
子どもの父親が認知を拒んでいても、母親の側から家庭裁判所に申し立てれば、相手の意思に関係なく認知を実現できます。これが「強制認知」と呼ばれる手続きです。
「父親が認知に応じてくれない」「養育費を払ってほしいのに連絡が取れない」「相手が逃げてしまい住所もわからない」。そんな状況で、もう打つ手がないのではと不安を感じている方もいるのではないでしょうか。けれども、相手が拒否しても、裁判に出てこなくても、行方をくらましても、認知を求める道は残されています。
この記事では、男女トラブルに取り組む弁護士が、次の点について解説します。
- 強制認知で本当に認知させられるのか
- 認知調停・認知の訴えの流れと費用
- 認められず負けるのはどんなケースか
- 相手が逃げた・住所不明なときの対処法
なお、強制認知でお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へご相談ください。
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強制認知とは
結婚していない男女の間に生まれた子は、法律上は非嫡出子(婚外子)と呼ばれ、そのままでは父親が定まりません。強制認知とは、相手の男性が子どもを認知しようとしない場合に、家庭裁判所の手続き(認知調停・認知の訴え)を通じて、相手の意思に関係なく法律上の父子関係を成立させることをいいます。
認知には、大きく分けて2つの方法があります。父親が自分の意思で役所に認知届を出す「任意認知」と、それに応じない父親に対して裁判所の手続きで認知を求める「強制認知」です。話し合いで父親が納得してくれれば任意認知で済みますが、拒否された場合の最終手段が強制認知だと考えるとわかりやすいでしょう。任意認知の要件や手続きは「任意認知とは?手続きの方法・必要書類・届出期限を解説」で詳しく扱っています。
強制認知は、最初から裁判を起こすわけではありません。はじめに家庭裁判所での認知調停を経て、それでまとまらなければ認知の訴え(認知訴訟)へ移る、という二段階の流れになっています。
強制認知が認められる条件
認められるための大前提となるのは、子どもと相手男性との間に実際の血縁関係(生物学上の父子関係)があることです。父親の意思に反してでも認知を命じる手続きである以上、本当に親子であることが客観的に裏付けられなければなりません。
そのため、後述するDNA鑑定や、交際・妊娠当時の状況を示す証拠が物を言います。逆にいえば、血縁関係を示す材料が乏しいまま申し立てても、認知が認められないことがあります。
認知されると生じる効果
強制認知の判決や審判が確定すると、任意認知と同じ法的効果が生じます。しかも、その効果は子どもの出生時にさかのぼって発生します(民法784条)。具体的には次のような変化が起こります。
- 父親が子どもへの扶養義務を負い、養育費を請求できるようになる
- 父親が亡くなった際、子どもが相続人として遺産を受け継げる
- 子どもの戸籍に父親が記載される
- 父母の協議により、父母の双方または父を親権者と定めることも可能になる
最大の目的は養育費だという方が多いはずです。認知が確定すれば父親に扶養義務が生じ、養育費を請求できます。請求できる時期は内容証明の送付時や養育費請求調停の申立時を起算点とするのが一般的ですが、強制認知の確定直後に養育費請求調停を申し立て、子どもの出生時にさかのぼった養育費が認められた裁判例(大阪高裁 平成16年5月19日)もあります。金額の目安は「認知された子の養育費はどうなる?相場・請求手続きと期間を解説」をご覧ください。
相続権を得られるのも大きな意味を持ちます。ただし相続では借金などのマイナスの財産も引き継ぐため、相手に多額の負債がある場合は注意が必要です。
認知調停の流れ
強制認知を求める場合、いきなり訴訟を起こすことは原則できません。先に家庭裁判所へ「認知調停」を申し立て、話し合いの場を設ける必要があります。この仕組みを調停前置主義と呼び、家事事件手続法257条に根拠があります。
申立先となるのは、相手の男性が住む地域を受け持つ家庭裁判所、または当事者が合意して選んだ家庭裁判所です。合意で定める場合は、申立書とあわせて両者の署名・押印のある合意書を提出します。申立てに必要な主な書類は、申立書、子と相手の戸籍謄本などで、裁判所によっては連絡先の届出書や進行に関する照会回答書の提出を求められます。
費用は、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。郵便切手の金額や内訳は裁判所ごとに違うため、申立て先に確認してください。
申立てが受理されると調停期日が指定され、調停委員を交えた話し合いが始まります。期日では、交際のいきさつ、妊娠・出産の経緯、相手との関係などを聞かれ、裏付けとなる資料の提出を求められることがあります。血縁関係がはっきりしない場合はDNA鑑定が行われることもあり、その費用はおおむね5万〜15万円程度で、原則として鑑定を申し出た側が負担します。
期日は1回あたり2時間ほどで、1〜2か月に1回のペースで開かれ、平均すると3回前後、期間にして数か月かかるのが目安です。合意に至れば、家庭裁判所が事実を調査したうえで「合意に相当する審判」が出されることになります。審判の告知から2週間で確定し、確定証明書を取得して認知届とともに役所へ提出すれば、認知が戸籍に反映されます。調停の進め方や証拠については「認知調停の申立て方法と流れ|何が証拠になる?不成立の場合は?」で具体的に解説しています。
認知の訴え(認知訴訟)の流れ
調停がまとまらなかった場合に、強制認知を実現する次の手段が認知の訴えです。相手が調停の期日に出てこない、あるいは出席しても認知に応じないと、調停は不成立となります。それでも認知を求めたい場合は「認知の訴え」を提起します。
提訴に必要なのは、訴状(正本・副本)、当事者の戸籍謄本、主張を裏付ける証拠書類などです。手数料は収入印紙13,000円分と郵便切手で、訴訟費用はいったん原告(女性側)が立て替えますが、勝訴して「訴訟費用は被告の負担とする」との判決が出れば、後から相手に請求できる可能性があります。
訴訟では、調停と異なり、生物学上の血縁関係があることを母親の側で証明しなければなりません。決め手として近年よく使われるのがDNA鑑定ですが、被告が応じなければ裁判所も鑑定を強制することはできません。その場合は、妊娠当時に性的関係があったこと、血液型に矛盾がないこと、容貌などの人類学的特徴、父親らしい言動といった間接的な事実を積み重ねて証明します。父子関係が認められれば認知を命じる判決が出され、確定すれば出生時にさかのぼって法律上の父子関係が生じます。判決確定の日から10日以内に、原告が判決謄本と確定証明書を添えて認知届を提出します(戸籍法63条)。期間は半年〜1年程度を見込んでおくとよいでしょう。
強制認知にかかる費用
強制認知にかかる費用は「いくらかかるのか」だけでなく「誰が負担するのか」を気にされる方が多いところです。内訳ごとに整理します。
認知調停・認知の訴えの手数料
家庭裁判所に納める手数料は、認知調停が収入印紙1,200円分、認知の訴えが13,000円分です。これに連絡用の郵便切手が加わり、切手代は調停で1,000〜3,500円程度、訴訟で6,000円前後が目安です。金額は裁判所ごとに異なります。
DNA鑑定の費用は誰が負担するのか
DNA鑑定を行う場合の費用は、実施機関や手続きにもよりますが、おおむね5万〜15万円程度です。調停では原則として鑑定を申し出た申立人が負担し、相手と折半することもあります。訴訟では双方で予納する扱いになる場合もありますが、相手が消極的なときは原告がいったん全額を負担し、勝訴後に相手へ請求するケースが少なくありません。なお、相手に無断で採取した毛髪などを使う私的鑑定は、精度や同意の点で裁判の証拠として使いにくく、弁護士を通じた正式な鑑定をおすすめします。
弁護士費用の相場
弁護士に依頼する場合の費用は事務所によって幅がありますが、着手金・報酬金がそれぞれ20万〜40万円程度に設定されていることが多く、調停から訴訟へ移行すると追加の着手金が必要になるのが一般的です。弁護士費用は依頼した本人が負担するのが原則で、相手に当然に請求できるものではありません。費用負担が不安な場合は、収入要件を満たせば法テラスの立替制度(民事法律扶助)を利用できることもあります。
強制認知が認められない・負けるケース
強制認知は申し立てれば必ず成功するわけではありません。証拠が足りない、期間を過ぎているといった事情があると、認められないことがあります。代表的なケースを見ていきましょう。
父子関係を立証できないケース
もっとも多いのが、血縁関係を証明できないパターンです。DNA鑑定があれば立証は容易ですが、相手が鑑定を拒み、それ以外の証拠も乏しいと、父子関係を認めてもらえないことがあります。妊娠時期に継続的な関係があったことを示すメッセージのやり取りや、交際の事実を知る第三者の証言といった間接事実を、できる限り積み重ねておくことが重要です。もっとも、相手が鑑定を拒む態度そのものが「やましいことがあるのでは」と受け取られ、かえって父子関係を認める方向に働くこともあります。
認知を請求できる期間が過ぎているケース
相手が生きている間は、いつでも認知を求めることができます。一方で、相手が亡くなった場合は、その死亡を知った時から3年以内に訴えを起こさなければなりません(民法787条ただし書き)。この出訴期間(一種の時効)の経過後は、認知請求ができなくなるのが原則です。すでに相手が亡くなっている場合の手続きや期限については「死後認知とは?認められる条件と手続き・相続への影響」で詳しく解説しています。
男性は強制認知から逃げられるのか
結論からいえば、相手の男性が強制認知から逃れることは基本的にできません。相手が生きている限り、女性の側はいつでも認知の訴えを起こせるからです。条文上も、認知の訴えは父の死亡から3年を過ぎない限り提起できると定められています。
(認知の訴え)
第787条
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
例外的に、訴えを起こせる子やその直系卑属が全員亡くなっているような場合は提起できませんが、こうしたケースはまれです。さらに、父母の間で「認知を請求しない」と約束していたとしても、認知請求権は子ども自身の権利であり、あらかじめ放棄する合意は無効と考えられています。約束があっても、後から認知を求めることは可能です。
裁判の欠席やDNA鑑定の拒否で逃げられるのか
「裁判に出なければよい」「鑑定を拒めばよい」と考える男性もいますが、それで逃げ切れるわけではありません。相手が出廷しなくても、親子関係が認められれば認知を命じる判決は出ます。この場合、女性側が父子関係を裏付ける材料となるのは、メールやSNSのやり取り、写真、第三者の証言などの間接証拠です。出席したうえでDNA鑑定を拒否したときも、その拒否の態度が裁判官の心証を悪くし、かえって父子関係を肯定する方向に働きやすくなります。
認知を求める前に知っておきたいこと
ここまで読んで、認知を強く求めるべきか迷う方もいるかもしれません。認知には大きなメリットがある一方で、事前に知っておきたい側面もあります。あわせて、認知にこだわらず養育費の確保を優先するという道も紹介します。
認知することのデメリット
認知には見落としがちな側面もあるため、注意が必要です。父子関係が生じれば、将来は子どもの側が父を扶養する義務を負う可能性も出てきます。相手が既婚者の場合は、戸籍の記載から不倫や隠し子の事実が配偶者に知られ、慰謝料を請求されるおそれもあるでしょう。なお、よく誤解されますが、子が父に認知されても、母がひとり親であれば児童扶養手当の受給資格そのものは失われません(母が事実婚状態になった場合などは別です)。
認知の代わりに養育費を約束させる方法
認知のメリットよりデメリットが大きいと感じる場合や、そもそも認知を求める目的が養育費にある場合は、訴訟を起こさず、養育費の支払いを約束させるという道も考えられます。相手が既婚者で戸籍から発覚することを避けたい場合は、認知をしない代わりに養育費を支払う、という交渉が成立しやすいこともあります。その際は口約束ではなく、強制執行認諾文言を付けた公正証書を作成しておくと、支払いが滞ったときに改めて訴訟を起こさずに財産を差し押さえられます。認知をしない合意の有効性や養育費の一括払いについては「認知しないで養育費を一括払い|合意の有効性と注意点」で解説しています。
相手の住所が不明な場合の対処法
強制認知のうち認知の訴えを始めるには、裁判所を通じて訴状を相手に届ける必要があります。ところが相手が引っ越したり連絡を絶ったりして住所がわからないと、そのままでは手続きを進められません。こうした場合に住所を調べる方法は、いくつかあります。
弁護士による職務上請求
弁護士には、依頼を受けた事件に必要な範囲で、相手の住民票や戸籍を取り寄せる「職務上請求」という手段があります。以前住んでいた住所がわかっていれば、そこから移転先の現住所をたどれることがあります。住所が判明すれば訴状を送達でき、認知の訴えを開始できます。
弁護士会照会
弁護士会を通じて、企業や役所などに必要な情報の照会を求める「弁護士会照会」という制度もあります。出会い系アプリやSNSで知り合ったために最初から住所がわからない場合でも、相手の携帯番号や銀行口座がわかれば、通信会社や金融機関に契約者の氏名・住所の開示を求められることがあります。ただし登録された住所が古いこともあるため、職務上請求とあわせて確認するのが確実です。
探偵による所在調査
勤務先やよく行く店がわかっていれば、探偵に依頼してそこから自宅を特定してもらう方法も考えられます。ただし調査費用は決して安くなく、相手の代理交渉や訴訟は探偵では扱えません。まずは弁護士に相談し、職権で住所を調べられるなら弁護士に一任したほうが費用を抑えられることが多いでしょう。
公示送達
あらゆる手を尽くしても住所がわからないときは、最終手段として「公示送達」を利用できます。これは、裁判所書記官が書類を保管し、いつでも交付する旨を裁判所に掲示することで、掲示開始から2週間の経過により送達があったものとみなす制度です。これにより、相手が不在のまま手続きを進められます。もっとも、相手の所在が不明だとDNA鑑定ができないため、父方の親族の協力を得て鑑定する方法や、間接証拠の積み重ねがいっそう重要になります。相手が逃げているケース全般の対処は、本記事と同じ視点で別途まとめていますので、状況に応じてあわせてご確認ください。
強制認知でお悩みの方は弁護士にご相談ください
相手が認知を拒んでいても、裁判に出てこなくても、行方をくらましても、強制認知の手続き(認知調停や認知の訴え)を通じて法律上の父子関係を実現する道は残されています。認知が成立すれば、養育費の請求や相続といった、お子さんの将来に関わる権利を確保できるでしょう。
ただ、血縁関係を裏づける証拠の集め方、調停から訴訟への進め方、相手の所在調査、そして認知後の養育費の取り決めまで、一人で対応するには法律の知識も時間も大きな負担になります。弁護士に任せれば、これらの手続きを一貫して進められ、見通しを立てながら落ち着いて対応できます。
相手の死亡後は3年で認知の訴えができなくなるなど、時間が経つほど不利になる場面もあります。「もう手遅れかもしれない」と感じている方も、まずは状況を整理することから始めてみてください。
当事務所では男女トラブルに取り組む弁護士が、全国どこからでもご利用いただける無料相談をお受けしています。お子さんの権利を守る第一歩として、お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

