
「認知したものの、本当に自分の子なのか確信が持てない」「認知後に事情が変わり、なんとか取り消せないだろうか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。養育費の負担や戸籍への記載など、認知後にさまざまな事情が生じることは珍しくありません。
結論からお伝えすると、認知の取り消しは民法で原則として禁止されています。ただし、認知した子どもが実の子どもでない場合や、詐欺・強迫による認知など、一定の条件を満たせば例外的に無効を主張することが可能です。
この記事では、男女トラブルに強い弁護士が、次の点をわかりやすく解説します。
- 原則として認知の取り消しが認められない理由
- 例外として無効を主張できる4つのケース
- 家庭裁判所での手続きの流れと費用の目安
- 取り消せない場合の解決策(養育費・戸籍)
なお、認知の取り消しについてお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。
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認知を取り消すことはできないのが原則
認知は取り消すことができないのが原則です(民法785条)。
(認知の取消しの禁止)
第785条
認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。
認知を行うと、認知した子供との間に法律上の親子(父子)関係が生じ、扶養する法的義務を負うことになります。具体的には養育費の支払いが必要となり、滞納した場合は差押えなどの強制執行を受けることもあります。
このように、認知は、認知によって利益を受ける子どもや母親を保護する観点から、自由に取り消すことができない仕組みとなっています。
例外的に認知を取り消すことができるケース
上記の通り、原則として認知を取り消すことはできませんが、次のケースでは例外的に認知を取り消す(無効を主張する)ことが可能です。
- ①認知した子どもが実の子どもではないケース
- ②承諾権者の承諾を得ないで認知がなされたケース
- ③第三者が勝手に認知届を提出したケース
- ④詐欺または強迫により認知がなされたケース
①認知した子どもが実の子どもではないケース
認知した子どもが実の子どもでない場合、認知の取り消し(無効の主張)が可能とされています。令和6年4月1日施行の改正民法786条は、認知の無効の訴えについて次のように定めています。
(認知の無効の訴え)
第786条 次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(中略)から7年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。
一 子又はその法定代理人 子又はその法定代理人が認知を知った時
二 認知をした者 認知の時
三 子の母 子の母が認知を知った時
条文中の「反対の事実」とは、認知をした者と子の間に親子関係が成立しないことを示す事実を指します。改正により、認知をした父親自身も認知の無効の訴えを提起できることが明文化されました。
改正前の民法786条は、認知の無効主張を「子その他の利害関係人」に認めていました。認知をした父親本人がこの利害関係人に含まれるかが、解釈上の争点となっていたのです。
この点について最高裁は、「認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合でも、認知の無効を主張できる」と判断しています(最判平成26年1月14日)。
改正後の民法786条1項2号では、この判例の趣旨が条文に取り込まれ、「認知をした者」が無効の訴えの提起権者として明示されました。
②承諾権者の承諾を得ないで認知がなされたケース
認知においては、以下のケースで承諾権者の承諾が必要とされています。
- 成年の子の認知(民法782条)
- 胎児の認知(民法783条1項)
- 死亡した子の認知(民法783条3項)
これらのケースで承諾なしに認知が行われた場合、承諾権者は、認知の効力を争うことが認められる場合があります。
民法782条は、「成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない」と規定しています。本人の意思を尊重するため、承諾なしに認知が行われた場合には、成年の子自身が認知の効力を争うことが考えられます。
胎児の認知については、子の法的地位を早期に確立するために認められていますが、母親の権利を保護する観点から、母親の承諾が必要とされています(民法783条1項)。
さらに、死亡した子に直系卑属(子や孫)がいる場合、認知が認められることがあります。その直系卑属が成年である場合には承諾が必要とされており(民法783条3項)、承諾を得ずに認知された場合は、認知の効力を争う余地があります。
③第三者が勝手に認知届を提出したケース
父親の意思に反して第三者が勝手に認知届を提出した場合、「認知無効の訴え」によって認知の無効を求めることができます。父親が認知の意思を有していなかったことを家庭裁判所で立証できれば、認知の無効が認められる可能性があります。
父親になりすまして認知届を提出した行為は、有印私文書偽造罪(刑法159条)や公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に該当し得るため、刑事責任を問われるおそれもあります。
ただし、無断で提出された認知届が裁判で無効とされるのは、父子の間に血縁関係がない場合に限られます。父子間に血縁関係がある場合、子どもや母親は裁判所を通じて認知を求めることができ、その場合は父親に養育費の支払い義務が発生します。
認知届の無断提出を未然に防ぐ対策については「認知届の勝手な提出を防ぐ対策と提出されてしまった場合の対処法」で詳しく解説しています。
④詐欺または強迫により認知がなされたケース
詐欺または強迫によって認知がなされた場合、認知の取り消し(無効の主張)が認められる可能性があります。本人の自由な意思に基づく認知とはいえないためです。
ただし、学説には反対意見もあります。仮に詐欺・強迫があっても、認知が生物学的な親子関係を反映している場合は取り消しを認めるべきではないとする見解もあり、最終的には個別の事情に応じた裁判所の判断が求められます。
認知を取り消す方法
認知を取り消す(無効を主張する)には、家庭裁判所での手続きが必要です。申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所となります。
なお、令和6年4月1日以降になされた認知については、認知無効の訴えに7年の出訴期間が設けられました。認知をした父親は認知の時から7年以内、子や母親は認知を知った時から7年以内に訴えを提起する必要があります。
同日より前になされた認知には出訴期間の制限はありませんが、認知の無効を検討している場合は、早めに弁護士へ相談されることをおすすめします。
家庭裁判所への申立てに必要な書類は次のとおりです(収入印紙1,200円分を貼付)。
- 申立書(家庭裁判所所定の書式)
- 戸籍謄本(申立人および認知された子のもの)
- 認知届書の記載事項証明書(認知届を提出した市区町村役場で取得可能)
- 連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって金額・種類が異なるため事前に確認)
申立て後、家庭裁判所で調停手続きが進められます。調停では、DNA型鑑定により、認知した子どもが実の子どもでないことを立証するのが一般的です。鑑定費用は約10万円前後で、原則として鑑定を申し立てた側が負担します。
調停の具体的な申立て方法や流れは「認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?」もあわせてご確認ください。
調停で当事者双方が認知の無効に合意した場合、家庭裁判所は「合意に相当する審判」(調停の合意に判決と同じ効力を与える審判)を行います。確定後、本籍地の市区町村役場で戸籍訂正の手続きをします。
調停で合意が得られない場合は、認知無効の訴えを提起し、訴訟で裁判所の判断を仰ぐことになります。判決により認知が無効と確定すれば、その認知は初めから無効として扱われ、戸籍訂正が可能となります。
【ケース別】認知を取り消すことができない場合の解決法
前述のとおり、認知した子どもが実の子どもである場合、認知を取り消すことはできません。それでも、別の方法で抱えている問題を解決していく道はあります。以下では、抱えている問題ごとの解決方法を紹介します。
養育費を支払いたくないという場合
「養育費を支払いたくない」という理由で認知の取り消しを考える方もいるかもしれません。しかし、一度認知すると法律上の親子関係が確立されるため、養育費の支払い義務を一方的に免れることはできません。
ただし、養育費の減額は可能な場合があります。収入の減少や再婚による扶養家族の増加など、生活状況が変わった場合には減額を求めることができます。
まずは相手と話し合い、合意に至らない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。認知された子の養育費の相場や具体的なケースについては「認知された子の養育費はどうなる?相場・請求手続きと期間を解説」で詳しく解説しています。
自分の戸籍に子供の氏名等(戸籍)が残るのが嫌な場合
非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)として認知された後、父母が婚姻し、所定の手続きを経て子が父母の戸籍に入った場合、その後に父母が離婚しても、子どもが自動的に母親の戸籍へ移るわけではありません。
母親が子どもを自身の戸籍に入れるには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得たうえで入籍届を提出する必要があります。手続きを行わない限り、子どもは父親の戸籍に残ります。
子どもが父親の戸籍に残っている間、母親は子の直系尊属として戸籍の附票(戸籍に記載された人の住所履歴の記録)を請求できます。そのため、父親が引っ越しをしても新しい住所を知られてしまう可能性があります。
こうした状況を回避する手段の一つとして、戸籍の本籍地を別の市区町村へ移す(転籍する)方法が検討されることがあります。しかし、転籍による住所秘匿効果は限定的である点に注意が必要です。
転籍をしても、元の戸籍(除籍)の戸籍事項欄には新本籍地が記載されるため、旧本籍地で除籍を取得されれば新本籍地は判明します。また、令和元年6月20日施行の住民基本台帳法施行令改正により、戸籍の附票の除票の保存期間が従来の5年から150年に延長されたため、過去の住所履歴も長期間残ります。
さらに、転籍は戸籍に記載された人全員が一緒に新しい本籍地へ移る手続きです。父親の戸籍に子どもが残ったまま転籍しても、子どもも一緒に新しい戸籍に記載され、戸籍上の表示の問題は解消されません。父親の戸籍から子どもの記載を完全になくすには、母親側で「子の氏の変更許可」を得て子どもを母親の戸籍に入籍させるなどの手続きが必要ですが、これは父親側からは実現できません。
また、母親は子の直系尊属として、子が記載されている戸籍の附票を請求できる立場にあるため、転籍後の住所が判明する可能性も残ります。このように戸籍と住所を完全に切り離すことは制度上難しい点に注意が必要です。認知と戸籍の関係について詳しくは「婚外子(非嫡出子)を認知すると戸籍はどうなる?記載と手続き」をご参照ください。
認知の取り消しでお悩みの方は弁護士にご相談ください
認知は原則として取り消すことができません。ただし、子との間に血縁関係がない場合や承諾なしに認知がなされた場合などには、例外的に無効を主張できる可能性があります。取り消しが認められない場合でも、養育費の減額や戸籍の転籍といった方法で問題に対処できる余地があります。
認知の無効を主張するには、家庭裁判所での調停や訴訟、DNA鑑定の実施、法的な主張の組み立てなど、専門的な対応が必要です。養育費の減額や戸籍に関する手続きでも、法的知識に基づく判断が欠かせません。
「認知した子が本当に自分の子か確かめたい」「養育費の支払いが生活を圧迫している」「戸籍に残る子どもの記載をどうにかしたい」など、お一人で抱え込んでいる状況がありましたら、早めに専門家にご相談ください。
当事務所では、認知問題をはじめとする男女トラブルの解決に豊富な実績を持つ弁護士が、全国どこからでも無料でご相談をお受けしております。家族や職場に影響が及ばないよう配慮しながら、穏便な解決を目指します。まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

