認知しない場合、養育費は請求できる?合意書で取り決める方法

「子どもを認知しない男性に養育費を請求できるのか」「認知はしないまま、お金を払って関係を整理できないか」と、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。結論からいうと、父親が認知していない間は、父親に養育費の支払いを法的に義務づけることはできません。もっとも、受け取る道がないわけではありません。父親と合意して取り決める方法と、認知を求めて請求する方法の2つです。

一方で、払う側が「お金を払う代わりに認知は求めない」という約束を取り付けても、その約束は無効とされています。合意書にサインする前に、書いても無効になる約束がないかを確かめておくことが大切です。

この記事では、男女トラブルに強い弁護士が、次の点を整理して解説します。

  • 認知しない場合に養育費は請求できるのか
  • 認知しないまま金額や支払い方法を取り決める方法
  • 一括払いや合意書・公正証書の注意点
  • 認知を求めて請求する流れ

お読みいただくことで、合意で受け取る道と、認知を求めて請求する道のそれぞれについて、進め方と注意点がわかります。

なお、認知の問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。

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認知しない場合、養育費はどうなる?

父親が子どもを認知していない場合、母親や子どもが父親に養育費を請求できる法律上の根拠はありません。ただし、父親が支払いに応じれば合意によって受け取れますし、父親に認知を求めて父子関係が生じれば、養育費を請求できるようになります。

認知しない父親から養育費を受け取る2つの道(父親が支払いに応じる→合意書・公正証書で取り決める/応じない→認知を求める→認知後に養育費を請求する)

まずは前提として、認知とは何か、認知しないと養育費の扱いがどうなるのかを確認しておきましょう。

認知とは?法律上の父子関係を生じさせる手続き

認知とは、婚姻関係にない父母から生まれた子ども(嫡出でない子。非嫡出子ともいいます)について、法律上の親子関係を成立させる手続きです。民法779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めていますが、母と子の親子関係は出産の事実によって認められるため、実際に認知が問題になるのは父親との関係です。

血縁関係があっても、認知がなければ父親は法律上の親として扱われず、子どもの戸籍の父の欄も空欄のままです。認知によって父子関係が生じると、養育費を含む扶養義務や相続権といった法律上の関係が生まれます。認知の効果や、認知しない場合の不利益については「子供を認知しないとどうなる?デメリットと認知してもらう方法」で詳しく解説しています。

認知には、父親が自分の意思で役所に届け出る「任意認知」と、家庭裁判所の調停や裁判を通じた「強制認知」があります。手続きの流れは、後半で順に説明します。

認知がなければ養育費を支払う法律上の義務はない

親が子を養う義務(扶養義務)は、法律上の親子の間に生じます。民法877条1項は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています(直系血族とは、親子や祖父母と孫のように、血筋が上下につながる親族のことです)。しかし、認知していない父親と子どもとの間には、法律上の父子関係がありません。そのため、認知していない父親には、養育費を支払う法律上の義務はありません。

認知がないままでは、未婚のシングルマザーや子どもが家庭裁判所の調停や審判(裁判官が判断する手続き)を申し立てても、家庭裁判所は父親に養育費の支払いを命じられません。

父親が自分から認知しない場合でも、子ども(未成年なら法定代理人の母親が代わって)は、家庭裁判所の調停や認知の訴え(民法787条)で認知を求められます。

認知しないまま養育費を取り決める方法

認知しない父親は、支払いの義務がなくても、任意に払うと約束して母親との間で養育費を取り決められます。ただし、あくまで合意に基づく支払いなので、約束が守られないときに備えた取り決め方が重要になります。取り決めは、金額、支払い方法、書面化の順に進めるとスムーズです。

金額は養育費算定表を目安に話し合う

認知しない場合の養育費には、法律で決まった金額はなく、父親と母親の話し合いで決めます。目安になるのが、裁判所のウェブサイトで公表されている養育費算定表(2019年12月に公表された改定版)です。父母それぞれの収入と、子どもの年齢・人数から、養育費の月額の目安を読み取れます。

算定表は、もともと離婚や認知の後に養育費を決める場面のためのものですが、認知なしの任意の支払いでも、金額を交渉する出発点になります。あわせて、18歳(高校卒業)まで、20歳まで、22歳(大学卒業)までといった支払いの期間も決めておきます。

一括払いにする場合は総額の決め方と注意点を確認する

認知しないままでも、当事者が合意すれば、養育費を毎月ではなく一括で払う(受け取る)こともできます。一括払いの金額に決まった相場はないため、総額は「月額×支払う月数」で考えるのが出発点で、たとえば月5万円を子どもが0歳から20歳になるまで払う計算なら、5万円×240か月で1,200万円です。

一括払いでは、将来の分を先にまとめて受け取ることになるため、その間の利息にあたる分(中間利息)を差し引いて総額を調整することがよくあります。差し引く割合の目安として、民法の法定利率(年3%)が参照されることもあります。

養育費の一括払いを選ぶ前に、次のようなデメリットを確認しておきましょう。

  • 払う側の父親は、一度に多額の養育費を用意する必要があり、払った後に収入が減っても返還を求めるのは難しい
  • 子どもの進学や病気で費用が増えたとき、追加の支払いをめぐって父母の間で争いになることがある
  • 受け取る側の母親や子どもに、まとまった養育費への贈与税がかかる可能性がある

贈与税については、扶養義務者から生活費や教育費として受け取るお金のうち、通常必要と認められるものには贈与税がかからない特例がありますが(相続税法21条の3、国税庁タックスアンサーNo.4405)、認知していない父親は税法上の扶養義務者にあたらないため、この特例を前提にできません。一括でも毎月でも、年110万円の基礎控除(贈与税がかからない枠)を超える分は贈与税の対象になりうるので、支払う前に税金の扱いを税理士に確認しておくと安心です。

取り決めは合意書・公正証書に残し、無効になる約束に注意する

認知しないまま払う養育費は合意に基づく支払いなので、口約束だけでは、後から「そんな約束はしていない」と争いになりかねません。金額・支払い方法・期間は、合意書(誓約書)などの書面に残しておきましょう。一括払いなら、総額の計算の内訳も書いておきます。

さらに確実にしたい場合は、公証役場で公正証書(公証人が作成する公文書)にする方法があります。公正証書に「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」旨の文言(強制執行認諾文言)を入れておけば、支払いが止まったときに、裁判を経ずに父親の給与や預金などの財産を差し押さえる手続き(強制執行)に進めます(民事執行法22条5号)。

ここで注意したいのが、「養育費を払う代わりに、今後は認知を求めない」という約束です。合意書にこう書いても、認知を求めない約束(認知請求権の放棄)は無効とされています。最高裁判所も「子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質およびこれを認めた民法の法意に照らし、放棄することができないものと解するのが相当である」と判示しています(最高裁昭和37年4月10日判決)。権利を手放せないという点では、扶養を受ける権利の処分を禁じる民法881条も、この考え方の参考になります。

また、母親が認知請求権の放棄と引き換えに解決金を受け取った後に認知を求めた事案で、その請求を認めた裁判例もあります(名古屋高等裁判所昭和52年10月31日判決)。認知したくない父親からすれば、お金を払っても、後から認知を求められる可能性が残ります。合意書や公正証書の文案は、サインする前に弁護士に確認してもらうと安心です。

父親に認知を求めて養育費を請求する流れ

合意ではなく法律上の権利として養育費を受け取るには、まず父親に認知を求めます。父親が認知しないまま支払いにも応じない場合も同様です。父親から「認知しない」と言われたときの対処は「「認知しない」と言われた!認知してくれない時の4つの対処法」をご参照ください。

話し合いで任意認知を求める

養育費を請求できるようにするため、まずは認知しない父親と話し合い、自分の意思で認知してもらうよう求めます。父親が応じれば、父親が市区町村役場に認知届を提出することで認知が成立します(民法781条1項)。これが任意認知です。手続きや必要書類は「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」にまとめています。

子どもが生まれる前の妊娠中でも、母親の承諾があれば、父親はお腹の中にいる子を認知できます(民法783条1項)。これを胎児認知といいます。

家庭裁判所に認知調停を申し立てる

話し合いでも父親が認知しない場合は、いきなり裁判を起こすのではなく、原則としてまず家庭裁判所に認知調停を申し立てます(調停前置主義。家事事件手続法257条1項)。調停では、調停委員を交えた話し合いが行われ、必要に応じてDNA鑑定も実施されます。

調停で父親が自分の子であると認めて合意し、父子関係の原因となる事実にも争いがない場合は、家庭裁判所は必要な事実を調べたうえで、その合意が正当と認めれば、合意に相当する審判(合意の内容どおりに家庭裁判所が出す審判)をします(家事事件手続法277条1項)。父親が合意しなければ調停は不成立で終わり、次は認知の訴え(裁判)に進みます。申立ての方法は「認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?」をご覧ください。

調停で決まらなければ認知の訴えを起こす

認知しない父親との調停が不成立になったときは、家庭裁判所に認知の訴え(裁判で父子関係を判断してもらい、判決によって認知の効果を生じさせる手続き)を起こします。民法787条により、訴えを起こせるのは子ども、その直系卑属(子どもの子など)、またはこれらの者の法定代理人です。子どもが未成年の場合は、親権者として法定代理人にあたる母親が子どもに代わって訴えを起こせます。

認知の訴えでは、DNA鑑定の結果や交際の経緯などの証拠をもとに、裁判所が父子関係を判断します。父親がDNA鑑定を拒否しても、その態度やほかの証拠から父子関係が認められることがあります。判決で父子関係が認められれば、父親の意思にかかわらず認知の効果が生じ、養育費を請求できます。強制認知の流れや費用は「強制認知とは?手続きの流れと費用、負けるケースを弁護士が解説」もあわせてご確認ください。

認知後に過去の分も含めて養育費を請求する

認知後の養育費は父母の協議で定め、協議がまとまらないときや協議ができないときは家庭裁判所が定めます(民法788条・766条)。その場合は、家庭裁判所に養育費の調停や審判を申し立てます。

認知は、子どもが生まれた時にさかのぼって効力を生じます(遡及効。民法784条)。この考え方に立って、認知前の出生時からの養育費の支払いを認めた裁判例(大阪高等裁判所平成16年5月19日決定)があります。一方で、請求した時点より前の分は認められないことも多く、判断は分かれています。過去の分も求めたい場合は、認知された後、早めに請求することが大切です。

なお、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚の際に養育費の取り決めがなくても一定額を請求できる「法定養育費」の制度が設けられ、この規定は父が認知する場合にも準用(同じように適用)されます(民法788条)。父親が認知しないままの段階では父子関係がないため、この制度は使えません。認知後の養育費の請求手続きは「認知された子の養育費はどうなる?相場・請求手続きと期間を解説」で解説しています。

認知しない相手との養育費の問題は弁護士にご相談ください

父親が認知しない間は支払義務がなく、養育費を受け取るには、父親と話し合って合意するか、認知を求めたうえで請求するか、のいずれかを選ぶことになります。どちらを選ぶかで、必要な手続きも、書面に残すべき内容も変わります。

母親の側では、父親が話し合いに応じないときに認知調停や認知の訴えへ進むか、合意した内容をどう書面に残すかの判断が、受け取れる金額や時期を左右することがあります。父親の側では、認知を求めない約束が無効とされるため、支払いを済ませた後でも認知を求められる余地は残ります。合意書の書き方や一括払いの額、贈与税の扱いは、払う側・受け取る側のどちらも事前に確認しておく必要があります。弁護士に相談すれば、こうした見通しを立てたうえで、相手方との交渉や書面の作成、調停の申立てを任せられます。

連絡に応じない相手とのやり取りや、周囲に知られずに解決したい場合の交渉を当事者だけで進めるのは、精神的な負担も小さくありません。

当事務所では、認知や養育費をめぐる男女間のトラブルについて、ご事情に配慮しながら穏便な解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

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