交際している男性との間に子どもができた際、その男性が子どもを認知することに応じない場合に女性側は強制的に認知を請求することができます。
しかし、男性としては認知に応じることで子どもの父親であることが法的に確定することになるため、そのような状況は都合が悪いとして、拒否や無視、現在の住所から逃亡をすることが考えられます。
女性からすれば、
- 男性は強制認知から逃げることができてしまうのだろうか…
- 強制認知をしたいが男性の住所不明な場合はどう対処すればいいのか…
といった不安が生じてしまうことでしょう。
そこでこの記事では、男女問題に強い弁護士が、女性が抱えるこの不安を解消していきます。記事を読んでも問題解決しない場合は気軽に弁護士に相談してみましょう。
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目次
強制認知とは?
「認知」とは、婚姻関係にない父母の間に生まれた子どもと親との間に法律的に親子関係を創設する身分上の法律行為のことをさします。認知については「戸籍法の定めるところにより届け出ることによって」行うと定められています(民法第781条1項)。届け出による認知は当事者の意思に基づき行うことになりますのでこのような認知を「任意認知」と言います。
これに対して「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる」とも規定されています(民法第787条)。このような認知は当事者の意思によらず判決によって認知を実現することになるため「強制認知」と呼ばれています。
強制認知をするには、まずは認知調停を申し立て、そこで双方の話し合いがまとまれば合意に相当する審判が下されて認知が認められます。合意ができない場合は認知の訴えを提起して裁判所の判断に委ねることになります。
強制認知が認められた場合の効果
強制認知が認められる場合とは、つまり訴訟によって親子関係を認める判決が出るということです。この場合任意認知と同様に認知の効果が発生します。
具体的には以下のような親子関係の効果が発生します。
- 子が親の相続財産について相続人となる
- 子に対して父親は扶養義務を負い養育費の支払い義務が発生する
- 子の戸籍に認知した父親が記載される
- 子が父親の同一の戸籍に入ることが可能となる
- 父親が子の親権者となることが可能となる
- 子も父親に対して扶養義務を負う
男性は強制認知から逃げることができるのか
結論からいうと強制認知は基本的には免れることができません。
下記の条文の通り、父の死亡の日から3年を経過した場合には認知の訴えを提起することができませんが、父親である男性が生存している限りは認知請求がされる可能性があるからです。
(認知の訴え)
第787条
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
例外として、認知の訴えを提起できる子や子の直系卑属(父親から見て孫・ひ孫等)が全員死亡している場合も認知の訴えを提起できません。もっとも、そのようなケースは稀でしょう。
このように、当事者が存命の場合には強制認知を請求される可能性があり、逃れることができません。
それでは父母の間で認知請求権を放棄する旨の合意や契約が締結・約束されていた場合はどうでしょうか。これについて裁判所は認知請求権を事前に放棄することができないと判示しており、子ども自身の権利である点でも予め放棄を約束しても無効であると考えられます。
男女間で認知しないという合意は有効?養育費を一括払いする場合は?
「裁判に出席しない」「DNA鑑定に応じない」ことで逃げられるのでは?
男性が認知訴訟に出席しなくても、裁判所により親子関係があると判断されれば、認知を認める判決が下ります。
男性が裁判に出席しない場合にはDNA鑑定を求めることができませんので、女性は、間接証拠の積み重ねによって親子関係があると裁判官の心証を得る必要があります。具体的には、男性と肉体関係があったことがわかるメールやLINE、SNSでのやり取り、男性との親密交際を示す写真、第三者の証言などを準備する必要があるでしょう。
また、男性が裁判に出席したもののDNA鑑定を実施することを拒否した場合には、その拒否した態度が「後ろめたいから拒否したのであろう」という裁判官の心証に繋がり、父子関係を肯定する流れに繋がりやすくなります。
このように、男性が裁判に出席しない、あるいは、DNA鑑定に応じないことで強制認知から逃げられると考えるのは間違いです。
強制認知の代わりに養育費支払を約束させる方法もある
女性側が男性側に認知を求める理由としては父親から適切に養育費等の金銭を支払ってもらいたいという場合も多いでしょう。そのため認知の訴えを提起するのではなく養育費の支払いを男性側に確約させるという方法も考えられます。
「子を認知すると戸籍はどうなる?記載内容は?」にも書かれていますが、認知が認められると父親の戸籍に認知の事実が記載されます。男性側には家庭があり、戸籍から不倫や隠し子の存在が妻にバレることを何としても避けたいと思っているケースでは、女性が認知の訴えを提起しない代わりに男性が月々の養育費を支払うよう交渉を進めやすいでしょう。
この場合、口約束ではなく、「強制執行認諾約款付公正証書」を作成しておきましょう。これにより、養育費が支払われない場合に訴訟を提起することなく強制執行で男性の財産(預貯金・給与等)を差し押さえることができます。
強制認知をしたいが男性の住所が不明な場合の対処法
認知の訴えの裁判手続を開始するには、裁判所を介して訴状を被告(相手)に郵送する必要があります。しかし、男性が逃げるなどして住所が不明の場合には女性はどのように対処すれば良いのでしょうか。以下で解説します。
弁護士に職務上請求を行ってもらう
弁護士は依頼を受けた職務を遂行するのに必要な範囲で、相手の住民票や戸籍を請求できる「職務上請求」という制度を利用できます。男性が前に住んでいた住所がわかっていれば、そこから移動先の新住所を調べることも可能です。住所が判明すれば訴状の送達ができますので裁判(認知の訴え)を開始できます。
弁護士に依頼して弁護士照会を行ってもらう
弁護士は依頼を受けた事件の職務遂行を円滑に行うために、弁護士会を通じて、企業や役所、その他の団体に対して必要な情報の報告を求める「弁護士照会」という制度を利用できます。
出会いサイト(アプリ)やSNS等のネットで知り合った男性であるため最初から住所がわからない場合でも、男性の携帯番号や銀行口座の情報を知っていれば、携帯会社や銀行に対して、契約者である男性の氏名や住所を開示するよう求めることができます。ただし、契約時の住所地が過去のものであることもありますので、上記でお伝えした職務上請求で住所移転されているかを確認する必要があるでしょう。
勤務先等がわかっていれば探偵に尾行してもらう
住所がわからなくても、相手男性の勤務先や頻繁に利用する施設(飲食店等)がわかっていれば、そこに現れた男性を帰宅するまで探偵に尾行してもらい住所を判明させるという方法も考えられます。
ただし、一般社団法人日本探偵業協会のサイトによると、調査員2名1時間あたりの単価を2万円~2万5千円に設定している探偵社が最も多く、複数日の調査が必要になった場合や調査が長時間に及んだ場合にはかなりの額の調査費用になることが予想されます。
また、探偵は法律業務を扱うと違法となるため、認知の訴えの代理も検討されている方は、まずは弁護士に相談してアドヴァイスを受けた方が良いでしょう。弁護士の職権で住所が調べられるようであれば、そのまま弁護士に一任する方がコストを抑えられるからです。
公示送達
あらゆる手を尽くしても男性の住所が未判明の場合には、「公示送達」という制度を利用することができます。公示送達とは被告宛の呼び出し状を一定期間裁判所の掲示板のような場所に掲示し、その掲示があったことが官報に1回掲載されることで相手方に訴状が送達されたものとみなされるというものです。これにより父親不在で裁判手続きを進めることができるようになります。
ただし、認知の請求が認められるためには父親と子どもの間の親子関係を証明しなければなりません。具体的には父と子との間の遺伝子の一致を裁判で立証していく必要があると思いますが、父親側の所在が不明の場合には父親のDNAを鑑定することができません。
そのような場合には父親側の親族と子どもの遺伝子を比較する方法もあります。ただし、親族にDNA鑑定の強制はできないため、裁判で原告(女性)側の請求が棄却される場合も考えられます。そのため、前述のように、性行為があったことなどを示す間接証拠を出来るだけ多く準備しておきましょう。
まとめ
これまで説明してきたように、男性が強制認知から逃げることは難しいでしょう。女性側は男性が死亡後3年を経過しない限り認知の訴えを提起することができるからです。
とはいえ、認知の訴えや公正証書の作成など、手続が複雑かつ難解で個人で対応できないことが多いでしょう。また、男性の住所不明な場合の調査等も専門家でなくてはできないこともあります。
当法律事務所においては、これらの全ての手続きを弁護士に一任して頂けます。”依頼者のために弁護士が全力を尽くす”ことをモットーとしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。その一歩が解決に近づきます。
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