認知された子の養育費はどうなる?相場・請求手続きと期間を解説

「認知された子の養育費はいくらもらえるのか」「認知してくれない相手にも請求できるのか」。未婚で子を育てる母親にとって、こうした疑問は切実なものではないでしょうか。

認知されると父親には子を扶養する義務が生じ、母親は嫡出子と同じ算定表で計算した金額を父親に請求できます。未婚で生まれた子だからといって、金額面で不利になることはありません。たとえば父親が会社員で年収400万円、母親に収入がなく子が1人(14歳以下)なら、月4万円〜6万円が目安です。ただし、いつから請求できるのかと、認知をどのように得るのかには、離婚の場合とは異なる注意点があります。いつまで受け取れるのか、どうやって支払いを確保するのかも、あわせて確認しておきましょう。

本記事では、男女トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。

  • 認知された子の養育費の相場
  • いつからいつまで請求できるか
  • 確実に受け取るための手続き
  • 任意認知と強制認知の進め方

お読みいただくことで、ご自身のケースで請求できる金額の目安と、今日から何をすべきかを整理できます。

なお、養育費のことでお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。

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認知すると養育費はどうなる?

認知されると、父親と子のあいだに法律上の親子関係が生じ、母親から父親へ養育費を求められるようになります。認知とは、婚姻関係のない男女のあいだに生まれた子(「非嫡出子」「婚外子」といいます)を、父親が自分の子であると認める手続きです(民法779条)。

認知には、父親が自らの意思で認知届を出す「任意認知」と、父親が応じない場合に裁判所の手続きで認めさせる「強制認知」があります。子が生まれる前の「胎児認知」や、遺言による認知も可能です。認知の制度そのものについては「子供の認知とは?効果や手続き、認知しない場合の不利益を解説」で詳しく解説しています。

認知された子に発生する3つの効果

認知で法律上の父子関係が生じると、大きく3つの効果が発生します。

  • 父親が子を扶養する義務を負い、母親は父親に養育費(子の監護費用)を請求できる(民法877条1項・788条)
  • 子は父親の相続人となり、嫡出子と同等の相続分で父親の遺産を相続できる(民法887条1項・900条4号)
  • 親権は原則として母親が行うが、父母の協議によって父母の双方または父親を親権者と定めることもできる(民法819条4項)

このうち親権については「認知した父親は親権者になれる?親権取得の方法を弁護士が解説」にまとめています。

養育費の請求権は、このうち扶養義務から生じます。

認知がなくても養育費は受け取れる?

父親が任意に養育費の支払いを約束し、実際に振り込んでくれるのであれば、認知をしていなくても養育費を受け取ること自体は可能です。

ただし、認知がなければ法律上の親子関係が存在しないため、扶養義務に基づく養育費の請求権は発生しません。父親が支払いを止めても、家庭裁判所の調停や審判で扶養義務に基づく養育費を請求することはできません(約束の内容によっては民事訴訟で支払いを求める余地はありますが、立証や回収の負担は大きくなります)。確実に養育費を受け取りたいなら、認知の手続きを先行させる必要があります

認知された子の養育費はいくら?相場の目安

認知された子の養育費は、離婚した夫婦の子の養育費と同じく、裁判所が公表している養育費算定表(父母の年収と子の年齢・人数から養育費の目安額を導く表。令和元年12月に改定)を基準に決まります。非嫡出子であっても、また任意認知と強制認知のどちらであっても、算定表の使い方や金額に違いはありません。

養育費算定表で考慮される3つの要素

養育費算定表は、次の3つの要素から養育費の目安額を導きます。

  • 子の年齢と人数:「0歳〜14歳」と「15歳以上」の2区分で計算し、15歳以上になると高くなり、人数が多いほど養育費も高くなる
  • 父母それぞれの年収:手取りではなく税引前の額で見る。会社員は源泉徴収票の「支払金額」、自営業者は確定申告書の「課税される所得金額」に基礎控除や青色申告特別控除などを加算した額
  • 職業(会社員か自営業者か):同じ表の年収の目盛りが給与所得者と自営業者で分かれており、同じ額面の年収でも自営業者のほうが養育費は高くなる

養育費を支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収を比べて、義務者のほうが高いほど義務者が負担する養育費は高くなります。逆に、双方の年収が低い場合や、母親の年収が父親より高い場合は、請求できる金額が下がったり、請求が認められなかったりすることもあります。

子の人数別の養育費の相場(ケース別)

認知された子について、父親が会社員で年収400万円、母親が無職というケースを例に、算定表から導かれる月額の目安をまとめると次のとおりです。

子の人数と年齢 養育費の月額相場
子1人(14歳以下) 4万円〜6万円
子1人(15歳以上) 6万円〜8万円
子2人(2人とも14歳以下) 6万円〜8万円
子2人(第1子が15歳以上、第2子が14歳以下) 8万円〜10万円
子3人(3人とも14歳以下) 8万円〜10万円

父親の職業によっても金額は変わります。たとえば0歳〜14歳の子が1人で、父親の年収が500万円、母親の年収が0円の場合、父親が会社員なら6万円〜8万円、自営業者なら8万円〜10万円が目安です。

以上はあくまで算定表に基づく目安です。実際の金額は父母の話し合いで上下することがあり、子の進学状況や医療費などの事情があれば増額を交渉する余地もあります

認知された子の養育費を請求できる期間はいつからいつまで?

認知が成立しても、子の出生時の分までさかのぼって養育費が当然に発生するとは限りません。いつから請求できるか(始期)と、いつまで受け取れるか(終期)は、次の考え方で決まります。

いつから:原則は請求時から、出生時までさかのぼれる場合もある

認知された子であっても、養育費は原則として「養育費を請求する意思を表明した時点」(支払始期)から発生します。内容証明郵便(送付した文書の内容と発送日を郵便局が証明する郵便)で養育費を請求したときや、家庭裁判所に養育費の調停を申し立てたときが、意思表明の時点として扱われます。

認知の効力は子の出生時にさかのぼって生じますが(民法784条)、養育費の支払義務まで当然に出生時からさかのぼるわけではありません。もっとも、大阪高裁平成16年5月19日決定のように、出生時にさかのぼって父親の養育費支払義務を認めた裁判例も存在します。この事件の経緯は次のとおりです。

  1. 平成13年12月10日:母が子を出産
  2. その後、母が家庭裁判所に認知の申立てを行う
  3. 平成15年3月21日:認知の家事審判が確定
  4. 平成15年4月2日:認知届を役所に提出
  5. 平成15年4月19日:母が父に対して養育費の分担調停を申し立てる

認知審判確定の直後に養育費の分担調停を申し立てるなど、母が迅速に行動していた点が考慮され、認知の遡及効を養育費の支払義務にも及ぼすという判断につながりました。

ただし、この決定はあくまで個別事案の判断であり、原審(家庭裁判所の審判)は別の判断を示していました。子の出生から相当期間が経過した後に養育費を請求した場合は、出生時までさかのぼる取扱いを受けにくくなります。過去分の養育費を確保するには、認知前であっても、配達証明(相手に届いた日付を郵便局が証明するサービス)付きの内容証明郵便で「養育費を請求する」旨を父親に伝えておくことがポイントです。認知が成立すれば法律上の親子関係は出生時に遡及して生じるため、認知前に送った請求も始期を早める材料になり、内容証明の送付時点にさかのぼって養育費を求められる可能性が高まります。

いつまで:子が満20歳に達するまでが原則

認知された子の養育費をいつまで受け取れるか(支払終期)は父母の合意で自由に定められますが、合意ができない場合は家庭裁判所の基準で決まります。実務で原則とされ、もっとも一般的なのは「子が満20歳に達するまで」です。2022年4月に成年年齢が18歳へ引き下げられた後も、法務省は、取り決め時に成年年齢が20歳であったケースでは従来どおり20歳まで支払義務を負うとの見解を示し、新たに取り決める場合は「22歳に達した後の3月まで」のように終期を明確に定めることが望ましいとしています。これは終期を年月で明示する書き方の例であり、20歳という目安を変えるものではありません。合意がなく家庭裁判所が判断する場合も、養育費は「子が経済的に自立できる年齢まで」支払うものであり、18歳では多くの子がまだ自立していないという考え方から、実務上は20歳が目安とされています。

子の進学の蓋然性が高く、両親の経歴などからみて大学進学が不相当でない事情があれば、大学卒業時(4年制大学なら22歳になった後の最初の3月まで)を終期とするケースもあります。取り決めの際は終期を具体的な年月で明示しておくと、後のトラブルを避けられます。逆に、子が20歳になる前に正規の就労を始めて自立したと認められる場合は、就労開始時点が終期とされることもあります。

認知後に養育費を確実に受け取る請求手続き

養育費は、認知届が受理されただけでは自動的に振り込まれません。確実に受け取るには、次の3つの方法で支払いを確保しましょう。①と②が基本で、③は取り決めが整うまでの下支え(法定養育費)と、取り決めた養育費の回収を強める仕組み(先取特権)です。

① 話し合いによる合意と公正証書の作成

認知後に父親と話し合い、養育費の額・支払期間・支払方法について合意できる場合は、合意内容を「強制執行認諾文言付の公正証書」(父母が公証役場に出向き、公証人が法律に従って作成する公的な文書)にしておくことを強くお勧めします。

公正証書は公証人が当事者双方の意思を確認したうえで作成するため、後日の言った言わないのトラブルを防げます。さらに「強制執行認諾文言」(支払いが滞ったら直ちに強制執行を受けることに同意する文言)を入れておけば、父親が支払いを止めた際に、裁判を経ずに給与や預貯金などの財産を差し押さえられます

② 養育費請求調停・審判の申立て

父親が話し合いに応じない、または金額面で合意できない場合は、家庭裁判所へ養育費請求調停の申立てを行います。調停では家事調停委員を交えて話し合いを進め、合意に達すれば調停成立となります。

調停で合意できなかった場合は審判の手続きに移り、裁判官が父母の年収や認知された子の年齢などを考慮して養育費の額を決定します。調停調書や審判書があれば、父親が支払いを怠ったときに強制執行(差押え)の手続きをとれます。

③ 法定養育費・先取特権の活用

2024年5月に成立した改正民法(離婚後の共同親権制度などを含む)が2026年4月1日に施行され、養育費を確保する制度が次のように強化されました。

  • 法定養育費制度:父母間の合意や公正証書・調停調書がなくても、法務省令で定める額(子1人あたり月額2万円)を養育費として請求できる制度
  • 養育費の先取特権化:毎月払いなど定期金として取り決めた養育費や法定養育費に「先取特権」(他の一般債権者より優先して弁済を受けられる法律上の権利)が付き、子1人あたり月額8万円を上限として、公正証書や調停調書がなくても強制執行を申し立てられる制度

法定養育費の規定は認知の場合にも準用され(民法788条)、先取特権は認知された子の養育費にも直接適用されるため、いずれも認知された非嫡出子の養育費に使えます。法定養育費を請求できるのは、認知の時から引き続き子の監護を主として行っている親で、対象は改正法の施行後に認知された子です。請求できる期間は認知の時から、父母が養育費を取り決めた日、家庭裁判所の審判が確定した日、子が18歳に達した日のいずれか早い日までで、取り決めが整うまでの暫定的な制度です。父親が支払能力を欠くことなどを証明した場合には支払いを拒まれることがあります。支払われないときは、養育費の債権を証明する文書を添えて裁判所に強制執行を申し立てることができ、公正証書や調停調書は不要です。また、月額2万円を超える養育費を求めるには父母の取り決めや調停・審判が必要であり、月額8万円を超える部分の強制執行には、従来どおり公正証書や調停調書などの債務名義が必要になります。

任意認知と強制認知で父親に認知してもらう手続き

父親に認知してもらう方法は、父親が自ら届け出る任意認知と、家庭裁判所の手続きを使う強制認知の2つです。認知届を自ら出してくれるかどうか、父親の対応によって進む道が分かれます。

任意認知:父親が認知届を提出する

任意認知は、父親が自らの意思で子を認知する方法です。認知届の提出先は、父親の住所地か本籍地、もしくは子の本籍地の市区町村役場です。届出が受理されれば手続きは完了し、出生時にさかのぼって法律上の親子関係が生じます。子が成年に達している場合は子の承諾が、生まれる前に認知する胎児認知の場合は母親の承諾が必要です(民法782条・783条1項)。

父親が認知に応じてくれるのであれば、認知届の提出と併せて養育費の取り決めも進め、前述の公正証書の形で残しておくと安心です。任意認知の手続きや必要書類は「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」で確認できます。

強制認知:認知調停から認知の訴えまで

父親が認知を拒否している場合は、いきなり裁判を起こすことはできず、まず家庭裁判所へ「認知調停」の申立てを行います。「本当に自分の子か分からない」と渋っているケースでは、DNA鑑定(親子鑑定)を提案し、その結果を示すと父親が認知に同意する例もあります。調停で当事者が合意し、家庭裁判所の調査で父子関係が認められれば、「合意に相当する審判」(調停での合意内容を家庭裁判所が確認して出す、確定判決と同じ効力を持つ決定)が出されます。

調停が不成立に終わった場合は、「認知の訴え」を家庭裁判所に提起します。裁判では当事者の主張や証拠、DNA鑑定の結果などをもとに、養育費の前提となる父子関係の有無が審理され、父子関係が認められれば判決によって認知が成立します。このように、父親が任意に認知届を出さない場合に、家庭裁判所の手続き(合意に相当する審判や判決)によって成立する認知が「強制認知」です。審判や判決が確定した日から10日以内に、調停や訴えを申し立てた側が市区町村役場へ認知届を提出する必要があります。なお、父親が亡くなっている場合でも、死亡の日から3年以内であれば認知の訴えを起こせます(民法787条)。

強制認知の具体的な流れや必要書類、認知調停の進め方については、以下の記事で解説しています。

認知と養育費のよくある質問

認知するけど養育費を払わないのは違法?

認知した父親は、子に対して扶養義務を負います(民法877条1項)。支払いを拒み続ける行為は、この扶養義務に反します。

公正証書や調停調書・審判書で養育費が取り決められているのに支払いを怠れば、給与や預貯金の差押え(強制執行)の対象になります。2026年4月の改正民法施行により、養育費の先取特権の制度も新設され、未払いの養育費を回収する手段は以前より強化されています。

胎児認知された子の養育費は妊娠中から請求できる?

父親が胎児の段階で認知する胎児認知は可能ですが、養育費の支払義務は子の出生と同時に発生します。妊娠中の段階では、子がまだ出生していないため養育費を請求することはできません。胎児認知は、出生後すぐに養育費を請求するための権利の根拠になるという意味で重要です。

胎児認知の手続きや効果について詳しくは「胎児認知とは?母親が提出可能?手続方法と拒否された場合の対策」をご覧ください。

認知届を出せば養育費は自動的に支払われる?

いいえ、認知届を提出しただけでは養育費は自動的に支払われません。認知によって養育費を「請求できる権利」が発生するにすぎず、実際に支払いを受けるには、父母の合意(できれば公正証書化)か、家庭裁判所への調停申立てが必要です。合意も調停もない場合でも、2026年4月以降に認知された子については、法定養育費として子1人あたり月額2万円を請求できます(子が18歳に達するまでなどの暫定的な制度で、父親が支払能力を欠くことを証明した場合は拒まれることがあります)。

認知しない代わりに養育費を一括で請求することはできる?

養育費を一括払いで受け取る合意そのものは、父母双方が納得していれば有効です。一方、「認知を求めない」という約束の部分は無効です。認知を求める権利は子のものであり、母親が約束しても放棄できないため、一括払いを受け取った後でも子は認知を請求できます。また一括払いには、贈与税の対象になるリスクや、合意後に事情が変わっても追加の養育費を請求しづらくなるといったデメリットもあります。

一括払いを検討する場合は、合意の有効性や注意点を整理した「認知しないで養育費を一括払い|合意の有効性と注意点」を参考にしてください。

認知された子の養育費の請求でお悩みの方は弁護士にご相談ください

認知された子の養育費は嫡出子と同じ算定表を基準に決まり、未婚だからといって減額されるものではありません。一方で、養育費は原則として請求した時点からしか発生せず、認知の手続きや公正証書・調停による確保を後回しにすると、受け取れるはずの養育費を失うおそれがあります。

弁護士に任せれば、認知請求から養育費の取り決め、公正証書の作成、調停・審判の申立てまでを一貫して進められます。父親と直接やり取りをする精神的な負担も、弁護士が代理人として交渉することで軽減できます。

父親が認知を拒否している、養育費の話し合いが進まない、一度取り決めたのに支払いが止まっている。こうした状況で、子を育てながら一人で法的手続きを進めるのは大きな負担です。どうか一人で抱え込まないでください。

当事務所は男女トラブルや養育費請求の解決実績が豊富で、依頼者の事情に応じた最適な進め方をご提案します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

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