婚姻期間の長さや不貞行為の回数、子どもの有無、相手の悪質性によって、目安より高くも低くもなります。実務上は、和解や判決で認められる金額が100万〜200万円台に収まるケースが多くみられます。

故意はなく過失のみであった場合は減額される?

既婚者であることを認識していた(故意があった)場合に比べると、不注意で認識できなかった(過失があった)ケースの方が、不倫の悪質性は低いといえます。したがって、故意がなく過失のみで不倫をした場合、慰謝料が減額される可能性はあります。とくに、相手が独身だと偽って主導的に関係を続けていたようなケースでは、非難の度合いは相手側に大きく傾くため、その分の減額を求めやすくなります。ただし、減額の程度は過失の内容やその他の事情に左右されるため、明確な基準は存在しません。

慰謝料の減額・増額事由

以下の事情がない場合は減額の方向に、ある場合は増額の方向に傾く可能性があります。

  • 婚姻期間が長い
  • 夫婦間に未成熟の子どもがいる
  • 不貞行為の回数が多い
  • 不貞行為当時の夫婦関係が破綻していない
  • 不倫相手が既婚者だと知っていた
  • 不倫相手が子どもを妊娠した
  • 不倫相手に反省の態度が希薄 など

不倫の慰謝料請求をされた場合の対処法

落ち着いて請求内容と証拠を見極める

突然の請求に驚いても、感情的にすぐ返信するのは避け、まずは書面の内容を冷静に読み込みましょう。動揺したまま応じると、自分に不利になる発言をしてしまいかねません。最初に押さえたいのは、どのような理由で請求されているのか、その裏付けとなる証拠が示されているか、そして求められている金額はいくらか、という3点です。証拠が添えられていなければ提示を求め、回答期限が短ければ延ばしてもらうよう伝えても構いません。ここで支払うかどうかを即断する必要はありませんが、まったく反応しないでいると交渉の意思がないとみなされ、いきなり訴訟に踏み切られることもあります。何らかの返答は必ず行いましょう。

すぐさま交際を終了させる

慰謝料請求や交際中止の通知を受けて相手が既婚者だと判明した場合は、その時点で交際をやめてください。関係を続けるとそれ以降は故意による不貞行為と評価され、新たに訴えられて慰謝料を上乗せ請求されるリスクが高まります(東京地方裁判所平成24年12月17日判決)。

既婚者だと知らなかった証拠を集める

慰謝料請求を受けたら、交際当初に相手が独身だと信じていたことを示す証拠を確保しましょう。裁判では客観的な事実から判断されるため、証拠の有無で結果が大きく変わります。相手が独身を装っていたLINE・メール・電話の履歴、「離婚済み」「バツイチ」などの誤解を招く説明の記録、結婚を前提とした交際を示すメッセージ、結婚指輪の購入履歴や結婚式場の予約記録、独身限定のマッチングアプリ・婚活サービスの利用履歴などが有効です。証拠ごとの集め方と裁判での活用方法は、『既婚者だと知らなかった証拠とは?6つの例と活用法を解説』で詳しく解説しています。

交際相手に騙されていた場合は慰謝料請求を検討する

交際相手が独身だと偽り、あなたがそれを信じて関係を続けていたなら、あなた自身も被害者です。この場合、逆にその交際相手に対して慰謝料を求められる場合もあります。独身であると虚偽の説明をされて性的関係を持った場合、「貞操権侵害」として損害賠償請求が認められることがあります。ただし、こちらから請求に動くと相手の配偶者に不貞を知られ、かえって請求を受けるおそれもあるため、進め方は慎重に検討する必要があります。詳しくは「騙された!彼氏が結婚してたなんて...精神的苦痛で慰謝料請求できる?」で解説しています。

弁護士に相談する

支払いを回避するには「無過失」を裏付けることが必要ですが、どの事実がどの程度有利に働くかの法的判断は、一般の方には難しい部分です。弁護士に依頼すれば、有効な証拠の取捨選択や、交渉・訴訟での主張立証を一任できます。相手方との交渉次第では減額が認められ、訴えられる前に低額な示談金で解決できることもあります。いったん示談に応じて支払った慰謝料を後から取り戻すのは原則として困難なため、示談書に署名する前の段階でのご相談が肝心です。なお、慰謝料を支払う場合は、後から蒸し返されたり「受け取っていない」と言われたりしないよう、取り決めを合意書などの書面に残し、振込履歴や領収書といった支払いの記録も確保しておきましょう。

既婚者と知らずに慰謝料請求されてお困りの方へ

相手が既婚者だと気づかず、その点に落ち度もなかったのであれば、慰謝料を支払う義務は生じません。過失があったと判断された場合でも、故意がない分、相場より低い金額で和解できる余地があります。もっとも、「過失なし」を主張・立証するには、交際時のメッセージや出会いの経緯など客観的な証拠を整理し、過去の裁判例を踏まえて法的に評価していく必要があります。

突然の慰謝料請求は精神的な負担も大きく、冷静に判断するのが難しい場面です。すでに配偶者や代理人弁護士から内容証明郵便などの通知が届いている場合は、対応が遅れるほど不利になりかねないため、できるだけ早い段階でのご相談をおすすめします。当事務所では、既婚者だと知らずに関係を持ってしまいトラブルに発展したケースの解決を多数取り扱ってきました。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

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講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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