認知の取り消しはできる?無効を主張できるケースと手続き

「一度した認知の取り消しはできるのか」「自分の子供でないなら、認知をなかったことにできないのか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、認知の取り消しは、民法で原則として禁止されています。ただし、実の子でない場合や、知らないうちに認知届を出された場合、詐欺や強迫によって認知させられた場合には、家庭裁判所の手続きで無効や取消しを主張できる可能性があります。

この記事では、男女トラブルに強い弁護士が、次の点を解説します。

  • 一度した認知を原則取り消せない理由
  • 取り消せないときの養育費・戸籍の扱い
  • 認知の無効・取消しを主張できるケース
  • 無効・取消しを求める家庭裁判所の手続き

お読みいただくことで、ご自身のケースで無効や取消しを主張できるか、何から手をつけるべきかを判断できます。

なお、認知のことでお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。

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認知の取り消しは原則できない?無効・取消しを主張できる例外

一度した認知は、自分の意思で取り消したり撤回したりすることはできません(民法785条)。

(認知の取消しの禁止)

第785条

認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

認知をすると、その子との間に法律上の父子関係が生じ、父親は子に対する扶養義務を負います。認知によって利益を受ける子どもや母親を保護するため、後から自由に取り消せない仕組みになっています。

そのため、実の子である以上、「養育費を払いたくない」という理由での認知の取り消しは認められず、支払い義務も一方的には免れません。収入が減ったなど事情が変わったときは、家庭裁判所の養育費減額調停で見直しを求める方法があります。

戸籍についても同じで、父親の戸籍謄本の身分事項欄(出生や婚姻など、その人の身分の変動を記す欄)に載った認知の記載を、自分の判断で消すことはできません。子が父親の戸籍に入っていない場合、父親が本籍を別の市区町村に移す(転籍する)と、父親の新しい戸籍には認知の記載が引き継がれませんが、元の戸籍は「除籍」として保存され、認知の記載もそこに残ります。転籍した場合の扱いを含め、具体的にどのように残るのかは「子を認知すると戸籍はどうなる?記載例と父の姓を名乗る手続き」で詳しく解説しています。

もっとも、自分の意思で認知を取り消すこととは別に、認知に一定の問題がある場合には、その効力を争う道があります。争い方には「無効」と「取消し」があり、無効は認知がもともと効力をもたないと確認してもらうこと、取消しは認知に至る過程の問題を理由に効力を失わせることで、法律上も別の訴えとして定められています(人事訴訟法2条2号)。具体的には、次の3つのケースで、家庭裁判所の手続きにより認知の無効や取消しを求められる可能性があります。

  • ①認知した子どもが実の子どもではないケース
  • ②第三者が無断で認知届を提出したケース
  • ③詐欺・強迫によって認知させられたケース

このほか、成年の子の認知での本人の承諾(民法782条)や、胎児の認知での母親の承諾(783条1項)など、法律が承諾を求めている場面で承諾を得ずに認知したときも、承諾する立場の人が効力を争える場合があります。

①認知した子どもが実の子どもではないケース

認知した子が実の子でなければ、認知について「反対の事実」があるとして、認知の無効を主張できます。令和6年4月1日施行の改正民法786条は、認知の無効の訴えを次のように定めています。

(認知の無効の訴え)

第786条 次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(中略)から7年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、第三号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。

一 子又はその法定代理人 子又はその法定代理人が認知を知った時

二 認知をした者 認知の時

三 子の母 子の母が認知を知った時

「反対の事実」とは、認知をした者と子の間に血縁関係がないなど、親子関係が成立しないことを示す事実を指します。

改正前の786条は、無効を主張できる人を「子その他の利害関係人」としていたため、認知した父親本人がこれに含まれるかが争われていました。最高裁の判例は、認知をした父親も無効を主張でき、実の子でないと承知のうえで認知していた場合でも結論は変わらないと判断しています(最判平成26年1月14日)。改正後の786条1項2号は、この考え方を受けて「認知をした者」を訴えを起こせる人として明記しました。

認知の無効を主張するなら、期間にも注意が必要です。認知をした父親は、原則として認知の時から7年以内に訴えを起こさなければなりません(子や母親の場合は、認知を知った時から7年以内が原則です)。令和6年4月1日より前にされた認知には改正前の規定が適用されるため、この期間の定めはありません(令和4年改正法附則5条2項)。

②第三者が無断で認知届を提出したケース

父親の知らないうちに、第三者が父親の名前で認知届を出していた場合、その認知は無効です。最高裁は、認知する本人の意思に基づかない届出による認知は、血縁上の親子関係があるときでも無効と判断しています(最判昭和52年2月14日)。戸籍の記載を直すには、「認知の無効・取消しを求める手続きの流れ」で説明する家庭裁判所の手続きで無効を確認してもらいます。

ただし、実の子であれば、子や母親から認知の訴え(民法787条)を起こされ、裁判で改めて父子関係が認められることがあります。その場合は、父親として養育費を支払う義務も生じます。

なお、父親になりすまして認知届を出した人は、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)や電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)に問われるおそれがあります。認知届を無断で出されないための備えや、すでに出されてしまった場合の対応は「認知届を勝手に提出されたら?防ぐ対策と取り消す方法」をご参照ください。

③詐欺・強迫によって認知させられたケース

だまされたり脅されたりして認知した場合は、本人の自由な意思による認知とはいえないため、認知の取消しを求められることがあります。この場合に使うのは、無効ではなく「認知の取消し」の手続きです。

もっとも、詐欺や強迫があっても、認知が血縁上の親子関係と合っているなら取消しを認めるべきではないとする見解もあります。実の子かどうかを含め、個別の事情によって結論が分かれます。

認知の無効・取消しを求める手続きの流れ

認知を取り消したい、無効にしたいと考えたときは、家庭裁判所の手続きを使います。認知の無効や取消しは、家族関係を裁判で争う「人事訴訟」の対象ですが、いきなり訴えを起こすことはできず、先に家庭裁判所での調停を経なければなりません(家事事件手続法257条1項)。

調停の申立先は、相手方が住んでいる地域の家庭裁判所か、当事者どうしで決めた家庭裁判所です(同法245条1項)。

調停で、当事者双方が認知の無効(または取消し)に合意し、その原因についても争わないときは、家庭裁判所が必要な事実を調べたうえで、合意を正当と認めれば「合意に相当する審判」をします(同法277条1項)。審判の告知から2週間以内に異議の申立てがなければ、この審判は確定判決と同じ効力をもちます(同法279条2項・281条)。

合意ができず調停が成立しないときは、認知無効(または取消し)の訴えを起こし、判決で判断してもらいます。訴えは、父親か子の住所地(亡くなっている場合は亡くなった当時の住所地)を管轄する家庭裁判所に起こし、当事者の合意で別の裁判所を選ぶことはできません(人事訴訟法4条1項)。

審判や判決が確定したら、確定した日から1か月以内に、市区町村役場へ戸籍の訂正を申請します(戸籍法116条1項)。認知を無効とする審判や判決であれば、認知は初めからなかったものとして扱われます。

認知の無効・取消しを求める手続きの流れ(家庭裁判所に調停を申し立てる→合意し原因を争わなければ合意に相当する審判→2週間以内に異議がなければ確定→確定から1か月以内に戸籍の訂正を申請。不成立なら認知の無効・取消しの訴えへ)

調停の進み方は、認知を求める側の調停を扱った「認知調停とは?申立て方法と流れを解説」も参考になります。手続きの進め方に迷ったときは、弁護士に相談しながら進めてください。

認知の取り消しでお悩みの方は弁護士にご相談ください

一度した認知は原則として取り消せず、自分の意思で認知した実の子であれば、養育費の支払い義務も戸籍の記載も残ります。一方で、血縁がなかった、本人の意思によらない届出だった、だまされたり脅されたりして認知した、といった事情があれば、認知の効力を争える余地があります。

ただ、認知の取り消しや無効を求める場面では、どの事情に当たるかの見極めや、調停・訴訟での主張の組み立てに法的な知識が欠かせません。令和6年4月1日以降の認知には期間の制限もあるため、早めに見通しを立てることが大切です。

「認知した子が本当に自分の子か確かめたい」「養育費の支払いが生活を圧迫している」など、お一人で悩みを抱えている方は、早めにご相談ください。

当事務所では、認知問題をはじめとする男女トラブルの解決に豊富な実績を持つ弁護士が、ご相談をお受けしております。家族や職場に影響が及ばないよう配慮しながら、穏便な解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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