認知した父親は親権を取得できる?取得の方法について弁護士が解説

交際相手との間に子供を設けたものの、相手の子育てに不安を感じ、ご自身が子供を引き取って子供を育てていきたいと考える方もおられるでしょう。

しかし、子供を引き取るには、基本的にあなたが子供の親権者であることが必要ですが、そもそもあなたは子供の親権者なのでしょうか?

本記事では、はじめに子供を認知しても子供の親権者ではないことをご説明した上で、認知した父親が親権を取得する方法について、男女問題に強い弁護士が解説してまいります。

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認知したからといって親権を取得できるわけではない

まず、確認しなければならないのは、男性が子供を認知したからといって親権を取得できるわけではないという点です。

認知の対象となる子供は、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供です。

そうした子供のことを非嫡出子といいます。

そして、非嫡出子の親権は母親が単独で取得でします。

母親の場合、子供が母親のお腹から生まれたこと(子供が実の子供であること)は医師が作成する出生証明書で証明が容易だからです。

子供を生んだ後は、出生日を含めて14日以内に市区町村役場に出生届を提出しなければいけませんが、出生届の「父母の氏名 生年月日」の欄(親権者に関する欄)には母親の氏名・生年月日のみを記載します。

出生届の提出を受けた役場の担当者は出生証明書を基に、届出のあった子供が母親の実の子供であることを確認します。

そして、出生届が受理されれば、母親が公的に子供の親権者となるのです。

他方で、上記の過程で男性が、自分自身を親権者とする手続きを踏めないことはお分かりいただけると思います。

その理由は、もちろん、男性の場合、女性と異なり、自分のお腹から子供を産んだという自然的事実がないからです。

そのため男性用の出生証明書なるものは存在せず、役場に「子供の親です、親権者です」と届け出ても受理してくれず、親権者となることはできないというわけです。

親権を取得するには、家庭裁判所に対して調停を申し立てることが必要

それでは、前述のようなケースの場合、男性が子供の親権者になるにはどうすればよいでしょうか?

それは、家庭裁判所に対して、親権者変更調停を申し立てることです。

親権者変更調停とは、家庭裁判所で親権者をあなた、あるいは相手女性のいずれにするのが適当かを決める手続きのことです。

そして、調停手続きを経た上で、家庭裁判所からあなたが親権者となることへの許可を得てはじめてあなたは子供の親権を得ることができるのです。

調停・審判期日(家庭裁判所で調停手続きが行われる日)は、おおよそ1カ月~2か月に1回のペースで開かれますが、お互いが主張を譲らず、話し合うことが多くなればなるほど開かれる調停期日は多くなり、手続きの期間も長期化します。

手続きが長期化することが予想され、子供を母親の下で監護させることが適当でないと考える場合には、以下の3つの手段を取ることも検討しなければなりません。

  • 女性の親権者としての職務執行を停止させるための審判・保全処分の申立て
  • 上記の間、あなたを親権者の職務執行代行者と認めてもらうための審判・保全処分の申立て
  • あなたに子供を引き渡してもらうための審判・保全処分の申立て

 これらの申立てが認められれば、親権者変更に関する結論を得る前に、子供と一緒に暮らすことが可能となります。

もっとも、以上の処分は、あなたがまだ親権者でないにもかかわらず子供と一緒に暮らすことを認めるものですから、申立てが認められるためのハードルは高いと言わざるをえません。

あなたの申立てが認められるのは、相手女性に虐待、育児放棄が認められるなど、子供をあなたのもとで生活させる緊急性・必要性が高い場合ということを念頭に入れておきましょう。

認知した父親が親権を取得するためのポイント

裁判所は、よほどの事情がない限り、親権者変更を許可しません。

なぜなら、親権者を変更するということは、現在の子供の生活環境を変化させることを意味するところ、裁判所は、子供の成長のためには、可能な限り、現在の子供の生活環境を変化させないほうがよいと考えるからです。

そのため、あなたが調停、審判を通じて親権を得るには、現在の子供の生活環境を変化させても子供の利益になると認めてもらうことが必要であり、そのためには、以下の点に留意されておくとよいでしょう。

子育てに積極的に関わっておく

言い換えると監護実績を作っておくということです。

そして、調停、審判で監護実績を調停委員や裁判官にアピールできるよう、子育てを行った日時、内容、その際の子供の様子などを日記や写真、動画などに記録しておくとよいです。

子育てに積極的に関与すれば子供との信頼関係が醸成され、子供からの信頼を得られやすくなり、親権の獲得に有利に働きます。

子供と離れて暮らしている場合は、面会交流を行うことも一つの方法です。

相手が面会交流に消極的な場合は、家庭裁判所に対して面会交流調停を申し立てることも一つの方法です。

相手が親権者として適任でないことを示す証拠を確保する

相手が親権者として適任でないことを示す事実しては、虐待や育児放棄などがあります。

面会交流などを通じて子供からSOSのサインを受け取った場合は、日記や音声、動画などに証拠を残しておきましょう。

なお、相手の「子育ての仕方や教育方針が気に食わない」などという理由で親権者変更の申立てを検討される方もおられます。

しかし、冒頭で述べたように、親権者が母親から父親へ変更されるのは、あくまで「子供の利益のためになる」と認められた場合です。

あなたが上記のように考えても、依然として子供を現在の環境に置いた方が子供の利益のためになる、と判断される可能性がありますので注意が必要です。

まとめ

子供を認知しても親権を取得したことにはなりません。

認知した父親が親権を獲得するには、家庭裁判所に対して、母親からあなたへ親権者を変更するための調停・審判を申し立て、親権者を変更することの許可を得る必要があります。

許可を得るには、普段から積極的に子育てに関与するなどして、子供との信頼関係を構築しておく必要があります。

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