
「妊娠を伝えたのに『認知しない』と言われた」「認知してくれない相手に、養育費は請求できるのか」。そんな不安を抱えていませんか。相手が認知しないと言い張っても、家庭裁判所の認知調停や認知の訴えを経て父子関係が認められれば、相手の意思とは関係なく認知は成立し、養育費も請求できます。
妊娠中でも出産後でも、取るべき手続きの出発点は同じで、早く動くほど養育費をさかのぼって受け取れる余地が広がります。
本記事では、男女トラブルに強い弁護士が、「認知しない」と言われた時の4つの対処法について、次の点を中心に解説します。
- 相手が認知しないとどうなるのか
- 認知調停・認知の訴えの進め方
- DNA鑑定を拒否されたときの対応
お読みいただくことで、ご自身の状況で今どの手段から動くべきかを判断できます。
なお、認知してもらえずお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へご相談ください。地域を問わずご相談を承っています。
認知とは?結婚していない男女に必要な手続き
認知とは、婚姻関係にない男女から生まれた子(嫡出でない子。非嫡出子・婚外子とも呼ばれます)と父親との間に、法律上の父子関係を生じさせる手続きです。母子関係は出産(分娩)の事実から当然に成立する一方で、父親と子の親子関係は、認知がなければ法律上は確定しない仕組みになっています。
つまり、相手の男性があなたとの間の子を認知しないかぎり、生物学上の父親であっても、法律上は他人のままということになります。認知の仕組みは民法779条に定められています。
(認知)
第七百七十九条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
認知には大きく2つの方法があります。相手の男性が自分の意思で行うのが「任意認知」、相手が認知しない場合に家庭裁判所の裁判手続きで父子関係を確定させるのが「強制認知」です。任意認知は市区町村役場に認知届を提出すれば成立しますが、強制認知は家庭裁判所の調停や裁判を経る必要があります。強制認知になった場合の具体的な流れや費用については「強制認知とは?手続きの流れ・費用・認められないケースを解説」で解説しています。
交際相手・婚約者・既婚男性との間に子どもができた場合など、「認知しない」と言われる場面はさまざまですが、相手が認知してくれないときに取る手続きの流れは、どのケースでも基本的に同じです。
認知されるとどうなる?認知しないとどうなる?
認知が成立すると、法律上の親子関係が生じ、子どもには次のような権利が発生します。反対に、相手が認知しないままだと、子どもはこれらの権利を持てない状態が続きます。
- 養育費の請求権が発生する(父親に扶養義務が生じる)
- 子どもが父親の相続人となり、財産の相続権が発生する
- 父親の戸籍に認知の事実が記載され、子の戸籍にも父の名が記される
認知の効力は、認知された時点からではなく、子どもが生まれた時点にさかのぼって生じます(民法784条)。出生後すぐに認知されなかったとしても、後から認知が成立すれば、出生時から父子関係があったものとして扱われます。ただし、養育費をいつの分から受け取れるかは別の問題です(後述①)。
相手から「認知しない代わりにお金を払う」と持ちかけられることもありますが、認知を求める権利は放棄できないとするのが判例・通説です。「認知しない」と約束した後でも、認知調停や認知の訴えを起こすことはできます。こうした合意の扱いは「認知しないで養育費を一括払い|合意の有効性と注意点」で解説しています。
一方で、未婚のまま出産し、父親が認知していない状態が続くと、戸籍の父親欄は空白のままで、養育費を請求する法的な根拠もなく、相手が亡くなったときの相続権も認められません。子ども自身が「自分の父親が誰なのか」を法律上証明できない状態も続きます。
なお、認知しないこと自体は犯罪ではなく、刑事罰の対象にはなりません。ただし、後述する認知の訴えで父子関係を確定させ、養育費の支払義務を負わせることは可能です。
認知のメリット・デメリットをさらに詳しく整理した内容は「子供の認知とは?効果や手続き、認知しない場合の不利益を解説」もあわせてご確認ください。
相手から「認知しない」と言われた時の4つの対処法
相手が「認知しない」の一点張りでも、いきなり裁判を起こすのではなく、段階を踏んで対処していくのが基本です。話し合いから始め、相手が認知を拒否し続けるなら認知調停、認知の訴えへと進みます。DNA鑑定は、どの段階でも父子関係を立証する手段になります。
- 任意認知を打診する
- 家庭裁判所に認知調停を申し立てる
- 認知の訴え(裁判)を提起する
- DNA鑑定で父子関係を立証する
どの段階からでも弁護士に相談することはできますので、まずはそれぞれのステップを順に見ていきましょう。
①任意認知を打診する
まずは相手に、認知してほしいと直接伝え、任意認知に応じるよう促すのが第一歩です。任意認知が成立すれば、相手が役所に認知届を提出するだけで手続きが完了し、調停や裁判にかかる時間と費用を避けられます。相手が認知しない理由が「本当に自分の子か分からない」という不安にある場合は、DNA鑑定を提案することで態度が変わることもあります。
妊娠中に相手が認知しない姿勢でも、出産を待たずに胎児認知を打診する方法もあります。胎児認知は、母親の承諾を得て父親が行う認知で(民法783条1項)、子どもが生まれると同時に法律上の父子関係が確定します。詳しくは「胎児認知とは?母親が提出可能?手続方法と拒否された場合の対策」をご覧ください。
このタイミングで併せて検討したいのが、弁護士を通じた内容証明郵便(送付した日付と内容が郵便局に記録される郵便)での養育費の支払請求です。養育費は、原則として請求の意思を相手に伝えた時点から支払開始と考えられているため、早めに請求しておくことで、後の取り決めでさかのぼって受け取れる可能性が高まります。
口頭やメッセージのやり取りだけでは、「いつ請求したか」が後から争点になることもあります。内容証明郵便なら送付日と内容が記録に残るため、後の調停や裁判でも有力な証拠として機能します。
任意認知の仕組みや届出の方法・必要書類については「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」で詳しく解説しています。
②家庭裁判所に認知調停を申し立てる
話し合いでも相手が認知しない場合は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所(または双方が合意した家庭裁判所)に認知調停を申し立てます。認知の訴えをいきなり起こすことはできず、まずは調停を申し立てるのが原則です(調停前置主義)。調停の申立て方法から終了までの全体の流れは「認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?」で紹介しています。
申立ての費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手で、必要書類などの詳細は裁判所「認知調停」のページでも確認できます。
認知調停では、相手が認知しない姿勢を崩さない場合でも、調停委員を介して当事者双方の主張や事実関係を整理し、認知について合意できるかを探っていきます。調停期日は1か月から1か月半に1回程度のペースで開かれ、1回の期日は1〜2時間ほどが一般的です。
「子が相手の子である」という点で双方が合意し、家庭裁判所が事実関係を調査したうえでその合意を正当と認めれば合意に相当する審判が出され、それが確定すれば認知が成立します。もっとも、最高裁判所の司法統計(令和7年・家事編)によれば、認知調停で終了した889件のうち、合意に相当する審判に至ったのは393件(約44%)にとどまり、不成立221件・取下げ224件と、審判に至らずに終わるケースも半数程度を占めています。
調停の必要書類や費用の詳細については「子どもの認知の手続きは5種類|認知請求の流れと必要書類を解説」をご参照ください。
③認知の訴え(裁判)を提起する
調停でも相手が認知しない場合や、合意に相当する審判に異議が出た場合は、家庭裁判所に認知の訴えを提起し、判決による強制認知を目指します。認知の訴えは、民法787条に根拠を置く手続きです。
(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
訴えを提起できるのは、子・その直系卑属(孫など)・これらの者の法定代理人(未成年の子に代わって手続きを行う、親権者である母親など)です。父親がすでに亡くなっていても、死亡の日から3年以内であれば検察官を相手として提起できます。これを死後認知と呼びます(詳しくは「死後認知とは?認められる条件と手続き・相続への影響」)。
認知の訴えでは、調停と異なり、訴えを起こした側が父子関係の存在を立証する必要があります。DNA鑑定で生物学上の父子関係を証明できたケースでは認められる可能性が高く、判決が確定した日から10日以内に役所へ認知届を提出することで、認知が戸籍に反映されます(戸籍法63条)。
④DNA鑑定で父子関係を立証する
相手が「自分の子ではないから認知しない」と主張しているケースでは、調停・裁判のどの段階でも、DNA鑑定による血縁関係の証明が決め手になります。DNA鑑定では父権肯定確率(父親である確率)99.99%以上といった極めて高い精度で父子関係の有無を判定できるため、父子関係を証明する手段として最も有力とされています。
裁判所の調停手続きでDNA鑑定を行う場合、鑑定費用は原則として鑑定を求める申立人(母親側)が負担します。費用は5万円から10万円程度とされることが多く、経済的に負担が難しい場合には、法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、弁護士費用やDNA鑑定費用の立替えを受けられる場合があります(参考:法務省「無戸籍でお困りの方へ 解決事例紹介」)。
問題となるのは、認知しないと言い張る相手が、DNA鑑定への協力も拒否するケースです。裁判所は鑑定を強制できないため、相手が応じなければ鑑定そのものは実施できません。
それでも、鑑定を拒否する態度自体が裁判官の心証に影響することがあり、当時の交際状況を示すLINEなどのメッセージのやり取りや、生活費・出産費用の援助の事実など、状況証拠を積み重ねることで、相手が鑑定に応じないままでも認知が認められる場合もあります。
なお、相手の同意を得ずに毛髪やタバコの吸い殻などからこっそりDNAを採取して鑑定にかけることは、プライバシー権の侵害として別のトラブルになるリスクがあるため避けるべきです。
相手が認知しないとお悩みの方は弁護士にご相談ください
相手が認知しないと言い続けても、認知調停や認知の訴えで法律上の父子関係を確定させ、養育費を求める道は残されています。
もっとも、調停や訴えでは期日ごとに主張と証拠を整える必要があり、DNA鑑定を打診する時期や費用の交渉など、ご自身だけで進めるには負担の大きい場面が少なくありません。弁護士に依頼すれば、手続きを代理人に任せられるほか、初動の段階で養育費請求の意思を書面に残すなど、有利な状況を整えやすくなります。
妊娠・出産と重なる時期に、認知の問題を一人で抱え込むのは大きな負担です。相手と連絡が取れない方、養育費の支払いを拒まれている方も、状況に応じた進め方があります。
弁護士法人若井綜合法律事務所は、男女トラブル・認知請求の解決実績を多数有しており、依頼者一人ひとりの状況に寄り添い、子どもの利益を守るための最善の道筋をご提案します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

