認知を取り消すことはできる?取り消せない場合の対処法も解説

「一度認知したが、取り消したい」と考えている方も多いのではないでしょうか?認知を取り消したい理由は人それぞれですが、法律上、認知の取り消しは原則として認められていません。しかし、一定のケースでは例外的に認知を取り消すことが可能な場合があります。また、取り消しができない場合でも、状況に応じた解決策を講じることができます。

本記事では、子どもの認知問題に強い弁護士が、次の点について詳しく解説していきます。

  • 認知を取り消すことはできるのか
  • 例外的に取り消せるケースとは
  • 認知を取り消す方法
  • 認知を取り消すことができない場合の対処法

認知に関する悩みを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

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認知を取り消すことはできないのが原則

認知は取り消すことができないのが原則です(民法第785条)。

(認知の取消しの禁止)
第785条
認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。

認知を行うと、認知した子供との間に法律上の親子(父子)関係が生じ、子供を扶養する法的義務を負うことになります。具体的には、養育費を支払っていかなければならず、仮に支払いが滞る場合は差押えなどの強制手段を取られることもあります。

このように、認知は、認知によって利益を受ける子供あるいはその母親のためにも自由に取り消すことができないことになっているのです。

例外的に認知を取り消すことができるケース

上記の通り、原則として認知を取り消すことはできませんが、次のケースでは例外的に認知を取り消す(無効を主張する)ことが可能です。

  • ①認知した子どもが実の子どもではないケース
  • ②承諾権者の承諾を得ないで認知がなされたケース
  • ③第三者が勝手に認知届を提出したケース
  • ④詐欺または強迫により認知がなされたケース

①認知した子どもが実の子どもではないケース

認知した子どもが実の子どもでない場合、認知の取り消し(無効の主張)が可能とされています。

(認知に対する反対の事実の主張)
第786条
子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。

ここでいう「反対の事実」とは、認知をした者と子の間に親子関係が成立しないことを証明する事実を指します。

民法786条は「子その他の利害関係人」に認知の無効を主張する権利を認めていますが、判例(最判平成26年1月24日)は、自ら認知した父親も「利害関係人」に含まれると解しています。したがって、父親が「認知した子は実の子ではなく、親子関係が成立しない」と主張すれば、認知の無効を求めることができます。

さらに、この判例では、父親が子どもと血縁関係がないことを知って認知した場合でも、無効の主張は可能であると判断しています。これは、認知制度の趣旨から、実際に親子関係がない認知を存続させる必要はないためです。

②承諾権者の承諾を得ないで認知がなされたケース

認知においては、以下のケースで承諾権者の承諾が必要とされています。

  • 成年の子の認知(民法782条)
  • 胎児の認知(民法783条1項)
  • 死亡した子の認知(民法783条2項)

これらのケースで承諾なしに認知が行われた場合、承諾権者は認知の取り消し(無効の主張)を求めることができます。

民法782条は、「成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない」と規定しており、本人の意思を尊重するため、承諾なしに認知が行われた場合には、成年の子自身が認知の無効を主張することができます。

また、胎児の認知は、子の法的地位を早期に確立するために認められていますが、母親の権利を保護するため、母親の承諾が必要とされています(民法783条1項但書)。

さらに、死亡した子に直系卑属(子や孫)がいる場合、認知が認められることがありますが、その直系卑属が成年である場合には、その承諾が必要とされています(民法783条2項但書)。この場合、承諾を得ずに認知された場合は、直系卑属が認知の無効を主張できます。

③第三者が勝手に認知届を提出したケース

認知は原則として取り消すことはできませんが、父親の意思に反して第三者が勝手に認知届を提出した場合、「親子関係不存在確認の訴え」を提起することで、認知の無効を求めることができます。

母親や第三者が父親の同意なく認知届を提出した場合、その認知は無効となる可能性があります。父親が認知の意思を有していなかったことを家庭裁判所で立証できれば、認知の無効が認められることがあります。

また、父親になりすまして認知届を提出した場合、有印私文書偽造罪(刑法159条)や公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われる可能性があります。違法な認知届の提出は刑事責任を問われる可能性があるため、慎重に対応する必要があります。

ただし、無断で提出された認知届が裁判で無効とされるのは、父子の間に血縁関係がない場合に限られます。もし父子間に血縁関係がある場合、子どもや母親は裁判所を通じて認知を求めることができます。裁判で親子関係が認められた場合、父親には認知義務が生じ、養育費の支払い義務も発生します。

④詐欺または強迫により認知がなされたケース

詐欺または強迫によって認知がなされた場合、認知の取り消し(無効の主張)が認められる可能性があります。判例では、詐欺や強迫による認知について、本人の自由な意思に基づく認知とはいえないため、取り消しが認められるべきだとする判断が示されています。

一方で、法的な解釈が分かれる部分もあります。学説の中には、仮に詐欺・強迫があったとしても、認知が生物学的な親子関係を反映している場合には、取り消しを認めるべきではないとする意見もあります。これは、子どもの権利や法的地位を安定させるための考え方です。そのため、詐欺や強迫を理由に認知の取り消しを求める場合、個別の事情により裁判所の判断が必要になります。

認知を取り消す方法

認知を取り消す(無効を主張する)ためには、家庭裁判所での手続きを行う必要があります。申し立ては、母親または父親の住所地を管轄する家庭裁判所、または父母が合意して定めた家庭裁判所に対して行います。

まず、家庭裁判所に申立書(1,200円分の収入印紙を貼付)を提出し、手続きを開始します。申し立ての際には、以下の書類を準備する必要があります。

  • 申立書(家庭裁判所所定の書式)
  • 戸籍謄本(申立人および認知された子のもの)
  • 認知届出書の記載事項証明書(認知届を提出した市区町村役場で取得可能)
  • 裁判所の書類郵送時に使用する郵便切手代(家庭裁判所によって金額・種類が異なるため、事前に確認が必要)

申立て後、家庭裁判所において調停手続きが進められます。調停では、DNA型鑑定を実施し、認知した子どもが実の子どもでないことを立証することが一般的です。DNA型鑑定の費用は約10万円前後で、原則として鑑定を申し立てた側が負担します。ただし、裁判所の判断や当事者間の合意によって、相手方に負担を求めることが認められる場合もあります。具体的な費用や負担割合については、裁判所や鑑定機関に確認する必要があります。

調停を経て、父親・母親双方が認知の取消し(無効の主張)に合意した場合、家庭裁判所は「合意に相当する審判」を行います。この審判が確定すると、家庭裁判所から送達される審判書謄本を受け取り、審判の確定証明書を取得します。その後、これらの書類を本籍地の市区町村役場に提出し、戸籍訂正の申請を行います。

調停で合意が得られない場合は、訴訟に移行し、「親子関係不存在確認の訴え」や「認知の無効を確認する訴え」を提起し、裁判所の判断を仰ぐことになります。裁判所が認知を無効と判断した場合、その認知は初めから無効とされ、戸籍の訂正手続きを行うことが可能となります。

【ケース別】認知を取り消すことができない場合の解決法

前述のとおり、認知した子どもが実の子どもである場合、認知を取り消すことはできません。認知を取り消すことができない場合でも、別の方法で抱えている問題を解決する必要があります。以下では、抱えている問題ごとの解決方法を紹介します。

養育費を支払いたくないという場合

「養育費を支払いたくない」という理由で認知の取り消しを考える方もいるかもしれません。しかし、一度認知をすると、法律上の親子関係が確立されるため、養育費の支払い義務を一方的に免れることはできません

ただし、養育費の減額は可能な場合があります。収入の減少や再婚による扶養家族の増加など、生活状況が変わった場合には、養育費の減額を求めることができます。まずは相手と話し合いを行い、それでも合意に至らない場合には、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることができます。調停では、養育費の減額を求める理由を具体的に説明し、裁判所が適正な金額を判断します。

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自分の戸籍に子供の氏名等(戸籍)が残るのが嫌な場合

非嫡出子として認知された後に父母が婚姻すると、子どもは嫡出子となり、通常、父母の戸籍に入ります。その後、離婚しても、子どもが自動的に母親の戸籍へ移るわけではなく、母親が子どもを自身の戸籍に入れるためには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得たうえで、入籍届を提出する必要があります。手続きを行わない限り、子どもは父親の戸籍に残ることになります。

この場合、元配偶者は子どもの直系尊属として、父親の戸籍の附票を取得することができます。これにより、父親が引っ越しをした場合でも、新しい住所を知られてしまう可能性があります。

こうした状況を回避したい場合、戸籍の本籍地を別の市区町村へ移す(転籍する)ことで、新しい戸籍が作成され、その戸籍には自分の氏名のみが記載されるようになります。これにより、元の戸籍から子どもの名前をなくすことができます。

ただし、転籍をしても、元配偶者が戸籍の附票を取得する正当な理由があると認められた場合には、新しい住所を知られてしまう可能性があるため、完全に情報を隠すことは難しい点に注意が必要です。

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まとめ

一度行った認知は、原則として取り消すことができません。そのため、認知を行う際は慎重な判断が必要です。

認知の取り消しが認められない場合でも、養育費の減額や戸籍の扱いなど、具体的な問題に対して適切な対応を取ることが可能です。状況に応じた法的手続きを検討し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが重要です。

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