認知された子(非嫡出子)の養育費はどれくらい請求できるのか、認知された子を持つ母親にとって大きな関心事の一つではないでしょうか?
本記事では、はじめに認知と養育費の関係でよくある疑問について解説した上で、最後にケース別の養育費の相場についてご紹介していきたいと思います。
ぜひ、最後までご一読いただき、養育費を計算する上での参考にしていただけると幸いです。
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目次
認知とは?
認知とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子(「非嫡出子」といいます)を父が自分の血縁上の子であることを認めることです(民法781条)。認知により父子関係を創設するには、役所に認知届を出す手続きが必要です。
なお、子が胎児の段階であっても母親の承諾を得れば父親は認知することができます(胎児認知)。また、遺言によって自分(父親)の死後に子を認知することもできます(死後認知)。
認知のメリット
認知により非嫡出子と父親との間に法律上の親子関係が生じますので、それにより、以下のようなメリットがあります。
- 母親は子の養育費を父親に請求できるようになる
- 子は父親の相続人となり、父の遺産を相続できるようになる
- 親権者を母親から父親に変更することが可能となる
この記事では、これら認知のメリット(効果)のうち、「養育費」の問題について解説していきます。
認知によりどのようなメリットが得られるのか詳しく知りたい方は、「子供の認知とは?3つのメリットから分るその必要性。デメリットもあり」を参考にしてください。
認知してくれない父親に認知させる方法
父親が子を認知しない理由として、「本当に自分の子かわからない」といったものがありますので、まずはDNA鑑定を提案してみましょう。民間企業によるDNA鑑定サービスの相場は3万円~10万円台、精度(父権肯定確率)は99.9%以上と謳っている企業が多いです。
参考:DNA検査サービス : DNA型親子鑑定 | 株式会社バイオロジカ
しかし、DNA鑑定に応じてくれず、父親が自分の意思で認知(これを「任意認知」といいます)してくれない場合には、まず母親は「認知調停」を申し立てる必要があります。調停での話し合いで子が父親の子であることの合意ができ、家庭裁判所の調査でその合意が正当であると認められれば、合意に従った審判がなされます。
ただし、父親が調停に出席しない、あるいは、調停で認知の合意が得られなかった場合には調停不成立となります。それでもなお認知を求める場合は、家庭裁判所に「認知の訴え」を提起します。裁判における当事者の主張、提出した証拠、調査により裁判所が父子関係を認めた場合には、強制的に認知させる判決が下されます(これを「強制認知」といいます)。
認知された場合の養育費はいつまで遡って請求できる?
認知は、出生の時に遡ってその効力を生ずる(民法784条)とされています。これを認知の遡及効といいます。
先ほど、認知された子の母親は父親に対して養育費を請求できるという認知の効果(メリット)をお伝えしましたが、認知の遡及効からすると、子が出生してから認知がされるまでの間の過去の養育費も請求できるようにも思えます。
実際、認知の遡及効により、父親の養育費支払義務は子の出生時まで遡るとした判例(大阪高裁 平成16年5月19日)もあります。
とはいえ実務上は、「養育費請求の意思を明確にした時以降の分」までしか認められない傾向があります。養育費請求の意思を明確にするには、配達証明付きの内容証明郵便で父親に養育費を請求する方法が典型です。
子が出生してからなるべく早くこの内容証明を父親に送っておくことで、後で子が認知された場合に、内容証明を送付した時に遡って養育費を父親に請求できるようになります。
養育費を算出する上で考慮すべき事情
相手男性に養育費を請求するにはいくら請求するのか決める必要があります。その際に参考としていただきたいのが、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」です。
養育費算定表を見れば、相手男性にいくら養育費を請求できるのか、請求できる養育費の目安が分かります。以下では、この養育費算定表が、いかなる事情を考慮して養育費の目安を算定しているのかご紹介してまいります。
なお、非嫡出子(未婚の男女間に生まれた子)と嫡出子(結婚した夫婦の間に生まれた子)、任意認知で認知された子と強制認知で認知された子、どちらの場合も、養育費の額を算定するにあたり差別されることはありませんのでご安心ください。
養育する子の年齢、数
子の年齢が高くなればなるほど、子にかかる教育費、食費等は高くなりますから、養育費も高くなっていきます。また、子の数が多ければ多いほど養育費はかかりますから、請求できる額も高くなります。
相手男性の職業
養育費算定表では、相手男性が会社員(給与受給者)か自営業者かで区別されており、会社員よりも自営業者の方が負担が重たくなる設定となっています。たとえば、0歳から14歳の子が1人、相手男性の年収が500万円、あなたの年収が0円の場合、会社員の養育費は「6万円~8万円」なのに対して自営業者は「8万円~10万円」です。
なお、会社員の場合は源泉徴収票の「支払金額」に書かれている税金等の控除がなされてない額を年収とし、自営業者の場合は確定申告書の「課税される所得金額」に基礎控除や青色申告控除などが加算された額を年収とします。要するに、実際に手にした額が年収とされるわけではないということです。
相手男性、あなたの年収
養育費の支払い義務を負う相手男性と請求するあなたの年収も考慮されます。そして、相手男性の年収とあなたの年収の相関関係で養育費を算出します。
つまり、相手男性の年収が高く、あなたの年収が低い場合は相手男性に請求できる養育費は高くなりますが、逆の立場にある場合(あるいは双方ともに年収が低い場合)は、請求できる養育費が低いか全く請求できないことも想定しておく必要があります。
【ケース別】認知された子の養育費の相場
では、具体例を使って認知された子の養育費を算定してみましょう。なお、以下でご紹介する養育費はあくまで目安(相場)であって、実際の金額は話し合い等を通じて高くすることも安くすることも可能ですから参考程度にとどめておきましょう。
子1人、相手男性「会社員、年収400万円」、あなた「無職」
子の年齢が14歳以下か15歳以上かで養育費は大きく異なります。子が14歳以下の場合は「4万円~6万円」が相場ですが、子が15歳以上の場合は「6万円~8万円」が相場です。なお、養育費に上記のような開きが出てくるのは、相手男性の年収が350万円以上の場合です。
子2人、相手男性「会社員、年収400万円」、あなた「無職」
まず、子が2人とも14歳以下の場合は「6万円~8万円」が相場で、子1人の場合より養育費が高くなっていることがお分かりいただけると思います。次に、第1子が15歳以上、第2子が14歳以下の場合は「8万円~10万円」が相場で、子が2人とも14歳以下の場合よりも養育費が高くなっていることがお分かりいただけると思います。最後に、子が2人とも15歳以上の場合も「8万円~10万円」が相場ですが、年収が450万円では「10万円~12万円」が相場です。
子3人、相手男性「会社員、年収400万円」、あなた「無職」
子が3人とも14歳未満の場合は「8万円~10万円」が相場で、子2人とも14歳未満の場合よりも養育費が高くなっていることがお分かりいただけると思います。次に、第1子が15歳以上、第2子及び第3子が0歳から14歳の場合も「8万円~10万円」が相場ですが、年収が400万円を超えると「10万円~12万円」が相場となります。
まとめ
子が認知されたという理由で養育費を請求できない、養育費の額が低くなることはありません。
養育費は、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にしながら決めましょう。
養育費算定表は、子の年齢・人数、相手男性の職業、相手男性とあなたの年収をベースに目安となる額を設定しています。
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